【完結】私の地元の猫って…。

まりぃべる

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7. 猫の正体

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 猫が進んだ先は、いつか来た神社だった。

 その神社は、私の実家からはそれなりに近く、小高い山の麓に鳥居が入り口だと示すようにあった。

 道路沿いにあるので、参拝する人は居るのだろうが、私はあまりそこに人がいるのをみた事はなかった。



 以前はその鳥居の前に猫が倒れていたのだった。



 前を歩いている猫は、鳥居をくぐり、階段をゆっくりと上る。上った先が、境内などがある場所だ。

 そこは小高い山の中腹にあり、開けた場所。小さな社が二つと、大きな本殿と、社務所が奥にある。


 そして、真ん中あたりに来た時、くるりと振り返った猫は後ろ足2本で器用に立ったと思ったら、背がぐーんと伸び、私より背の高い、体躯のよい黒髪の男性になった。


「ええっ!?」


 私は、顎が外れそうなほど驚いたが、その男性は心外だというような顔をした。


「なんだ、そんな顔をして。」

「や、あ、その…」

「すまん、何を言っているのか分からんな。」


 そうでしょうとも。私も、何から話せばいいのか…。


「まぁ、楓を取って食おうと思ってはいないから安心しろ。むしろ、いつぞやのお礼を言おうと思ったが、なかなか楓に伝わらなくてな。」

「いつぞや…?」

「ああ。いつぞやは、我を助けてくれたろう。礼を言う。ありがとう。牛乳は美味しかったぞ。」

「え!あの時の…?」

「なんだ?しらばっくれおって。分かっとらんかったのか?まぁ、我はそんなに弱くもないからな、あのままでも治らん事は無かったが、楓の牛乳によって、我は元気になったぞ。楓の優しい気持ちが、我は嬉しかったぞ。」

「それは…どうも…。」


 え?でも猫って、20年生きたらかなりのご長寿じゃないの?そもそも、人間になってる?え?


「はっはっ!楓、変な顔をしているぞ。まぁ、じゃ特別に説明してやろう。我はこの土地の氏神だ。お前のばあさんも言っておったろ。そしてこの土地には様々な猫がおろう。全てではないが、我の同族、というより手足、子分みたいなもんだ。ま、その中では我が一番偉いがな。」

「は、はぁ…。」

「我に心を砕いてくれた楓が、悲しんでおるからちょっと手助けしてやったわ。父親、元気になったろ?」

「え?父さんを…助けてくれました?」

「ああ。我なら簡単だ。」


 ふふん


 そんな言葉がぴったり当てはまりそうな位、腰に手を当てて少し顎を上に向け、どや顔をしているように見えた。

 え、氏神様でしょ?そんな顔するんだ…。


「それは…ありがとうございます。」

 ちょっとイマイチ分からないけれど、この猫…じゃなかった、氏神様が助けてくれたならお礼は言うべきね。


「我は氏神。清らかな心の氏子の為なら何のそのだな。なれど、やはり礼なら言葉も欲しいが、供物が欲しいぞ。我の願いも聞いてはくれまいか。」
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