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13. 陛下は気さくなお人
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「さぁ、着いた。ここが、王宮だよ。」
「わぁ…!」
緑の木々や街を超え、夕方近くに着いた。
途中に、リュシーが乗馬に慣れ始めると馬のスピードを少し上げたのだった。
王宮と言っても、幅広いが思ったほどには大きくない白色の四角い建物だった。
二階建てで、屋上は魔術騎士が警備中でたまに頭が動いているのがリュシーの目に映った。
「綺麗…!」
王宮の白い壁は、夕日に照らされて黄金色にさえ見えた。
「今日から、その一角にリュシーの部屋ももらえるよ。さぁ、挨拶に行くよ。」
馬は、入り口近くの厩に預け、ウスターシュはリュシーの歩幅に合わせ、伴って歩いて行く。
途中、ウスターシュと同じような制服を着た魔術騎士が来て、ウスターシュはアオ鷹の爪を渡した。
王宮の中に入ると、思ったよりも廊下はかなり広くとられているし、天井が見上げるほど高いと思ったリュシーは、周りを見渡した。
「あぁ、ここは魔術が掛けられていてね、空間が、外で見たよりもかなり広がっているんだよ。」
「魔術…。」
「そう。だから、壁際の文様は触らないようにね。特に、リュシーは魔力があるから、引っ張られてしまうと大変だから。」
「引っ張られる?」
「魔力が込められた文様が、壁に書かれているから、外から見た見た目より内側は広がっている。だけど、それに魔力が加わってしまうと、混じり合ってしまうんだよ。そうしたら、造りが変わってしまったり、部屋が無くなってしまうからね。」
「まぁ…!」
(ちょっとよく分からないけれど、とにかく壁際には近寄らない方がいいわね。というか、内側は外観よりも広いって事は、迷ったりしないのかしら?)
「壁際に近寄らなければ、そんなに気にする事はないからね。さぁ、こちらの階段を上るよ。」
これまた横幅がかなり広く取られた階段を上ると、左に曲がってすぐの部屋に入る。
まっすぐ正面に伸びた金色の絨毯が敷かれていてリュシーは驚いた。
その先には、背もたれが長く伸びた椅子に座った、金色の服を着たリュシーの父親くらいの年齢の人が座っていた。周りの壁際には、長い槍を持った人が等間隔に立ち並んでいたし、国王陛下なのかと緊張したのだ。
赤茶色で、クルクルと緩やかに波打ったような髪を男性にしては肩まで長く伸ばしている。顔つきは、ウスターシュに何となく似ていると思った。
ウスターシュは、そのままついておいでと一言呟くと、そのままスタスタと歩いていったウスターシュは、椅子の前に跪いた。
リュシーもそれに倣うと、ウスターシュは、頭を垂れたまま挨拶をしだした。
「この度は…」
「あぁ、よいよい。顔を上げよ、ウスターシュ。普段のようにすればよいぞ。」
金色の服に包まれた国王のフロランはそう言うと、ウスターシュを見つめる。
ウスターシュも、慣れたもので顔を上げ、リュシーにも声を掛けた。
「だそうだよ、リュシー嬢。楽にしようか。」
そう言って、ウスターシュは立ち上がった。リュシーも戸惑いながらウスターシュの方を向くと、うんと一つ頷かれた為に立ち上がる。
「して、どうされた?我が息子も同然のウスターシュよ。」
「フロラン国王陛下、彼女はリュシー=アランブールと申しまして、レスキュン領から連れて参りました。」
「ほう…アランブールとな?では、バルテレミーの娘という事だな?なるほど…で?」
「はい。彼女には、特殊な魔力がありました。よって、魔術騎士の一員にと勧誘し、連れて参りました。」
「なるほどな。バルテレミーも特殊魔力持ちであったから、そうか…。」
それを聞き、リュシーは目を大きく開いて驚いていた。
(国王陛下は、お父様の事をご存じなのね。レスキュン領から、お父様は出掛けた所はあまり見ていなかったけれど、お知り合いなのかしら?それとも、領主の事は全員、知り尽くしているの?)
「陛下は、バルテレミー伯爵をご存じで?」
「まぁな。あいつも可哀想な奴だったからな。寄宿学校で同じだったのだ。しかし、いつも一人でいたんだよ。どうしたのかと思っていたんだがな。ある時にバルテレミーが特殊な魔力持ちだと知ってな。友と肩を抱き合う事も出来ないと悲しそうに話してくれた。自分が触れた者は、眠ってしまうそうじゃないか。」
「陛下。今回、バルテレミー伯爵のおかげで、罪人を騒がれる事なく連れて来る事が出来たのです。あの方の力は、素晴らしいですよ。ですからどうか、レスキュン領にお力添えを。」
「…そうか。ああ、そうだな。特殊魔力持ちは、特殊故に数奇な人生を歩む事もあるが、確かに見方によったら、素晴らしい魔術である。その罪人の話は後で聞こう。して、バルテレミーの娘よ、魔術騎士の仲間入りをしてくれるか?」
「え?は、はい…私が入ってよろしいのでしたら…。」
いきなり話し掛けられたリュシーは驚き、頭が真っ白になって咄嗟にそのように答えるしかできなかった。
「なに、ウスターシュのお眼鏡にかなったのであろう?であれば信用に足るわ。しかも、バルテレミーの娘であるからな。リュシー嬢と言ったか。ウスターシュをよろしく頼むぞ。」
「え?」
「ばっ…!何言ってんです?っとに陛下は!ただ、特殊魔力だから連れて来ただけです!彼女は、動物と会話が出来るそうですから!」
「なに!?
そうなのか?つまらん。正直になるがよいぞ!
では、リュシー嬢の仕事は忙しくなるかもしれんなぁ。給料は弾むとしよう!」
「陛下は、動物が好きで撫でたいのに、すぐに逃げられたり、足蹴りにされたりするんだよ。」
ウスターシュは、リュシーの方を向いてそう教えた。
「ウスターシュめ!うるさいぞ!リュシー嬢、そういう事だからよろしく頼む!」
「はいはい。ではリュシー嬢、行きましょうか。挨拶も出来た事だし。あ、レスキュン領での罪人の事は後でエタンが報告に来ますから。」
「相分かった。ではな、リュシー嬢。何か不便があったらすぐに言うんだぞ。」
「はい。ありがとうございます。」
リュシーはどうにか終われたとホッとしてそう答えた。気難しくはなく、気さくな人で良かったと思いながら。
ウスターシュとリュシーはその部屋を深々と頭を下げてから出て行った。
「わぁ…!」
緑の木々や街を超え、夕方近くに着いた。
途中に、リュシーが乗馬に慣れ始めると馬のスピードを少し上げたのだった。
王宮と言っても、幅広いが思ったほどには大きくない白色の四角い建物だった。
二階建てで、屋上は魔術騎士が警備中でたまに頭が動いているのがリュシーの目に映った。
「綺麗…!」
王宮の白い壁は、夕日に照らされて黄金色にさえ見えた。
「今日から、その一角にリュシーの部屋ももらえるよ。さぁ、挨拶に行くよ。」
馬は、入り口近くの厩に預け、ウスターシュはリュシーの歩幅に合わせ、伴って歩いて行く。
途中、ウスターシュと同じような制服を着た魔術騎士が来て、ウスターシュはアオ鷹の爪を渡した。
王宮の中に入ると、思ったよりも廊下はかなり広くとられているし、天井が見上げるほど高いと思ったリュシーは、周りを見渡した。
「あぁ、ここは魔術が掛けられていてね、空間が、外で見たよりもかなり広がっているんだよ。」
「魔術…。」
「そう。だから、壁際の文様は触らないようにね。特に、リュシーは魔力があるから、引っ張られてしまうと大変だから。」
「引っ張られる?」
「魔力が込められた文様が、壁に書かれているから、外から見た見た目より内側は広がっている。だけど、それに魔力が加わってしまうと、混じり合ってしまうんだよ。そうしたら、造りが変わってしまったり、部屋が無くなってしまうからね。」
「まぁ…!」
(ちょっとよく分からないけれど、とにかく壁際には近寄らない方がいいわね。というか、内側は外観よりも広いって事は、迷ったりしないのかしら?)
「壁際に近寄らなければ、そんなに気にする事はないからね。さぁ、こちらの階段を上るよ。」
これまた横幅がかなり広く取られた階段を上ると、左に曲がってすぐの部屋に入る。
まっすぐ正面に伸びた金色の絨毯が敷かれていてリュシーは驚いた。
その先には、背もたれが長く伸びた椅子に座った、金色の服を着たリュシーの父親くらいの年齢の人が座っていた。周りの壁際には、長い槍を持った人が等間隔に立ち並んでいたし、国王陛下なのかと緊張したのだ。
赤茶色で、クルクルと緩やかに波打ったような髪を男性にしては肩まで長く伸ばしている。顔つきは、ウスターシュに何となく似ていると思った。
ウスターシュは、そのままついておいでと一言呟くと、そのままスタスタと歩いていったウスターシュは、椅子の前に跪いた。
リュシーもそれに倣うと、ウスターシュは、頭を垂れたまま挨拶をしだした。
「この度は…」
「あぁ、よいよい。顔を上げよ、ウスターシュ。普段のようにすればよいぞ。」
金色の服に包まれた国王のフロランはそう言うと、ウスターシュを見つめる。
ウスターシュも、慣れたもので顔を上げ、リュシーにも声を掛けた。
「だそうだよ、リュシー嬢。楽にしようか。」
そう言って、ウスターシュは立ち上がった。リュシーも戸惑いながらウスターシュの方を向くと、うんと一つ頷かれた為に立ち上がる。
「して、どうされた?我が息子も同然のウスターシュよ。」
「フロラン国王陛下、彼女はリュシー=アランブールと申しまして、レスキュン領から連れて参りました。」
「ほう…アランブールとな?では、バルテレミーの娘という事だな?なるほど…で?」
「はい。彼女には、特殊な魔力がありました。よって、魔術騎士の一員にと勧誘し、連れて参りました。」
「なるほどな。バルテレミーも特殊魔力持ちであったから、そうか…。」
それを聞き、リュシーは目を大きく開いて驚いていた。
(国王陛下は、お父様の事をご存じなのね。レスキュン領から、お父様は出掛けた所はあまり見ていなかったけれど、お知り合いなのかしら?それとも、領主の事は全員、知り尽くしているの?)
「陛下は、バルテレミー伯爵をご存じで?」
「まぁな。あいつも可哀想な奴だったからな。寄宿学校で同じだったのだ。しかし、いつも一人でいたんだよ。どうしたのかと思っていたんだがな。ある時にバルテレミーが特殊な魔力持ちだと知ってな。友と肩を抱き合う事も出来ないと悲しそうに話してくれた。自分が触れた者は、眠ってしまうそうじゃないか。」
「陛下。今回、バルテレミー伯爵のおかげで、罪人を騒がれる事なく連れて来る事が出来たのです。あの方の力は、素晴らしいですよ。ですからどうか、レスキュン領にお力添えを。」
「…そうか。ああ、そうだな。特殊魔力持ちは、特殊故に数奇な人生を歩む事もあるが、確かに見方によったら、素晴らしい魔術である。その罪人の話は後で聞こう。して、バルテレミーの娘よ、魔術騎士の仲間入りをしてくれるか?」
「え?は、はい…私が入ってよろしいのでしたら…。」
いきなり話し掛けられたリュシーは驚き、頭が真っ白になって咄嗟にそのように答えるしかできなかった。
「なに、ウスターシュのお眼鏡にかなったのであろう?であれば信用に足るわ。しかも、バルテレミーの娘であるからな。リュシー嬢と言ったか。ウスターシュをよろしく頼むぞ。」
「え?」
「ばっ…!何言ってんです?っとに陛下は!ただ、特殊魔力だから連れて来ただけです!彼女は、動物と会話が出来るそうですから!」
「なに!?
そうなのか?つまらん。正直になるがよいぞ!
では、リュシー嬢の仕事は忙しくなるかもしれんなぁ。給料は弾むとしよう!」
「陛下は、動物が好きで撫でたいのに、すぐに逃げられたり、足蹴りにされたりするんだよ。」
ウスターシュは、リュシーの方を向いてそう教えた。
「ウスターシュめ!うるさいぞ!リュシー嬢、そういう事だからよろしく頼む!」
「はいはい。ではリュシー嬢、行きましょうか。挨拶も出来た事だし。あ、レスキュン領での罪人の事は後でエタンが報告に来ますから。」
「相分かった。ではな、リュシー嬢。何か不便があったらすぐに言うんだぞ。」
「はい。ありがとうございます。」
リュシーはどうにか終われたとホッとしてそう答えた。気難しくはなく、気さくな人で良かったと思いながら。
ウスターシュとリュシーはその部屋を深々と頭を下げてから出て行った。
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