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本編
幕間~ボスコの回想:雪の積もる夜~
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あれは雪が積もる夜の事でした。当時の僕は神官長ではなく、一介の神官でした。
教会の周囲で雪かかきをしていると、赤いマーメイドドレスを着た貴婦人が歩いてきたのです。
その貴婦人はローズベル様。
リベリオン帝国の皇后となる御方でした。
「ボスコ、ダーク・スカイは重体よ。明日のお祈りの時間はあなたが担当しなさい」
ローズベル様はそうおっしゃられました。
僕は戸惑いましたが、深々と礼をしました。
「承知しました」
ローズベル様が歩き去るまで、頭を下げていました。
スカイ君の様子を知りたかったのですが、お祈りの時間は大切です。僕は翌日の準備をする必要がありました。
教会の中には、スカイ君が連れてきた被災者たちや戦災孤児たちがいました。皆さん寒さに震えていましたが、互いに身を寄せ合って夜を過ごそうとしていました。
その中に、リトスもいましたね。
暖炉に火を入れていましたが、凍えていましたね。
少しでも温かな場所を提供したくて、地下へ案内しようとしました。その時に、おいっと声を掛けられました。
軍人たちがいました。大きな鍋を二人がかりで持っていました。
鍋には温かなスープが並々と入っていました。
「ここに連れてこられた人間たちに飲ませろと言われている」
軍人の口調はトゲトゲしかったのですが、被災者たちや戦災孤児たちは歓声をあげたものです。皆さん温かいものが欲しかったのでしょう。
そんな時に、底知れないほど低い声がしました。重体で休んでいるはずのスカイ君が立っていました。
「てめぇらから飲めよ。しばらくして倒れなかったら、他の奴らにも飲ませてやる」
軍人たちはひどく怯えた表情になりました。
「我々が飲んでいいものではないと言われています」
「じゃあ俺やボスコが飲むか?」
そう言って、銀色の針を取り出しました。スープに付けると、黒くなりました。
被災者たちや戦災孤児たちは悲鳴をあげたものです。僕も絶句しました。
スカイ君は、軍人たちを睨みます。
「毒が入ったスープを飲ませるつもりだったんだな」
「こ、これは……その……」
「誰の差し金だ? 場合によっては力づくで聞き出すぜ」
スカイ君の詰問に、軍人たちは口ごもりました。口が裂けても言えないのでしょう。
スカイ君は確信したように頷きました。
「王城に行ってくる。毒入りスープは広場にでも捨てておけ。俺がここに連れてきた人間に一人でも異変があれば、神に召される覚悟を決めたとみなすぜ」
軍人たちは、スカイ君の背中を見送りながら、コクコクと頷いていました。
僕はスカイ君についていく事にしました。彼の足取りが、わずかにふらついていたからです。
僕の足音に気づいたのでしょう。
スカイ君は舌打ちをしました。
「てめぇは教会に残ってろよ」
「そうもいきません。もしも途中で倒れたら凍死してしまいます」
「いらねぇ心配してる暇があったら仕事しろよ」
「あなたこそ神官の仕事をするべきでしょう」
スカイ君は苦笑しました。
「野暮用があるんだ。今回は見逃してくれ」
「軍人たちに毒入りスープを持たせた人間の元に行くのですね」
「そんな事は言ってないぜ」
あなたの考える事はだいたい分かりますよ。
そんな言葉を飲み込んで、僕は素知らぬ顔をして口笛を吹きました。
ひたすら口笛を吹いて、ついていきました。
毒入りスープを持たせた人間が誰なのか、軍人たちの反応から見当がつきます。複数の屈強な軍人が恐れおののく人物は、リベリオン帝国でごく一握りです。
スカイ君を含めたローズ・マリオネットたち、ルドルフ皇帝、そしてローズベル様です。
ローズ・マリオネットたちは、スカイ君を除いて、リベリオン帝国中央部の軍人たちに連絡を取るのは困難です。ルドルフ皇帝はこんな小細工をする人物ではありません。
スカイ君は溜め息を吐いていました。
「……どうなっても知らねぇぜ」
教会の周囲で雪かかきをしていると、赤いマーメイドドレスを着た貴婦人が歩いてきたのです。
その貴婦人はローズベル様。
リベリオン帝国の皇后となる御方でした。
「ボスコ、ダーク・スカイは重体よ。明日のお祈りの時間はあなたが担当しなさい」
ローズベル様はそうおっしゃられました。
僕は戸惑いましたが、深々と礼をしました。
「承知しました」
ローズベル様が歩き去るまで、頭を下げていました。
スカイ君の様子を知りたかったのですが、お祈りの時間は大切です。僕は翌日の準備をする必要がありました。
教会の中には、スカイ君が連れてきた被災者たちや戦災孤児たちがいました。皆さん寒さに震えていましたが、互いに身を寄せ合って夜を過ごそうとしていました。
その中に、リトスもいましたね。
暖炉に火を入れていましたが、凍えていましたね。
少しでも温かな場所を提供したくて、地下へ案内しようとしました。その時に、おいっと声を掛けられました。
軍人たちがいました。大きな鍋を二人がかりで持っていました。
鍋には温かなスープが並々と入っていました。
「ここに連れてこられた人間たちに飲ませろと言われている」
軍人の口調はトゲトゲしかったのですが、被災者たちや戦災孤児たちは歓声をあげたものです。皆さん温かいものが欲しかったのでしょう。
そんな時に、底知れないほど低い声がしました。重体で休んでいるはずのスカイ君が立っていました。
「てめぇらから飲めよ。しばらくして倒れなかったら、他の奴らにも飲ませてやる」
軍人たちはひどく怯えた表情になりました。
「我々が飲んでいいものではないと言われています」
「じゃあ俺やボスコが飲むか?」
そう言って、銀色の針を取り出しました。スープに付けると、黒くなりました。
被災者たちや戦災孤児たちは悲鳴をあげたものです。僕も絶句しました。
スカイ君は、軍人たちを睨みます。
「毒が入ったスープを飲ませるつもりだったんだな」
「こ、これは……その……」
「誰の差し金だ? 場合によっては力づくで聞き出すぜ」
スカイ君の詰問に、軍人たちは口ごもりました。口が裂けても言えないのでしょう。
スカイ君は確信したように頷きました。
「王城に行ってくる。毒入りスープは広場にでも捨てておけ。俺がここに連れてきた人間に一人でも異変があれば、神に召される覚悟を決めたとみなすぜ」
軍人たちは、スカイ君の背中を見送りながら、コクコクと頷いていました。
僕はスカイ君についていく事にしました。彼の足取りが、わずかにふらついていたからです。
僕の足音に気づいたのでしょう。
スカイ君は舌打ちをしました。
「てめぇは教会に残ってろよ」
「そうもいきません。もしも途中で倒れたら凍死してしまいます」
「いらねぇ心配してる暇があったら仕事しろよ」
「あなたこそ神官の仕事をするべきでしょう」
スカイ君は苦笑しました。
「野暮用があるんだ。今回は見逃してくれ」
「軍人たちに毒入りスープを持たせた人間の元に行くのですね」
「そんな事は言ってないぜ」
あなたの考える事はだいたい分かりますよ。
そんな言葉を飲み込んで、僕は素知らぬ顔をして口笛を吹きました。
ひたすら口笛を吹いて、ついていきました。
毒入りスープを持たせた人間が誰なのか、軍人たちの反応から見当がつきます。複数の屈強な軍人が恐れおののく人物は、リベリオン帝国でごく一握りです。
スカイ君を含めたローズ・マリオネットたち、ルドルフ皇帝、そしてローズベル様です。
ローズ・マリオネットたちは、スカイ君を除いて、リベリオン帝国中央部の軍人たちに連絡を取るのは困難です。ルドルフ皇帝はこんな小細工をする人物ではありません。
スカイ君は溜め息を吐いていました。
「……どうなっても知らねぇぜ」
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