【完結】婚約破棄された彼女は領地を離れて王都で生きていこうとしていたが、止める事にしました。

まりぃべる

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〈16. 仕事終わりの夕食では〉

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「はー…。」


 エステルは、その日二日目の仕事を終えてアパートメントへと帰って来て夕食を食べながらため息を付いていた。


「どうしたの?またため息ついて。仕事、そんなに大変だったの?」

 一緒になったヘルミが、心配してエステルへと声を掛ける。

「ううん…ねぇ、ヘルミは今の国王のアードルフ様の事、どう思う?やっぱり、すごい人って思う?」

「え?…エステル、あんまりそういうの大きな声で話さない方がいいよ。あとで、私の部屋に来て。そこで話そう?」

 ヘルミが驚いた顔をして、エステルへと顔を近づけてとても小さな声で言ったので、エステルはどうしたのかと思ったが、あとで聞けばいいかと返事をした。

「?うん。」

「さ、早く食べちゃおう!」

 そうヘルミが言ったので、エステルもうん、と一つ頷いて皿を見つめる。
 今日の食事は、鮭とご飯のパイ包みだ。これが自分でお金を払わずに食べられるとはすごいなと思いながらエステルは食べていく。

「私、パイ包みなんてここへ来るまで料理で食べた事無かったの。でも、お菓子とはまた違う感じで美味しいわよね!」

 ヘルミはニコニコと美味しそうに食べている。

(本当に。いろいろな料理があるのだわ。)

 エステルも頷きながら、顔をほころばせて食べるのだった。






☆★

「さ!どう言う事でそう思ったの?」


 食事が終わり、ヘルミの部屋に二人で行くと早速ヘルミがエステルへと声を掛ける。
 ヘルミの部屋はエステルと同じ作りであった。その為あまり広くは無かったが、ベッドにヘルミが座り、エステルは窓際の椅子に促された為に向かい合うように座った。


「うん。昨日も今日も先輩の先生についたのだけれど、ことある毎に先輩先生がアードルフ様に絡めて話していたから。どうなのかなって。あ、別に変な意図は無いのよ?」

「んー…そうなのね。何て言ったらいいのかなぁ……?まず、エステルは、今のアードルフ、様がご即位された経緯は知っている?」

「え?えっと、確か半年前にガブリエル様が崩御されたので、弟君のアードルフ様がご即位されたのではなかった?確か、お父様がそう言っていたような…?」

「うん。でも、なぜガブリエル様のご子息がいらしたのに、その方ではなく弟君がご即位されたのかは?」

「それは…」

(そう言われても、王都から距離のある国境近くのカブソンルンド領では、王都の出来事なんて伝わってくるのはいくらか時間が経ってからなのよね。)

「知らなくて当たり前ね。一般的には知られていないのよ。本来であれば、王位継承権はガブリエル様のご子息で在られる方が王太子としておられたのに、まだ幼いとして、アードルフ様が即位なさってしまったのよね。」

「そうなの…。幼かったの?」

「そんな事ないのよ?分別がつく十五歳だもの。年齢だけで見たら頼りないかもしれないけれど、王太子様は聡明で在られるから、その年齢でも充分力を発揮出来たはずなのよ。重鎮達も健在であったし。」

「そっか…。」

「そういう経緯を知っていれば、アードルフ様がなぜ王太子様に即位させずにご自分が成られたのか疑問に思わないといけないのよ。」

「うん。」

「でも、疑問に思う人をことごとく排除したのよ、アードルフ様は。」

「え!?」

「先代のガブリエル様に仕えていた重鎮達も、総入れ替えさせられたそうよ。」

(総入れ替え……)

「それで、今までのやり方を変え、革新的な政策をされているわよね。それがいいのかどうか……でも、前のが良かったという声もあるわ。」

 ヘルミはそう言葉を濁したが、エステルもヘルミの言っている事がわからないでもなかった。むしろ、もっと疑問が増えたのだ。

(どうして今までの国のやり方を変えたのかしら。学校を建てたり、住む場所を無償で提供してくれたりするのはありがたいけれど、運営は出来ているの?ん?そういえば、ヘルミはずいぶんと詳しいのね。やっぱり、王都にいたからそんな話も聞こえてくるのかしら。)

「そもそも、お元気でいらしたガブリエル国王が、急にお亡くなりになったのもおかしな話なのよね。」

「え!?」

「ガブリエル国王は、享年三十三歳。まだまだこれからって時よね。戦地に赴いたわけでもなく、持病がおありだったわけでも無いの。でも、いきなり崩御されて、皆、青天の霹靂だったのよ。」

「お元気だったのに、いきなり…?」

「そう。だから、アードルフ国王が素晴らしい方かどうかは、私の口からは言えないわね。」

 ヘルミは、神妙な面持ちで言外に何かあるんだとそう言うと、まだカーテンの敷かれていない部屋の窓の外を見つめ始めた。
エステルも、ヘルミの言葉を聞き、ますます今の国やアードルフに対して疑問を募らせた。
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