二人の転生伯爵令嬢の比較

紅禰

文字の大きさ
144 / 247

144.

しおりを挟む
王都のタウンハウスに付いたころには、カトリーヌは喋り疲れていつの間にか寝ていた。

そのため、グウェンドリンとフリーンは静かに穏やかに話しながら今後の生活に関しての話し合いをしていた。
フリーンは基本的に二人の監督も含め、ヴァルファズルから何か指示があれば迅速に二人に伝え、対応するための役割を担っている。

特にグウェンドリンの場合は仕事が大きく関わってくる。

きちんと引継ぎをして、何かあればタウンハウスの方へと伝えてあるのでこちらに連絡が来るだろうが、それでも緊急のものはある。

養蚕業に関しての仕事をフリーンは確認できないが、家の方の仕事であればフリーンが確認してグウェンドリンにある程度の対応をした後に引き継ぐことも可能だ。

学業に忙しくなるグウェンドリンに対して、家の仕事であればこのくらいのフォローは入れておけというヴァルファズルからの心遣いである。

その件に関してをしっかりと伝え、学園における注意事項を先輩でもあるフリーンから聞いているとあっという間に時間が過ぎ、グウェンドリンがふと気づけば王都の門をくぐり、貴族のタウンハウスが多く建ち並ぶ区画についていた。

「カトリーヌ、カトリーヌ。起きなさい」

フリーンがカトリーヌを軽くゆすることで起こる揺れと声に、カトリーヌは目を覚ました。

「やっと起きたの?もうタウンハウスについているわ」

「え、もうですか!?」

「そうよ、あなたは話疲れて途中からずっと寝ていたから」

色々と話したいことがあったのに、と自身の理想をとにかく語りたがっているのが良くわかる不満げな顔をしているカトリーヌは、馬車の中を見回して姉がいないことに気付く。

「お姉さまは…」

「グウェンドリンはもう降りて荷物を運ばせて中に入ったわ。
部屋ももう用意されているようだから、あなたも降りて荷物を運ばせるための指示を出して。
寝るなら部屋に行きなさいね」

「はい」

自分を起こしてくれない姉にちょっと思うところはあったが、母の後に続くように馬車を降りれば、昼下がりの少し暖かな都会の空気が肺の中に吸い込まれるような感覚がした。

カトリーヌは基本的に王都の方が好きだ。

領地も嫌いなわけじゃない。

立派な屋敷があって、自分を敬う使用人と領民がいて、お姫様扱いをされるのはとても気分がいい。

まあ、厳密に言えばきちんと敬われているわけではないので、カトリーヌ自身の勘違いや花畑思考が働いたことによる錯覚である部分の方が多いが、それでもやっぱりお嬢様だからこその立場を満喫できる領地も嫌いじゃない。

けれど、やっぱり多くの出会いがあり、なおかつカトリーヌが信じる乙女ゲームの世界というのはその主な活動場所は王都や学園のある都市であることがほとんど。

伯爵領の中で好きに外出しようという気はあまりなかったカトリーヌにとって、やっぱり外出するなら王都の方が良いという感覚があった。

更に王都であれば多くの出会いを得ることができる。

王都で1週間ほど自由に動けるともなれば、外出の際に素敵な出会いがある可能性もきっとある。

自身の婚約者候補の伯爵令息を裏切るなと厳しく言い含められているが、仲良くなるくらいならまだ何とかなる。

そのうえで、仲良くなった攻略対象だと思われる令息の方から婚約に関しての意義を唱えてもらえばいい。

そうカトリーヌは思っていた。

「(よし、学園生活ももうすぐだし、頑張ろう!)」

おかしな方向に向いているとはいってもやる気十分なカトリーヌは綺麗に晴れた空を見上げながらタウンハウスの中へ入った。
しおりを挟む
感想 90

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~

黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!

翠月るるな
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。 侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。 そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。 私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。 この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。 それでは次の結婚は望めない。 その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。

退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。 直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。

処理中です...