【完結】私との結婚は不本意だと結婚式の日に言ってきた夫ですが…人が変わりましたか?

まりぃべる

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18. 邸からの出勤

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「じゃあ、行ってくる。」

「はい。お気を付けて行ってらっしゃいませ。」



 そう言うとアンセルム様は私の頭をひと撫でして、馬に颯爽とまたがり、この邸から馬で出勤していった。
 小さくなっていく背中を見ていると、やっと夫婦になったんだわと少し実感出来た気がした。



☆★


 昨日あれから足風呂に入った後は、大衆浴場を造っている場所をコーレに案内されながら向かった。

 コーレが向かうと、慕われているんだというのが分かるほど、皆が寄ってきた。その後、私の姿を見ると皆、畏まってしまった。隣にアンセルム様がいるからかもしれない。

 コーレが、私達の事を領民達に紹介すると、アンセルム様が領民達に声を掛けた。

「今まで、公爵領となったのにそのままにしていて申し訳なかった。私の妻が考え出した案にも、快く従ってくれ、嬉しく思っている。これからも、よろしく頼む。」

 と。頭を深々、とまではいかないけれど、謝ってくれたからか、領民達はあたふたとして、

「声を掛けて下さってありがとうございます。これからもよろしくお願い致します。」

 と、口々に言ってくれていた。

 …そう言えば、言葉遣いが…?と思っていたら、コーレが言うにはどうやら言葉遣いや所作の勉強も合間にさせているみたい。
皆が、自主的に習いたいと言ってくれたそうで、向上心は素晴らしいと思うわ。

 ここはまず、初めは日帰りで遊びに来てもらう感じにするようで、好評であれば隣に宿泊施設も増設するそうだ。
 お風呂も、浴槽を一つだけではなく、大きな浴槽と、樽をくり抜いた浴槽を幾つかを設置し、あとは〝湯の道〟を造って歩く道を造ったり、傾斜を少しだけ付けて滑り込んで湯に入れるようなものも造り、中でゆっくりと楽しめるようにするみたい。

 あとは、お風呂から出た後にゆっくりと寛げる場所と、簡単な料理が出来る場所を造るそう。
 ゆっくりと寛げる場所は、外の景色が見えるように作り、目でも癒してもらえるように。
 簡単な料理が出来る場所は、お腹も満たして身も心も癒してもらえるように。

 完成するまではまだ少し掛かるみたいだけれど、領民達皆、大人から子供まで楽しそうに作業しているから本当に良かったわ。

 ここも、魔力でどうにかなれば良かったけれど、石畳のように造る工程が簡単であれば、風の魔力でどうにかなるそうだけれど、複雑な造りだと魔力ではどうにもならないみたい。だから、時間はきっとかかるでしょうね。

 でも毎日が充実していると口々に私へと言ってくれたから、それだけが救いね!

 疲労回復効果のあるウイキョウの薬草を使ってとコーレに言ってあるから、帰りに足風呂をしてから帰るようにと言ったみたい。その足風呂には、ウイキョウが流れ出ていかないように括りつけて入れるのですって。

 だからきっと皆、元気なのね!





☆★

 夕方、日が傾き掛けてきたのでヨルゲンにまた、馬車を動かしてもらった。

 こんなに遅くなったのは、思いのほかアンセルム様が領民達と触れ合うのを楽しんでくれたから。

 いつの間にか昼ご飯の時間になっていて、グニラとハンナが『どうぞ食べていって下さい』とぎこちないながらも学んだ言葉遣いを話してくれたので私は、アンセルム様を伺うと、『よし、せっかくだからいただこう!』と言われたの。

 せっかくのお休みなのにいいのかしらと思って聞いてみると、

「案外、領民と触れ合うのも勉強になるんだ。いつかは俺もやらないといけないからな。その時は……スティナも隣でこうやって一緒にいてくれないか。」

 と言われた。
 私は、素晴らしい事を言われたと思ったと同時に、どういう事だろう?と思った。

(なんだか、聞こえようによってはプロポーズだわ!…でも、アンセルム様は好きな人がいると言われていたし……)

 そう考えると、なぜだか心がジクジクと痛んだけれど、考えた挙げ句、

(文字通り一緒に行こう、とそういう意味よね?書面では夫婦であるのだから、夫婦の情くらいは持ってくれたということ……?)

 と思う事にした。

(だってこうやって、貴重な休みも一緒に過ごしてくれるのだもの。信頼してくれるまでに至ったという事かしら。)


「ええ、もちろんですわ!ご一緒させて下さいね!」



 食事が終わると、建物を建てる手伝いを魔力でしてくれると言い出したので、皆びっくりしていた。…私もだけれど。

「自分の領地だし、俺も何か手伝いんだ。その木を同じ大きさに切ればいいのか?」

「あんな感じで、木を組めばいいのか?」

 専門家にも聞きながら、風を上手く操って建物の外壁をどんどん組み立てていった。どうやら風を利用して、重さを感じないようにして重い木を操っているのだとか。

 こんな所で、悪獣討伐軍総司令官の力、無駄使いしていいのかしら!?

 でも、それを軽々とこなして領民達に歓声を上げられているアンセルム様はとても嬉しそうな顔をしていて、本当に格好良かったのよ。

 領民達からも専門家からも、『これで工程が何日分も早く進んだ』ととても喜ばれていたわ。



 そして、いつの間にか日が傾くまで居てしまったの。

「すみません。遅くなってしまいましたよね。あの…王宮に帰られるのですか?」

「ん?あぁ…そうだな。今日は、ここに泊まる。何ていったって、俺の邸だからな!…俺が休む部屋、あるよな?」

「フフフ。そうですか。今から帰られると遅くなってしまいますから、どうぞお泊まりになって下さい。」

「…帰る、のは、あの邸だ。」

 ぼそりと呟かれ、馬車の中でゴトゴトと車輪の音もあるから聞こえなかったので、もう一度聞き返したわ。

「え?ごめんなさい。聞こえなかったわ。何て言われました?」

「だから…帰る、のはあの邸にだよ。」

「あ、は、はい。」

 いえ、今からの話ではなくて…アンセルム様いつも王宮にと言われてましたでしょう?


 ……でも、そう言われて心がほっこりと嬉しくなったのは、どうしてなのかしらね。
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