【完結】【番外編追加】隠していた特技は、魔術の一種だったみたいです!

まりぃべる

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16. 馬が好きな王女様

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「ごめんね、リュシー嬢。大変だったよね。」


 ウスターシュが、裏庭での出来事が終わり、部屋へ戻る途中にリュシーへと声掛けた。

「いいえ。お役に立てたようで良かったです。」

「そう言ってくれて、こちらとしても助かった。エルキュールは、半年以上前からしばしばああゆう光景を繰り広げていてね。誰もなんとも出来なかったんだ。どんなに大型犬を王宮の外へ追い払っても、いつの間にか入ってきてしまってね。」

「そうだったのですね。私としても、意思疎通の手助けが出来るなら良かったわ。」

「こんな具合にリュシーの出番があるだろうけど、お願いするよ。あぁ、明日は厩に一緒に行ってもらっていいかな?」

「はい。楽しみです!」

「良かった。じゃあ食事に行こうか。食堂があるからね。」

「あ、はい!」




☆★

「どう?」

「美味しいです!」

 今、ウスターシュとリュシーが食べているのは、ムール貝を白ワインで蒸したものと、オニオングラタンスープだった。

「貝は初めて食べました!濃厚ですね!」

「そうか。結構美味しいだろう?まぁ、王宮だからね、いろんな食材が出るから飽きないよ。口に合わない人もいるだろうが、そう言ってもらえて良かった。」

 ウスターシュは、見るからに美味しそうに食べているリュシーを見て、可愛いと思った。

「グラタンスープも、熱々で美味しいです!」

「なかなか冷めないから気をつけて食べないとな。」

「熱…!はい!」

 微笑ましいと思いながらも、ウスターシュはいつも食べる食事が、なぜだかいつもとは違って楽しいと思っていた。



ーーー
ーー





 翌朝。

 リュシーは、ウスターシュと朝食を食べて厩へ出掛ける。厩は、昨日も乗ってきた馬を預けた、王宮の入り口近くにあった。


 木造の厩には、茶色や黒、白のたくさんの色の馬が飼い葉を食べていた。


「たくさんいるのですね!」

「そうだね。昨日みたいに乗馬をする馬や、馬車を引っ張る馬もいるんだよ。」


「待って!こっち!ほら、おいでってば!!」

 ウスターシュがリュシーへと説明してくれている時に、厩舎の奥から、女性の声で張り上げるような聞こえてきた。

「?」

「あぁ…あれは、オドレイだな。フロラン国王の娘の王女様。十七歳で、エルキュールよりも一歳年上だな。」

(え?王女様…?が、ここに…?)

 リュシーは、なぜ厩に王女様がいるのかと疑問に思った。
けれども、馬の悲痛な声が聞こえたので、慌ててそちらへと向かう。

《もう!まだ休憩したいの!!っとに-!オドレイってば、なんでわかんないのかなー。止めろってば!》

「きゃあ!」

 ドサッ!

 オドレイが手綱を引っ張って、厩の外へ出そうとしていたのだが、灰色の馬が抵抗し、首を反対方向に思い切り向いた為に勢いがついて、オドレイが持っていた手綱を引っ張られて手を離してしまい、腹ばいに倒れてしまった。

「大丈夫ですか?」

「いたたた…!ん?あなたは?」

 オドレイの服装は、きちんとブーツを履いていて、ズボンも履いていたので、腰まである長い波立った髪は首のところで一括りに縛っていなければ、綺麗な男の人かと思うほど、土まみれだった。

「私は、リュシー=アランブールと申します。動物と会話が出来るのです。先ほど聞こえたのは、この子はまだ休憩したい、と言ってます。」

《お!君、僕の声が聞こえるんだね!ねぇ、聞いてくれる?毎日毎日、オドレイは僕らを訓練しようとここから出して、訓練場に連れて行こうとするんだ!でもさ、そういう気分じゃないのに引っ張る奴もいるんだよ!朝ご飯食べてすぐは無理なのにさあ!もう少し待って欲しいよ!》

「え!そうは言っても、私の時間は限られているのです。だから、乗りたいのよね。」

《ほらー!自分勝手!だったら行きたい奴に行かせればいいじゃん!》

 そんな声を聞き、リュシーは苦笑いを浮かべ、オドレイへと言葉を伝える。

「そうですか。けれども、馬にも気持ちがありますから、行きたい子を連れて行ってあげてと申しておりますよ。」

「何よ!?今日は私、この子に乗りたかったのよ!」

《あーうるせー!耳がピクピクしちまうぜ!》

「オドレイ様、動物は近くで大きな声を出されますと酷く嫌がるのです。優しく、目を見てゆっくり話してから、馬の気分を聞いてみて下さい。」

「そ、そんなの…」

「オドレイ、リュシー嬢の言う通りだ。馬に乗るのは気持ちがいいのは分かる。だが、玩具ではないのだ。厩番の話を聞いているか?厩番は、その日の馬の調子などを鑑みた上で、馬を準備してくれるんだ。自分勝手に馬を引っ張っていってはいけないぞ。」

「ウスターシュ!?…だって、この子に乗りたかったのに…。」

「今日は、まだ休憩したいそうですよ。」


《おれに乗るか!?嬢ちゃん、聞いてみてくれよ!》

 さらに奥の方で、馬が鼻息荒くブルブルといって前脚で地面を蹴っている真っ黒い馬がリュシーへと声を掛けた。

「オドレイ様、あの、真っ黒い彼なら、乗るかと聞いていますよ。」

「えー…仕方ないわね。分かったわ。」

 そう言って、体に付いた土をパンパンと叩きながら、オドレイはそちらの馬の方へと向かった。

《助かったぜ。ありがとうよ。》

「いいえ。どういたしまして。」


「助かりました。オドレイ様はいつも、ご自分のその日の気分で、好きな馬に乗りたいと言いますので困っておりました。」

 厩番の、背がリュシーと同じくらいの体が真っ黒に日焼けした男性が声を掛けてきた。

「オドレイにも困ったものだな…。あ、そうだ。リュシー嬢、調子が良くない馬とかがいるから話を聞いてくれるか?」

「はい。…あ、あっちの馬でしょうか?」

 別の区画に仕切られた場所に、白っぽい馬が三頭一緒にいた。

 なんとなく、そちら一角が悲しそうな雰囲気がリュシーに感じ取れたのでそう言ったのだ。

「分かりますか。あいつらは、獣医に見てもらったんですが特段体調では変わった所がないそうですが、手綱を引っ張ってもそこから動かんのですわ。」

「そうですか…聞いてみましょうか。」

 そう言って近づいたリュシーは、その馬達に話し出した。


「どうして、元気がないの?教えてくれないかしら?」

《ん-?あぁ、私の声が聞こえるのね。私…この前オドレイちゃんに乗ってもらったのよ。でもね、『遅い』って言われちゃったのよ。》
《僕も…僕は、『以前はもっと早く走ってなかった?』ってオドレイ様に言われちゃって……》
《あたしは、『なんかしっくり来ないのよね』って言われたのよ。しっくりって何かしら…オドレイと一緒に走るの、楽しかったのよ?でも、選ばれなくなっちゃって……》


(なるほど…みんな、オドレイ様が好きなのね。)

「あの、皆オドレイ様から選ばれなくて悲しんでいるみたいですよ。」

「はぁ…確かにオドレイ様と一緒に走っていた馬達です。オドレイ様は、芦毛の馬を好んで選んでおります。しかしそうでしたか…意外にも、こいつらは喜んでいたのですな。」

「はい。オドレイ様に、遅いって言われたとか悲しんでいます。皆、感情豊かですからね。本当に嫌だったら乗せないと思います。」

「まぁ、オドレイにはこいつらにも乗ってもらわないとな。普段は魔術騎士が乗る馬でもあるが、こう元気がないと、他の奴らが乗れないからな。オドレイにあとで伝えとくよ。」

「ほえーそれにしても、本当に馬達の気持ちが分かるのですなぁ!リュシー様、助かりました!
ウスターシュ様、よろしくお願いします。私からではオドレイ様は聞き入れてくれませんから。」

「そうか。済まないな。また何かあれば言ってくれ。」

「いいえ。お役に立てたならよかったです。あの…また来てもいいですか?」

「もちろんですだ!いつでも来てくだせえ!」


 リュシーはここでも、自分にとったら普段している事が、人の役に立ったとなんだか嬉しい気持ちになったのだった。
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