【完結】〝終の山〟と呼ばれた場所を誰もが行きたくなる〝最高の休憩所〟としたエレナは幸せになりました。

まりぃべる

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26. 両親と対面

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 エレナは、もう何度もされて慣れてきたジェオルジェからのエスコートをされながら馬車を降りた。
 馬車の中は、最近では隣同士で座る事が常となっていて、いつも話に花が咲いていた。



「まぁすごい…!!」

 馬車から降りたエレナは、目の前の黒くそびえ立つ砦に圧倒された。これもかなり大きな造りになっており、周りは身長の倍以上もある高い壁で囲まれているようで、かなり先までその壁が左右に延びていた。

「頑丈に造られているのは、獰猛な野生動物が万が一ここまで来てしまった時の為だよ。とはいっても、ここ暫くはここまでやって来た事はないけれどね。
大昔の領土戦争をしていた時には、今のアンドレイ邸の建物も砦に入りきらない警備隊用の宿舎で、ここが戦争の前線になった事もあったらしい。だが今は野生動物と遭遇する危険を冒してまでバルスイ国に攻めてくる国もなくなったから、警備隊の人数もそこまで必要なくなった為に今ではこの砦の中に国境警備隊の宿舎もあるんだよ。警備隊の人数がその時よりは減ったという事だね。」


 と、ジェオルジェがエレナへと説明をしてくれ、中へと案内してくれる。

 
 心無しか緊張している様子のジェオルジェがエレナへと言った。


「ごめん…まずは、俺の両親に会ってもらってもいいか?」

「ええ。その為に来たのだもの。謝らないで!
私もお世話になっているし、挨拶が遅れてしまった事を怒られないか心配だわ。」

「そんな事は無いから大丈夫だよ。あ、来たかな。」


 ジェオルジェが応接室へと案内してくれ、座って話しているとジェオルジェが廊下から大きな声が聞こえてきた為にそう言った。
 その応接室は、豪勢な造りではなく、簡単なベンチのような木製のイスと机があるだけで、形だけの応接室であった。


「やっと連れて来てくれたのね?ジェオルジェ。待ちくたびれたわ!」

「キャルリ、まずは挨拶からだろう?」

「あなた!そんな事言って…!いいじゃないの、そんな堅い事言わなくても。ねぇ!」


 そのように最後はエレナの顔を見て話したのは、ジェオルジェの母キャルリだ。金髪の長い髪は、頭の上の方でしっかりと一つにまとめ上げていてスラリとした長身の女性だ。
キャルリを窘めていたのは、ジェオルジェの父オーラルタス。金髪に少し白い色が混じった少し癖っ毛の髪を短く切り揃えたキャルリより頭一つ分高い男性だ。
二人共、銀色の鎧を胴と肩、足に着けて入って来たのでエレナは少し驚いた。
けれども、どうやら歓迎してくれているようだと思いエレナは安心する。


「母さん!止めてくれよ、とりあえず座ってくれ。
エレナ、俺の母のキャルリと、父オーラルタスだよ。今は、ここで野生動物から領地を守ってくれているよ。」

「エレナと申します。ご挨拶が遅れてしまって申し訳ありませんでした。」

「まぁまぁ!可愛らしいお嬢さんだこと!
いいのよ、ゆっくりしていってくれるのでしょ?今から、ジェオルジェはオーラルタスと一緒に行くから、私といましょうね!」

「母さん!
俺は昼食を食べてから出かけようと思ってましたから。エレナを部屋へ案内もしないといけないし。」

「あら。案内なら私がするわよ。
オーラルタスは今から行くわ。その為にもう鎧もつけているのよ。私も外に出る時にはいつもこれをつけているから、これがドレスのようなものね!
さ、ジェオルジェも早く行って訓練して来なさい。」

「そうだな。
エレナさん、顔を見せてくれてありがとう。ゆっくりしていってくれると嬉しいよ。ここは、警備隊が生活する砦であるから最低限の物しか無くて殺風景ではあると思うけれど済まないね。効率を考えての事なんだ。だからエレナさんも慣れてくれると嬉しい。」

「は、はい。」

「よし、じゃあジェオルジェ、行くぞ。」

「はぁ!?
分かりましたよ!エレナ、ごめん。ちょっと行って来る。
父さん、エレナがいるから、日が暮れる前には帰るから!」

「いってらっしゃいませ。私の事は気にしないでね。」

「…!
お、おう、行って来る。」

「あらやだ!ジェオルジェ、照れてるのね?ウフフフ。行ってらっしゃい!
エレナさん、さぁお部屋を案内しますから行きましょう?」



 そう言ったキャルリは、エレナを連れて部屋を出て行った。





☆★

 部屋を案内されたエレナは、荷物を片付けた後、食堂でキャルリと昼食を共にした。
 その際、キャルリは鎧も脱いで普段着の緩いワンピースを着ており、優雅にジェオルジェの小さな頃の話をしたのだった。


「ジェオルジェは幼い頃は、虫も殺せなかったのよ。怖い怖いと逃げ回っていてね、そのせいで川に落ちた事もあったわ。
それが今は獰猛な野生動物の駆除をしているのだから、驚いちゃうわ。でもたまに、駆除を躊躇う時もあるのよ。だからいつも実践させているの。だって、それが命取りになる事もあるもの。」

「そうなのですか…想像もつきません。」

「そうよねぇ…。
あ!そうだわ、じゃあ見に行きましょうか。どう?エレナちゃんもジェオルジェや警備隊がどのような事をしているのか見たくない?」

「え?
私が行って、邪魔ではないのですか?」

「邪魔な訳ないわ!今日は体力作りだと言っていたもの、危険な所にはいないはずよ。この近くの森の中にいるはずだわ。
私の傍から離れないでいてくれれば、身の危険も無いからね。これでも、私も普段は訓練しているのよ。
さ、そうと決まれば行きましょう!」


 そう言って、食事を終えると厩まで連れて来られ、エレナもキャルリと一緒の馬に乗せられた。
 エレナは馬に乗る事もすでに一人で出来るようになっていた。ジェオルジェから教えてもらっていたのだ。だがキャルリは一緒にいた方が何かあった時に守れるから一緒に行きましょ、と言ったのだった。




 馬で木が鬱蒼と茂った森を少し駆け抜けると、ザワザワと声が聞こえて来た。
そして、木々の間から人が十数人ほどの姿が見え、座って何やらやっているのが見えた。
オーラルタスと同じように鎧を着けている者はいなくて、体力作りをするからか皆、白いシャツにズボンと動きやすい格好をしていた。


「あぁ…〝祈り〟をしているわね。きっと迷い動物でもいたのかしら。」

「祈り、ですか?」

「ええ。
ここからは歩いて行きましょう。」


 そう言ったキャルリは、自身が先に降りてエレナにも降りるように言った。そして、そちらへと近づいていく。


 と、キャルリとエレナに気づいたオーラルタスが、言葉を発した。


「来たのか。大丈夫か?」


 その言葉を聞いて、キャルリはオーラルタスへと駆け寄った。


「ええ。勇姿を見せようと思って。今日は体力作りだったはずでしょう?でも
、駆除したの?
それは、オオイノ?」

「そうだ、いきなりやってきたんだ。こんな予定ではなかったのだがな。
子供だろう。気を付けねば。」



 周りは相変わらず木々が鬱蒼と生えているが、真ん中に大型犬ほどの大きさのイノシシのような動物が横たわっていた。警備隊の人達はそれを囲んで座っている。
駆除をした後は、獰猛な野生動物といえども生きている命を絶ってしまったのであるから、その動物を皆で囲んで祈りを十分ほど捧げるのが恒例であった。

 それを見たエレナは、イノシシの血を流した姿に息を飲んだ。初めてそのような場面を目撃したからだ。その為、二歩三歩と後ずさりしてしまう。


(これが、駆除なのね…なんだか、可哀想…。でも、人に危害を加えるから仕方ないのよね。)


「エレナ!」


 そのイノシシのようなオオイノと呼ばれた動物の近くにいたジェオルジェが立ち上がり、エレナへと駆け寄ってきた。
ジェオルジェの姿を見て、自分もなぜか近寄りたくなって駆け出そうとしたエレナだったが、後ろからパキパキと枝が折れるような音と、落ち葉が踏まれるガザガザという音が聞こえてきた。


「え?」

「わー!!」

「まさか、親じゃないか!?」

「やべ!デカい!」


 そしてエレナがその音を疑問に思って振り返ろうとした時に、警備隊の人達が声を上げた。
 振り返ったエレナは、自分の身長の倍以上もあるその音の正体を見て、硬直した。姿はオオイノであるが、倒れていた大型犬ほどの大きさよりもものすごく大きく、迫力もあり牙が鋭く光っている。
 オオイノとの距離はまだあるが、それでも大きく、フーフーと鼻息を鳴らしている音を聞いてエレナはどうする事も出来ない。


「喋るな!!」


 オーラルタスが、低く声を出した。刺激をするなと言う意味だ。


「エレナ!!」


 エレナの傍まで小走りで素早く駆け寄って来たジェオルジェは、エレナを背中側へと押し遣り、そのオオイノの前に対峙した。
ジェオルジェの手には、身長の半分ほどの大きさの太い剣を持っていた。
 オオイノは、その巨体では木々の間を通るには狭そうであったが、それでもいまにも飛び掛かってきそうだった。こちらを見て、睨んでいるようで、エレナは、倒れそうになる。


「エレナ、母さん達の方へ行けるか。」


 視線はオオイノへと向けながら、首を僅かにエレナへと向けてそう声を掛ける。


「でも…」

「いや、むしろ行ってくれるか?さすがに、こいつは両手で剣を持たないと無理だから。」


 ジェオルジェはエレナへと極力優しく言って、片手でエレナの体を後ろへと押し、もう片手で剣を構えようとする。が、木々が生い茂っている為にジェオルジェもここで剣を振るうのは分が悪いと思った。木が邪魔で、思うように立ち振る舞えないと感じたのだ。


「エレナちゃん!来て!」


 キャルリも、音を立てないようにゆっくりとエレナへと近づきながら声を抑えつつそう叫び、エレナへと速く速くと手を動かし手招きをした。


「ジェオルジェ…」

「大丈夫。行って!」

「うん」


 エレナはジェオルジェから離れたくなかったが自分がそこにいる事で邪魔になると思い、苦渋の決断でキャルリの方へ手を伸ばす。

 と、それを後ろに感じたジェオルジェは、わざと大きな声を上げて自らオオイノへと向かっていった。
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