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13. 案内
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「さあ、こちらへ。」
と、そのように案内したのはミルチャであった。そして、牢屋ではなく素敵な部屋に案内されたエレナはホッと一安心した。
(あぁ、どうにか牢屋ではないようね。よかったわ…。だって、アンさんもマダリーナさんも怖い事言うのだもの。ちょっとだけドキドキしちゃったわ。
執事のミルチャさんも、恐そうな顔をしているし。)
「こちらが、エレナ様のお部屋となります。
ジェオルジェ様が帰られましたら、お会いになるか確認いたします。それまではこちらでお寛ぎ下さい。
後ほど、世話係を寄越します。」
そう言ったミルチャは、エレナが部屋に入ったのを確認すると自分は廊下に立ったまま説明してさっさと部屋の扉を閉めようとした。
「あ、待って!
あの、先ほどヨシフから聞いたのだけれど、領主様はいつ帰られるか分からないのですか?
帰られるまでは滞在していいって事でしょうか。」
「ええ、とりあえずは。もし、滞在日数が長くなり、帰りたくなればいつでも仰って下さい。では。」
そう言って今度こそ扉を閉め、去って行ってしまった。
(あら、行っちゃった。
それにしても、素晴らしくいい部屋だわ!ここをいきなり尋ねた私に使っていいって、さすが領主様なのね!お金持ち、なのねぇ。)
エレナは、部屋をざっと見渡す。
部屋には壁際にベッドがあり、エレナが両手を伸ばしてもゆったりと寝られそうな大きさだった。カーテンが開けられた正面の天井から腰までの高さの窓からは、かなり明るい光が入ってきている。ここは二階であり、窓からは外の景色が良く見えた。
ベッドとは反対側の壁には楕円形の大きな鏡がついたドレッサーとスツールが置いてあり、その近くの一つ目の扉を開けると、洗面所と風呂とトイレまであった。もう一つの扉を開けると、クローゼットルームとなっていた。
床は暗めな色の板張りとなっており、落ち着いた雰囲気となっている。
エレナは、部屋の確認を終え、窓を望むように置かれた布製のソファに腰を下ろした。
(すごい豪華…。寛げるかしら。)
そう思っていると、扉を叩く音がした。
「入ってもよろしいでしょうか。」
「どうぞ。」
エレナが返答すると、エレナよりも少し若そうな女性、というか少女が入ってきた。黒いワンピースに白いエプロンをつけているから、先ほどミルチャが言っていた世話係かと思った。
「私は、侍女をしておりますリュセと申します。今日からエレナ様のお世話をさせていただきますので、何なりとお申し付け下さい。」
短い肩までの茶色の髪をした、丸顔の可愛らしい少女だと思ったエレナは、年齢を聞いてみた。
「リュセさん、何歳なの?」
「リュセ、とお呼び下さい。私は十八になります。」
そう言って、表情一つ変えなかったリュセに再び声を掛けた。
「リュセ、教えてくれてありがとう。
私は二十一歳なの。同じ位なのね、よろしくね。仲良くしてくれると嬉しいわ。」
ここでは、年齢の近い人と会ったのは初めてであったので、エレナは仲良くなりたいと思った。が、リュセは表情が固く、仕事中だからかあまり表情も変えず一線を引いている雰囲気であったので、敢えてそう声を掛けた。
「…勿体ないお言葉です。こちらこそよろしくお願い致します。至らぬ点があればなんなりとお申し付け下さい。」
少しだけ驚いた表情をしたがすぐに戻したリュセに、仲良くなるのは難しいのかなぁと苦笑いをしたエレナであった。
☆★
リュセに部屋の使い方などで話しかけても、仕事中であるからか固い言葉遣いをされ一言二言で終わってしまう。
そして、何も用が無くなるとリュセは入り口近くの扉の直ぐ横まで行き、エレナとは視線を合わさないように立っているのだ。
エレナはそれを窮屈に思ってしまった。
(うーん、なんだか監視されているみたいだわ。
でも、リュセもそれが仕事なのだものね。)
エレナは、仕方ない、と思いながらソファから立ち上がり窓の外を見る。すぐ下は良く手入れされている庭が見えた。中央に石畳がひかれ、その道の周りには色とりどりの花が植えられていた。
(そういえば…ダリアさんって庭師って言ってたわよね。ダリアさんがあんなに綺麗に植えたのかしら。)
「ねぇ、リュセ。下の庭って見せてもらう事は出来るの?」
「はい。今から行かれますか?」
「行っていいのなら行きたいわ。」
「では、こちらへ。」
リュセのキビキビとした動きに、年下なのに凄いなあと関心しながら、エレナも後をついて行った。
と、そのように案内したのはミルチャであった。そして、牢屋ではなく素敵な部屋に案内されたエレナはホッと一安心した。
(あぁ、どうにか牢屋ではないようね。よかったわ…。だって、アンさんもマダリーナさんも怖い事言うのだもの。ちょっとだけドキドキしちゃったわ。
執事のミルチャさんも、恐そうな顔をしているし。)
「こちらが、エレナ様のお部屋となります。
ジェオルジェ様が帰られましたら、お会いになるか確認いたします。それまではこちらでお寛ぎ下さい。
後ほど、世話係を寄越します。」
そう言ったミルチャは、エレナが部屋に入ったのを確認すると自分は廊下に立ったまま説明してさっさと部屋の扉を閉めようとした。
「あ、待って!
あの、先ほどヨシフから聞いたのだけれど、領主様はいつ帰られるか分からないのですか?
帰られるまでは滞在していいって事でしょうか。」
「ええ、とりあえずは。もし、滞在日数が長くなり、帰りたくなればいつでも仰って下さい。では。」
そう言って今度こそ扉を閉め、去って行ってしまった。
(あら、行っちゃった。
それにしても、素晴らしくいい部屋だわ!ここをいきなり尋ねた私に使っていいって、さすが領主様なのね!お金持ち、なのねぇ。)
エレナは、部屋をざっと見渡す。
部屋には壁際にベッドがあり、エレナが両手を伸ばしてもゆったりと寝られそうな大きさだった。カーテンが開けられた正面の天井から腰までの高さの窓からは、かなり明るい光が入ってきている。ここは二階であり、窓からは外の景色が良く見えた。
ベッドとは反対側の壁には楕円形の大きな鏡がついたドレッサーとスツールが置いてあり、その近くの一つ目の扉を開けると、洗面所と風呂とトイレまであった。もう一つの扉を開けると、クローゼットルームとなっていた。
床は暗めな色の板張りとなっており、落ち着いた雰囲気となっている。
エレナは、部屋の確認を終え、窓を望むように置かれた布製のソファに腰を下ろした。
(すごい豪華…。寛げるかしら。)
そう思っていると、扉を叩く音がした。
「入ってもよろしいでしょうか。」
「どうぞ。」
エレナが返答すると、エレナよりも少し若そうな女性、というか少女が入ってきた。黒いワンピースに白いエプロンをつけているから、先ほどミルチャが言っていた世話係かと思った。
「私は、侍女をしておりますリュセと申します。今日からエレナ様のお世話をさせていただきますので、何なりとお申し付け下さい。」
短い肩までの茶色の髪をした、丸顔の可愛らしい少女だと思ったエレナは、年齢を聞いてみた。
「リュセさん、何歳なの?」
「リュセ、とお呼び下さい。私は十八になります。」
そう言って、表情一つ変えなかったリュセに再び声を掛けた。
「リュセ、教えてくれてありがとう。
私は二十一歳なの。同じ位なのね、よろしくね。仲良くしてくれると嬉しいわ。」
ここでは、年齢の近い人と会ったのは初めてであったので、エレナは仲良くなりたいと思った。が、リュセは表情が固く、仕事中だからかあまり表情も変えず一線を引いている雰囲気であったので、敢えてそう声を掛けた。
「…勿体ないお言葉です。こちらこそよろしくお願い致します。至らぬ点があればなんなりとお申し付け下さい。」
少しだけ驚いた表情をしたがすぐに戻したリュセに、仲良くなるのは難しいのかなぁと苦笑いをしたエレナであった。
☆★
リュセに部屋の使い方などで話しかけても、仕事中であるからか固い言葉遣いをされ一言二言で終わってしまう。
そして、何も用が無くなるとリュセは入り口近くの扉の直ぐ横まで行き、エレナとは視線を合わさないように立っているのだ。
エレナはそれを窮屈に思ってしまった。
(うーん、なんだか監視されているみたいだわ。
でも、リュセもそれが仕事なのだものね。)
エレナは、仕方ない、と思いながらソファから立ち上がり窓の外を見る。すぐ下は良く手入れされている庭が見えた。中央に石畳がひかれ、その道の周りには色とりどりの花が植えられていた。
(そういえば…ダリアさんって庭師って言ってたわよね。ダリアさんがあんなに綺麗に植えたのかしら。)
「ねぇ、リュセ。下の庭って見せてもらう事は出来るの?」
「はい。今から行かれますか?」
「行っていいのなら行きたいわ。」
「では、こちらへ。」
リュセのキビキビとした動きに、年下なのに凄いなあと関心しながら、エレナも後をついて行った。
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