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13. 具体的な改革
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それからは、領民達が無理なく出来る仕事を割り振る事にしたの。
女性の中で、力がないお年寄りは配給用の食事作りを手伝ってもらう事にしたし、絵が得意な人がいたから、その人には看板を書いてもらう事にした。湯井戸や、足風呂を作った後でここは何をする所だと分かるように。
石畳から取り掛かりたかったけれど、よくよく話し合うと専門家の指導の元行った方がいいという事で、湯井戸の屋根補修からとなった。
専門家は、公爵家からの紹介で派遣してくれるみたい。
領地には、領民の家の数よりも湯井戸があるようで、驚いてしまったのよ。
それを作っている最中に、『皆が入れる大浴場があるといいのに』と小さな子供が呟いて、周りの人達もいいわね、と言い、面白そうだから私はそれに同意したのよ。そうしたら皆大喜びしてくれて。
大掛かりになるけれど、順番に作っていこうという事になった。意外にも、大人の人も造る事に賛成してくれたから良かったわ。もちろん、男性と女性は分けて入れるようにしたいわね。
そうやって皆で話していると、ふと思ってしまったの。
この、いわば仕事を与える公共事業のような石畳の修理や、湯井戸の修繕、おしゃべりしながら足だけ湯に浸かる足風呂の設置、大浴場の建築のそれらが終わってしまったら、領民達はどうやってお金を稼ぐのかって。
うーん……と考える。
そうだわ!この広大な自然豊かな領地は、王都という煌びやかな都会からもほど近いし、新たな保養地にならないかしら。
何もない、ではないわ。こんなに素晴らしい景色と、湯があるんだもの。これでどうにかならないかしら?
そう思い、ロニーに相談してみようとロニーを見ると、領民達に指示を出し終えたのかこちらに歩いてくるのが見えた。私は、ロニーへと手を振って呼んだ。
「お呼びですか?」
「ねぇ、ロニー。領民達は、これらの事を作り終えたら、税を払う為に、何をするの?」
「そうですね…もともと、この領地は大麦を作っていたので、それを作るんではないでしょうか。支援出来るよう手配しますか?」
「そう…出来るならいいの。せっかくの広大な自然と、たっぷりの湯があるから、それを生かせないかと思ったのだけど。王都からもほど近いし。」
「なるほど…保養地みたいなお考えですか?」
「ええ。思い浮かべるのは、宿泊施設のような感じか、もしくは日帰りのお風呂施設みたいな感じかしら。それの従業員とすれば、皆もずっと働けるのではないかしらと思ったの。」
「ほう…確かにそれでしたら、今後も給与が得られるわけですな?」
「どう?難しいかしら。」
「それは分かりませんね。彼らが接客をするのであれば教育も行き届かせないといけません。まぁそれは些細な事です。要は領民の皆さんにやる気があるかどうかですね。」
「そうね…。」
「ではそれは皆に聞いてみましょう。もしまたやる気がある人達が多ければ、建設する場所も考えないといけませんからね。まぁ、湯井戸が幾つも近くに固まってある、あの右奥辺りなんてよさそうでございますね。」
そう言って、ロニーは、指を指す。確かにそこは湯井戸が近くに幾つもあるが、屋根がぼろぼろと崩れていた。
「やる事がたくさんありますが、やはりせっかくの公爵領でありますから、直して見栄えが良くなると嬉しいですね。」
ロニーがにこやかに微笑みながらそう言ってくれる。
使用人の立場では、確かに直したいと思っていても使う人がいなかったのだからそこまで手が行き届かないのね。ここはきっと、領民達が十数年前まで重税で苦しんでいた事もあって、どうしたらいいか手をこまねいてしまう領地だったのかもしれないわ。
上手くいくといいのだけれど。
私はそう思いながら、私も何か手伝おうと領民達の近くへと行った。
☆★
領地を改革し始めて一週間が経った。
領民達は、『毎日やる事があるって、こんなに楽しいものだったんですね。』と口々に言って、自ら取り掛かってくれているらしい。
ロニーは、従者のコーレと共に毎日領民達の所へ行き、本日の指示を出してロニーだけ一度帰ってくる。ロニーは執事であるから、あまり外にいては屋敷の事が出来ないからと、従者のコーレに任せる事にしたみたい。
一応領民の中で体格のいい四十歳代の男性のフーゴとヨエルに、専門家の指導の元での石畳の整備と、湯井戸の補修など指示をして体力のある男性で協力してやらせていると言っていた。
昼前になると、ロニーは進捗度を確認しに行き、食事の準備をしている女性陣へと見回りもしてくれている。
初めて領地を回った時に会った年配の女性二人は、グニラとハンナと言うみたいで、その二人が中心となって料理を作ってくれているらしい。
私も手伝いに行こうかと思ったのだが、庭の手入れもしたいし、どうやら私が行く事で領民達が萎縮しちゃうらしく、居ない方がいいみたいなのでお願いする事にしたの。
私は、今日も庭にいる。
屋敷の裏の、湯井戸がある所とは反対の、誰も見向きもしないような場所に、ウイキョウと呼ばれる疲労回復の植物が自生していたのを見つけたので手を叩いて喜んだ。
この茎や葉をお風呂に浮かべて入れば、疲労回復になる。
アンセルム様が帰ってくる日は無いかもしれないが、私が魔力で出した水はやはり気休めだったみたいだから、薬草の方がいいでしょう。
いつでも余分に取って置いて、他は屋敷の皆や、大浴場が出来たらこれを入れてもいいわね。
そう考えながら、私はウイキョウを一つ、採った。
女性の中で、力がないお年寄りは配給用の食事作りを手伝ってもらう事にしたし、絵が得意な人がいたから、その人には看板を書いてもらう事にした。湯井戸や、足風呂を作った後でここは何をする所だと分かるように。
石畳から取り掛かりたかったけれど、よくよく話し合うと専門家の指導の元行った方がいいという事で、湯井戸の屋根補修からとなった。
専門家は、公爵家からの紹介で派遣してくれるみたい。
領地には、領民の家の数よりも湯井戸があるようで、驚いてしまったのよ。
それを作っている最中に、『皆が入れる大浴場があるといいのに』と小さな子供が呟いて、周りの人達もいいわね、と言い、面白そうだから私はそれに同意したのよ。そうしたら皆大喜びしてくれて。
大掛かりになるけれど、順番に作っていこうという事になった。意外にも、大人の人も造る事に賛成してくれたから良かったわ。もちろん、男性と女性は分けて入れるようにしたいわね。
そうやって皆で話していると、ふと思ってしまったの。
この、いわば仕事を与える公共事業のような石畳の修理や、湯井戸の修繕、おしゃべりしながら足だけ湯に浸かる足風呂の設置、大浴場の建築のそれらが終わってしまったら、領民達はどうやってお金を稼ぐのかって。
うーん……と考える。
そうだわ!この広大な自然豊かな領地は、王都という煌びやかな都会からもほど近いし、新たな保養地にならないかしら。
何もない、ではないわ。こんなに素晴らしい景色と、湯があるんだもの。これでどうにかならないかしら?
そう思い、ロニーに相談してみようとロニーを見ると、領民達に指示を出し終えたのかこちらに歩いてくるのが見えた。私は、ロニーへと手を振って呼んだ。
「お呼びですか?」
「ねぇ、ロニー。領民達は、これらの事を作り終えたら、税を払う為に、何をするの?」
「そうですね…もともと、この領地は大麦を作っていたので、それを作るんではないでしょうか。支援出来るよう手配しますか?」
「そう…出来るならいいの。せっかくの広大な自然と、たっぷりの湯があるから、それを生かせないかと思ったのだけど。王都からもほど近いし。」
「なるほど…保養地みたいなお考えですか?」
「ええ。思い浮かべるのは、宿泊施設のような感じか、もしくは日帰りのお風呂施設みたいな感じかしら。それの従業員とすれば、皆もずっと働けるのではないかしらと思ったの。」
「ほう…確かにそれでしたら、今後も給与が得られるわけですな?」
「どう?難しいかしら。」
「それは分かりませんね。彼らが接客をするのであれば教育も行き届かせないといけません。まぁそれは些細な事です。要は領民の皆さんにやる気があるかどうかですね。」
「そうね…。」
「ではそれは皆に聞いてみましょう。もしまたやる気がある人達が多ければ、建設する場所も考えないといけませんからね。まぁ、湯井戸が幾つも近くに固まってある、あの右奥辺りなんてよさそうでございますね。」
そう言って、ロニーは、指を指す。確かにそこは湯井戸が近くに幾つもあるが、屋根がぼろぼろと崩れていた。
「やる事がたくさんありますが、やはりせっかくの公爵領でありますから、直して見栄えが良くなると嬉しいですね。」
ロニーがにこやかに微笑みながらそう言ってくれる。
使用人の立場では、確かに直したいと思っていても使う人がいなかったのだからそこまで手が行き届かないのね。ここはきっと、領民達が十数年前まで重税で苦しんでいた事もあって、どうしたらいいか手をこまねいてしまう領地だったのかもしれないわ。
上手くいくといいのだけれど。
私はそう思いながら、私も何か手伝おうと領民達の近くへと行った。
☆★
領地を改革し始めて一週間が経った。
領民達は、『毎日やる事があるって、こんなに楽しいものだったんですね。』と口々に言って、自ら取り掛かってくれているらしい。
ロニーは、従者のコーレと共に毎日領民達の所へ行き、本日の指示を出してロニーだけ一度帰ってくる。ロニーは執事であるから、あまり外にいては屋敷の事が出来ないからと、従者のコーレに任せる事にしたみたい。
一応領民の中で体格のいい四十歳代の男性のフーゴとヨエルに、専門家の指導の元での石畳の整備と、湯井戸の補修など指示をして体力のある男性で協力してやらせていると言っていた。
昼前になると、ロニーは進捗度を確認しに行き、食事の準備をしている女性陣へと見回りもしてくれている。
初めて領地を回った時に会った年配の女性二人は、グニラとハンナと言うみたいで、その二人が中心となって料理を作ってくれているらしい。
私も手伝いに行こうかと思ったのだが、庭の手入れもしたいし、どうやら私が行く事で領民達が萎縮しちゃうらしく、居ない方がいいみたいなのでお願いする事にしたの。
私は、今日も庭にいる。
屋敷の裏の、湯井戸がある所とは反対の、誰も見向きもしないような場所に、ウイキョウと呼ばれる疲労回復の植物が自生していたのを見つけたので手を叩いて喜んだ。
この茎や葉をお風呂に浮かべて入れば、疲労回復になる。
アンセルム様が帰ってくる日は無いかもしれないが、私が魔力で出した水はやはり気休めだったみたいだから、薬草の方がいいでしょう。
いつでも余分に取って置いて、他は屋敷の皆や、大浴場が出来たらこれを入れてもいいわね。
そう考えながら、私はウイキョウを一つ、採った。
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