5 / 25
5. お相手の希望
しおりを挟む
「その方はとってもいい人でしてね。私共にもほら、このブラウス、見て下さいな。生地がシルクでとてもいいものなのですよ。これをここで働いている皆に下さいましてね。ちょっと何度もここでお世話している方なのですけど、お顔もハンサムだし、性格も優しくていい人なのですよ。」
そのブラウスは、長袖で胸元にポケットまでついていてとても上質な素材に見えた。
「何度も?」
「ええ…。彼はとてもいい方なのですけど、なぜか彼と結婚してご一緒に住まれると、お相手が離婚して来るのですよ。それでかれこれ…十回目かしらね。」
「…暴力とか?」
「とんでもない!彼はとても穏やかな方で、ちょっと優しすぎるほどですわ。ただ…破談理由は皆様『私には無理です』しか言ってくれませんから、それ以上分からないのです。彼も、『僕が至らないからいけないみたいだ。』と言われてましてねぇ。とってもいい方なのですよ。私共でも相手をお勧めするのが商売ですから、変な人を紹介は出来ません。だから、酒癖、ギャンブル癖、暴力癖、女癖がある方はお断りしているんです。その点は大丈夫ですから、一度、お会いしてみませんか?」
「止めよう。」
「お願いします!」
「アンリエッタ!?」
「だってお父様。私が言った、お金持ちの条件にはあてはまりそうよ。優しい人らしいし。会ってみなければ、どんな人柄か分からないわ!」
「しかしな…今回で十回目とは、何か性格に問題があるやもしれん。」
「確かにそうね。あの、その人は条件って言ってきてるのですか?」
お父様の言う事も一理あるけれど、お勧めしてくれた人、どういう人なのかしら。十回もここでお世話になっているって逆に興味が湧いてきたわ。
「条件は、初めの内はありましたが、もう何度も離婚していますからね。穏やかに生活をしてくれる人ならどんな方でもいいそうですよ。あ!すみません…一つ言い忘れてました。彼、年齢が三十歳なのですけれど、よろしいでしょうか。年の差婚ですけれど。」
「三十歳!?私のが年齢が近いではないか!無理だ!無理無理!!帰るぞ、アンリエッタ!」
「お父様、少し落ち着いて下さいな。三十歳でも、四十歳でも大丈夫ですわ。お優しい方なのでしょう?私は、最低でも衣食住を提供して下さればそれで充分です。あ、あと弟の入学資金や、学院に掛かる費用を賄ってくれると助かるのです。暴力はないと言いますから。」
「そんなアンリエッタ…!結婚は、いいものなんだよ。私だって、サマンサといてとても幸せなのだから。だから、アンリエッタには幸せになって欲しいんだよ。」
「充分理解しているわ。お父様とお母様を見ているとそうなりたいとは思うわよ。でもね、理想と現実って、かけ離れているものなのよ。」
「ボウマン子爵様。先ほども申し上げた通り彼は、とてもいい方なのです。ですから、相性さえ合えば、とても幸せな結婚生活を送れると思いますよ。では、お会いされるなら、お名前をお教えしますよ。よろしいですか?個人情報をお伝えしますと、急に取り止める事は出来なくなります。もし一度考えたいのでしたら、今日はここまでという事にしましょうか。」
「いいえ!次来る時にその方がまだいらっしゃるかはわかりませんもの。是非ともよろしくお願いします!」
自分でも少し鼻息荒いような気もしたけれど、これを逃してはならないとイシスさんに前のめりにお願いした。
そのブラウスは、長袖で胸元にポケットまでついていてとても上質な素材に見えた。
「何度も?」
「ええ…。彼はとてもいい方なのですけど、なぜか彼と結婚してご一緒に住まれると、お相手が離婚して来るのですよ。それでかれこれ…十回目かしらね。」
「…暴力とか?」
「とんでもない!彼はとても穏やかな方で、ちょっと優しすぎるほどですわ。ただ…破談理由は皆様『私には無理です』しか言ってくれませんから、それ以上分からないのです。彼も、『僕が至らないからいけないみたいだ。』と言われてましてねぇ。とってもいい方なのですよ。私共でも相手をお勧めするのが商売ですから、変な人を紹介は出来ません。だから、酒癖、ギャンブル癖、暴力癖、女癖がある方はお断りしているんです。その点は大丈夫ですから、一度、お会いしてみませんか?」
「止めよう。」
「お願いします!」
「アンリエッタ!?」
「だってお父様。私が言った、お金持ちの条件にはあてはまりそうよ。優しい人らしいし。会ってみなければ、どんな人柄か分からないわ!」
「しかしな…今回で十回目とは、何か性格に問題があるやもしれん。」
「確かにそうね。あの、その人は条件って言ってきてるのですか?」
お父様の言う事も一理あるけれど、お勧めしてくれた人、どういう人なのかしら。十回もここでお世話になっているって逆に興味が湧いてきたわ。
「条件は、初めの内はありましたが、もう何度も離婚していますからね。穏やかに生活をしてくれる人ならどんな方でもいいそうですよ。あ!すみません…一つ言い忘れてました。彼、年齢が三十歳なのですけれど、よろしいでしょうか。年の差婚ですけれど。」
「三十歳!?私のが年齢が近いではないか!無理だ!無理無理!!帰るぞ、アンリエッタ!」
「お父様、少し落ち着いて下さいな。三十歳でも、四十歳でも大丈夫ですわ。お優しい方なのでしょう?私は、最低でも衣食住を提供して下さればそれで充分です。あ、あと弟の入学資金や、学院に掛かる費用を賄ってくれると助かるのです。暴力はないと言いますから。」
「そんなアンリエッタ…!結婚は、いいものなんだよ。私だって、サマンサといてとても幸せなのだから。だから、アンリエッタには幸せになって欲しいんだよ。」
「充分理解しているわ。お父様とお母様を見ているとそうなりたいとは思うわよ。でもね、理想と現実って、かけ離れているものなのよ。」
「ボウマン子爵様。先ほども申し上げた通り彼は、とてもいい方なのです。ですから、相性さえ合えば、とても幸せな結婚生活を送れると思いますよ。では、お会いされるなら、お名前をお教えしますよ。よろしいですか?個人情報をお伝えしますと、急に取り止める事は出来なくなります。もし一度考えたいのでしたら、今日はここまでという事にしましょうか。」
「いいえ!次来る時にその方がまだいらっしゃるかはわかりませんもの。是非ともよろしくお願いします!」
自分でも少し鼻息荒いような気もしたけれど、これを逃してはならないとイシスさんに前のめりにお願いした。
24
あなたにおすすめの小説
【完結】1王妃は、幸せになれる?
華蓮
恋愛
サウジランド王国のルーセント王太子とクレスタ王太子妃が政略結婚だった。
側妃は、学生の頃の付き合いのマリーン。
ルーセントとマリーンは、仲が良い。ひとりぼっちのクレスタ。
そこへ、隣国の皇太子が、視察にきた。
王太子妃の進み道は、王妃?それとも、、、、?
【完結】謀られた令嬢は、真実の愛を知る
白雨 音
恋愛
男爵令嬢のミシェルは、十九歳。
伯爵子息ナゼールとの結婚を二月後に控えていたが、落馬し、怪我を負ってしまう。
「怪我が治っても歩く事は難しい」と聞いた伯爵家からは、婚約破棄を言い渡され、
その上、ナゼールが自分の代わりに、親友のエリーゼと結婚すると知り、打ちのめされる。
失意のミシェルに、逃げ場を与えてくれたのは、母の弟、叔父のグエンだった。
グエンの事は幼い頃から実の兄の様に慕っていたが、彼が伯爵を継いでからは疎遠になっていた。
あの頃の様に、戻れたら…、ミシェルは癒しを求め、グエンの館で世話になる事を決めた___
異世界恋愛:短編☆(全13話)
※魔法要素はありません。 ※叔姪婚の認められた世界です。 《完結しました》
お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
旦那様に「君を愛する気はない」と言い放たれたので、「逃げるのですね?」と言い返したら甘い溺愛が始まりました。
海咲雪
恋愛
結婚式当日、私レシール・リディーアとその夫となるセルト・クルーシアは初めて顔を合わせた。
「君を愛する気はない」
そう旦那様に言い放たれても涙もこぼれなければ、悲しくもなかった。
だからハッキリと私は述べた。たった一文を。
「逃げるのですね?」
誰がどう見ても不敬だが、今は夫と二人きり。
「レシールと向き合って私に何の得がある?」
「可愛い妻がなびくかもしれませんわよ?」
「レシール・リディーア、覚悟していろ」
それは甘い溺愛生活の始まりの言葉。
[登場人物]
レシール・リディーア・・・リディーア公爵家長女。
×
セルト・クルーシア・・・クルーシア公爵家長男。
何度時間を戻しても婚約破棄を言い渡す婚約者の愛を諦めて最後に時間を戻したら、何故か溺愛されました
海咲雪
恋愛
「ロイド様、今回も愛しては下さらないのですね」
「聖女」と呼ばれている私の妹リアーナ・フィオールの能力は、「モノの時間を戻せる」というもの。
姉の私ティアナ・フィオールには、何の能力もない・・・そう皆に思われている。
しかし、実際は違う。
私の能力は、「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」。
つまり、過去にのみタイムリープ出来るのだ。
その能力を振り絞って、最後に10年前に戻った。
今度は婚約者の愛を求めずに、自分自身の幸せを掴むために。
「ティアナ、何度も言うが私は君の妹には興味がない。私が興味があるのは、君だけだ」
「ティアナ、いつまでも愛しているよ」
「君は私の秘密など知らなくていい」
何故、急に私を愛するのですか?
【登場人物】
ティアナ・フィオール・・・フィオール公爵家の長女。リアーナの姉。「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」能力を持つが六回目のタイムリープで全ての力を使い切る。
ロイド・エルホルム・・・ヴィルナード国の第一王子。能力は「---------------」。
リアーナ・フィオール・・・フィオール公爵家の次女。ティアナの妹。「モノの時間を戻せる」能力を持つが力が弱く、数時間程しか戻せない。
ヴィーク・アルレイド・・・アルレイド公爵家の長男。ティアナに自身の能力を明かす。しかし、実の能力は・・・?
【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)
恋を再び
Rj
恋愛
政略結婚した妻のヘザーから恋人と一緒になりたいからと離婚を切りだされたリオ。妻に政略結婚の相手以外の感情はもっていないが離婚するのは面倒くさい。幼馴染みに妻へのあてつけにと押しつけられた偽の恋人役のカレンと出会い、リオは二度と人を好きにならないと捨てた心をとりもどしていく。
本編十二話+番外編三話。
【完結】死に戻り8度目の伯爵令嬢は今度こそ破談を成功させたい!
雲井咲穂(くもいさほ)
恋愛
アンテリーゼ・フォン・マトヴァイユ伯爵令嬢は婚約式当日、婚約者の逢引を目撃し、動揺して婚約式の会場である螺旋階段から足を滑らせて後頭部を強打し不慮の死を遂げてしまう。
しかし、目が覚めると確かに死んだはずなのに婚約式の一週間前に時間が戻っている。混乱する中必死で記憶を蘇らせると、自分がこれまでに前回分含めて合計7回も婚約者と不貞相手が原因で死んでは生き返りを繰り返している事実を思い出す。
婚約者との結婚が「死」に直結することを知ったアンテリーゼは、今度は自分から婚約を破棄し自分を裏切った婚約者に社会的制裁を喰らわせ、婚約式というタイムリミットが迫る中、「死」を回避するために奔走する。
ーーーーーーーーー
2024/01/13 ランキング→恋愛95位 ありがとうございました!
なろうでも掲載20万PVありがとうございましたっ!
【完結】溺愛される意味が分かりません!?
もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢
ルルーシュア=メライーブス
王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。
学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。
趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。
有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。
正直、意味が分からない。
さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか?
☆カダール王国シリーズ 短編☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる