【完結】【番外編追加】隠していた特技は、魔術の一種だったみたいです!

まりぃべる

文字の大きさ
13 / 30

13. 父からの報告

しおりを挟む
 ドタバタと、応接室で何かが繰り広げられていると思ったリュシーは大丈夫なのかと心配した。が、それに対してバルテレミーと入れ替わりで応接室から退出したマルゴは、

「気にされないで、ゆっくりいたしましょう。」

 と言ってさらに焼き菓子を持ってきた。まぁ、自分にはきっと関係のない話だろうとゆっくりする事にした。森で野生動物と話をしたあとはやたらと甘いものが欲しくなるから、嬉しそうにリュシーは二個三個と焼き菓子に手を伸ばした。



 やがて、紅茶のお代わりをゆっくりと楽しんだ頃、オーバンが入ってくると、くつろいでいるリュシーを見て目を細め、近づいてきて頭を撫でた。


「え?オーバン?」


 リュシーは幼い頃にはよくやってくれていたが、大きくなってからは無かったので戸惑い、上目づかいでオーバンを見上げるとオーバンば座っているリュシーに視線を合わせ、言葉を掛けた。

「リュシー様。本当にここまで大きくなられて。私は、おこがましいですけれども我が子のように接して参りました。ですがこの度、お別れの運びとなりましたのでご挨拶を…。これからも、しっかりやるのですよ。」

「え!?オーバン、辞めてしまうの?」

「いえ…私は変わらずここにおりますよ。リュシー様、あとはバルテレミー様よりお聞き下さい。応接室へお戻りを。」

「まぁ…!という事は、リュシー様が!?私はついていけますでしょうか?とにかく、急いでバルテレミー様の元へ伺いましょう。」


 マルゴは、何故いきなりリュシーとお別れの挨拶をするのかと不思議であった。先日、マリエットが発していたどこかへ嫁ぐ話なのかと思ったがそれにしてはオーバンが悔しがってはいない。マルゴも、リュシーがどこかへ行くなんて寝耳に水であった為に、急いで話を知ろうと思ったのだった。



「お父様…え!?」

 応接室へ入ると壁際にマリエットと知らない男性が手足を縛られて横たわっていた。それをいないものとして、バルテレミーとウスターシュとエタンがソファに座っているので、どうしたものかと図りかねたのだ。

「リュシー、おいで。が、まぁ気にしなくていい。それよりも、ウスターシュ様とエタン様がリュシーを王宮にある魔術棟へとお連れしてくれると聞いたよ。リュシー、それでいいのかい?」

「え?えっと…。」

 リュシーはいきなりの事で話が見えなかったが、きっと魔力の話の続きなのだろうと思った。なので改めて聞いてみる事にした。

「お父様。それは、お話していい事なのですか?」

「うん?どういう事だい?」

「私のその…私には通常の事で皆とは違ったもの、他の人にお話しても大丈夫なのかと思いまして…。気持ち悪いとか、あの…」

「リュシー嬢。先ほどは話が途中だったかもしれないね。リュシー嬢が持っている我々から見ると特別な事は、恐らく動物と会話が出来る事かな?それは、かなり特殊な魔力だよ。気持ち悪い事は全くない。むしろ誇れる力だ。出来るなら我々魔術騎士の仲間入りをしてほしい。あ、騎士という名がついているけれど、剣を持って戦うだけが騎士ではないよ。もちろん、給料は支払われるから安心して欲しい。住まいも国が準備してくれる。」

 俯いてか細い声でそう話すから、ウスターシュは優しく丁寧にそう伝える。
そして、そのように声を掛けられたリュシーは心が温かくなるのを感じる。今まで、何やっているのとか、気持ち悪いとかしか面と向かって言われていなかった。それを、誇れる力だとウスターシュは言ってくれたのだ。それを聞いて、浮上するように顔を少し上げた。

「済まないね、リュシー。今まで黙っていたが、あそこで寝ている二人は私が眠らせたんだよ。私も、隠していたんだが特殊な魔力持ちと言えるだろう。」

「!」

(お父様が!?そうだったの…!)

「バルテレミー伯爵も、我ら魔術騎士の仲間入りをして欲しいくらいだよ。ね、ウスターシュ。」

「いや、私は…。」

「まぁ、そう言うだろうと思ったよ。じゃあさ、もっとこのレスキュン領も整わせようよ。バルテレミー伯爵が魔力持ちって分かれば、セレスタンみたいな変態野郎が来なくなるんじゃない?」

「そうだね。もう少し手を加えてもいいかもしれないな。進言してみるよ。野生動物も、増えすぎては困るが獲りすぎてもいけないからな。」

「驚いたかい?リュシー。
ああそうだ、リュシーが三歳位の頃に、アオ鷹の爪を取ってきてくれたろう?あれには驚いたが、本当に助かった。あの日はね、野生動物を獲りに行ってたんだ。生け捕りは高値で売れるからね。でも、生け捕りには出来たが失敗して、首を引っかかれてね。死にかけたよ。」

「え?お父様が?どうして?」

「売ったお金を収入、まぁ生活費に回していたんだよ。だから、カジミールが寄宿学校で学びたいのなら、ちょっと希少な野生動物を二匹ほど捕まえてこれば事足りたんだ。リュシーにも通いたいかと一度聞いたね?通いたければ通えたんだよ。
ただ、そうするとリュシーが悲しむかと思ってなかなかし辛くてね。よく、野生動物と楽しそうに話をしていただろう?だが、他の者が近づくと野生動物は皆逃げるから、リュシーを見守る事しか出来なかったなぁ。済まなかったね。」

 そう言ったバルテレミーは抱きしめようと手を伸ばしたがすんでの所で手を止める。

「あぁ、愛する我が娘を抱きしめる事も出来ない父親をどうか許しておくれ。」

「お父様…!私、行ってみるわ。自分は野生動物と会話が出来るだけで、それが特別なのかよく分からないけれど、試してみたいの!カジミールの学費にもなりそうだもの。」

「あぁ。分かった。行って来なさい。出来ないと思ったらすぐに帰ってこればいいからな。」

 そう言ったバルテレミーに、父親の気持ちを初めて知れたと思ったリュシーは嬉しそうに笑った。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました

言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。 貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。 「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」 それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。 だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。 それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。 それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。 気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。 「これは……一体どういうことだ?」 「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」 いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。 ――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

無能だと思われていた日陰少女は、魔法学校のS級パーティの参謀になって可愛がられる

あきゅう
ファンタジー
魔法がほとんど使えないものの、魔物を狩ることが好きでたまらないモネは、魔物ハンターの資格が取れる魔法学校に入学する。 魔法が得意ではなく、さらに人見知りなせいで友達はできないし、クラスでもなんだか浮いているモネ。 しかし、ある日、魔物に襲われていた先輩を助けたことがきっかけで、モネの隠れた才能が周りの学生や先生たちに知られていくことになる。 小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿してます。

【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。

鋼雅 暁
ファンタジー
聖女として働いていたアリサ。ある日突然、王子から婚約破棄を告げられる。 さらに、偽聖女と決めつけられる始末。 しかし、これ幸いと王都を出たアリサは辺境の地でのんびり暮らすことに。しかしアリサは自覚のない「魔力の塊」であったらしく、それに気付かずアリサを放り出した王国は傾き、アリサの魔力に気付いた隣国は皇太子を派遣し……捨てる国あれば拾う国あり!? 他サイトにも重複掲載中です。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

デブだからといって婚約破棄された伯爵令嬢、前世の記憶を駆使してダイエットする~自立しようと思っているのに気がついたら溺愛されてました~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
デブだからといって婚約破棄された伯爵令嬢エヴァンジェリンは、その直後に前世の記憶を思い出す。 かつてダイエットオタクだった記憶を頼りに伯爵領でダイエット。 ついでに魔法を極めて自立しちゃいます! 師匠の変人魔導師とケンカしたりイチャイチャしたりしながらのスローライフの筈がいろんなゴタゴタに巻き込まれたり。 痩せたからってよりを戻そうとする元婚約者から逃げるために偽装婚約してみたり。 波乱万丈な転生ライフです。 エブリスタにも掲載しています。

悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。

潮海璃月
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。

処理中です...