二人の転生伯爵令嬢の比較

紅禰

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そんなカトリーヌは当然のことながら、姉との違いをまた区別や差別に近いものに感じると同時に、現状グンナールの婚約者として自分が選定されそうになっていることに関しても微妙な不満を募らせていた。

確かにグンナールの様な、貴族家の次男との婚約は乙女ゲームでもよくあるものだ。

ただ、そうした場合は自身の家に婿入りするなり、独立しても大丈夫なほどの相手の下地があるからこその嫁入りになっているケースも多い。

けれども、両親の反応からしてグンナールにそんな下地は整っていない。

次期当主を自分には無理だと思っている以上、すべての期待をグンナールに投げるしかない状態に陥っているカトリーヌにとって、最悪の可能性が今にも自分の背中に触れそうなばかりに迫っていると感じられた。

「(グンナール様が実家の当主になることは無理かしら…?)」

こうなれば、できる事はグンナールへの当主交代しかないとカトリーヌは勝手に思い込んだ。

それならば、なんとか自分の貴族としての生活は保たれる。

ただ、カトリーヌはグンナールが自分と非常に似ている人間であるということを失念していた。

グンナールも己に対して貴族教育はしっかりと施しつつも、甘やかす両親の教育不足によって自身が当主としての業務に向いていないことを何となく察知しており、すでに次期当主として本格的に動き始めている兄もデビュタント年齢まであと少しとなっているので、もはや次期当主の交代など余程の事が起こらない限りは認められない状態だ。

そのため、グンナールは裕福などこかの家に婿入りする前提の考えしか持っておらず、婿入りした先で何か仕事をしようとすることも実は微塵も考えていなかった。

むしろ、婿入りした先が裕福であるのなら自分はその家の金を使って優雅気儘に遊び惚けて楽しく生活したいという寄生虫のごとき考えを持っている男だ。

「…、わ、わかりました」

「ならば、カトリーヌの方で受けることを検討していると伝えておこう」

カトリーヌの言葉にそういうヴァルファズルではあるが、実のところガウト伯爵家の釣書と打診は受けるつもりは一切なかった。

ヴォーダン伯爵家とはそれほど親しい関係性ではなく、おまけにそこまで派手に裕福な家でもない。

更に先日の夜会で娘が執拗に絡まれていい思いはないので、何か言ってきたとしても即座に跳ね除けられる相手の弱点を知るために、夜会帰宅後にヴァルファズルとフリーンはそれぞれが「ガウト伯爵家について調べろ」と執事と女中頭に命じ、伯爵家の相応の力をもって今日も徹底して調べ上げている。

その中で浮き彫りになってきたのが、経済的な困窮に陥りつつあるというガウト伯爵家の現状だった。

元々さほど裕福でもなければ貧乏でもない微妙な経済状況だったが、ここ最近は次男を甘やかす為に結構な散財をする機会があったらしく、余計に切り詰めなければならない状況にあるらしい。

つまり、ヴォーダン伯爵家の全く困っていない経済状況に目を付けて、婚約を取り付けておけば、援助を受けられる可能性が高くなるというわずかな希望に縋りつこうとしているのだろう。

なので、援助がもらえるのであればどちらの娘でも構わないと考えて、ヴォーダン伯爵家の娘という条件での釣書にしたのだともヴァルファズルとフリーンは考えていた。

可愛い娘たちではあるし、ガウト伯爵家の経済状況の困窮を救うための政略と考えればまだ納得できる打診ではあるかもしれない。

しかし、学友ではあれど、成人後からそれほど付き合いのあるわけではない伯爵家と縁を結び、おまけにその困窮を救うというのはそれほどヴォーダン伯爵家にとって重要なことではない。

隣の領地で付き合いがあり、非常に仲が良いとか、お互いの領地の行き来が頻繁で共倒れになる可能性があったり、以前こちらが困窮したときに救ってもらったりしたのであれば理由は十分。

今度はこちらが恩を返す番であると言わんばかりに、結納金と共にカトリーヌを嫁がせる等しただろう。

しかし、親しいと言っても友人の友人くらいの関係で、おまけに娘にも無礼を働いた伯爵家に誰が援助しようと思うのか。

あんな無礼な男を婿に入れるのはもちろん、娘を嫁に行かせるのも絶対に嫌。

むしろ親戚になりたくないとすら考えたヴァルファズルはグウェンドリン同様に候補として承諾し、そのあともっと良い縁組があったからと別の相手と取り換えるつもりだった。

「では、話は終わりだ。部屋に戻りなさい」

そしてカトリーヌとグウェンドリンをそのまま部屋へと戻る様に促す。

カトリーヌにグウェンドリンにアルファズル侯爵家から釣書が来たということは一切話さなかった。

グウェンドリンに来た話を欲しがる可能性もあったし、何よりもまたカトリーヌがグウェンドリンに対して「お姉さまばっかり」と面倒なことを言い出すのを避けたのである。

いずれ話さなければならないことではあるが、候補である以上無理に話す必要性は感じなかった。

本決まりになってから、お互いの婚約者に関しては話しても問題ない。

父に促されてグウェンドリンがまず一礼して、部屋を辞する。

外に待機していたお付きの侍女であるマーガレットともにさっさと自室に戻っていった。

次にカトリーヌがグウェンドリンにつられるようにして席を立ち、一礼してから部屋を出るものの、婚約者候補であるグンナールに心の底から納得はしていないのか、何か言いたげな顔をしてそのまま出ていくのを伯爵夫妻は見送っていた。

そして怒涛の8歳を終え、9歳を迎える。
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