【完結】『お姉様に似合うから譲るわ。』そう言う妹は、私に婚約者まで譲ってくれました。

まりぃべる

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16. キャシーと王都へ

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「ねぇ。まだかしら?」

 馬車の小窓から、外を見ていたキャシーが言った。

「もう少しよ。あ!ほら、王都が見えて来たわ。」

「どこ?…あ!本当だ!」


 今は、馬車に乗ってキャシーに婚約者の打診をしてきた人へ会いに行く途中だ。

 どこまで進むのだろう、と考えていると見知った道を曲がってすぐの道に止まった。

「あら?ここ…?」

「お姉様、来たことあるの?」

 ここは、キャシーの手作りの縫いぐるみを置かせてもらっている、衣装屋だ。
ドレスなどの採寸をしたり、デザインを決めたりする際には屋敷に来てもらっている為、わざわざここへは来ないからキャシーは知らなかったのだろう。

 私は、お父様の仕事の手伝いで王都の店まで来た事もあったから知っていたのだ。

 馬車が、その店の前で止まり、降りると店からマダムが出てきた。

「いらっしゃい!待ってたわよぉ。そして、お相手も首を長ーくしてお待ちよぉ!」

 マダムは、デザインも手掛けているだけあって普段からドレスを着ている。
しかも既成品ではなく、手作りで、形も奇抜というか最先端というか。
今日は紙のような素材で出来たドレスを着ていた。
年齢も、お母様の年齢に近い見た目だけれど、不詳だ。

「さぁ、入ってちょうだい!」

 マダムが案内してくれるので、知らない屋敷に来るのだと思っていたキャシーも安心した顔つきになった。
そして、歩きながらキャシーが私の手を引っ張って、言った。

「ここ、マダムのお店なの?」

「ええ。キャシーは初めてだったかしらね。あ、あの窓際にあるリスの縫いぐるみ、キャシーが作ったものでしょ?」

「え?どこ?」

「ほら、あそこ。」

 お店へと入る扉の、隣にある窓際に、ちょこんと座って外を見ているリスの縫いぐるみが店の中に飾ってあった。

「わぁ!」

「あんな風に置いてくれているととても目立つわね。可愛いわ。」

「ええ!」

 キャシーは、自分の作った縫いぐるみが販売されている所を実際に見た事が無かったから、とても嬉しそうに、はにかんだ表情で答えた。



「キャシーちゃんは、初めてだったぁ?一階は、販売所よ。奥に採寸室もあるわ。さぁ、私達は二階よ。」

 カラフルなドレスが窓際にたくさん飾ってある。
中央は、等身大の顔の無い人形に、注文品なのかドレスが着せられて置いてあった。

 キャシーは、そのカラフルなドレスを見て目を輝かせながら二階へ上った。

 マダムは、一番奥の部屋の前で足を止めて待っていた。

「さぁ、準備はいいかしら?サーラちゃんも一緒に入りましょうね。」

コンコンコン

「入るわよぉ!」

 キャシーは少し緊張した顔つきだった。でも、マダムの後に続いて入って行く。私も、その後に続いて部屋に入った。
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