蜜餐〜一途な狼騎士は塩対応の妖精娼婦を堪能する〜

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3 hors-d'œuvreー前菜ー

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 ベッドに腰掛けると、大きな身体に包まれるように抱き締められる。まるで恋人同士かのように優しく抱擁されて、エレノアは逃げ出したくなるのをグッと堪こらえた。まさか男がエレノア相手にこの手のセックスをしたがるとは思っていなかったので、少し動揺してしまう。

(うぅ、恋人っぽいセックス苦手なのに……)

「あんた、名前は?」
「……エレノアです」
「エレノア……」

 口の中で転がすように呟かれた自分の名前に、エレノアの鼓動が跳ねる。

(何でだろう。何だか嫌な予感がする……これ以上近づきたくない、ような……)

 思わず身体を強張らせるが、まさか今になってやっぱり無理ですと言うわけにもいかない。

「俺はオーウェン。オウと呼んでくれ。……エリーと呼んでも?」
(嫌です、って言えたらいいのに……いっそのこと言っちゃう?)

 だが相手は騎士団の副団長だ。ここで面倒事にするよりも、さっさと承諾してサクッと終わらせてしまった方がいいだろうと判断する。

「……はい」

 渋々、という感じで答えたにも関わらず、男の顔が綻んだ。まさかそんな反応をされるとは思わなかったので、更に身体を強張らせてしまう。

「エリー……」

 甘い、という表現がしっくりくるような声音で囁かれ、頬を優しく撫でられる。そのままそっと唇同士が触れ合った瞬間、全身に電流が走った。驚いて距離を取ろうとすると、逞しい腕に阻まれて分厚い胸板に抱き寄せられる。そのまま後頭部を支えるように大きな手を回されたと思ったら、逃げようとした罰とでも言うように優しく唇を吸われる。

(こんなキス、知らない……)

 苦しくはないが逃げられもしない絶妙な力で拘束されたまま、慈しむように唇を貪られる。
 口付けの合間にそっと目を開けると、男と目が合った。燃えるような熱い視線に晒されて、体の奥が疼く。

(……綺麗な金色の瞳)

 もしかしたら途中で本性を現すかもしれない、とまだどこかで思っていたが全くの思い違いだったようだ。この男は、見た目通りの捕食者だった。
 これからエレノアは男に貪られてしまうのだろう。今まで経験したことがないほど深く、激しく。

(ど、しよ……すごく気持ちいい)

 夢心地で口付けを受け入れていたら、そっと口内に男の舌が入り込んできた。肉厚の舌で舌を絡め取られ、唾液が溢れそうになるとすかさず啜られる。何度も何度も角度を変えながら貪られるうちに、すっかり身体から力が抜けてしまった。

 延々と続く淫靡な口づけに太ももを擦り合わせそうになった頃、ようやく唇が解けた。唇が腫れてしまったのではないかと思うくらい濃厚な口づけだった。 

(こんなに長い時間キスしたの、初めてだな)

 恋人っぽい雰囲気を演出するのが苦手ということもあり、エレノアは普段、頼まれた時に最低限しか客と口づけは交わさない。客の方もそれ以上要求してくることがなかったので、これほど濃厚な口づけはしたことがなかった。

(今までで一番気持ちいいキスだった……)

 余韻に浸っていると、分厚い胸板に顔を押し付けられるようにして抱き締められる。

「抱いてもいいか?」
(なんで娼婦相手にわざわざ聞くんだろ。というか、すごく心臓バクバクしてる)

 力強く脈打つ心臓の音を聞きながら、小さく頷く。するとさらに強く抱き締められて、息が詰まりそうになる。

「あ、あのっ、苦しいです……」
「っ、すまん……!」
(なんで緊張してるんだろ?)

 騎士団副団長ともあれば、数多の美女が言い寄ってくるに違いない。口づけだってこれほど上手いのだから、相当場数を踏んでいるだろう。それなのにエレノア相手に緊張なんてするものだろうか。
 チラッと見上げると、男が薄ら頬を染めて目を逸らした。

(不思議な人……ぶっきらぼうかと思ったら意外と紳士的で、情熱的に振舞ったと思ったら今度は緊張してる)

 厳つい第一印象からは想像できないほど感情豊かでギャップがある。これはもうあちこちで女性を虜にしてきたに違いない。客には絶対惚れないと強く心に決めているエレノアでさえ、うっかりときめいてしまいそうになる。

(嫌な予感的中か……気を引き締めていこう)


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