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番外編 幽霊騒ぎ
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「ねぇ、ウスターシュ。幽霊って信じる?」
昼食が終わったあと、リュシーはウスターシュに会うと真面目な顔で、ウスターシュへ問いかける。
今日は久し振りに朝からウスターシュはフロラン国王に呼ばれていて、別任務の事でリュシーと別行動していた。
今からは、普段通り、二人で王宮で飼われている動物達の声を見回りながら聞いて行こうとして、歩いていた。
「幽霊?」
ウスターシュは、笑い飛ばそうと思ったがリュシーは真剣な面持ちで聞いてきている為、茶化すのは止めようと思い、優しく聞いた。
(そもそも、リュシーは冗談を言うような感じではないし。)
「何かあった?」
「ええ。食堂にいる時に聞かれたの。幽霊の声、聞いた事ある?って。」
(ん?誰に話しかけられたんだ?)
ウスターシュは、なるべく一緒にいるように心掛けている。しかし、さすがにリュシーも友人が欲しいと言っているのを聞いて、それもそうかと思ってはいた。だが、信用出来る女性をリュシーに紹介していいものか悩んでいたのだ。自分と一緒にいる時間が減るのではないかと危惧していたのだ。
そう考えあぐねていたら、今日のように外せない用事となってしまい、結局リュシーを一人にさせてしまった。今日はエタンも一緒に呼ばれていた為に、リュシーは一人だったのだ。
一人で食堂での食事は初めてだから部屋に持って行かせるとウスターシュが言ったのだが、リュシーは、楽しそうだから大丈夫、と言ったのだった。
「誰に話し掛けられたの?知らない人?」
「ええ。緑のマントを着ていたから魔術騎士だと思うわ。その人たち、仕事中によく聞こえるのですって。」
(なんだと!?いつの間に!?くそ!一分一秒でも一人にさせるんじゃなかった!!)
「でね、部屋でもたまに聞くらしくて、怖くて寝れないほどなのですって。
私は聞いた事がないから、ウスターシュは聞いた事があるのかなと思って…。」
(怖くて寝れないって、男がよく言うよ!なんだ?それで、リュシーを誘おうってのか!?)
「その人たちの部屋は、私の部屋とは逆だからかなぁ?夜もたまに聞こえるから、怖いから聞きに来てって言うのよ。叫び声みたいなのですって。でも私も怖くて…」
だんだんと苛立ちを抑え切れなくなったウスターシュはとうとう、大きな声を張り上げた。
「誰だそいつは!それは明らかに誘い文句だろ!?行ってはいかん!いかんぞ!!」
「誘い文句?そうよ、だって誘われたのだもの。その人達の部屋は二人一緒の部屋らしいのだけど、もう一人呼んで、夜中の十二時まで一緒に過ごすのですって。
知らなかったけれど、決まりで、お泊まりはダメなのでしょう?私も誘われたのだけど、怖いから悩んでいるのよ。」
(いやいやいや!何考えているんだ!?規律で異性の部屋には行かない事になっているだろ!リュシーは純真無垢なんだから誘うなよな!!)
「止めておけ!いや、それとも乗り込むか!?どこの部屋だ!名前は知らなくても、部屋を聞いたのだろう?」
「聞いたわ。え?乗り込む?誰が?」
「俺だよ!リュシーは行ったら絶対にダメだ!」
「それこそダメよ!何考えてるの?ウスターシュこそダメに決まってるわ!」
「なんだよ!リュシーはそんなに行きたいのか!?俺は許さんぞ!」
「な、なんでウスターシュは先ほどからそんなに怒ってるの…?酷いわ…」
「あ、や、ごめんよ、リュシー。でもさ、男の部屋に行くのは俺、どうしても許せなくて…」
「え?」
「…え?」
いつの間にか言い争いになってしまい、周りの人達も遠巻きにいつも一緒にいるのに何があったのかと気になって立ち止まる人もいた。が、基本的には勤務時間であるので結局は皆、足早に去って行く。
リュシーは、何故かウスターシュに初めて責められたと涙目になっていたのだが、ウスターシュの言葉を聞いて、聞き返す。
ウスターシュも、リュシーが涙目になってしまった為、さすがに言い過ぎたかと思い、それでも譲れない所はあるのだと伝えたが、リュシーが聞き返してそのままポカンと口を開けた状態だったので、そこで初めて何か行き違いがあるのかとウスターシュも聞き返した。
「私、男の人の部屋になんて行かないわ!」
「え?そ、そうだったのかい?じゃあ、その、声を掛けられたのは女性?」
「当たり前よ!男性に誘われても行かないわ!…だって、ウスターシュを裏切るみたいじゃない?そんなの…」
「そ、そうだよな?うん、ごめんごめん!」
そう言って、ウスターシュはリュシーを引き寄せ抱きしめる。一応厩へ向かう途中ではあったのだが、遮るものがない芝生を通っていた為に廊下からは丸見えである。
「あのね、夕食後に食堂で会う事になっているの。彼女達はいつも遅めらしいから、待っていようと思うの。」
「そうか…。それは、怖いと言っているなら安心させればいいのかな?それともただ、楽しんでいるだけなのだろうか。」
「え?怖いって言っていたもの。安心させたいわ。仕事中も聞こえて身に入らないと言っていたし、夜も声が聞こえたら怖くてしばらく眠れないって。」
「そうか…俺も一緒に夕食の後食堂に行ってもいいか?恐らく、あれじゃないかという目星は付いているよ。」
「え!?そうなの?ウスターシュ、すごいわ!」
「じゃあ、それは後でだね。ごめんよ、リュシー疑ってしまって…。」
「ううん。でもびっくりしたんだから!」
「ごめんごめん!」
☆★
「こんばんは。」
リュシーは、朝話し掛けられた二人が食堂に入ってきたのを見つけ、声を掛ける。
「こんばんは。ごめんなさい、時間を作ってもらって。」
「ありがとうございます!来て下さって。」
「いいえ。あの、ウスターシュが正体の目星が付いていると言うから連れてきたのだけれど、よかったかしら?」
それを聞いた二人は顔を見合わせ、もちろんですと了承し、二人は食事を持ってきて四人で席に座った。
「私は魔術騎士で、研究開発部門所属、ロニヤです。」
「私も魔術騎士で、同じく研究開発部門所属、サンナです。」
「私は…」
「あ、知ってます。リュシー様、とお呼びしてもよろしいですか?」
「私達、ウスターシュ様とリュシー様の仲がとてもよろしいお姿を拝見出来て、毎日幸せを分けていただいているのです!」
リュシーが自己紹介しようとすると、ロニヤとサンナがそう嬉しそうにそう言った。どうやら、推し、のような、ファン、のような存在なのだそうだ。魔術騎士の間では、ウスターシュとリュシーは注目の二人なのである。
「え?…あの、リュシーと呼んで下さると嬉しいです。」
「えー!!そんな!畏れ多いです!」
「倒れそうだわ!」
「ロニヤ嬢にサンナ嬢。リュシーはここへ来て間もないのだ。純粋にリュシーと友達になってくれるのであれば、リュシーはとても喜ぶのだが。」
そうウスターシュが念押しをすると、ロニヤとサンナは顔を見合わせ、リュシーに向かってニッコリと笑った。
「では、畏れ多いですがお友達になって下さいませ!私の事はどうぞロニヤと呼んで下さい!」
「嬉し過ぎて意識飛ばさないように気をつけますわ!私もサンナと呼んで下さいませ!よろしくお願いします!」
「ありがとうございます!!」
(リュシー、嬉しそうだな。ロニヤとサンナは庶民出身ではあるが、努力家で研究開発に力を注いでいるんだったよな。休日にもよく研究開発室に出入りしている根っからの研究肌だと聞く。邪な気持ちでリュシーには近づいてはいないだろう。)
「では、本題に移ろうか。研究開発室でも聞こえると言っていたが、先輩もいるだろう?彼らは何と言っているんだ?」
「はい。先輩達は、全く気にも止めてません。」
「そうですね。また?みたいな感じです。でも、叫び声みたいで気持ち悪くて…」
「そうか、あいつららしいな。
君たち、アルブー商会に捕らえられていた動物達が王宮内に保護されているって知っている?」
「はい。…え?その動物達の鳴き声ですか?」
「なんだか、可哀想…悲痛な声の時もあるのですよ。」
「うん。珍しい動物達の中には、我々には悲痛な声に聞こえても、実は喜んでいる声もあるみたいなんだ。」
「えー!」
「そうなんですか!?」
「叫び声だからね。昼夜問わずいきなり叫ばれたら怖いだろうけれど、餌をもらって喜んだり、人が遊びに来てくれたりすると喜んだりするみたいでね。」
「そうなんだ…鳴き声…。」
「確かに、聞こえるようになったのって、その辺りの時期からだもんね。よかったね!これで寝られるね!」
「うん!仕事中も、もう怖くないわ!ありがとうございます!
先輩達、聞いても教えてくれなかったから…。」
「それは良かった。まぁ、研究に没頭してるからじゃないかな。
じゃあこれでもう安心して生活が出来るかな?」
「あ!ありがとうございました!」
「本当に、ありがとうございました!」
「また、お話してもいいかしら?」
「もちろん!」
「もちろんよ!!またね!」
リュシーは、友人も出来て彼女達の憂いも晴らす事が出来、ウスターシュに相談して本当に良かったと思った。
昼食が終わったあと、リュシーはウスターシュに会うと真面目な顔で、ウスターシュへ問いかける。
今日は久し振りに朝からウスターシュはフロラン国王に呼ばれていて、別任務の事でリュシーと別行動していた。
今からは、普段通り、二人で王宮で飼われている動物達の声を見回りながら聞いて行こうとして、歩いていた。
「幽霊?」
ウスターシュは、笑い飛ばそうと思ったがリュシーは真剣な面持ちで聞いてきている為、茶化すのは止めようと思い、優しく聞いた。
(そもそも、リュシーは冗談を言うような感じではないし。)
「何かあった?」
「ええ。食堂にいる時に聞かれたの。幽霊の声、聞いた事ある?って。」
(ん?誰に話しかけられたんだ?)
ウスターシュは、なるべく一緒にいるように心掛けている。しかし、さすがにリュシーも友人が欲しいと言っているのを聞いて、それもそうかと思ってはいた。だが、信用出来る女性をリュシーに紹介していいものか悩んでいたのだ。自分と一緒にいる時間が減るのではないかと危惧していたのだ。
そう考えあぐねていたら、今日のように外せない用事となってしまい、結局リュシーを一人にさせてしまった。今日はエタンも一緒に呼ばれていた為に、リュシーは一人だったのだ。
一人で食堂での食事は初めてだから部屋に持って行かせるとウスターシュが言ったのだが、リュシーは、楽しそうだから大丈夫、と言ったのだった。
「誰に話し掛けられたの?知らない人?」
「ええ。緑のマントを着ていたから魔術騎士だと思うわ。その人たち、仕事中によく聞こえるのですって。」
(なんだと!?いつの間に!?くそ!一分一秒でも一人にさせるんじゃなかった!!)
「でね、部屋でもたまに聞くらしくて、怖くて寝れないほどなのですって。
私は聞いた事がないから、ウスターシュは聞いた事があるのかなと思って…。」
(怖くて寝れないって、男がよく言うよ!なんだ?それで、リュシーを誘おうってのか!?)
「その人たちの部屋は、私の部屋とは逆だからかなぁ?夜もたまに聞こえるから、怖いから聞きに来てって言うのよ。叫び声みたいなのですって。でも私も怖くて…」
だんだんと苛立ちを抑え切れなくなったウスターシュはとうとう、大きな声を張り上げた。
「誰だそいつは!それは明らかに誘い文句だろ!?行ってはいかん!いかんぞ!!」
「誘い文句?そうよ、だって誘われたのだもの。その人達の部屋は二人一緒の部屋らしいのだけど、もう一人呼んで、夜中の十二時まで一緒に過ごすのですって。
知らなかったけれど、決まりで、お泊まりはダメなのでしょう?私も誘われたのだけど、怖いから悩んでいるのよ。」
(いやいやいや!何考えているんだ!?規律で異性の部屋には行かない事になっているだろ!リュシーは純真無垢なんだから誘うなよな!!)
「止めておけ!いや、それとも乗り込むか!?どこの部屋だ!名前は知らなくても、部屋を聞いたのだろう?」
「聞いたわ。え?乗り込む?誰が?」
「俺だよ!リュシーは行ったら絶対にダメだ!」
「それこそダメよ!何考えてるの?ウスターシュこそダメに決まってるわ!」
「なんだよ!リュシーはそんなに行きたいのか!?俺は許さんぞ!」
「な、なんでウスターシュは先ほどからそんなに怒ってるの…?酷いわ…」
「あ、や、ごめんよ、リュシー。でもさ、男の部屋に行くのは俺、どうしても許せなくて…」
「え?」
「…え?」
いつの間にか言い争いになってしまい、周りの人達も遠巻きにいつも一緒にいるのに何があったのかと気になって立ち止まる人もいた。が、基本的には勤務時間であるので結局は皆、足早に去って行く。
リュシーは、何故かウスターシュに初めて責められたと涙目になっていたのだが、ウスターシュの言葉を聞いて、聞き返す。
ウスターシュも、リュシーが涙目になってしまった為、さすがに言い過ぎたかと思い、それでも譲れない所はあるのだと伝えたが、リュシーが聞き返してそのままポカンと口を開けた状態だったので、そこで初めて何か行き違いがあるのかとウスターシュも聞き返した。
「私、男の人の部屋になんて行かないわ!」
「え?そ、そうだったのかい?じゃあ、その、声を掛けられたのは女性?」
「当たり前よ!男性に誘われても行かないわ!…だって、ウスターシュを裏切るみたいじゃない?そんなの…」
「そ、そうだよな?うん、ごめんごめん!」
そう言って、ウスターシュはリュシーを引き寄せ抱きしめる。一応厩へ向かう途中ではあったのだが、遮るものがない芝生を通っていた為に廊下からは丸見えである。
「あのね、夕食後に食堂で会う事になっているの。彼女達はいつも遅めらしいから、待っていようと思うの。」
「そうか…。それは、怖いと言っているなら安心させればいいのかな?それともただ、楽しんでいるだけなのだろうか。」
「え?怖いって言っていたもの。安心させたいわ。仕事中も聞こえて身に入らないと言っていたし、夜も声が聞こえたら怖くてしばらく眠れないって。」
「そうか…俺も一緒に夕食の後食堂に行ってもいいか?恐らく、あれじゃないかという目星は付いているよ。」
「え!?そうなの?ウスターシュ、すごいわ!」
「じゃあ、それは後でだね。ごめんよ、リュシー疑ってしまって…。」
「ううん。でもびっくりしたんだから!」
「ごめんごめん!」
☆★
「こんばんは。」
リュシーは、朝話し掛けられた二人が食堂に入ってきたのを見つけ、声を掛ける。
「こんばんは。ごめんなさい、時間を作ってもらって。」
「ありがとうございます!来て下さって。」
「いいえ。あの、ウスターシュが正体の目星が付いていると言うから連れてきたのだけれど、よかったかしら?」
それを聞いた二人は顔を見合わせ、もちろんですと了承し、二人は食事を持ってきて四人で席に座った。
「私は魔術騎士で、研究開発部門所属、ロニヤです。」
「私も魔術騎士で、同じく研究開発部門所属、サンナです。」
「私は…」
「あ、知ってます。リュシー様、とお呼びしてもよろしいですか?」
「私達、ウスターシュ様とリュシー様の仲がとてもよろしいお姿を拝見出来て、毎日幸せを分けていただいているのです!」
リュシーが自己紹介しようとすると、ロニヤとサンナがそう嬉しそうにそう言った。どうやら、推し、のような、ファン、のような存在なのだそうだ。魔術騎士の間では、ウスターシュとリュシーは注目の二人なのである。
「え?…あの、リュシーと呼んで下さると嬉しいです。」
「えー!!そんな!畏れ多いです!」
「倒れそうだわ!」
「ロニヤ嬢にサンナ嬢。リュシーはここへ来て間もないのだ。純粋にリュシーと友達になってくれるのであれば、リュシーはとても喜ぶのだが。」
そうウスターシュが念押しをすると、ロニヤとサンナは顔を見合わせ、リュシーに向かってニッコリと笑った。
「では、畏れ多いですがお友達になって下さいませ!私の事はどうぞロニヤと呼んで下さい!」
「嬉し過ぎて意識飛ばさないように気をつけますわ!私もサンナと呼んで下さいませ!よろしくお願いします!」
「ありがとうございます!!」
(リュシー、嬉しそうだな。ロニヤとサンナは庶民出身ではあるが、努力家で研究開発に力を注いでいるんだったよな。休日にもよく研究開発室に出入りしている根っからの研究肌だと聞く。邪な気持ちでリュシーには近づいてはいないだろう。)
「では、本題に移ろうか。研究開発室でも聞こえると言っていたが、先輩もいるだろう?彼らは何と言っているんだ?」
「はい。先輩達は、全く気にも止めてません。」
「そうですね。また?みたいな感じです。でも、叫び声みたいで気持ち悪くて…」
「そうか、あいつららしいな。
君たち、アルブー商会に捕らえられていた動物達が王宮内に保護されているって知っている?」
「はい。…え?その動物達の鳴き声ですか?」
「なんだか、可哀想…悲痛な声の時もあるのですよ。」
「うん。珍しい動物達の中には、我々には悲痛な声に聞こえても、実は喜んでいる声もあるみたいなんだ。」
「えー!」
「そうなんですか!?」
「叫び声だからね。昼夜問わずいきなり叫ばれたら怖いだろうけれど、餌をもらって喜んだり、人が遊びに来てくれたりすると喜んだりするみたいでね。」
「そうなんだ…鳴き声…。」
「確かに、聞こえるようになったのって、その辺りの時期からだもんね。よかったね!これで寝られるね!」
「うん!仕事中も、もう怖くないわ!ありがとうございます!
先輩達、聞いても教えてくれなかったから…。」
「それは良かった。まぁ、研究に没頭してるからじゃないかな。
じゃあこれでもう安心して生活が出来るかな?」
「あ!ありがとうございました!」
「本当に、ありがとうございました!」
「また、お話してもいいかしら?」
「もちろん!」
「もちろんよ!!またね!」
リュシーは、友人も出来て彼女達の憂いも晴らす事が出来、ウスターシュに相談して本当に良かったと思った。
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