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15. 庭師の腰
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私は、今日も庭にいる。
服は、最近へレーナが新しく用意してくれた、動き易い服を着ている。
庭の奥。
ここ一週間で無造作に生えていた雑草を抜き取ってさっぱりとした所に、薬草を植え替えたり、新たに色とりどりの草花を植えた。
すると、大変だったがやって良かったと満足できる位、お客様に見ていただいても恥ずかしくない位に見違えるほど綺麗になった。
今は、湯井戸の隣にある汲み溜めた樽に入っている冷えた水を、小さな桶に汲み変え、柄杓でその草花に撒いていた。
オーヴェが先ほど、これをやっていて腰を痛めたといって、座り込んでしまったために、慌てて私が代わりにポールと一緒に手伝っている。
オーヴェは、湯井戸の前で未だ座り込んでいる。動くと痛いから、このままがいいそうだ。
オーヴェに、医者を呼ぶと言ったのだが、これは良くある事で、医者に見せても『安静にしていればそのうち治る』としか言われないと言っていた。本当に大丈夫なのかしら。
私はその時へレーナに、コップを持ってきてと伝えていて、邸から持ってきてくれるのが見えた。
「お持ちしました。」
なかなか慌ただしくて、オーヴェに飲んでもらってなかったのよね。早く渡していれば違ったのかしら…ごめんなさい。そう思いながら、へレーナが持ってきてくれたコップをもらい、願いを込める。
《どうか、オーヴェの腰の痛みが引いて、動いても痛みが感じなくなりますように。》
コップの上に右手を翳し、えいっと動かすと、水がコップ並々に注がれた。
「まぁ!スティナ様!それは、魔力ですか?」
へレーナの目の前でやったから驚かれてしまったわ。
「ええ、そうなの。気休めではあるけれど…。これを、オーヴェに飲ませてあげて。」
未だコップに注がれた水をまじまじと見ているへレーナははっとして、オーヴェの所へ持っていき、飲むように伝えてくれている。
私はそれを気にしながら、水を撒いていた。
「なんと!奥様!!」
「凄いです、スティナ様!」
オーヴェとへレーナが揃って大きな声を出したので振り向くと、オーヴェが立ち上がり腰を曲げたり伸ばしたりしていた。
「奥様!これは凄い効き目ですな!!若い頃に戻ったようでございます!」
そうオーヴェが腰を叩いて何ともないのを確認するような仕草をしながら、私へと言葉を掛けてくれる。
「そう?よかったわ。ごめんなさいね、初日に飲んでもらえば良かったのだけれどすっかり忘れていて…」
「滅相もございません!ありがたや、ありがたや!!」
ふふふ、気休めではあるけれど喜んでもらえて良かったわ。
そう思っていると、邸からロニーが慌ててこちらへやってきた。
「アンセルム様が帰って来られました。」
と、ロニーが慌てて言って、私を早く談話室に行って挨拶をと促してきた。へレーナもそれを聞いて驚き、慌てて邸へと行きましょうと小走りで掛けてきた。
ポールとオーヴェは、
「そこに置いておいて!あとはやっておくから。」
「そうですな、お急ぎ下さい。本当にありがとうごさいます!」
と言ってくれたので、お願いして急いだ。
それにしても、帰って来たとはどういう事?こちらにはあまり来ないのでは無かったのかしら?別に嫌とかではないのだけれど、戸惑いの気持ちのが買っている。
私は、挨拶をする為に扉が開いている談話室に『失礼します』と声を掛けて入った。
アンセルム様はソファに座って目を瞑っていた。
扉の所で声を掛けようか迷っていると、アンセルム様は目を開け、私にソファに座るよう促した。
「ただ今帰った。」
「はい、長旅お疲れさまです。お帰りなさいませ。このような服装ですみません。」
本当は着がえようか迷ったけれど、挨拶だけなら早い方がいいかと思ったのよね。だって、以前とは違って新しい服ではあるし、ワンピースであるし、今日はそんなに汚れる土いじりはしていないからいいかと思ったのよね。
以前、アンセルム様が好きにしていいって言って下さったのだもの。いいわよね。
「いや、いい。今日も庭に出ていたのか。」
「ええ。だいぶ変わりましたのよ?」
「そうか。ありがとう。また見せてもらおう。今日は、討伐が終わってそのまま来たのだ。またすぐ報告をしに王宮に行かないといけないのだが…き、君のあの魔力入りの水をくれないか?」
「え!あ…す、すみません…先ほど、オーヴェに使ってしまって…。私、あまり魔力をそれほど使えなくて…。半日もすれば使えるようになるのですけれど…。」
「そうだったのか………。オーヴェ?オーヴェは大丈夫なのか!?」
アンセルム様は、肩をガックリと落としてなんだかしょんぼりとしているように見えた。
でもオーヴェは年だからか、とても心配そうに身を乗り出して聞いてきたから少し驚いてしまったわ。
「は、はい。腰を痛めて動けなかったのですがどうにか動けるようになったみたいです。」
「そうか…まぁそれなら仕方ない。オーヴェの顔を見て、王宮に戻る。」
「本当にすみません…あ、あの!お疲れならお風呂に入っていかれますか?ウイキョウと言われる薬草を湯の中に入れると、疲労回復になるのです。」
気休めでも、私の魔力入りの水を飲みたくてこちらに来ただなんて、よっぽど討伐がお辛かったのかしら?だったら、この前採った薬草の出番かもしれないわね。
「ウイキョウ?…そうだな、せっかくだから入っていこう。………また明日、ここに来るから、領地改革の事を聞かせてくれ。」
「分かりました。では、ゆっくり疲れを癒やしてきて下さい。」
そう言って、私はニッコリと微笑んだの。
アンセルム様はそんな私を見て、目をパチパチと数回瞬いて、いきなり立ち上がって『じゃあ、また。』とこちらを見ないで言って扉の方へと歩いて行く。
アンセルム様が邸を出られる時にお見送りしようと思ったが、今から私もお風呂に入るなら見送れないかもと思い、『はい。また明日、お待ちしております。』と声を掛けた。
服は、最近へレーナが新しく用意してくれた、動き易い服を着ている。
庭の奥。
ここ一週間で無造作に生えていた雑草を抜き取ってさっぱりとした所に、薬草を植え替えたり、新たに色とりどりの草花を植えた。
すると、大変だったがやって良かったと満足できる位、お客様に見ていただいても恥ずかしくない位に見違えるほど綺麗になった。
今は、湯井戸の隣にある汲み溜めた樽に入っている冷えた水を、小さな桶に汲み変え、柄杓でその草花に撒いていた。
オーヴェが先ほど、これをやっていて腰を痛めたといって、座り込んでしまったために、慌てて私が代わりにポールと一緒に手伝っている。
オーヴェは、湯井戸の前で未だ座り込んでいる。動くと痛いから、このままがいいそうだ。
オーヴェに、医者を呼ぶと言ったのだが、これは良くある事で、医者に見せても『安静にしていればそのうち治る』としか言われないと言っていた。本当に大丈夫なのかしら。
私はその時へレーナに、コップを持ってきてと伝えていて、邸から持ってきてくれるのが見えた。
「お持ちしました。」
なかなか慌ただしくて、オーヴェに飲んでもらってなかったのよね。早く渡していれば違ったのかしら…ごめんなさい。そう思いながら、へレーナが持ってきてくれたコップをもらい、願いを込める。
《どうか、オーヴェの腰の痛みが引いて、動いても痛みが感じなくなりますように。》
コップの上に右手を翳し、えいっと動かすと、水がコップ並々に注がれた。
「まぁ!スティナ様!それは、魔力ですか?」
へレーナの目の前でやったから驚かれてしまったわ。
「ええ、そうなの。気休めではあるけれど…。これを、オーヴェに飲ませてあげて。」
未だコップに注がれた水をまじまじと見ているへレーナははっとして、オーヴェの所へ持っていき、飲むように伝えてくれている。
私はそれを気にしながら、水を撒いていた。
「なんと!奥様!!」
「凄いです、スティナ様!」
オーヴェとへレーナが揃って大きな声を出したので振り向くと、オーヴェが立ち上がり腰を曲げたり伸ばしたりしていた。
「奥様!これは凄い効き目ですな!!若い頃に戻ったようでございます!」
そうオーヴェが腰を叩いて何ともないのを確認するような仕草をしながら、私へと言葉を掛けてくれる。
「そう?よかったわ。ごめんなさいね、初日に飲んでもらえば良かったのだけれどすっかり忘れていて…」
「滅相もございません!ありがたや、ありがたや!!」
ふふふ、気休めではあるけれど喜んでもらえて良かったわ。
そう思っていると、邸からロニーが慌ててこちらへやってきた。
「アンセルム様が帰って来られました。」
と、ロニーが慌てて言って、私を早く談話室に行って挨拶をと促してきた。へレーナもそれを聞いて驚き、慌てて邸へと行きましょうと小走りで掛けてきた。
ポールとオーヴェは、
「そこに置いておいて!あとはやっておくから。」
「そうですな、お急ぎ下さい。本当にありがとうごさいます!」
と言ってくれたので、お願いして急いだ。
それにしても、帰って来たとはどういう事?こちらにはあまり来ないのでは無かったのかしら?別に嫌とかではないのだけれど、戸惑いの気持ちのが買っている。
私は、挨拶をする為に扉が開いている談話室に『失礼します』と声を掛けて入った。
アンセルム様はソファに座って目を瞑っていた。
扉の所で声を掛けようか迷っていると、アンセルム様は目を開け、私にソファに座るよう促した。
「ただ今帰った。」
「はい、長旅お疲れさまです。お帰りなさいませ。このような服装ですみません。」
本当は着がえようか迷ったけれど、挨拶だけなら早い方がいいかと思ったのよね。だって、以前とは違って新しい服ではあるし、ワンピースであるし、今日はそんなに汚れる土いじりはしていないからいいかと思ったのよね。
以前、アンセルム様が好きにしていいって言って下さったのだもの。いいわよね。
「いや、いい。今日も庭に出ていたのか。」
「ええ。だいぶ変わりましたのよ?」
「そうか。ありがとう。また見せてもらおう。今日は、討伐が終わってそのまま来たのだ。またすぐ報告をしに王宮に行かないといけないのだが…き、君のあの魔力入りの水をくれないか?」
「え!あ…す、すみません…先ほど、オーヴェに使ってしまって…。私、あまり魔力をそれほど使えなくて…。半日もすれば使えるようになるのですけれど…。」
「そうだったのか………。オーヴェ?オーヴェは大丈夫なのか!?」
アンセルム様は、肩をガックリと落としてなんだかしょんぼりとしているように見えた。
でもオーヴェは年だからか、とても心配そうに身を乗り出して聞いてきたから少し驚いてしまったわ。
「は、はい。腰を痛めて動けなかったのですがどうにか動けるようになったみたいです。」
「そうか…まぁそれなら仕方ない。オーヴェの顔を見て、王宮に戻る。」
「本当にすみません…あ、あの!お疲れならお風呂に入っていかれますか?ウイキョウと言われる薬草を湯の中に入れると、疲労回復になるのです。」
気休めでも、私の魔力入りの水を飲みたくてこちらに来ただなんて、よっぽど討伐がお辛かったのかしら?だったら、この前採った薬草の出番かもしれないわね。
「ウイキョウ?…そうだな、せっかくだから入っていこう。………また明日、ここに来るから、領地改革の事を聞かせてくれ。」
「分かりました。では、ゆっくり疲れを癒やしてきて下さい。」
そう言って、私はニッコリと微笑んだの。
アンセルム様はそんな私を見て、目をパチパチと数回瞬いて、いきなり立ち上がって『じゃあ、また。』とこちらを見ないで言って扉の方へと歩いて行く。
アンセルム様が邸を出られる時にお見送りしようと思ったが、今から私もお風呂に入るなら見送れないかもと思い、『はい。また明日、お待ちしております。』と声を掛けた。
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