二人の転生伯爵令嬢の比較

紅禰

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9歳から変化が大きくなったのはグウェンドリンである。

婚約者候補(ほぼ本決まり)がいるのと同時に、彼女に許可が出たのは視察の同行だった。

視察は基本的に馬に乗っていくのがヴォーダン伯爵家の習わしで、馬車よりも小回りが利き、いろんなところへ行きやすい乗馬で行われる。

馬車を使うこともあるにはあるが、基本的には荷運びを行う荷馬車であり、その中身は行く先々の村や町で必要な物資であったり、計測や調査のための道具であったりすることも少なくない。

そして、同時に賊の盗伐の際に捉えた賊、または被害者を護送するためにも使われることもあるので、そのために空けておく必要があるのもあって基本的に馬車に乗って視察に行くことはあまりない。

乗馬の訓練状況も非常に良好、全力で走らせることができる襲歩まで歩法は収めてあるし、騎乗主の意思を馬に伝え、思うとおりに動かすことができる扶助に関してもほぼ納めている状態であるグウェンドリンであれば、視察に同行しても良いだろうと当主であるヴァルファズルが判断した。

武術に関してはまだ幼いのと、女であるからこその筋力の低さが不安ではあるが、同行する面子の中に領軍の面子を増やしておけば対応できる。

そのため、グウェンドリンは当主教育の一環としての視察の同行が決まったのである。

「ということで、2週間後にはある村と町へ視察に行く。
その際に必要な物などはメイドに教えておくので、村と町に関しての勉強をしておくように」

「は、はい!」

子供の時間に自由に屋敷内を動き回れるとは言っても、外に出たのは初めて非公式ながらも参加していた夜会が初めてだった。

外に出れたとは言っても、外の景色が見えたわけじゃない。

まだ電気の普及も始まっていない中世に似ている世界において、現代における夜景は全く期待できない。

ただ、星空はすごくきれいに見えるので、たまに夜中、空を見上げると絶景が望める。

逆に街並みなどにおける夜景は全く見えない。

ほのかに明るい部分もあるが、それは蝋燭で照らされている本当にほのかな明かりでしかないので、ビルの電灯や橋のライトアップなどで絶景となるものはまず見ることはない。

だから、昼間の外の景色を見ることができる絶好の機会にグウェンドリンは少しそわそわしていた。

明るい時に見る外はいったいどんな景色なのか。

窓から見える、そして子供の時間に出られる庭とはまた違う、長閑な景色なのか、それとも原生林の生え茂る山なのか、想像するだけでワクワクする。

実のところ外の景色は絵で見たことはある。

ただ、そういうのは基本的に風光明媚な土地を選んでいることが多く、ヴォーダン伯爵家の領地を描いたものではないので、自分の家の領地がどんなところなのか、それは知識でしか知らない。

なので、実際に外に出られて見られるのは、グウェンドリンだけの特権の様なものに近くなる。

カトリーヌが外に出るのはまだまだ先。

視察という仕事であっても、外に今出られる機会が得られるというのは大きかった。

とはいえ

「いいですか、グウェンドリン様。
視察に同行されると聞きましたが、その際は絶対に兵士やご当主様から離れてはいけませんよ。
下手をすると誘拐される可能性もありますからね!」

視察に関しての話を聞いただろうマーガレットが必要な物をリストアップして、用意する前にしっかりとグウェンドリンの方を向いて言った言葉がこれだ。

マーガレットは兄である次期子爵が視察に出た際に、誘拐されそうになったことがあったらしい。

その際に家中が大慌てで兄が無事なのかの連絡を取り、怪我はしていないか、本当に無事で戻ってくるのかを延々と心配しながら待つことになって、ひどく怖かった経験をしている。

いまだに警察機関が領軍、または地元の自警団だよりであるこの世界ではそこかしこに金儲けのために人を誘拐する様な人間が隠れ住んでいる。

だから絶対に、同行する人間か伯爵から離れてはならないとマーガレットはしつこいくらいに忠告するのだ。

「ええ、分かった。絶対に離れないようにする」

実のところグウェンドリンも知らない場所で知っている人から離れるのは怖すぎて無理だった。

携帯もない、連絡手段は手紙か伝令、そんな世界で誘拐されたり、迷子になったりするのは死活問題。

大騒ぎになるのはまだしも、下手をすると本当に生死にかかわる問題に発展しかねないのである。

死ぬのはごめんだし、誘拐も嫌なグウェンドリンとしては、自身の武術の腕前にまだまだ自信がない以上、下手な行動をして知っている人間から離れるというのは絶対にしたくない行動でもある。

マーガレットの忠告の影響も大きく、グウェンドリンは視察の際に絶対に知っている人間から離れない、離れる場合は誰かを必ず護衛として傍において、許可を得て離れる事を脳裏で強く決めた。
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