【完結】〝終の山〟と呼ばれた場所を誰もが行きたくなる〝最高の休憩所〟としたエレナは幸せになりました。

まりぃべる

文字の大きさ
15 / 29

15. 庭

しおりを挟む
「綺麗…!」


 その庭は、侯爵邸に来たお客様の目を楽しませて心を和ませる為にとても手が加えられていた。

 屋敷から見える方向には様々な花や木が植えられている。
 手前には白い花と赤い花、少し離れた場所には青い花と白い花、など計算されたようにきちんと植えられて、彩られていた。目が覚めるような緑の芝生も奥へと続いている為に、一層綺麗に見えた。

 芝生の中央には小さな石畳の小径が敷かれ、そこから奥へと歩いて散策出来るようになっている。


(ここが、ダリアさんが造った庭なのかな。
でも、じゃあ今は新しい庭師がいるって事?)


「ねぇリュセ、庭師っているの?」

「庭師、ですか…?はい、えーと…あ、あちらで何か作業をしていますね。彼が、庭師のエイデルです。呼びましょうか。」

「あ、いえ。作業をしているのよね、だったら私が向かいます。」


 奥の方で、植えられた青い花の傍で赤い髪をした座って作業している人が見えたのでその近くまで向かったエレナは、早速話しかけた。


「あの、庭師の方ですか?」

「わ!びっくりしたー…
はい、そうです。私はエイデルと言います。
何か?」

「あ、いいえ…綺麗な庭よね。あなたが造ったの?」


 何か、と言われて別に大した用事ではないけれど思い切って庭の事を聞いてみようとエレナは思ったので質問を口にした。
エイデルと言われた彼は、エレナと同じくらいの男性で、とても若く見えた。


「いいえ、私が植えたのではありません。前任者が育てていたのを引き継いだのです。けれど、引き継ぎも無かったので戸惑ってはいるのですがね。
何か不備でもありましたか?」

「そう…ダリアさんに教えてもらわなかったの?」

「ダリア…?あぁ、前任の方ですね?
私がここへ配属されたのは、前任者がいなくなってからですから、直接教えてもらってはいないのです。
けれども、こう見事に寄せ植えをしていてとても上手く魅せる花の咲かせ方をしているのですから、いろいろと教わりたかったんですがね。弟子にして欲しいくらいでした。
勝手が分からないままに世話をしていたので、私の不手際あるかと思いましたが、無かったのなら良かったです。
まだまだ実力不足ではありますが、努力しているところです。
…ところで、あなたは…?」

「あ、申し遅れました。私はエレナと申します。領主様に会いに来たので会えるまで滞在させていただきますね。」

「お、お客様…すみません、お客様に変な話を…!」

「あぁ、いいのよ。私が聞きたかったのだから。エイデルさ…エイデルも頑張ってね。」

「はい、ありがとうございます。それでは。」


(ダリアさん、若い頃から長年勤めていたって言っていたわよね。だからいろいろと知識もあったのかしら。
エイデルさんも弟子にして欲しかったと言っているくらいだし、ダリアさんが戻ってくる事は叶わないのかなぁ?)


 エレナは、エイデルと会話してそのように思ったのだった。


 作業をしているエイデルの邪魔をしてはいけないだろうと、庭をもう少し見てみようと思ったエレナは、先を進んで行った。
 庭は、小さな石畳の小径が造られていて、今エレナがいる周りには様々な種類のバラが咲き誇っている。そして奥へ進むほど、違う数種類が一括りで寄せ植えで植えられていた。
 少し高くなったところには四阿があり、それを越えた先には噴水も造られていた。
 屋敷にいた時には噴水の音は聞こえなかったが、こちらへ来ると水の音が良く聞こえて、エレナはとても癒されると和やかな気持ちになった。

 噴水の前にはベンチが四方にあり、その中の一つに腰を下ろした。


 しばらくエレナがそこでじっとしていると、小鳥の囀りが近づいて聞こえ、噴水の淵に数羽の小鳥が水浴びをしに来た。


(可愛い…!ここは人も動物も癒される場所なのね。
そういえば、あちらの山終の山には沸き湯があったけれど、ここにもあるのかなぁ。領主様っていう偉い人の家だから、あるわよね!小鳥が水浴びしているのを見ていたら、また私も沸き湯に入りたくなっちゃった!
そういえば、部屋にお風呂があったよね。沸き湯の湯を引っ張って部屋まで運んで来てたりしないかなぁ?)


 などとエレナはいろいろと考えていた。

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――

捨てられた地味な王宮修復師(実は有能)、強面辺境伯の栄養管理で溺愛され、辺境を改革する ~王都の貴重な物が失われても知りませんよ?~

水上
恋愛
「カビ臭い地味女」と王太子に婚約破棄された王宮修復師のリディア。 彼女の芸術に関する知識と修復師としての技術は、誰からも必要性を理解されていなかった。 失意の中、嫁がされたのは皆から恐れられる強面辺境伯ジェラルドだった! しかし恐ろしい噂とは裏腹に、彼はリディアの不健康を見逃せない超・過保護で!? 絶品手料理と徹底的な体調管理で、リディアは心身ともに美しく再生していく。 一方、彼女を追放した王都では、貴重な物が失われたり、贋作騒動が起きたりとパニックになり始めて……。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』

鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。 だからこそ転生後に誓った―― 「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。 気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。 「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」 ――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。 なぜか気づけば、 ・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変 ・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功 ・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす ・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末 「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」 自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、 “やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。 一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、 実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。 「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」 働かないつもりだった貴族夫人が、 自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。 これは、 何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。

厄介払いされてしまいました

たくわん
恋愛
侯爵家の次女エリアーナは、美人の姉ロザリンドと比べられ続け、十八年間冷遇されてきた。 十八歳の誕生日、父から告げられたのは「辺境の老伯爵に嫁げ」という厄介払いの命令。 しかし、絶望しながらも辺境へ向かったエリアーナを待っていたのは――。

老伯爵へ嫁ぐことが決まりました。白い結婚ですが。

ルーシャオ
恋愛
グリフィン伯爵家令嬢アルビナは実家の困窮のせいで援助金目当ての結婚に同意させられ、ラポール伯爵へ嫁ぐこととなる。しかし祖父の戦友だったというラポール伯爵とは五十歳も歳が離れ、名目だけの『白い結婚』とはいえ初婚で後妻という微妙な立場に置かれることに。 ぎこちなく暮らす中、アルビナはフィーという女騎士と出会い、友人になったつもりだったが——。

処理中です...