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番外編 娘からの贈り物 〜バルテレミー視点〜
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私は、バルテレミー=アランブール。レスキュン領を統治している伯爵家の当主だ。といっても、そこまで広くない土地に、僅かな領民の貧しい伯爵家である。
別に、私はそれで構わなかった。
寄宿学校には、嫡男として当然通わなければならなかったが、友人を作りたくても普通でない私には無理だった。
友人と肩を組んだり、手を取り合う事さえも私には出来ないのだから。
しかし、学校で一緒であったマリエットが、どこをどう見れば私を好きな要素があるのか分からないが、とにかく、私に惚れたと積極的に気持ちを伝えてきた。
誰とも群れる事なく、一匹狼のように一人で何でもこなしているのがすごいと言われても、私はそれが惚れられる要素になるのか全くの疑問だった。
「私の領地は裕福ではないんだ。貴女はそれに耐えられますか?」
そう聞くが、マリエットは嬉々として、それでも大丈夫だと何度も言ってくれたのだった。
何度も私に愛を告げてくれたマリエットにだんだんと絆されるような形で、結婚に至った。
だが、愛する人に触れてしまえば、見つめ合う間もなく意識を無くされてしまうなんて悲しすぎる。
私は、触れる事が怖く、触れたいのに触れられない、でも共に寝る時には箍が外れたように触れてしまい後悔しながらもだきしめる日々が続いた。
子供が産まれても、抱きしめる事もままならない。赤ん坊の内は、まだいい。だが、大きくなって抱きしめたら?いきなり意識を無くしてしまうなんて見ていられない。
私はなんでこんな魔力を持って生まれてきてしまったんだ。なんて忌々しい…。
マリエットがあのような罪を犯してしまったのは、私のこの魔力のせいなのかもしれないな…。
☆★
ある時、魔術騎士がやってきた。なにしに来たかと思えば、娘を魔術騎士にさせる為に王宮へ連れて行くと言い出した。
何言っているんだ!?
リュシーも、私のように、特殊魔力を持って生まれてきてしまったんだ。忌々しいものを。だから、領地で細々と暮らして行けばいいと思っていたのに。
リュシーは、行きたいと言った。
魔術騎士も、リュシーの魔力は素晴らしいと言った。私の魔力までも褒め称えてくれたんだ。
初めて認められた気がした。
私の魔力を必要としてくれるなんて、あるはずがないと思っていたのに。
彼らなら信じられると思い、娘を託した。
後に、その魔術騎士の一人が娘との結婚を許して欲しいと挨拶に来た時は驚いたが、彼なら娘を任せてもいいと思えた。初めから娘を特異な目で見る事をせず、認めてくれた彼なら………。
☆★
そんな娘が、彼と共に顔を出すと言った。
結婚式前に、挨拶をしたいと彼も来るらしい。
「お父様!」
「おぉ、リュシー!お帰り。」
「お邪魔します。」
「ウスターシュ殿も、良く来てくれた。」
早速、応接室へと向かう。
「お父様!今日はね、プレゼントがあるのよ!開けてみて?」
彼が持ってきた袋をリュシーへ手渡し、リュシーがテーブルに置いたので私がそれを取った。
「ん?なんだ?これは。……手袋?」
「そう!ウスターシュがね、いろいろと考えてくれたみたいで、作ってもらったのよ!嵌めてみて?」
それは、銀色にも似た色だが、光に当てると透明や白色にも見える不思議な生地だった。嵌めてみるととても軽く、シルクのような肌触りではあるが、何なのだろうか。
「ありがとう。とても高価なんじゃ…おい!リュシー!?」
私が話しているといきなりリュシーが私の手袋を嵌めたままの手を触ったから驚いた。
「お父様!やった!成功よ!ねぇ?ウスターシュ!」
「そうだな。良かったな。」
「どういう事だ?大丈夫なのか?」
「お父様、お願いがあるの。立って、こちら側へ来て下さる?」
リュシーはそう言って立ち上がり、ソファから少し離れた所で立った。
「どうした?」
言われたようにリュシーの近くまで行くと、リュシーはいきなり私へ抱きついてきた。
「わ!リュシー!?」
慌てて引き離したが、リュシーの体を触ってしまったのではっとしてリュシーの顔を見ると満面の笑みで私の方へと視線を向けた。
「やった!やったわ!私、お父様にこうやって欲しかったのよ!」
そしてまた、私の体へと抱きついた。何が何だか分からずに彼へと視線を向けると、苦笑いをしながら状況を説明してくれる。
「とりあえず、手を回して抱きしめ返して下さい。リュシーが喜びますから。」
「あ、あぁ…。」
温かい…なんて温かいんだろう。
「その手袋には魔力を込めてあります。バルテレミー伯爵の魔力を引っ張りこんで、手袋に貯めておくようになってます。手袋の手の甲側にある文様を逆の手で触れば、眠気を相手に飛ばす事が出来るそうですよ。飛ばしたい方向に手のひらを向けて、手の甲の文様を触るのです。そうすると、触れなくても相手を眠らせれますよ。」
「そして、こうやって抱きしめてもらえるわ!」
「普段、その手袋を付けていれば、その文様がバルテレミー伯爵の魔力を吸い上げますから、相手を眠らせる事なく触れられますよ。普通の手袋を嵌めても、魔力は発動しないのかもしれませんが、これは貯めておいて、活用が出来ますから。」
「いや、試した事も無かった…。」
「ウスターシュが、掛け合ってくれたのよ!」
「リュシーの友達も、ノリノリだったじゃないか。」
「あの二人は、研究が楽しくてしょうがないみたいだから。魔力を別の魔力とぶつけ合わせて、生活に役立つように出来ないかって。」
「そうか…ありがとう。ウスターシュ殿、リュシー。いい友達を持ったな。」
「あら。陛下だって、ずいぶんと協力的だったのよ。お父様とお友達になりたいのですって!」
「え?いや…陛下と友達だなんて畏れ多いよ。」
「そんな事ないわ!陛下だってお友達が欲しいのよ?今からでも、友人になっていいのではないかしら?同じ学校で生活した仲なのでしょう?」
「ええ。あの人はあれで友人がいませんからね。バルテレミー伯爵と友人関係になりたいみたいでしたから、よろしくお願いします。」
「そうか…。手紙でも書いてみるか。」
「ええ!きっと喜んで下さるわ!!…ねぇお父様。今度は、手を握ってもいいかしら?」
「…!あ、あぁ。」
こんな日が来るなんて思ってもみなかった。娘を抱きしめる事が出来るとは。まだまだ、長生きしてみるものだな!
別に、私はそれで構わなかった。
寄宿学校には、嫡男として当然通わなければならなかったが、友人を作りたくても普通でない私には無理だった。
友人と肩を組んだり、手を取り合う事さえも私には出来ないのだから。
しかし、学校で一緒であったマリエットが、どこをどう見れば私を好きな要素があるのか分からないが、とにかく、私に惚れたと積極的に気持ちを伝えてきた。
誰とも群れる事なく、一匹狼のように一人で何でもこなしているのがすごいと言われても、私はそれが惚れられる要素になるのか全くの疑問だった。
「私の領地は裕福ではないんだ。貴女はそれに耐えられますか?」
そう聞くが、マリエットは嬉々として、それでも大丈夫だと何度も言ってくれたのだった。
何度も私に愛を告げてくれたマリエットにだんだんと絆されるような形で、結婚に至った。
だが、愛する人に触れてしまえば、見つめ合う間もなく意識を無くされてしまうなんて悲しすぎる。
私は、触れる事が怖く、触れたいのに触れられない、でも共に寝る時には箍が外れたように触れてしまい後悔しながらもだきしめる日々が続いた。
子供が産まれても、抱きしめる事もままならない。赤ん坊の内は、まだいい。だが、大きくなって抱きしめたら?いきなり意識を無くしてしまうなんて見ていられない。
私はなんでこんな魔力を持って生まれてきてしまったんだ。なんて忌々しい…。
マリエットがあのような罪を犯してしまったのは、私のこの魔力のせいなのかもしれないな…。
☆★
ある時、魔術騎士がやってきた。なにしに来たかと思えば、娘を魔術騎士にさせる為に王宮へ連れて行くと言い出した。
何言っているんだ!?
リュシーも、私のように、特殊魔力を持って生まれてきてしまったんだ。忌々しいものを。だから、領地で細々と暮らして行けばいいと思っていたのに。
リュシーは、行きたいと言った。
魔術騎士も、リュシーの魔力は素晴らしいと言った。私の魔力までも褒め称えてくれたんだ。
初めて認められた気がした。
私の魔力を必要としてくれるなんて、あるはずがないと思っていたのに。
彼らなら信じられると思い、娘を託した。
後に、その魔術騎士の一人が娘との結婚を許して欲しいと挨拶に来た時は驚いたが、彼なら娘を任せてもいいと思えた。初めから娘を特異な目で見る事をせず、認めてくれた彼なら………。
☆★
そんな娘が、彼と共に顔を出すと言った。
結婚式前に、挨拶をしたいと彼も来るらしい。
「お父様!」
「おぉ、リュシー!お帰り。」
「お邪魔します。」
「ウスターシュ殿も、良く来てくれた。」
早速、応接室へと向かう。
「お父様!今日はね、プレゼントがあるのよ!開けてみて?」
彼が持ってきた袋をリュシーへ手渡し、リュシーがテーブルに置いたので私がそれを取った。
「ん?なんだ?これは。……手袋?」
「そう!ウスターシュがね、いろいろと考えてくれたみたいで、作ってもらったのよ!嵌めてみて?」
それは、銀色にも似た色だが、光に当てると透明や白色にも見える不思議な生地だった。嵌めてみるととても軽く、シルクのような肌触りではあるが、何なのだろうか。
「ありがとう。とても高価なんじゃ…おい!リュシー!?」
私が話しているといきなりリュシーが私の手袋を嵌めたままの手を触ったから驚いた。
「お父様!やった!成功よ!ねぇ?ウスターシュ!」
「そうだな。良かったな。」
「どういう事だ?大丈夫なのか?」
「お父様、お願いがあるの。立って、こちら側へ来て下さる?」
リュシーはそう言って立ち上がり、ソファから少し離れた所で立った。
「どうした?」
言われたようにリュシーの近くまで行くと、リュシーはいきなり私へ抱きついてきた。
「わ!リュシー!?」
慌てて引き離したが、リュシーの体を触ってしまったのではっとしてリュシーの顔を見ると満面の笑みで私の方へと視線を向けた。
「やった!やったわ!私、お父様にこうやって欲しかったのよ!」
そしてまた、私の体へと抱きついた。何が何だか分からずに彼へと視線を向けると、苦笑いをしながら状況を説明してくれる。
「とりあえず、手を回して抱きしめ返して下さい。リュシーが喜びますから。」
「あ、あぁ…。」
温かい…なんて温かいんだろう。
「その手袋には魔力を込めてあります。バルテレミー伯爵の魔力を引っ張りこんで、手袋に貯めておくようになってます。手袋の手の甲側にある文様を逆の手で触れば、眠気を相手に飛ばす事が出来るそうですよ。飛ばしたい方向に手のひらを向けて、手の甲の文様を触るのです。そうすると、触れなくても相手を眠らせれますよ。」
「そして、こうやって抱きしめてもらえるわ!」
「普段、その手袋を付けていれば、その文様がバルテレミー伯爵の魔力を吸い上げますから、相手を眠らせる事なく触れられますよ。普通の手袋を嵌めても、魔力は発動しないのかもしれませんが、これは貯めておいて、活用が出来ますから。」
「いや、試した事も無かった…。」
「ウスターシュが、掛け合ってくれたのよ!」
「リュシーの友達も、ノリノリだったじゃないか。」
「あの二人は、研究が楽しくてしょうがないみたいだから。魔力を別の魔力とぶつけ合わせて、生活に役立つように出来ないかって。」
「そうか…ありがとう。ウスターシュ殿、リュシー。いい友達を持ったな。」
「あら。陛下だって、ずいぶんと協力的だったのよ。お父様とお友達になりたいのですって!」
「え?いや…陛下と友達だなんて畏れ多いよ。」
「そんな事ないわ!陛下だってお友達が欲しいのよ?今からでも、友人になっていいのではないかしら?同じ学校で生活した仲なのでしょう?」
「ええ。あの人はあれで友人がいませんからね。バルテレミー伯爵と友人関係になりたいみたいでしたから、よろしくお願いします。」
「そうか…。手紙でも書いてみるか。」
「ええ!きっと喜んで下さるわ!!…ねぇお父様。今度は、手を握ってもいいかしら?」
「…!あ、あぁ。」
こんな日が来るなんて思ってもみなかった。娘を抱きしめる事が出来るとは。まだまだ、長生きしてみるものだな!
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