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1.0話 また、明日!
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「いい!ライブハウスで30人集めよう思ったら、倍の60人集めるつもりで活動しなきゃダメたからね!」
容赦なしの響子の檄が飛ぶ!
叱られているわけではないのだが、全員、正座している。「…はい…スミマセン。」
まずは3曲仕上げる事、「ハモる」は今後の課題とした。
「これからは、路上ライブをする前に、ビラ配りをするわよ!」とやけに分厚いビラを机にドンっと置いた。
「これ…何枚あるんスか?」
「1000枚よ!」皆の顔が引きつる…
「それと、これからはバイトもしてもらうから!」
「バイトは禁止なんじゃ…?」
「先生には許可は取ったわ!ライブハウスに出るって、お金がかかるんだからね!」
「何でさ?」
「ライブハウスに出るって事は、チケットを売らなきゃダメなの。売れ残りは自腹って事ね。その時の為にも、保険でバイトしてもらうからね!」
そうか、そういうシステムなんだ。
今までが路上ライブだったから、気づかなかった。
ライブハウスは商売なんだ…。
「これから、もっときつくなるけど頑張って!」
「響子ちゃ~ん!」雅也が叫んだ。
部室で練習して、路上ではビラ配り。
ライブを終えて、バイト、家に帰ってからは自主練。
ビラは知ってる人に、店においてもらえるように、頼み込んだ。キャバクラのお姉さんには、同伴前に寄ってくれと頼み込んだ。
そこは、今までの行いが物を言うもので、皆が協力的で1000枚は、あっという間に捌けた。ほっと一安心していると、追加で1000枚、響子が持ってきた。…鬼だ。
クリスマスイヴがやってきた。ライブ当日。
モテない4人組(透は女子に誘われまくっていたが)には関係ない。街には楽しそうなカップルが溢れかえっている。
ライブハウスには10組位のバンドがいて
ザ・青春バンドは早い目の出番。
前に出番が前のバンドが盛り上がっていた舞台裏で
「お、落ち着けよ。」涼介。
「お、お前が1番緊張してんじゃねーか?」雅也。
「てっ、手が、震える」透。
「………」浩二。
出番がやって来た!勢いよく出ていく!
「あれ?」
お客さんの数が少ない。10人も来ていない。
あんなに、ビラ配ったのに?何で?
そう気を取られていると
1…2…1.2.3.4
透のスティックの音がした。
演奏は無事出来たんだけど、お客さんが少ない所で歌うのはこんなに張り合いのないことか…
落ち込んでいると、新井と響子がやってきて…
「良かったよ!」声をかける。
「なんだか、文化祭よりもヘコむわ~」
「気持ちはわかる」新井が言う。
「ビラ配り、頑張ったのにな~」
「また明日からから、頑張ればいいじゃない!」
皆、黙りながら涼介の家に集まった。
「う~ん、やっぱりビラの配り方に工夫をしなきゃ、ダメなのかな~」
「話題性を持たせないといけないと思う。」
「演奏の腕もあげないとな~」
話し込んでいるうちに、沸々とヤル気が出て来た!
「よ~し、食え食え、食わんと力が出んからな!」
涼介の親父が寿司を買ってきた!
「おぉ~!いただきます!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「せっかく、がんばってビラ配りしたのに、世の中は世知辛い…」
「あの時は、世間を恨みましたね~まっ、今となっては、大人達の気持ちがわかりますけどね」
「その後はどうしたんです?」
「悪ガキ4人組の本領発揮と言いますか…」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
部室にて。
全員、同じ事を考えたんだろう…
キレイに洗濯・アイロンをあてた学ランは第一ボタンまで、閉じている。髪は刈り上げ、7・3分け、黒縁メガネと、いわゆる「優等生スタイル」。をしてきて、
皆がミンナ「なんだ、お前の格好?」
「うっせい、お前もおんなじ格好だろうが!」ともみあってると、扉がガタンとなる音がした。
「お前ら…誰?」新井である。
「あっ、先生、俺らっすよ!俺ら!」
「どうしたんだ、急に改心するわけなかろーが!」
「これで、ビラ配り、路上ライブするんすよ。」
「話題になるっしよ?」
「確かに、なるが…絡まれたらどーすんだ?」
「もちろん、返り討ちっすよ!それで、俺達の協力者にするッス!」
「性根は、変わってないってか…」
「ところで先生!ハモるってなんスか?」
練習を繰り返し、バイトの量も増やした。
路上ライブでは、狙い通り、人目をひき、真面目な格好の高校生が、ハードロックをやると言うことで集まる人も増えてきた。
俺たちは高校3年になった。
進路を決めなくてはならなかったが、大体の奴は家業を継ぐ訳なんだけど、浩二だけは不動産を継ぐ訳で、どうしても、大学に行って法律を学ばなければならないと言う。
練習量が減る。当然、路上ライブの回数も減る。
次第にやらなくなった。
優等生スタイルは浩二以外は誰もやらなくなったし、音楽室に集まる回数も減った。
そんな時に、声を上げたのが「響子」である。
「アンタ達、何イジケてんの?」
「浩二がいないんじゃな~」
「アンタ達、ばっかじゃないの?」
「なんだと!」
「お兄ちゃんはね、家で毎日、練習してんの!大学合格したら、またやるんだ!って言ってるの!わからないの?何年親友してんの?」
「ハッ!」と、気がついた3人は、それぞれの楽器を手にした。
「テンポ、どうする?」
「メトロノームあるじゃん?それでしょーぜ」
「ギターの音、小さくすりゃ聞こえるぜ」
「よし、それでやろーか」
音楽室の真ん中でメトロノームを中心に円陣を組むように座って練習を始めた。
路上ライブも再開した。
ドラムがいない状態では、楽器は弾けても迫力がない。
「ハーモニーだけでやらない?」
と提案してきたのは、透だった。
「ライブハウスのおっちゃんに言われたろ?もっと、ハモれって。いい練習にもなるし、ついてきてくれたお客さんに意見も聞けると思うんだよね?」
それで、「ハーモニーだけの路上ライブ」が始まった。
これが、意外とウケて、テレビまでが来てしまった…。
そして、お客さんが増えて…
しかし、そう上手くも行かない。
人ってスグに飽きる。
いっぱいだったお客さんも減りだしていた。
客が場所を離れようとすると、ハーモニー楽団とはかけ離れたロック調のメロディーを急にベースソロで弾いたり、ギターソロを弾いて、足止めをした。
ライブ終わりには、他の路上ライブに飛び込みゲストをしたり、
すすきの繁華街や札幌駅前で拡声器で宣伝したりもした。さすがにこれは、警察に注意された。
だが、この行為が話題を呼び、またテレビに変な奴がいるぞと紹介されてしまった。
そして、浩二が無事、大学に合格し、また4人組で活動出来る!そんな時に涼介が言った。
「なぁ、解散ライブしないか?」
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「どういう事ですか?せっかくメンバーが揃ったと言うのに!」40代のサラリーマンのお客は酒がまわってきたのだろう、声が大きくなってきた。
「お客さん、飲み過ぎッスよ!ほら、水水!」
30代のでサラリーマンが「それで?それで?」とワクワクしながら店主に聞く。
「ちゃんと理由があったんですよ」
と店主がタバコに火をつけながら、続きを話す。
紫煙がゆっくりと登っていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
涼介が解散と言ったのは、理由があった。
そもそも、ザ・青春バンドと名前をつけたのは、俺達の青春時代を忘れられない時間にしたかったから。
高校を卒業したら、それぞれの道があるから、今までのように毎日は会えないだろう。という話で、これには、メンバー全員、納得せざるを得なかった。
「じゃあ、解散ライブはどこでする?」雅也が言った。
「札幌に1番デカいライブハウスがあるんだ。」
「もちろん、わかってるよな?」目配せをする涼介。
「おう!」
「ちょっと、ちょっと、私にも教えてよ!」
「ワンマンライブだ!」
「キャパは?」
「450人だ!」
途方のない数字である。が、響子は何も言わない。
「そうと決まれば、気合居れねーとな!」
「明日からガンガン行こうぜ!」
「オウ、また明日!」
と、それぞれが散った。
容赦なしの響子の檄が飛ぶ!
叱られているわけではないのだが、全員、正座している。「…はい…スミマセン。」
まずは3曲仕上げる事、「ハモる」は今後の課題とした。
「これからは、路上ライブをする前に、ビラ配りをするわよ!」とやけに分厚いビラを机にドンっと置いた。
「これ…何枚あるんスか?」
「1000枚よ!」皆の顔が引きつる…
「それと、これからはバイトもしてもらうから!」
「バイトは禁止なんじゃ…?」
「先生には許可は取ったわ!ライブハウスに出るって、お金がかかるんだからね!」
「何でさ?」
「ライブハウスに出るって事は、チケットを売らなきゃダメなの。売れ残りは自腹って事ね。その時の為にも、保険でバイトしてもらうからね!」
そうか、そういうシステムなんだ。
今までが路上ライブだったから、気づかなかった。
ライブハウスは商売なんだ…。
「これから、もっときつくなるけど頑張って!」
「響子ちゃ~ん!」雅也が叫んだ。
部室で練習して、路上ではビラ配り。
ライブを終えて、バイト、家に帰ってからは自主練。
ビラは知ってる人に、店においてもらえるように、頼み込んだ。キャバクラのお姉さんには、同伴前に寄ってくれと頼み込んだ。
そこは、今までの行いが物を言うもので、皆が協力的で1000枚は、あっという間に捌けた。ほっと一安心していると、追加で1000枚、響子が持ってきた。…鬼だ。
クリスマスイヴがやってきた。ライブ当日。
モテない4人組(透は女子に誘われまくっていたが)には関係ない。街には楽しそうなカップルが溢れかえっている。
ライブハウスには10組位のバンドがいて
ザ・青春バンドは早い目の出番。
前に出番が前のバンドが盛り上がっていた舞台裏で
「お、落ち着けよ。」涼介。
「お、お前が1番緊張してんじゃねーか?」雅也。
「てっ、手が、震える」透。
「………」浩二。
出番がやって来た!勢いよく出ていく!
「あれ?」
お客さんの数が少ない。10人も来ていない。
あんなに、ビラ配ったのに?何で?
そう気を取られていると
1…2…1.2.3.4
透のスティックの音がした。
演奏は無事出来たんだけど、お客さんが少ない所で歌うのはこんなに張り合いのないことか…
落ち込んでいると、新井と響子がやってきて…
「良かったよ!」声をかける。
「なんだか、文化祭よりもヘコむわ~」
「気持ちはわかる」新井が言う。
「ビラ配り、頑張ったのにな~」
「また明日からから、頑張ればいいじゃない!」
皆、黙りながら涼介の家に集まった。
「う~ん、やっぱりビラの配り方に工夫をしなきゃ、ダメなのかな~」
「話題性を持たせないといけないと思う。」
「演奏の腕もあげないとな~」
話し込んでいるうちに、沸々とヤル気が出て来た!
「よ~し、食え食え、食わんと力が出んからな!」
涼介の親父が寿司を買ってきた!
「おぉ~!いただきます!」
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「せっかく、がんばってビラ配りしたのに、世の中は世知辛い…」
「あの時は、世間を恨みましたね~まっ、今となっては、大人達の気持ちがわかりますけどね」
「その後はどうしたんです?」
「悪ガキ4人組の本領発揮と言いますか…」
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部室にて。
全員、同じ事を考えたんだろう…
キレイに洗濯・アイロンをあてた学ランは第一ボタンまで、閉じている。髪は刈り上げ、7・3分け、黒縁メガネと、いわゆる「優等生スタイル」。をしてきて、
皆がミンナ「なんだ、お前の格好?」
「うっせい、お前もおんなじ格好だろうが!」ともみあってると、扉がガタンとなる音がした。
「お前ら…誰?」新井である。
「あっ、先生、俺らっすよ!俺ら!」
「どうしたんだ、急に改心するわけなかろーが!」
「これで、ビラ配り、路上ライブするんすよ。」
「話題になるっしよ?」
「確かに、なるが…絡まれたらどーすんだ?」
「もちろん、返り討ちっすよ!それで、俺達の協力者にするッス!」
「性根は、変わってないってか…」
「ところで先生!ハモるってなんスか?」
練習を繰り返し、バイトの量も増やした。
路上ライブでは、狙い通り、人目をひき、真面目な格好の高校生が、ハードロックをやると言うことで集まる人も増えてきた。
俺たちは高校3年になった。
進路を決めなくてはならなかったが、大体の奴は家業を継ぐ訳なんだけど、浩二だけは不動産を継ぐ訳で、どうしても、大学に行って法律を学ばなければならないと言う。
練習量が減る。当然、路上ライブの回数も減る。
次第にやらなくなった。
優等生スタイルは浩二以外は誰もやらなくなったし、音楽室に集まる回数も減った。
そんな時に、声を上げたのが「響子」である。
「アンタ達、何イジケてんの?」
「浩二がいないんじゃな~」
「アンタ達、ばっかじゃないの?」
「なんだと!」
「お兄ちゃんはね、家で毎日、練習してんの!大学合格したら、またやるんだ!って言ってるの!わからないの?何年親友してんの?」
「ハッ!」と、気がついた3人は、それぞれの楽器を手にした。
「テンポ、どうする?」
「メトロノームあるじゃん?それでしょーぜ」
「ギターの音、小さくすりゃ聞こえるぜ」
「よし、それでやろーか」
音楽室の真ん中でメトロノームを中心に円陣を組むように座って練習を始めた。
路上ライブも再開した。
ドラムがいない状態では、楽器は弾けても迫力がない。
「ハーモニーだけでやらない?」
と提案してきたのは、透だった。
「ライブハウスのおっちゃんに言われたろ?もっと、ハモれって。いい練習にもなるし、ついてきてくれたお客さんに意見も聞けると思うんだよね?」
それで、「ハーモニーだけの路上ライブ」が始まった。
これが、意外とウケて、テレビまでが来てしまった…。
そして、お客さんが増えて…
しかし、そう上手くも行かない。
人ってスグに飽きる。
いっぱいだったお客さんも減りだしていた。
客が場所を離れようとすると、ハーモニー楽団とはかけ離れたロック調のメロディーを急にベースソロで弾いたり、ギターソロを弾いて、足止めをした。
ライブ終わりには、他の路上ライブに飛び込みゲストをしたり、
すすきの繁華街や札幌駅前で拡声器で宣伝したりもした。さすがにこれは、警察に注意された。
だが、この行為が話題を呼び、またテレビに変な奴がいるぞと紹介されてしまった。
そして、浩二が無事、大学に合格し、また4人組で活動出来る!そんな時に涼介が言った。
「なぁ、解散ライブしないか?」
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「どういう事ですか?せっかくメンバーが揃ったと言うのに!」40代のサラリーマンのお客は酒がまわってきたのだろう、声が大きくなってきた。
「お客さん、飲み過ぎッスよ!ほら、水水!」
30代のでサラリーマンが「それで?それで?」とワクワクしながら店主に聞く。
「ちゃんと理由があったんですよ」
と店主がタバコに火をつけながら、続きを話す。
紫煙がゆっくりと登っていった。
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涼介が解散と言ったのは、理由があった。
そもそも、ザ・青春バンドと名前をつけたのは、俺達の青春時代を忘れられない時間にしたかったから。
高校を卒業したら、それぞれの道があるから、今までのように毎日は会えないだろう。という話で、これには、メンバー全員、納得せざるを得なかった。
「じゃあ、解散ライブはどこでする?」雅也が言った。
「札幌に1番デカいライブハウスがあるんだ。」
「もちろん、わかってるよな?」目配せをする涼介。
「おう!」
「ちょっと、ちょっと、私にも教えてよ!」
「ワンマンライブだ!」
「キャパは?」
「450人だ!」
途方のない数字である。が、響子は何も言わない。
「そうと決まれば、気合居れねーとな!」
「明日からガンガン行こうぜ!」
「オウ、また明日!」
と、それぞれが散った。
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