二人の転生伯爵令嬢の比較

紅禰

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その変化に気付いたのはヴァルファズルであった。

良く会うことのあるフリーンやグウェンドリンは実はそれほど変化が分からなかったため、カトリーヌの体型というよりはふくよかさに関して全く触れなかった。

お付きの侍女や部屋付きのメイドであればなおのこと、ドレスがちょっときつくなったとしても成長期などの体の大きさの変化によるものだと勘違いして、それほど問題視はしなかった。

逆にヴァルファズルの場合は会える機会が限られている。

今回カトリーヌが太ったことに気付いた時より前に会ったのは、おおよそ半月近く前にちらっと見ただけで、一言二言軽く話してすぐに別れたのもあって、ヴァルファズルのカトリーヌへの外見的な印象は実は夜会が終わった後、グウェンドリンと一緒に婚約の話をする為に呼び出した時のものである。

なので、その時の印象から考えてみても確実に太っているのを見てヴァルファズルは目を見開いて驚き、どう言うべきかを悩んだほどだ。

どちらの娘も可愛いのには変わりないものの、このまま太り続けるとカトリーヌの縁談にも影響する。

グンナールとの婚約話も候補の1人として考えてはおく、といったものから全く進んでいないので、他のお相手を見つけるためにも娘には健康的に美しく会ってもらわなければならないのだが、面と向かって「痩せろ!」と怒鳴るのも違う。

とりあえずフリーンにそれとなく伝えておき、気付いたのであれば間食やお茶に関して少し控えさせることを考え、視察前にそっと告げておいた。

「お父様」

「―ん?」

カポカポと蹄の音が耳に響く。

多くの馬とそれに騎乗する兵と役人に囲まれる形で、中心に近いところにいるヴァルファズルはカトリーヌの肥満気味の状態に頭を少し悩ませているところ、隣からグウェンドリンに声を掛けられた。

「どうかなさいましたか?」

「ああ、いや…。グウェンドリンから見て、カトリーヌはどう思う?」

「どう、と言われましても範囲が広すぎて何を評価すればいいのか分からないのですが…」

「すまん、含意が広すぎたな。ん、そう、だな」

ちょっと言いにくそうな顔をしたものの、ヴァルファズルは馬を傍に近づけさせて、グウェンドリンに小声で伝えることにした。

家に深く関係しているような人間ではない者が多い以上、カトリーヌの評価を落とす可能性のある話は流石に小声の方がいいのと、下手に女性に対して「あいつ太った?」というのは男としてどうかとも思うからこそ、小声だ。

「カトリーヌは最近太ったんじゃないか?」

「え?」

ヴァルファズルの言葉にグウェンドリンは驚いたように父を見た。

まさか父が娘は太ったんじゃないかと言うとは思わなかったため、びっくりして聞き返すような言葉を思わずこぼした。

が、それが終わればグウェンドリンはここ最近のカトリーヌを思い出す。

部屋に突撃してきたとき、彼女のドレスはどんな感じだったか、顔の形、ドレスなどの布地や袖口の張り具合、食い込み具合、それらをどうにか思い出そうとする。

そして思い出した光景の一つには、八つ当たりのように突撃したときに、腕をとにかくぶんぶん振り回して抗議していた時にビリッという音が響いたものがあった。

一体何の音かその時は分からなかったし、カトリーヌの背後に当たるところで待機していたメイドがぎょっとした顔をしたが、何も言わなかったのを思い出す。
まさか、あれはドレスの縫い目かどこかが破れた音では…?

「…ふ、太った、かもしれません」

「あいつは運動自体ほとんどせんだろう?その割には間食の機会が多いし、前に婚約の件で呼び出した時より丸くなったような気がするんだが…」

「会う機会がお父様より多いから、わからないのかもしれません。
屋敷に戻ったら一度ゆっくり見てみます」

「ああ。そうしてくれ。下手にこれ以上太られると嫁の貰い手がかなり限定されてしまう」

とはいうものの、カトリーヌが太ったのは多分食事にも大きく問題があるんだろうとグウェンドリンは思っていた。
基本的に中世の貴族は野菜を食べない傾向にある。

朝から肉料理が並ぶのは珍しくないし、野菜自体を平民が食べるものだと思っている貴族もいるほど、貴族の食事に野菜は馴染みが無いのである。

おまけにその時の飲み物は酒なので、貴族に肥満体型が多いのもうなずけるメニューである。

グウェンドリンとカトリーヌも、9歳を境に食事が大人のメニューと同等のものに変わっているので、カトリーヌのカロリー摂取をより増長させたのではないかと思った。

流石に酒は飲めないが、朝から胃もたれするかもしれないとグウェンドリンは思ったほどである。

逆に平民の場合は野菜と肉、タンパク質をバランスよく食べるようなメニューになるので、実はとっても健康的な食生活を送っていた。

カトリーヌが運動しない以上、変えるべきは食事の内容だろうなと青く晴れ渡る空を見上げながら、遠い眼をしたグウェンドリンは思った。
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