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12. お誘い
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婚約を結んでから一週間。
あれから、交流を深めるという事でルシウス様は二回、お茶をしに来て下さった。
そこで、ルシウス様は私の呼び方をサーラ嬢、という他人行儀なものからサーラに変えた。
何度呼ばれても、嬉しいけれどくすぐったいような妙な感じがするわ。
私にも、『ルシウスと呼んで』と言ったけれど…ごめんなさい。まだ暫くは無理そうだわ。
そして、今日王都にある植物園に一緒に出掛ける事になった。
きっかけは、私のお母様。
お母様は元々、積極的な性格であるから、ルシウス様と婚約してもただお茶をしているだけの私達を見てやきもきしていたらしい。
そして、帰り際のお見送りの時、お母様がルシウス様に声を掛けた。
「ルシウス様、もしよければ、サーラとお出掛けになってもいいのよ?お茶をしているだけなんて、なかなか二人の仲がギュッとなんて縮まらないでしょう?オスカーなんてね、次の日から手紙と、あとデートのお誘いとプレゼントまで…」
「ウォッホン!ライザよ、人それぞれペースというものがあるんだ。ライザは私に積極的に来てくれたし、美人だから他の奴に取られたら困るとそれこそ何でもやったまでだ。でもな、サーラは君と性格が違う。ルシウス様はきっとサーラに合わせて下さってるんだよ。」
「あら。遠慮してくれてるのかも知れないわ。でもね、ルシウス様。遠慮は無用よ?もうじゃんじゃん誘ってちょうだい?」
そう言うものだから、私はとても恥ずかしくなってしまったわ。
「もう!お母様止めて!ルシウス様、すみません…。」
「いやいや。そう後押しして下さって嬉しいよ。ではお言葉に甘えて…植物園に行かないかい?サーラ。」
「…はい。」
なんだか、半ば強引に誘わせたような気もするけれど、二人で出掛けるのはとてもドキドキするわ。
「サーラ、植物園は来たことある?」
植物園に着いて、ルシウス様と二人で話しをしながら見て回る。
「ええ、かなり小さい頃に家族で。でも、まだキャシーも小さくて疲れるからとたくさんは回れなかったのです。」
「そう。僕はね、時間が取れる時に何度も来てるんだ。昔は僕も父と母に連れられてだったけれど、最近は一人でね。」
「そうなのですね。ディクソン領からは遠いけれど、わざわざ通ってますの?」
「いや、王宮に来る時にまとめて用事を済ますんだけれどね。その時に植物園も用事に含めているんだ。時期によって咲くものも違うし、以前は植えられてなかったものをいつの間にか育てたりしていてね。何度来ても勉強になる。」
「まぁ!勉強ですか。素晴らしいですわね。」
「あ、いや…ディクソン領は以前も言ったけれどこことは気候が違うからね。少しでも生活に役立つ植物があれば、あっちで育てられないかなと思ってね。」
「素敵ですわ!温室を作られているのですよね?」
「あぁ。気候が寒くて、そのまま自生はなかなかしてくれないからね。…そんな所に結婚して生涯住む事になるの、少し申し訳なく思うのだけれどね。」
「ルシウス様…。私は、ここの気候とは違う場所へ長く滞在した事が無いから分からないのですが、以前読んだ本に『住めば都』と言う言葉が有りましたわ。どんな場所でも、住み慣れると居心地良く感じられるそうです。ルシウス様、きっと私も初めは慣れない事で戸惑うかもしれませんが、長い目で見て下さいませ。ルシウス様と一緒に生活出来れば、きっと住めば都と言えると思いますわ。」
「サーラ…!あぁ、なんて君は素敵な心の持ち主なんだ!さすがあのブレンダと仲良くしているだけはある!…あ、いやブレンダを蔑んでいるわけではないよ。ブレンダは、なんとなく女性というより、男性といるようなサバサバとした感覚なんだ。」
「ふふふ。私の事をそう、言って下さってありがとうございます。本当はそんな事ないのですけれどね。それに私も、ブレンダと居ると、気易いのですわ。」
ルシウス様に褒められると、なんだかくすぐったいですわ。でもそれと共にとても嬉しいですわね。
あれから、交流を深めるという事でルシウス様は二回、お茶をしに来て下さった。
そこで、ルシウス様は私の呼び方をサーラ嬢、という他人行儀なものからサーラに変えた。
何度呼ばれても、嬉しいけれどくすぐったいような妙な感じがするわ。
私にも、『ルシウスと呼んで』と言ったけれど…ごめんなさい。まだ暫くは無理そうだわ。
そして、今日王都にある植物園に一緒に出掛ける事になった。
きっかけは、私のお母様。
お母様は元々、積極的な性格であるから、ルシウス様と婚約してもただお茶をしているだけの私達を見てやきもきしていたらしい。
そして、帰り際のお見送りの時、お母様がルシウス様に声を掛けた。
「ルシウス様、もしよければ、サーラとお出掛けになってもいいのよ?お茶をしているだけなんて、なかなか二人の仲がギュッとなんて縮まらないでしょう?オスカーなんてね、次の日から手紙と、あとデートのお誘いとプレゼントまで…」
「ウォッホン!ライザよ、人それぞれペースというものがあるんだ。ライザは私に積極的に来てくれたし、美人だから他の奴に取られたら困るとそれこそ何でもやったまでだ。でもな、サーラは君と性格が違う。ルシウス様はきっとサーラに合わせて下さってるんだよ。」
「あら。遠慮してくれてるのかも知れないわ。でもね、ルシウス様。遠慮は無用よ?もうじゃんじゃん誘ってちょうだい?」
そう言うものだから、私はとても恥ずかしくなってしまったわ。
「もう!お母様止めて!ルシウス様、すみません…。」
「いやいや。そう後押しして下さって嬉しいよ。ではお言葉に甘えて…植物園に行かないかい?サーラ。」
「…はい。」
なんだか、半ば強引に誘わせたような気もするけれど、二人で出掛けるのはとてもドキドキするわ。
「サーラ、植物園は来たことある?」
植物園に着いて、ルシウス様と二人で話しをしながら見て回る。
「ええ、かなり小さい頃に家族で。でも、まだキャシーも小さくて疲れるからとたくさんは回れなかったのです。」
「そう。僕はね、時間が取れる時に何度も来てるんだ。昔は僕も父と母に連れられてだったけれど、最近は一人でね。」
「そうなのですね。ディクソン領からは遠いけれど、わざわざ通ってますの?」
「いや、王宮に来る時にまとめて用事を済ますんだけれどね。その時に植物園も用事に含めているんだ。時期によって咲くものも違うし、以前は植えられてなかったものをいつの間にか育てたりしていてね。何度来ても勉強になる。」
「まぁ!勉強ですか。素晴らしいですわね。」
「あ、いや…ディクソン領は以前も言ったけれどこことは気候が違うからね。少しでも生活に役立つ植物があれば、あっちで育てられないかなと思ってね。」
「素敵ですわ!温室を作られているのですよね?」
「あぁ。気候が寒くて、そのまま自生はなかなかしてくれないからね。…そんな所に結婚して生涯住む事になるの、少し申し訳なく思うのだけれどね。」
「ルシウス様…。私は、ここの気候とは違う場所へ長く滞在した事が無いから分からないのですが、以前読んだ本に『住めば都』と言う言葉が有りましたわ。どんな場所でも、住み慣れると居心地良く感じられるそうです。ルシウス様、きっと私も初めは慣れない事で戸惑うかもしれませんが、長い目で見て下さいませ。ルシウス様と一緒に生活出来れば、きっと住めば都と言えると思いますわ。」
「サーラ…!あぁ、なんて君は素敵な心の持ち主なんだ!さすがあのブレンダと仲良くしているだけはある!…あ、いやブレンダを蔑んでいるわけではないよ。ブレンダは、なんとなく女性というより、男性といるようなサバサバとした感覚なんだ。」
「ふふふ。私の事をそう、言って下さってありがとうございます。本当はそんな事ないのですけれどね。それに私も、ブレンダと居ると、気易いのですわ。」
ルシウス様に褒められると、なんだかくすぐったいですわ。でもそれと共にとても嬉しいですわね。
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