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8 fromageーチーズー
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目を覚ますと窓辺が夕日で照らされていた。
エレノアは見間違えかと思って一度目をつむり、もう一度目を開けたが、やはり西日が傾いていた。
「嘘でしょ……」
こんなに寝てしまったのは初めてだ。どれだけ絶倫の客を相手にしても精々昼まで眠って体力を回復するくらいだったのに。それなのに、昨日の客は規格外過ぎた。
「お腹空いた……」
情けない声を出しながら、どうにか最低限身なりを整える。客の前に出る時以外はどの娼婦も部屋着でウロウロしているので、そんなに取り繕う必要はないのが今はありがたい。
野暮ったいけれど着心地の良いリネンのワンピース姿で食堂に向かうと、中途半端な時間ということもありそれほど混んではいなかった。もうちょっと遅ければ接客前に腹ごしらえする娼婦でごった返していたかもしれないので、少し安心する。
(昨日のこと、詮索されると面倒だな)
昨日は相手が相手だったので、全く嫌味を言われないように躱すのは難しいだろう。それでもこうして静かに過ごしていれば、いくらかマシに違いない。
空腹を訴える胃に好物のビーフシチューを流し込み、デザートのラズベリーを口に含んだ時だった。
「あら~エリーちゃん、こんなとこにいたのねぇ!」
その陽気な声音に思わず肩をビクつかせる。
「もぅ、やーねぇ! オーウェン様といい関係になったんだったら、教えてくれてもいいのにぃ~♡」
甘ったるい口調で話しかけてきたのは、娼館の女主人、ミーナだった。
色気を垂れ流しながらしなだれかかられると、独特な甘い香りが鼻腔を擽る。エレノアはこの香りが少し苦手だったが、ミーナ曰く、雄を誘惑する魅惑の香りらしい。
「ミーナさん、あのっ!」
(周りの姐さんたちの目が怖いんですけどー!)
ミーナの余計な一言のせいで、何人かの娼婦がエレノアを今にも刺殺しそうな目で見ている。
(ひぇっ!あの人やっぱめちゃくちゃ人気だったんだ…… でも私、昨日相手しただけだし、それ以外何もないのに)
逃げ場を無くした小動物のように震えていると、ミーナが爆弾を投下した。
「オーウェン様ったら、この先一ヶ月の予定丸々抑えるって仰ったのよ? もぉわたくしびっくりしちゃったわぁ~! エリーちゃんにゾッコンよぉ~、ゾ・ッ・コ・ン♡」
(そんな大事なことここで言わないでー! あと微妙にウザいのやめてー!!)
ミーナは致命的に空気が読めない。読めないのだが、その愛嬌とナイスバディで全て丸く収めてしまう元トップ娼婦魔性の女だ。悪気がないのはわかっているが、テーブルの下で思わず拳を握りしめてしまう。
「今晩は九時にいらっしゃるんですってぇ~♡ あ~ん、いいわねぇ~! わたくしも熱烈に愛された~い♡」
言いたいことだけ言うと、じゃあねぇ~♡ なんて軽い調子で去っていく。
ミーナの消えた食堂がシンと静まり返るが、ミーナがうるさすぎた反動ではない。気のせいでも何でもなく、命を狙われている。
(まだ死にたくない!!)
幸運なことにほぼ食べ終わっていたので、光の速さで片付けをして食堂を後にした。
時刻はちょうど夜九時。
エレノアはソワソワしながらベッドの上で待機していた。今日のランジェリーはグリーンで、エレノアの瞳の色とお揃いだ。
(べ、別に期待なんかしてない。急にやっぱ飽きたって言われても大丈夫! よくあることだから!)
上客の常連客が初めてのエレノアは、自分に言い聞かせながら時計を何度も確認する。
「エリーちゃん、オーウェン様がいらっしゃったわよ~♡」
(え、ミーナさんがご案内してるの!?)
普段は下働きのヘビ族の青年が案内するのだが、さすが騎士団の副団長だ。相手の凄さを再確認し、エレノアは冷や汗が止まらない。
「よ、ようこそ、オーウェン様」
顔が引き攣っているのが分かったがどうしようもない。普段無愛想なエレノアにはこれが精一杯だ。
昨日ぶり、いや今朝ぶりに会った男は仕事帰りに直接寄ったのか、騎士団の隊服を着たままだった。
「……オウと呼ぶように言ったはずだが?」
満面の笑みを浮かべていたと思ったら一転、不機嫌そうな男の声音に背筋が強張る。
「オ、オウ……様?」
「違うだろ?」
長い脚でサッと詰め寄られ、腕の中に閉じ込められてしまう。
「あ、あのっ……!」
「あらあらあら~♡」
(ミ、ミーナさんまだいたの!? お願いだからドア閉めて出てってー!)
「エリー?」
大きな手で頬を撫でられ顎を掴まれた。そのまま口付けられてしまいそうなほど顔が近づいたと思ったら、触れそうで触れない距離で見つめられる。
「俺の名前を忘れたのか?」
(いやいやいや、覚えてたでしょー!?)
どうしても呼び捨てさせたいらしく、鋭い視線に晒され続けたエレノアは冷や汗をかく。
(ま、まぁ昨日も呼んだし、別に良いよね。っていうかなんでこんなに緊張してるんだろう? そ、そうだ。今更この人がすごい人だって実感したからだ。そう、ただそれだけ)
すっかり冷たくなった手を握りしめながら、口を開く。
「オ、ウ……」
消え入りそうなほど小さな声だったが、男にはしっかり届いたようだ。
まるで世界でただ一つの宝物を見つめているかのように、金色の瞳を輝かせて微笑んだ。
(ま、眩しい……!)
反射で目を逸らしたエレノアの反応が気に入らなかったのか、男はムッとした表情を浮かべると噛みつくように口付けてきた。
「あらあら♡ まぁまぁ~!」
(ミーナさん、まだいたのー!?)
流石にこれ以上覗くつもりはないのか、すぐに扉が閉まる音がしたが、熱烈な口付けを見られてしまったエレノアは羞恥心と恐怖心で焼け焦げそうだった。
(絶対言いふらされる! 明日が私の命日になるー!)
「ちゅ、……何考えてるんだ? 俺に集中しろ、エリー」
「ぁっ、えっ?」
「はぁ、昨日無理させたから今日はやめておこうと思ったんだが……そんな反応されると昨日のことを思い出させてやりたくなる」
「あ、や、大丈夫です! 全て覚えていますし、しっかり集中しますので!!」
「本当か?」
訝しげに目を細める男に、エレノアは全力で首肯する。
するとその反応に満足したのか、男は小さく微笑むとエレノアをぎゅっと抱きしめた。大きな身体からはみ出るように、ふさふさのしっぽが揺れているのが見える。
(た、助かった……今日が命日になるところだった……)
あまり男を刺激するとまずいと思い、エレノアも男の背に腕を回す。すると風を感じるほど高速でしっぽが揺れ始め、男の腕の力が強まった。
(え、そんなに嬉しいの?)
男がなかなか離してくれないのでじっとしていたが、しっぽはずっとご機嫌そうに揺れている。
(なんか、ちょっと可愛いかも……?)
男のことは何とも言えないが、男のしっぽだけは可愛く思えてきたエレノアは、気付けば身体の力を抜いてすっかり男に身体を預け切っていた。
「はぁ……可愛い。俺のエリーが可愛い。こんなんで今日我慢できるのか? いや、でもがっつき過ぎると逃げられるとアドバイスされたし、あいつらの経験を無下にはできない……」
頭上で男が何かぶつぶつ呟いているが、よく聞こえない。好奇心が掻き立てられたエレノアは、背伸びをして男の顔を覗き込む。
「どうしたんですか?」
「……っ!」
男が一瞬目を見開いたと思ったら、目元を赤く染める。
(え? 何か照れる要素あった?)
一つ深呼吸をした男に身体を引き離されると、昨晩のように手を引かれてベッドまで誘導される。
(まずい、どうしよう……また昨日みたいにされちゃったら)
今日はしない、というようなことを男は言っていたが、まさか本当にしないわけではないだろう。一応体力は回復しているが、それでも昨日みたいに激しくされて耐えられる気はしないので、必死に脳内で作戦会議を繰り広げる。すると、額に柔らかい感触が落ちてきた。
「ちょっとシャワー浴びてくる。ここで待ってろ」
「えっ、あ、でしたら私も、」
「いや、いい」
短く言い捨てると、男がシャワールームに消える。
いくらセックスへのやる気が薄いからと言って、接客をおざなりにするつもりはなかった。まるで仕事を放棄したようで罪悪感が湧く。
ベッドの上でやきもきしていると、それほど経たないうちに男がシャワールームから出てきた。髪の毛まで洗ったのか、ふわふわの耳までしっとり濡れている。
エリーが立ち上がろうとしたのを手で制した男は、サッと身体を拭くとベッドに腰掛けてエレノアを抱き締めてきた。
「はぁ……長かった」
「……何かあったのですか?」
「今日一日、あんたに会いたくてたまらなくて、仕事が終わるのが待ち遠しかった」
耳元で艶っぽく囁かれると、柄にもなく鼓動が跳ねる。
(い、一日というか半日くらいしか経ってない気がするんですけど……)
囁かれた耳元と頬が熱くて仕方なくて、男の顔を見ることすらできず、逞しい胸板に顔を埋める。
「エリー……」
甘ったるい声で名前を呼ばれ、ほとんど無意識のうちに顔を上げると、しっとり湿った男の唇が優しく触れた。
このまま口付けが深まるのを覚悟していたエレノアは、男の顔がすぐに離れていったので訝しげに男を見つめてしまう。
「うっ、またそんな可愛い顔をして……でもだめだ。今日はしないって決めたから」
「あの……本気ですか?」
「ああ、昨日は流石にやり過ぎたと自覚している」
(よかった……! 常識を持ち合わせてくれていた! でも、そしたら何でわざわざ今日ここに来たんだろう?)
「まだ疲れてるんじゃないか? 横になろう」
(え、どういうこと?)
エリーは戸惑いながらも男に倣ってベッドに横たわる。すると男の腕が伸びてきて、エレノアを後ろから抱きしめた。
「あ、あの……」
「大丈夫、休むだけだから」
そう言ったっきり男は何も言わず、ただエレノアの腕を撫でたり項や肩に口付けたりしている。
(本当に寝るだけ? 何もしないの?)
しばらくの間、いつ男の手が不埒に動き出してもいいように身構えていたが、背後から規則的な呼吸が聞こえてくるとつられてウトウトしてしまう。
(まぁ、こんな日もあっていいよね……)
温かくて安心できる腕に抱かれたまま、エレノアはそっと意識を手放した。
エレノアが目を覚ますと、窓辺が夕日で照らされて……はいなかった。
(あれ……あ、そうだ! 昨日は絶倫対応なしでめちゃくちゃ穏やかに眠れたんだった!)
すっかり軽くなった身体を起こす。ベッドに男の姿はないし、体温も全く残っていない。それほど遅い時間ではないので、早朝にでも出て行ったのだろうか。
(やっぱ行為無しじゃあ飽きちゃうよね……)
知らず知らずのうちにため息をつき、ベッドサイドテーブルに目を向ける。
(これって……)
まさかと思って手に取ってみると、案の定男の書き置きだった。曰く、急に遠征の予定が入ったので二週間ほど留守にするとのこと。
更に、エレノアの一ヶ月分の予定は押さえてあるから他の客は絶対取らないようにという旨が、随分大きな文字で注意書きしてある。
(本当に先払いしちゃったんだな……)
エレノアには未だ嘗てこんな上客がついたことがなかったので、こういう場合の対応がよくわからない。料金も支払われていることだし、まさかミーナも男の意向を無視するようなことはしないだろうが、二週間もどう過ごせば良いのだろう。
とりあえずミーナに状況を知らせようと思い、彼女の執務室へ向かうことにした。昨日の食堂の一件で懲りたので、うっかり姐さんたちに会わないように気配を探りながら進み、必要最低限の音量が出るように扉をノックする。
「はーい、どうぞぉ~♡」
いつも通り陽気な声音が聞こえてきて、思わず気が抜けてしまう。
「失礼します」
「あらぁ、今日は早いのねぇ~」
ニコニコ、いや若干ニヤニヤしながらミーナに見つめられて、エリーは一瞬言葉に詰まるが、これ以上からかわれない様すぐに口を開く。
「ミーナさん、オウ……オーウェン様ですが、急に遠征の予定が入ったそうで、二週間はこちらに来られないそうです」
「あーそれねぇ、聞いてるわよぉ♡ 今朝、何回も念押しされたのよ? エリーちゃんにお客さん付けないでって! んもぅ、愛されてるぅ♡」
まるで恋する乙女のように目を輝かせながら熱弁するミーナに、エレノアの顔が引き攣る。
「ミーナさん……この状況面白がってますよね?」
「あったりまえじゃな~い! 折角エリーちゃんに春が来たのよぉ? まぁ、ここを離れて行っちゃうのは悲しいけどぉ、エリーちゃんが幸せならそれでいいものぉ♡」
(……ん? 今何て言った?)
「あの……ここを離れるってどういう意味でしょうか……?」
「あら?」
ミーナが優雅な仕草で口元に手を添え、瞬きをする。
「もしかしてエリーちゃん知らないの?」
「何がですか?」
「あらぁ~、あらあらあらぁ~♡」
先ほどよりもニヤケ具合が増したミーナに若干の居心地悪さを感じつつも、エレノアには何のことだかさっぱりわからない。
教えてくれるかと思って待ってみても、返ってきたのは意味深な言葉だけだった。
「わたくしからは言えないわぁ♡ 直接オーウェン様にお聞きなさい?」
とりあえず二週間、及び男が帰ってくるまで自由時間となったエリーは、部屋でゴロゴロすることにした。ミーナの言葉が気になるが、考えてもよくわからないし、何となくあまり考えない方がいい気がして、積読になっていたロマンス小説を手に取ってみる。
「エリーさーん、お届けものでーす!」
暫く読書に耽っていると、ヘビ族の青年、リュークが声を掛けてきた。扉を開くと同時に、視界に鮮やかな青色が飛び込んでくる。
「こちら、お客様からの贈り物らしいっす。いやー初めて見ましたよ青い薔薇なんて。綺麗っすねー! あ、あと手紙っす」
リュークに礼を言って受け取ると、すぐさま扉に鍵をかける。基本的に誰も訪ねてきたりはしないが、誰かに見られたら殺意に晒されそうな気がしたので自衛することにした。
ようやくホッとしたエレノアは、窓際のソファに腰掛けると手紙を開く。
『親愛なるエリーへ
今朝は挨拶もせず旅立ってしまい、すまなかった。
本当は出発前にもう一度愛し合いたかったが、
寝顔があまりに可愛すぎて起こすことができなかった。
遠征は二週間と伝えたが、どうにか十日で終わらせようと思う。
それまでは大人しく俺の帰りを待っていてくれ。
すぐに帰ってくる。』
(何これ……まるで恋人に送る手紙みたい。ってまさか! ……でも青い薔薇の花言葉って)
エレノアは先ほどまで読み進めていたロマンス小説を手に取り、何ページか戻って挿絵付きのページを開く。
そこには、ヒョウ族の騎士が跪き、ネコ族の美しいお姫様に青い薔薇を渡す様子が描かれていた。
『例え不可能と笑われようが、俺の気持ちは変わらない。
貴女と出会った瞬間、貴女が俺の運命だと知ったんだ』
そう言って騎士が求婚するのだ。
(え? あの人が私に一目惚れしたってこと? ……いやいや、そんな馬鹿な。私のどこにも一目惚れの要素なんかない。きっと気のせい。そう、気のせい)
青い薔薇を握ったまま、エリーは部屋の中を意味もなく行ったり来たりしていたが、ついに我慢できなくなって街へ散策に行くことにした。このまま部屋にいたらおかしなことを考えてしまいそうで怖くなったのだ。
(そうだ、花瓶でも買おう)
そして普段は行かない、ちょっと高級なインテリアショップに行こうと角を曲がった時だった。
「あれ、エリー?」
「……? え、お姉ちゃん!?」
最愛の恋人と暮らしているはずのニッキーに鉢合わせた。
「久しぶりじゃん! 元気にしてる?」
「え……っと」
「ん?」
「いや、変わりないよ!」
「ハハッ、嘘下手すぎ」
ちょっとお茶でもしようと手を引かれ、迷う隙も与えられなかった。
手近な喫茶店に入って注文を済ませると、ニッキーに目線で促される。エレノアは躊躇いつつも、仕方なく事のあらましを話すことにした。
話が終わると、運ばれてきたコーヒーを一口啜ってからニッキーが口を開く。
「へぇ……とうとうエリーにも春が来たんだな」
「ミーナさんみたいなこと言わないで」
「そうなの? あ、そう言えばミーナさん元気?」
「元気だよ。……今日も、私が娼館から出て行くとか何とか意味わかんない冗談言うくらいには元気」
「まぁ、そうなるだろうね」
「え、なんで? 私まだ辞める気ないんだけど」
「へ? それ本気で言ってる?」
ニッキーが右の眉毛を器用に上げる。何となく居心地の悪くなったエレノアは、好物のチーズケーキを口に入れ、丁寧に咀嚼して気分を変えようとしたが、いつも幸せな気分にしてくれるケーキの魔法が今日は全く効かない。
「どうしたの? 何をそんなに躊躇ってんの?」
「別に何も、」
「嘘。エリーは嘘が下手だし、そもそもボクに隠し事できると思ったの?」
言葉に詰まったエレノアは、恨めしそうにチーズケーキを見つめながら二口目を咀嚼する。
「そんなんじゃあ折角のケーキがまずくなるよ? 何を考えてるのかさっさと吐きな」
エレノアはしばらく沈黙を守ったが、椅子に大きくもたれ掛かりながら呆れたようにニッキーに言われてしまい、渋々重い口を開いた。
「怖いんだもん」
「何が?」
「…………好きになるのが」
消え入りそうに小さい声だった。
その言葉を聞いて、ニッキーが憐憫のような呆れのような表情を浮かべる。
「拗らせてんねぇ」
「だって! ……だって」
「大丈夫、ボクもそうだったから」
(お姉ちゃんが? 嘘だ、いつも余裕があって自信に溢れてるのに……)
「信じらんない? まぁ随分虚勢張って生きてたからなぁ。でもリズに会ってわかったんだ。やっぱ、自分が本当に求めてたものはあったんだって。ボクは間違ってなかったんだって」
そう言いながら柔らかく微笑んだニッキーが、何かに気づいたように目を見開き大きく手を振る。
エレノアも目線をそちらに向けると、可愛らしいウサギ族の少女、リズがこちらに向かってきていた。
「次はエリーの番だよ」
まるで、エレノアにあの日の言葉を思い出させるように、力強く頷く。
「でも……」
「大丈夫。エリーなら絶対大丈夫だ」
自信に満ち溢れた声でそう言い切ったニッキーは、じゃあまたね、と言うと最愛の少女の元へと迷いなく向かって行く。
その光景があまりにも眩しすぎて、エレノアは二人の後ろ姿から目が離せなかった。
エレノアは見間違えかと思って一度目をつむり、もう一度目を開けたが、やはり西日が傾いていた。
「嘘でしょ……」
こんなに寝てしまったのは初めてだ。どれだけ絶倫の客を相手にしても精々昼まで眠って体力を回復するくらいだったのに。それなのに、昨日の客は規格外過ぎた。
「お腹空いた……」
情けない声を出しながら、どうにか最低限身なりを整える。客の前に出る時以外はどの娼婦も部屋着でウロウロしているので、そんなに取り繕う必要はないのが今はありがたい。
野暮ったいけれど着心地の良いリネンのワンピース姿で食堂に向かうと、中途半端な時間ということもありそれほど混んではいなかった。もうちょっと遅ければ接客前に腹ごしらえする娼婦でごった返していたかもしれないので、少し安心する。
(昨日のこと、詮索されると面倒だな)
昨日は相手が相手だったので、全く嫌味を言われないように躱すのは難しいだろう。それでもこうして静かに過ごしていれば、いくらかマシに違いない。
空腹を訴える胃に好物のビーフシチューを流し込み、デザートのラズベリーを口に含んだ時だった。
「あら~エリーちゃん、こんなとこにいたのねぇ!」
その陽気な声音に思わず肩をビクつかせる。
「もぅ、やーねぇ! オーウェン様といい関係になったんだったら、教えてくれてもいいのにぃ~♡」
甘ったるい口調で話しかけてきたのは、娼館の女主人、ミーナだった。
色気を垂れ流しながらしなだれかかられると、独特な甘い香りが鼻腔を擽る。エレノアはこの香りが少し苦手だったが、ミーナ曰く、雄を誘惑する魅惑の香りらしい。
「ミーナさん、あのっ!」
(周りの姐さんたちの目が怖いんですけどー!)
ミーナの余計な一言のせいで、何人かの娼婦がエレノアを今にも刺殺しそうな目で見ている。
(ひぇっ!あの人やっぱめちゃくちゃ人気だったんだ…… でも私、昨日相手しただけだし、それ以外何もないのに)
逃げ場を無くした小動物のように震えていると、ミーナが爆弾を投下した。
「オーウェン様ったら、この先一ヶ月の予定丸々抑えるって仰ったのよ? もぉわたくしびっくりしちゃったわぁ~! エリーちゃんにゾッコンよぉ~、ゾ・ッ・コ・ン♡」
(そんな大事なことここで言わないでー! あと微妙にウザいのやめてー!!)
ミーナは致命的に空気が読めない。読めないのだが、その愛嬌とナイスバディで全て丸く収めてしまう元トップ娼婦魔性の女だ。悪気がないのはわかっているが、テーブルの下で思わず拳を握りしめてしまう。
「今晩は九時にいらっしゃるんですってぇ~♡ あ~ん、いいわねぇ~! わたくしも熱烈に愛された~い♡」
言いたいことだけ言うと、じゃあねぇ~♡ なんて軽い調子で去っていく。
ミーナの消えた食堂がシンと静まり返るが、ミーナがうるさすぎた反動ではない。気のせいでも何でもなく、命を狙われている。
(まだ死にたくない!!)
幸運なことにほぼ食べ終わっていたので、光の速さで片付けをして食堂を後にした。
時刻はちょうど夜九時。
エレノアはソワソワしながらベッドの上で待機していた。今日のランジェリーはグリーンで、エレノアの瞳の色とお揃いだ。
(べ、別に期待なんかしてない。急にやっぱ飽きたって言われても大丈夫! よくあることだから!)
上客の常連客が初めてのエレノアは、自分に言い聞かせながら時計を何度も確認する。
「エリーちゃん、オーウェン様がいらっしゃったわよ~♡」
(え、ミーナさんがご案内してるの!?)
普段は下働きのヘビ族の青年が案内するのだが、さすが騎士団の副団長だ。相手の凄さを再確認し、エレノアは冷や汗が止まらない。
「よ、ようこそ、オーウェン様」
顔が引き攣っているのが分かったがどうしようもない。普段無愛想なエレノアにはこれが精一杯だ。
昨日ぶり、いや今朝ぶりに会った男は仕事帰りに直接寄ったのか、騎士団の隊服を着たままだった。
「……オウと呼ぶように言ったはずだが?」
満面の笑みを浮かべていたと思ったら一転、不機嫌そうな男の声音に背筋が強張る。
「オ、オウ……様?」
「違うだろ?」
長い脚でサッと詰め寄られ、腕の中に閉じ込められてしまう。
「あ、あのっ……!」
「あらあらあら~♡」
(ミ、ミーナさんまだいたの!? お願いだからドア閉めて出てってー!)
「エリー?」
大きな手で頬を撫でられ顎を掴まれた。そのまま口付けられてしまいそうなほど顔が近づいたと思ったら、触れそうで触れない距離で見つめられる。
「俺の名前を忘れたのか?」
(いやいやいや、覚えてたでしょー!?)
どうしても呼び捨てさせたいらしく、鋭い視線に晒され続けたエレノアは冷や汗をかく。
(ま、まぁ昨日も呼んだし、別に良いよね。っていうかなんでこんなに緊張してるんだろう? そ、そうだ。今更この人がすごい人だって実感したからだ。そう、ただそれだけ)
すっかり冷たくなった手を握りしめながら、口を開く。
「オ、ウ……」
消え入りそうなほど小さな声だったが、男にはしっかり届いたようだ。
まるで世界でただ一つの宝物を見つめているかのように、金色の瞳を輝かせて微笑んだ。
(ま、眩しい……!)
反射で目を逸らしたエレノアの反応が気に入らなかったのか、男はムッとした表情を浮かべると噛みつくように口付けてきた。
「あらあら♡ まぁまぁ~!」
(ミーナさん、まだいたのー!?)
流石にこれ以上覗くつもりはないのか、すぐに扉が閉まる音がしたが、熱烈な口付けを見られてしまったエレノアは羞恥心と恐怖心で焼け焦げそうだった。
(絶対言いふらされる! 明日が私の命日になるー!)
「ちゅ、……何考えてるんだ? 俺に集中しろ、エリー」
「ぁっ、えっ?」
「はぁ、昨日無理させたから今日はやめておこうと思ったんだが……そんな反応されると昨日のことを思い出させてやりたくなる」
「あ、や、大丈夫です! 全て覚えていますし、しっかり集中しますので!!」
「本当か?」
訝しげに目を細める男に、エレノアは全力で首肯する。
するとその反応に満足したのか、男は小さく微笑むとエレノアをぎゅっと抱きしめた。大きな身体からはみ出るように、ふさふさのしっぽが揺れているのが見える。
(た、助かった……今日が命日になるところだった……)
あまり男を刺激するとまずいと思い、エレノアも男の背に腕を回す。すると風を感じるほど高速でしっぽが揺れ始め、男の腕の力が強まった。
(え、そんなに嬉しいの?)
男がなかなか離してくれないのでじっとしていたが、しっぽはずっとご機嫌そうに揺れている。
(なんか、ちょっと可愛いかも……?)
男のことは何とも言えないが、男のしっぽだけは可愛く思えてきたエレノアは、気付けば身体の力を抜いてすっかり男に身体を預け切っていた。
「はぁ……可愛い。俺のエリーが可愛い。こんなんで今日我慢できるのか? いや、でもがっつき過ぎると逃げられるとアドバイスされたし、あいつらの経験を無下にはできない……」
頭上で男が何かぶつぶつ呟いているが、よく聞こえない。好奇心が掻き立てられたエレノアは、背伸びをして男の顔を覗き込む。
「どうしたんですか?」
「……っ!」
男が一瞬目を見開いたと思ったら、目元を赤く染める。
(え? 何か照れる要素あった?)
一つ深呼吸をした男に身体を引き離されると、昨晩のように手を引かれてベッドまで誘導される。
(まずい、どうしよう……また昨日みたいにされちゃったら)
今日はしない、というようなことを男は言っていたが、まさか本当にしないわけではないだろう。一応体力は回復しているが、それでも昨日みたいに激しくされて耐えられる気はしないので、必死に脳内で作戦会議を繰り広げる。すると、額に柔らかい感触が落ちてきた。
「ちょっとシャワー浴びてくる。ここで待ってろ」
「えっ、あ、でしたら私も、」
「いや、いい」
短く言い捨てると、男がシャワールームに消える。
いくらセックスへのやる気が薄いからと言って、接客をおざなりにするつもりはなかった。まるで仕事を放棄したようで罪悪感が湧く。
ベッドの上でやきもきしていると、それほど経たないうちに男がシャワールームから出てきた。髪の毛まで洗ったのか、ふわふわの耳までしっとり濡れている。
エリーが立ち上がろうとしたのを手で制した男は、サッと身体を拭くとベッドに腰掛けてエレノアを抱き締めてきた。
「はぁ……長かった」
「……何かあったのですか?」
「今日一日、あんたに会いたくてたまらなくて、仕事が終わるのが待ち遠しかった」
耳元で艶っぽく囁かれると、柄にもなく鼓動が跳ねる。
(い、一日というか半日くらいしか経ってない気がするんですけど……)
囁かれた耳元と頬が熱くて仕方なくて、男の顔を見ることすらできず、逞しい胸板に顔を埋める。
「エリー……」
甘ったるい声で名前を呼ばれ、ほとんど無意識のうちに顔を上げると、しっとり湿った男の唇が優しく触れた。
このまま口付けが深まるのを覚悟していたエレノアは、男の顔がすぐに離れていったので訝しげに男を見つめてしまう。
「うっ、またそんな可愛い顔をして……でもだめだ。今日はしないって決めたから」
「あの……本気ですか?」
「ああ、昨日は流石にやり過ぎたと自覚している」
(よかった……! 常識を持ち合わせてくれていた! でも、そしたら何でわざわざ今日ここに来たんだろう?)
「まだ疲れてるんじゃないか? 横になろう」
(え、どういうこと?)
エリーは戸惑いながらも男に倣ってベッドに横たわる。すると男の腕が伸びてきて、エレノアを後ろから抱きしめた。
「あ、あの……」
「大丈夫、休むだけだから」
そう言ったっきり男は何も言わず、ただエレノアの腕を撫でたり項や肩に口付けたりしている。
(本当に寝るだけ? 何もしないの?)
しばらくの間、いつ男の手が不埒に動き出してもいいように身構えていたが、背後から規則的な呼吸が聞こえてくるとつられてウトウトしてしまう。
(まぁ、こんな日もあっていいよね……)
温かくて安心できる腕に抱かれたまま、エレノアはそっと意識を手放した。
エレノアが目を覚ますと、窓辺が夕日で照らされて……はいなかった。
(あれ……あ、そうだ! 昨日は絶倫対応なしでめちゃくちゃ穏やかに眠れたんだった!)
すっかり軽くなった身体を起こす。ベッドに男の姿はないし、体温も全く残っていない。それほど遅い時間ではないので、早朝にでも出て行ったのだろうか。
(やっぱ行為無しじゃあ飽きちゃうよね……)
知らず知らずのうちにため息をつき、ベッドサイドテーブルに目を向ける。
(これって……)
まさかと思って手に取ってみると、案の定男の書き置きだった。曰く、急に遠征の予定が入ったので二週間ほど留守にするとのこと。
更に、エレノアの一ヶ月分の予定は押さえてあるから他の客は絶対取らないようにという旨が、随分大きな文字で注意書きしてある。
(本当に先払いしちゃったんだな……)
エレノアには未だ嘗てこんな上客がついたことがなかったので、こういう場合の対応がよくわからない。料金も支払われていることだし、まさかミーナも男の意向を無視するようなことはしないだろうが、二週間もどう過ごせば良いのだろう。
とりあえずミーナに状況を知らせようと思い、彼女の執務室へ向かうことにした。昨日の食堂の一件で懲りたので、うっかり姐さんたちに会わないように気配を探りながら進み、必要最低限の音量が出るように扉をノックする。
「はーい、どうぞぉ~♡」
いつも通り陽気な声音が聞こえてきて、思わず気が抜けてしまう。
「失礼します」
「あらぁ、今日は早いのねぇ~」
ニコニコ、いや若干ニヤニヤしながらミーナに見つめられて、エリーは一瞬言葉に詰まるが、これ以上からかわれない様すぐに口を開く。
「ミーナさん、オウ……オーウェン様ですが、急に遠征の予定が入ったそうで、二週間はこちらに来られないそうです」
「あーそれねぇ、聞いてるわよぉ♡ 今朝、何回も念押しされたのよ? エリーちゃんにお客さん付けないでって! んもぅ、愛されてるぅ♡」
まるで恋する乙女のように目を輝かせながら熱弁するミーナに、エレノアの顔が引き攣る。
「ミーナさん……この状況面白がってますよね?」
「あったりまえじゃな~い! 折角エリーちゃんに春が来たのよぉ? まぁ、ここを離れて行っちゃうのは悲しいけどぉ、エリーちゃんが幸せならそれでいいものぉ♡」
(……ん? 今何て言った?)
「あの……ここを離れるってどういう意味でしょうか……?」
「あら?」
ミーナが優雅な仕草で口元に手を添え、瞬きをする。
「もしかしてエリーちゃん知らないの?」
「何がですか?」
「あらぁ~、あらあらあらぁ~♡」
先ほどよりもニヤケ具合が増したミーナに若干の居心地悪さを感じつつも、エレノアには何のことだかさっぱりわからない。
教えてくれるかと思って待ってみても、返ってきたのは意味深な言葉だけだった。
「わたくしからは言えないわぁ♡ 直接オーウェン様にお聞きなさい?」
とりあえず二週間、及び男が帰ってくるまで自由時間となったエリーは、部屋でゴロゴロすることにした。ミーナの言葉が気になるが、考えてもよくわからないし、何となくあまり考えない方がいい気がして、積読になっていたロマンス小説を手に取ってみる。
「エリーさーん、お届けものでーす!」
暫く読書に耽っていると、ヘビ族の青年、リュークが声を掛けてきた。扉を開くと同時に、視界に鮮やかな青色が飛び込んでくる。
「こちら、お客様からの贈り物らしいっす。いやー初めて見ましたよ青い薔薇なんて。綺麗っすねー! あ、あと手紙っす」
リュークに礼を言って受け取ると、すぐさま扉に鍵をかける。基本的に誰も訪ねてきたりはしないが、誰かに見られたら殺意に晒されそうな気がしたので自衛することにした。
ようやくホッとしたエレノアは、窓際のソファに腰掛けると手紙を開く。
『親愛なるエリーへ
今朝は挨拶もせず旅立ってしまい、すまなかった。
本当は出発前にもう一度愛し合いたかったが、
寝顔があまりに可愛すぎて起こすことができなかった。
遠征は二週間と伝えたが、どうにか十日で終わらせようと思う。
それまでは大人しく俺の帰りを待っていてくれ。
すぐに帰ってくる。』
(何これ……まるで恋人に送る手紙みたい。ってまさか! ……でも青い薔薇の花言葉って)
エレノアは先ほどまで読み進めていたロマンス小説を手に取り、何ページか戻って挿絵付きのページを開く。
そこには、ヒョウ族の騎士が跪き、ネコ族の美しいお姫様に青い薔薇を渡す様子が描かれていた。
『例え不可能と笑われようが、俺の気持ちは変わらない。
貴女と出会った瞬間、貴女が俺の運命だと知ったんだ』
そう言って騎士が求婚するのだ。
(え? あの人が私に一目惚れしたってこと? ……いやいや、そんな馬鹿な。私のどこにも一目惚れの要素なんかない。きっと気のせい。そう、気のせい)
青い薔薇を握ったまま、エリーは部屋の中を意味もなく行ったり来たりしていたが、ついに我慢できなくなって街へ散策に行くことにした。このまま部屋にいたらおかしなことを考えてしまいそうで怖くなったのだ。
(そうだ、花瓶でも買おう)
そして普段は行かない、ちょっと高級なインテリアショップに行こうと角を曲がった時だった。
「あれ、エリー?」
「……? え、お姉ちゃん!?」
最愛の恋人と暮らしているはずのニッキーに鉢合わせた。
「久しぶりじゃん! 元気にしてる?」
「え……っと」
「ん?」
「いや、変わりないよ!」
「ハハッ、嘘下手すぎ」
ちょっとお茶でもしようと手を引かれ、迷う隙も与えられなかった。
手近な喫茶店に入って注文を済ませると、ニッキーに目線で促される。エレノアは躊躇いつつも、仕方なく事のあらましを話すことにした。
話が終わると、運ばれてきたコーヒーを一口啜ってからニッキーが口を開く。
「へぇ……とうとうエリーにも春が来たんだな」
「ミーナさんみたいなこと言わないで」
「そうなの? あ、そう言えばミーナさん元気?」
「元気だよ。……今日も、私が娼館から出て行くとか何とか意味わかんない冗談言うくらいには元気」
「まぁ、そうなるだろうね」
「え、なんで? 私まだ辞める気ないんだけど」
「へ? それ本気で言ってる?」
ニッキーが右の眉毛を器用に上げる。何となく居心地の悪くなったエレノアは、好物のチーズケーキを口に入れ、丁寧に咀嚼して気分を変えようとしたが、いつも幸せな気分にしてくれるケーキの魔法が今日は全く効かない。
「どうしたの? 何をそんなに躊躇ってんの?」
「別に何も、」
「嘘。エリーは嘘が下手だし、そもそもボクに隠し事できると思ったの?」
言葉に詰まったエレノアは、恨めしそうにチーズケーキを見つめながら二口目を咀嚼する。
「そんなんじゃあ折角のケーキがまずくなるよ? 何を考えてるのかさっさと吐きな」
エレノアはしばらく沈黙を守ったが、椅子に大きくもたれ掛かりながら呆れたようにニッキーに言われてしまい、渋々重い口を開いた。
「怖いんだもん」
「何が?」
「…………好きになるのが」
消え入りそうに小さい声だった。
その言葉を聞いて、ニッキーが憐憫のような呆れのような表情を浮かべる。
「拗らせてんねぇ」
「だって! ……だって」
「大丈夫、ボクもそうだったから」
(お姉ちゃんが? 嘘だ、いつも余裕があって自信に溢れてるのに……)
「信じらんない? まぁ随分虚勢張って生きてたからなぁ。でもリズに会ってわかったんだ。やっぱ、自分が本当に求めてたものはあったんだって。ボクは間違ってなかったんだって」
そう言いながら柔らかく微笑んだニッキーが、何かに気づいたように目を見開き大きく手を振る。
エレノアも目線をそちらに向けると、可愛らしいウサギ族の少女、リズがこちらに向かってきていた。
「次はエリーの番だよ」
まるで、エレノアにあの日の言葉を思い出させるように、力強く頷く。
「でも……」
「大丈夫。エリーなら絶対大丈夫だ」
自信に満ち溢れた声でそう言い切ったニッキーは、じゃあまたね、と言うと最愛の少女の元へと迷いなく向かって行く。
その光景があまりにも眩しすぎて、エレノアは二人の後ろ姿から目が離せなかった。
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