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本編

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あれから2日経った。

まだ、あの侍女の処遇は決まらないのか、教えてもらえない。まぁ、政治が絡んでいるなら私は何も出来ないから待つしかない。だって、普通に考えて、異世界から来た私を殺そうとする人なんていない。知り合いも数える程しかいないし。
て事は…分からない。分からないのは考えても無駄だから、ま、いっか。



「お出掛け?」
「そうだ。午後、予定が空いたから街へ出てみないか。マリアが良ければ、街で昼ご飯を食べよう。」
「わ-!行きたいです!楽しみです。」
「どんな店がいいか希望があるか?もしあれば言ってくれ。なければ、明日好きな所へ行こう。」
「良く分からないから…ルーク様は街へ良く行くのですか?」
「…まぁ、それなりに。」
「ルーク様のオススメのお店でも良いですし、明日どんな店があるのか見てみたいです!」

朝食の時に、嬉しい話を聞いた。この世界へ来て初めての街!賑やかなのかな?どんな感じかしら。





「いつもと違って、動き易いわ。」
タリアに服を用意してもらうと、いつもよりも簡素な飾りも付いてないワンピースだった。でも、スカートの下の方に申し訳なさげに少し刺繍がある。胸には、小さなリボンが付いていて、襟にはレースが少しだけ、ある。
「そうでしょうとも。お忍びでございますよ。ルーク様はお強いですから、離れてはなりませんよ。お気を付けて行ってらっしゃいませ。」


「お待たせしました。」
と、部屋を出るとルーク様も、簡素な半袖のシャツに長いズボン。でも、やっぱり少しだけ、刺繍がある。いつもと違うけれど、これもまた格好いい…。

「そういう格好も似合うな。さぁ、行こう。今日は、ルークと呼んでくれ。言葉遣いも、砕けた感じだと尚いいな。」
「えっ!…不敬とか言わないで下さいね。」
「言葉遣いが、違うぞ?」
「…言わないでね。」
「ハハッ!分かってる。俺から言ったんだ。大丈夫だ。牢屋にぶち込んだりしないさ。」
何となく、ルーク様もいつもより砕けてる…?
「行こうか。歩いて行くよ。大丈夫か?」
「うん!」






王宮のすぐ目の前の街は、1階建ての建物や2階建ての建物ばかりで、城へ入る門から正面に縦にまっすぐ石畳の道が延びている。
所々に小道が横にあるが、迷うといけないからあまり路地へは行かないようにと言われた。
メイン通りの左右にお店があり、食べ物屋や、武器、小物雑貨屋などがあるらしい。
建物の出入り口の上に、看板みたいなのがあり、絵が描いてある。
食べ物屋だったら、食べ物の。武器屋だったら、剣などの絵。字が普及していないらしい。読み書きを教える学校がないみたい。小さな子も、店で呼び込みしたりしてるから、働いているというか、家族を手伝ったりしているのかな。


私達は匂いにつられて、店に売られていたホットドックみたいなものを買って、少し行った先にある噴水広場のベンチで食べた。

「たまにはこういうのも良いだろ」

いつもはナイフやフォークを使って食べるものね。かぶり付いて食べるなんて、タリアに見られたらお説教かしら?

「うん!私がいた世界では、こういうのも普通にしてたわ。」
「そうなのか!?」
「ええ。だから、ルークと出来て嬉しい!」
「そ、そうか…。では、また来るか?」
「本当に?ルークがよろしければ是非に!」

食べ終わって少し話をしていると、
「助けて!物盗りよ!!」
という女性の声がした。

その声に、ルーク様がわずかに目を動かしているから、
「…ルーク様、行って下さい。捕まえないといけないでしょう。」
と伝えた。

「しかし…」
「私は大丈夫です。道も、分かります。」
「す、すまない。では、あの角の建物に衛兵の詰め所がある。そこで誰かと一緒に王宮まで帰ってくれないか。」
「あそこね。わかりました。」
「くれぐれも一人ではダメだぞ。またあとで。」
「はい。お気を付けて。」
と、手を振り見送った。

もうちょっと一緒に回りたかったけど、仕方ない。衛兵の詰め所に行きますか。

「すみませーん」
「ん?どうした?お嬢さん。一人かい?」
「はい。王宮まで送ってくれませんか。」
「おいおい…ここは治安を見回る衛兵がいる所なんだ。さっきも物盗りが出て出払ってる。悪いけど、送れないな。」
「そうですか…。では仕方ありませんね。とりあえず、私は声かけましたからね。いいですか、覚えておいて下さいね。」

店番?が一人ってのもよくないと思うけれど、確かにまた何かがあっても、対応出来なかったらいけないものね。
ルーク様に言われた通り、私は声はかけたもの。私は悪くないわよね。

道はメイン通りしか歩いてないから分かるし。

それに…さっきまでは見えなかったけど、道路に透明の矢印が浮き出てるのよね。まるで、スマホの地図アプリの、ルート検索みたいな…。どこまでこの矢印は出ているのか気になるわ。とりあえず、王宮の方に矢印が向いているから行っちゃいましょ。

「ありがとうございました。」
「お、おうよ。悪いね。」


やっぱり、王宮の方に向いているわ。私に帰り道を教えてくれてるのかしら。

歩いていると、店から出てきた女の人が、
「困ったわ…」
と言いながらうろうろしている。

「どうかしましたか?」

私が聞いてみると、
「さっき、買ってくれたおじいちゃんなんだけどね。購入したもの忘れて行っちゃったのよ…。店には私一人だし。足が良くないおじいちゃんなんだけど…また来るのも大変じゃないかしら。」

お店の看板をみると、どうやら紙袋に十字架みたいなのが描いてある。

「病院?それとも薬屋さんですか?」
「薬屋よ。おじいちゃんの痛み止め。忘れてっちゃって。はー。もっと早く気づけばよかったわ。」
「あの、どんな格好されてます?服の色とか。私届けましょうか?間に合いますかね。」
「本当!?助かるわ!ここをまっすぐ行って、帽子屋の角を左に曲がると、隣が小物雑貨屋でね。そこのおじいちゃんなのよ。黒い帽子を被ってたわ。」
「わかりました。これですか?お預かりしますね。」
「悪いわね、お願いね。」

小物雑貨屋かぁ。メイン通りを外れてもお店があるのね。割と近くて良かったわ。
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