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19. 下働きを救う?
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オティーリエはあの後それこそ意識を飛ばしたようにゆっくりと温かい布団の中で寝たからか、夕方には熱も下がった。
フォルラートはまた、オティーリエの部屋へと来て夕食を共にした。
その時フォルラートが、
「あれ?フォルと呼んでくれると約束したじゃないか。」
と言った為、昼間の事を思い出してオティーリエはやはり現実だったのだと思い、顔を赤くした。
今までは、フォルラートと話す時は王女としての毅然ある態度で接していたから気恥ずかしく思ったのだ。
けれども逆に、そんな態度はしなくていいとフォルラートは言い、
「もっと、お互いを知っていこう。その為にも、食べれる時には昼食も一緒にどう?」
と誘う。
オティーリエも、気張らなくていいのならそれに越した事はないし、確かにお互いを知っていった方が夫婦になるのだからと賛成した。
「でも、結婚は反対だったのでは?」
気になっていた事をオティーリエは、フォルラートに聞いてみると、全く別の方向を見て、
「政略結婚は、嫌だったんだ!親に勝手に決められてしまうなんて。俺はお、オティーリエとの結婚が嫌だったわけではないから!そこだけは勘違いしないでくれ!」
と、言ったのだ。
(なるほど…結婚自体が嫌だったわけではないのね。)
オティーリエはその答えを聞いて、少しホッとした。
そして、フォルラートとオティーリエはこの出来事をきっかけにお互いの距離が前よりも近づくのであった。
☆★
次の日。
前日のフォルラートとの話で、書庫へ行っていいと許可を得た為、オティーリエは午前中、本棟にある書庫へと出向いた。
そこは誰でも申請すれば入れる場所であり、イボンヌとニダと護衛騎士を引き連れてオティーリエは行った。
立派な書庫で、異国の物やオティーリエの祖国の物もあった。
昼食はフォルラートが共に出来ると連絡が入った為、オティーリエは書庫から直接食堂へと向かう。どんな種類があるのかと見ていたら思ったより時間が掛かった為に急いでいた。
渡り廊下を歩いていると、前方に人がいるのが見えた。
「あぁ手が滑った。片付けておけよ!」
ガッシャーン!カランカラン
その音と共にお腹がでっぷりと出ている男性が、廊下を歩いていた使用人へと手と、言葉を向けていた。
廊下には、その使用人が運んでいたと思われる水差しが粉々に割れていて、足元に池を作っていた。
「ほら、早くしろよ?誰かが通って怪我をしてもいかん!ほらほら、さっさと動けよ!」
「!…は、はい……。」
使用人はそうは言うものの、がっくりと肩を落としてオロオロとしている。
オティーリエは、目撃してしまった。
遠目からだが、使用人が前から歩いて来る人物に対して壁際に寄って道を空けたのにも関わらず、その使用人の前で足を止め、使用人が持っていたお盆を奪い取りひっくり返したのだ。
オティーリエは、そんな弱い者苛めをした男性に腹立たしく思い、言葉を上げた。
「ちょっと!何をしていらっしゃるの!?あなた、ここがどういう場所か分かっているのかしら!?」
張り上げた声に振り返った使用人は、オティーリエは見た事のない小間遣いだった。名はブランズという。
「あ…も、申し訳…」
ブランズがボソボソと口を開くと、オティーリエは被せる様に更に話す。
「あなたではないわ。大の大人なのに子供じみた嫌がらせをしているそこのあなたよ!全く、無駄な仕事を増やしていいと思っているの?ここは、王宮よ?この使用人が、例えば陛下の為に動いていたとしてこんな嫌がらせで手を煩わせていいと思っているの!?そんな事も分からないような無能な人が、王宮で働いているとしたらこの国も終わりを迎えてしまうわね。」
「な、なんだと!?この私を侮辱する気か!?私の事を知らんとはそっちこそ無能な小娘だろう!お前を処刑する事だって出来るんだぞ!?ふん!今すぐわしにひれ伏してみろ!処刑だけはさせないどいてやる!」
こげ茶色の前髪をペッタリとおでこに撫でつけた中年の男はつばを飛ばしながら喚いている。
オティーリエも貴族の名前はしっかりと頭に叩き込まれているが、会った事のない人は顔や身体的な特徴が分からない為、誰かは分かっていない。
最も、オティーリエはある程度地位のある人だと分かっている。この王宮にゴテゴテしたいかにも高そうな服を着て居るからだ。
それでも、オティーリエは弱い者いじめのようにしている事が気に入らず、割り入ったのだ。
「あら。この国は私情で刑をお決めになるの?それこそ愚策ですわね。あなた、政治家ではないわね?私情で刑を決めるのなら、好き嫌いだけで政治をしているのと同じよ?そんな事をしたら国は落ちぶれるに決まってるわ。公私の区別もつけられないなんて本当に子供ね!」
「な、なんだとー!?おい、誰か!こいつを引っ捕らえろ!!わしを侮辱しおった!!牢にぶち込んでおけ!」
「誰を牢にぶち込むんだ?」
「だから!この女に決まっと…る…え!お、王太子!?」
「廊下が騒がしいと思ったからな。おい、ベンヤミン伯爵、俺の妻を牢に入れるのか?それともお前が俺の妻を侮辱したとして牢に入るか!?」
フォルラートはいつもに増して冷たい声を放つ。
だが、オティーリエにとったら初めて聞く声で、身震いがするほどだった。
ベンヤミン伯爵と言われたその男は、今までオティーリエに偉そうに喚いていあのにそれを止め、まだ言いたそうにしていたが牢に入れられては適わないと、
「ふん!」
と鼻を鳴らしてその場を去っていった。
オティーリエはその姿を、
(ベンヤミン伯爵…ザーラの父親?そう言われれるといろいろと似てるわね。)
と思いながら見ていた。
フォルラートはまた、オティーリエの部屋へと来て夕食を共にした。
その時フォルラートが、
「あれ?フォルと呼んでくれると約束したじゃないか。」
と言った為、昼間の事を思い出してオティーリエはやはり現実だったのだと思い、顔を赤くした。
今までは、フォルラートと話す時は王女としての毅然ある態度で接していたから気恥ずかしく思ったのだ。
けれども逆に、そんな態度はしなくていいとフォルラートは言い、
「もっと、お互いを知っていこう。その為にも、食べれる時には昼食も一緒にどう?」
と誘う。
オティーリエも、気張らなくていいのならそれに越した事はないし、確かにお互いを知っていった方が夫婦になるのだからと賛成した。
「でも、結婚は反対だったのでは?」
気になっていた事をオティーリエは、フォルラートに聞いてみると、全く別の方向を見て、
「政略結婚は、嫌だったんだ!親に勝手に決められてしまうなんて。俺はお、オティーリエとの結婚が嫌だったわけではないから!そこだけは勘違いしないでくれ!」
と、言ったのだ。
(なるほど…結婚自体が嫌だったわけではないのね。)
オティーリエはその答えを聞いて、少しホッとした。
そして、フォルラートとオティーリエはこの出来事をきっかけにお互いの距離が前よりも近づくのであった。
☆★
次の日。
前日のフォルラートとの話で、書庫へ行っていいと許可を得た為、オティーリエは午前中、本棟にある書庫へと出向いた。
そこは誰でも申請すれば入れる場所であり、イボンヌとニダと護衛騎士を引き連れてオティーリエは行った。
立派な書庫で、異国の物やオティーリエの祖国の物もあった。
昼食はフォルラートが共に出来ると連絡が入った為、オティーリエは書庫から直接食堂へと向かう。どんな種類があるのかと見ていたら思ったより時間が掛かった為に急いでいた。
渡り廊下を歩いていると、前方に人がいるのが見えた。
「あぁ手が滑った。片付けておけよ!」
ガッシャーン!カランカラン
その音と共にお腹がでっぷりと出ている男性が、廊下を歩いていた使用人へと手と、言葉を向けていた。
廊下には、その使用人が運んでいたと思われる水差しが粉々に割れていて、足元に池を作っていた。
「ほら、早くしろよ?誰かが通って怪我をしてもいかん!ほらほら、さっさと動けよ!」
「!…は、はい……。」
使用人はそうは言うものの、がっくりと肩を落としてオロオロとしている。
オティーリエは、目撃してしまった。
遠目からだが、使用人が前から歩いて来る人物に対して壁際に寄って道を空けたのにも関わらず、その使用人の前で足を止め、使用人が持っていたお盆を奪い取りひっくり返したのだ。
オティーリエは、そんな弱い者苛めをした男性に腹立たしく思い、言葉を上げた。
「ちょっと!何をしていらっしゃるの!?あなた、ここがどういう場所か分かっているのかしら!?」
張り上げた声に振り返った使用人は、オティーリエは見た事のない小間遣いだった。名はブランズという。
「あ…も、申し訳…」
ブランズがボソボソと口を開くと、オティーリエは被せる様に更に話す。
「あなたではないわ。大の大人なのに子供じみた嫌がらせをしているそこのあなたよ!全く、無駄な仕事を増やしていいと思っているの?ここは、王宮よ?この使用人が、例えば陛下の為に動いていたとしてこんな嫌がらせで手を煩わせていいと思っているの!?そんな事も分からないような無能な人が、王宮で働いているとしたらこの国も終わりを迎えてしまうわね。」
「な、なんだと!?この私を侮辱する気か!?私の事を知らんとはそっちこそ無能な小娘だろう!お前を処刑する事だって出来るんだぞ!?ふん!今すぐわしにひれ伏してみろ!処刑だけはさせないどいてやる!」
こげ茶色の前髪をペッタリとおでこに撫でつけた中年の男はつばを飛ばしながら喚いている。
オティーリエも貴族の名前はしっかりと頭に叩き込まれているが、会った事のない人は顔や身体的な特徴が分からない為、誰かは分かっていない。
最も、オティーリエはある程度地位のある人だと分かっている。この王宮にゴテゴテしたいかにも高そうな服を着て居るからだ。
それでも、オティーリエは弱い者いじめのようにしている事が気に入らず、割り入ったのだ。
「あら。この国は私情で刑をお決めになるの?それこそ愚策ですわね。あなた、政治家ではないわね?私情で刑を決めるのなら、好き嫌いだけで政治をしているのと同じよ?そんな事をしたら国は落ちぶれるに決まってるわ。公私の区別もつけられないなんて本当に子供ね!」
「な、なんだとー!?おい、誰か!こいつを引っ捕らえろ!!わしを侮辱しおった!!牢にぶち込んでおけ!」
「誰を牢にぶち込むんだ?」
「だから!この女に決まっと…る…え!お、王太子!?」
「廊下が騒がしいと思ったからな。おい、ベンヤミン伯爵、俺の妻を牢に入れるのか?それともお前が俺の妻を侮辱したとして牢に入るか!?」
フォルラートはいつもに増して冷たい声を放つ。
だが、オティーリエにとったら初めて聞く声で、身震いがするほどだった。
ベンヤミン伯爵と言われたその男は、今までオティーリエに偉そうに喚いていあのにそれを止め、まだ言いたそうにしていたが牢に入れられては適わないと、
「ふん!」
と鼻を鳴らしてその場を去っていった。
オティーリエはその姿を、
(ベンヤミン伯爵…ザーラの父親?そう言われれるといろいろと似てるわね。)
と思いながら見ていた。
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