600秒物語

ジキ・スズキ

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まずはイカの話(3)

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 プレアデス星団人とかプレアデス星人とかで検索して欲しい。縄文時代に地球を訪れて文明を授けてくれたとか、今では子孫が沢山いて芸能人にも何人かプレアデス星人がいるとか、心を改造すれば遠く400光年離れたプレアデス星人と交信できるとか、そんな記事やブログにあふれている。
 電波受けちゃっている人間の話はまともに受けとると、こっちまでおかしくなってしまう。私は腹がたってきた。

「あんたさあ、催眠術使って変な洗脳するのやめてくれないかなあ」
 僕が抗議するとプレアデス星団人(僕には単に生け贄オジサンに見える)とやらは、肩をすくめた。
「現実をまず認識した方がいい。お前は実際電波を交信しているではないか、と言っても実際は電波では無いがな。だが今は色々説明している時間が無い。ただ素直に私の指示に従って欲しい、でないと世界が終わるのだ」
 
 また世界の終わりだ。なんとも判断し難いが、話を聞くくらいはした方がいいかもしれない。
 
「これから世界の更新を行う。更新が一旦始まったら、お前が拒否した瞬間に世界が終わると考えて行動してくれ。これから更新に伴うパラメーターの変更画面が現れるが、これは私とお前が同時に行う。基本的には知識の乏しいお前は、私が入力したパラメーターに同意チェックを入れてくれればいい。しかし、お前が決めて私がチェックを入れる場合もある。その場合も私の意見を尊重してくれ」
 何だか以前、街でアンケートを受けたら変な販売の勧誘だった事があ るのだが、それに似ている。しかしプレアデス星団人は勧誘どころか極めて強制的だ。僕はこれだけは聞いておきたいと思うことを質問してみた。
「1あなたは神ですか、2なぜ僕なんですか、3世界の終わりとはどうなるのですか」
「1神ではないプレアデスにいる一個人だ、2生け贄のそばにたまたまいたからだ、3世界とは宇宙全体の事だ。物理運動が失われて全ての存在は希薄になり消滅する。4質問はそこまでだ直ちに更新を開始する」
 
 目の前に画像が現れた。ウィンドウズの更新場面がそのままだ。雑に流用している気がする。さっきのイカ太郎といい画像イメージが貧弱過ぎる。
「さあ、次へをタップしたまえ。自分の指でタップすれば良い」
 僕はとりあえずタップした。
 次に出てきたのはパラメーターによる数値変更画面だった。
「これらは物理定数の変更パラメーターだ。チェックますが2つあるうちの最初のは、私が数値変更した後チェックを入れる。そのあと直ちに続いてお前がチェック入れろ」
 プレアデス星団人はそう言うと次々と数値変更とチェック入れを開始した。僕は訳もわからずぼおっとしていた。
「さっさと言われた通りチェックを入れろ。世界が終わっていいのか」
 プレアデス星団人が急かしてきた。
「物理定数はいじらない方が・・・物理法則が変わって・・・」
「言いたいことはわかるが仕方ないんだ。さっさと言われた通りにしないと世界がお前のせいで終わってしまうぞ」
 
 仕方ないなら仕方がない。僕はプレアデス星団人の後を追ってチェックを入れていった。全部終わると次の画面に出てきたのはアンケートだった。<あなたは更新されたあとに、どのような世界を望みますか?>と書かれてあり、解答欄枠が上下2つあった。上の欄に見慣れぬ文字が記入されていく。記入しながらプレアデス星団人が促してきた。
「時間が無いからお前もさっさと記入しろ。言っておくが、世界が平和になりますようにとか書くなよ。なるたけ世界に影響無さそうな個人的な事を書け。大金が欲しいもダメだ。経済を動かすと世界への影響がお前の考えるより大きいし、過去にそう書き込むヤツが多くて更新で気に入られなかった」
「気に入られなかったって誰に?」
「説明している暇は無い。あと残り60秒だ。55、54、53・・・」
 プレアデス星団人がカウントダウンを始めやがった。僕はテキトーな望みを書き入れた。
「書き入れたら、せーので更新ボタンをタップするぞ。せーの!」

 僕は最後にあった更新ボタンを急かされるままにタップした。
 
 
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