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タウンハウスへ移ってからの1週間は、双子の行動がそれぞれ分かれた。
グウェンドリンは近所のあいさつ回りを行う傍ら、しっかりと勉強に励んでいた。
基本的な勉強は全く問題ないとはいえ、復習を存分にできる時間があるのならそれをやっておくべきだとも考えていた。
学園に入れば同年代の令嬢や令息が沢山いる。
その中でも劣っているという評価を下されるのは絶対に嫌だった。
伯爵家という家柄の中でも上位に位置する家のプライドもあったが、何よりもできない子と周りから言われるのだけは我慢ならない。
グウェンドリンの場合は事業なども手掛けているからこそ、普通の勉強などにおいてもきちんとできる人間であるというのを知らしめなければならないのも相まって、かなり気合が入った復習の時間だった。
逆にカトリーヌはあいさつ回りが終われば、王都内を色々と歩き回り、悠々自適に過ごしていた。
侍女をお供に、護衛にも軽装をさせて連れまわす1週間だったため、護衛に選ばれる人間が日に日に面倒な顔を隠すことができなくなっていくほどだった。
母であるフリーンからも苦言を呈されていたが、それでも彼女は出かけて歩き回っていた。
たっぷりの買い物をして、そして素敵な男性を見つけられるようにきょろきょろと見渡すその姿は箱入り娘であると周りに伝えるようなものである。
実際、カトリーヌは気付いていないがスリなどの被害に遭いかけていた。
護衛がきちんと守ってくれたし、威嚇もしてくれたので無事だったが、結構危ない外歩きになっていた。
「カトリーヌ、本当に大丈夫なの?あなたこれまでの復習一つしなかったけれど…」
夕食の席に付き、母娘3人で食事を摂っているときにカトリーヌにグウェンドリンが言う。
流石にカトリーヌが連日遊び歩いているも同然の時間の使い方をしているのを見て、グウェンドリンとしては一言物申したくなったのである。
別に「私はこんなにも真面目に勉強してるのに」ということではなく、「伯爵家の令嬢として恥ずかしくないくらいの成績は出せるから遊んでるのよね?」という確認だ。
カトリーヌ自身のやる気には、もはやグウェンドリンもフリーンも、というより伯爵家に関係するほぼすべての人間が期待をしていない。
やってくれないかなと強く念じても、両親がきちんとやれと言っても彼女は結局長続きしなかったので。
けれども、多くの貴族の令嬢や令息が集まる学園内において恥をさらすような馬鹿さを露呈するようなことをされても困るのだ。
カトリーヌもこの世界における計算、いわゆる四則演算に関しては全く問題なかった。
しかし他の科目がかなりヤバイ部分も多い。
特に音楽などは実技も取り入れられているのでちょっと危ない部分があるだろう。
もはやヴァイオリン等ここ数年触っていない可能性もあるとグウェンドリンは考えていた。
せめてここにいる時に多少触っておき、ある程度勘を取り戻すくらいのことはしておけば、後は成績が振るわなくても「音楽の才能は生憎と…」と逃げられたのだ。
残念ながらそうした勘を取り戻すようなこともしないし、そんな姿を周りに見せないから、恐らく学園生活が始まったとしても彼女の努力を信じてくれる人はそういないだろう。
「え、大丈夫ですよ!私、今まで頑張ってきましたから!」
これまでの頑張りだけでやっていけるほど甘い世界ではない。
確かに学園生活における友達とのやり取りをはじめとした、学園に通っているからこそできることはカトリーヌにとって慣れた学校生活と同じことだという感覚で十分通用する部分もあるだろう。
けれど、現代における学校よりも成績や態度、素行がとにかく重要視されるのがこの中世に近い世界における学園だ。
だから、休み時間などでは多少気を抜き、友人と和気あいあいと話す人もいるがそれでも口調も仕草も姿勢も何もかも、きっちりとした状態から決して崩さない辺りでお察し。
そんな環境を察せないカトリーヌに対し、これまでは何とか湿気させてきた爆弾娘が唐突に爆発するかもしれない、そんな恐怖が少しあった。
「…そうだといいけれどね」
ぼそりと母フリーンがカトリーヌの花畑思考に毒を吐くように一言ぼやいた。
カトリーヌは頑張ってきたからという言葉をきっかけに、自身がどう言う風に学園で過ごすのかの予定の様な事をくどくどと話し続ける。
食事の終わり時まで話すものだから、明日からの学園生活を考えたフリーンが強引に遮り、そして終わらせるまでグウェンドリンは疲れたように少し遠くを見ていた。
高位貴族は最低2クラスずつあるので、どうかカトリーヌとクラスが違いますように、ということだけがグウェンドリンの願いである。
グウェンドリンは近所のあいさつ回りを行う傍ら、しっかりと勉強に励んでいた。
基本的な勉強は全く問題ないとはいえ、復習を存分にできる時間があるのならそれをやっておくべきだとも考えていた。
学園に入れば同年代の令嬢や令息が沢山いる。
その中でも劣っているという評価を下されるのは絶対に嫌だった。
伯爵家という家柄の中でも上位に位置する家のプライドもあったが、何よりもできない子と周りから言われるのだけは我慢ならない。
グウェンドリンの場合は事業なども手掛けているからこそ、普通の勉強などにおいてもきちんとできる人間であるというのを知らしめなければならないのも相まって、かなり気合が入った復習の時間だった。
逆にカトリーヌはあいさつ回りが終われば、王都内を色々と歩き回り、悠々自適に過ごしていた。
侍女をお供に、護衛にも軽装をさせて連れまわす1週間だったため、護衛に選ばれる人間が日に日に面倒な顔を隠すことができなくなっていくほどだった。
母であるフリーンからも苦言を呈されていたが、それでも彼女は出かけて歩き回っていた。
たっぷりの買い物をして、そして素敵な男性を見つけられるようにきょろきょろと見渡すその姿は箱入り娘であると周りに伝えるようなものである。
実際、カトリーヌは気付いていないがスリなどの被害に遭いかけていた。
護衛がきちんと守ってくれたし、威嚇もしてくれたので無事だったが、結構危ない外歩きになっていた。
「カトリーヌ、本当に大丈夫なの?あなたこれまでの復習一つしなかったけれど…」
夕食の席に付き、母娘3人で食事を摂っているときにカトリーヌにグウェンドリンが言う。
流石にカトリーヌが連日遊び歩いているも同然の時間の使い方をしているのを見て、グウェンドリンとしては一言物申したくなったのである。
別に「私はこんなにも真面目に勉強してるのに」ということではなく、「伯爵家の令嬢として恥ずかしくないくらいの成績は出せるから遊んでるのよね?」という確認だ。
カトリーヌ自身のやる気には、もはやグウェンドリンもフリーンも、というより伯爵家に関係するほぼすべての人間が期待をしていない。
やってくれないかなと強く念じても、両親がきちんとやれと言っても彼女は結局長続きしなかったので。
けれども、多くの貴族の令嬢や令息が集まる学園内において恥をさらすような馬鹿さを露呈するようなことをされても困るのだ。
カトリーヌもこの世界における計算、いわゆる四則演算に関しては全く問題なかった。
しかし他の科目がかなりヤバイ部分も多い。
特に音楽などは実技も取り入れられているのでちょっと危ない部分があるだろう。
もはやヴァイオリン等ここ数年触っていない可能性もあるとグウェンドリンは考えていた。
せめてここにいる時に多少触っておき、ある程度勘を取り戻すくらいのことはしておけば、後は成績が振るわなくても「音楽の才能は生憎と…」と逃げられたのだ。
残念ながらそうした勘を取り戻すようなこともしないし、そんな姿を周りに見せないから、恐らく学園生活が始まったとしても彼女の努力を信じてくれる人はそういないだろう。
「え、大丈夫ですよ!私、今まで頑張ってきましたから!」
これまでの頑張りだけでやっていけるほど甘い世界ではない。
確かに学園生活における友達とのやり取りをはじめとした、学園に通っているからこそできることはカトリーヌにとって慣れた学校生活と同じことだという感覚で十分通用する部分もあるだろう。
けれど、現代における学校よりも成績や態度、素行がとにかく重要視されるのがこの中世に近い世界における学園だ。
だから、休み時間などでは多少気を抜き、友人と和気あいあいと話す人もいるがそれでも口調も仕草も姿勢も何もかも、きっちりとした状態から決して崩さない辺りでお察し。
そんな環境を察せないカトリーヌに対し、これまでは何とか湿気させてきた爆弾娘が唐突に爆発するかもしれない、そんな恐怖が少しあった。
「…そうだといいけれどね」
ぼそりと母フリーンがカトリーヌの花畑思考に毒を吐くように一言ぼやいた。
カトリーヌは頑張ってきたからという言葉をきっかけに、自身がどう言う風に学園で過ごすのかの予定の様な事をくどくどと話し続ける。
食事の終わり時まで話すものだから、明日からの学園生活を考えたフリーンが強引に遮り、そして終わらせるまでグウェンドリンは疲れたように少し遠くを見ていた。
高位貴族は最低2クラスずつあるので、どうかカトリーヌとクラスが違いますように、ということだけがグウェンドリンの願いである。
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