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「ああ、お姉さま…」
来たのね、と言うカトリーヌは憔悴しきったような儚げな雰囲気だった。
自身も他の人から儚げな雰囲気だねと言われるものだが、恐らく今のカトリーヌと自身を比較すればカトリーヌの方が吹けば飛ぶような儚さを感じる事だろう。
下手するともう彼女は死んでしまうことを選ぶのではないかと言わんばかりの姿にグウェンドリンも内心驚きだ。
夕食前に誓約書を署名してからこうなったと思うと、ずいぶんと短時間でひどいやつれ方をしたとも感じた。
「カトリーヌ、ずいぶん憔悴しきっているけれど、大丈夫?」
これは本当に心配だった。
カトリーヌ自身がこんな憔悴っぷりを見せるようなことを誓約書で誓わせたということは、それだけカトリーヌが背負うものが大きい事だ。
これまで気兼ねなく自由に振る舞い続けていたカトリーヌにとっては初めての背負うものを実感することになったのだろう。
「…お姉さま、私…」
「…お母さまからあなたに誓約書を書かせたとは聞いているけれど、何についての誓約書なのかは聞いていないの。
それほど大きなことを誓ったの?」
「……」
カトリーヌは黙り込んだ。
姉にいうべきかカトリーヌは迷ったのだ。
自身がこれでもかという程劣等感を感じ、とにかく悪女としてこき下ろし、自分がお姫様としてこの家に、そしてこの世界の中心になるべくあれこれしたのに全くその効果が無かった相手。
あちらもこちらのことはあまり良く思っていないだろうが、今回の表情には何の裏も感じられないのもあって、どうするべきかとカトリーヌは悩んでいた。
あの姉に言うべきか、黙っておくべきか。
ただ、カトリーヌは自身の交わした誓約に関しての重みに耐えきれるほど、しっかりとした令嬢ではない。
なので
「あの、あのね…」
グウェンドリンに話すことを選んだ。
話を聞いたグウェンドリンはこくりこくりと声は出さずとも相槌を打って真剣にカトリーヌの話を聞き、そして聞き終えた後は頭が痛いとばかりに目を伏せて手を頭にやった。
「あなたもよく不貞行為を考えるようなことができたわね…。
怖いもの知らずなの?」
「お姉さまは自分がこの人だって思った婚約者がいるからそう言えるのよ!!
私は、私はもっと格好よくて権力があって、私が思う存分我儘言える人が良いのに!」
「それはちょっと高望みが過ぎるわよ。
それにあなた、自分のお金の使い方を考えて見なさい」
「?」
「まず化粧品、ドレス。月にいくらつぎ込んでるか分かる?軽く金貨50枚はくだらないわ。
いえ、私がまだ把握できていない分もあるでしょうから、100はいく月もあるかしらね」
この世界においての通貨は金貨、銀貨、銅貨が主流だった。
金貨は1万円、銀貨は千円、銅貨は100円単位。
それ以下のものはないので計算に関してはとても助かっているが、その分物価がとんでもなく高くなるのが良くわかる。
なので、夫人の普段の身だしなみで金貨が10枚どころか100枚飛んでいくというのは割りとよくあるが、そういうのは公爵家や侯爵家で良くある話。
伯爵家やそれと同レベルの財政状況の侯爵家などは良くても50枚くらいに抑えておいて、家に余裕を持たせたいところだ。
おまけに令嬢が月に金貨100枚をポーンと使うことはそうそうない。
ヴォーダン伯爵家が侯爵家に食い込むような財政状況が豊かな家だとしても、さすがに100枚は父から説教が飛ぶのは確実だった。
「お父様にこの散財は怒られなかったの?」
「…怒られたわよ」
もしも父に怒られていなかったら自身がこれでもかと叱ってやろうかと思っていたが、すでに叱られ済みだったらしい。
その後はある程度抑えていると自己申告しているが、後できちんと帳簿を確認しようとグウェンドリンは思った。
来たのね、と言うカトリーヌは憔悴しきったような儚げな雰囲気だった。
自身も他の人から儚げな雰囲気だねと言われるものだが、恐らく今のカトリーヌと自身を比較すればカトリーヌの方が吹けば飛ぶような儚さを感じる事だろう。
下手するともう彼女は死んでしまうことを選ぶのではないかと言わんばかりの姿にグウェンドリンも内心驚きだ。
夕食前に誓約書を署名してからこうなったと思うと、ずいぶんと短時間でひどいやつれ方をしたとも感じた。
「カトリーヌ、ずいぶん憔悴しきっているけれど、大丈夫?」
これは本当に心配だった。
カトリーヌ自身がこんな憔悴っぷりを見せるようなことを誓約書で誓わせたということは、それだけカトリーヌが背負うものが大きい事だ。
これまで気兼ねなく自由に振る舞い続けていたカトリーヌにとっては初めての背負うものを実感することになったのだろう。
「…お姉さま、私…」
「…お母さまからあなたに誓約書を書かせたとは聞いているけれど、何についての誓約書なのかは聞いていないの。
それほど大きなことを誓ったの?」
「……」
カトリーヌは黙り込んだ。
姉にいうべきかカトリーヌは迷ったのだ。
自身がこれでもかという程劣等感を感じ、とにかく悪女としてこき下ろし、自分がお姫様としてこの家に、そしてこの世界の中心になるべくあれこれしたのに全くその効果が無かった相手。
あちらもこちらのことはあまり良く思っていないだろうが、今回の表情には何の裏も感じられないのもあって、どうするべきかとカトリーヌは悩んでいた。
あの姉に言うべきか、黙っておくべきか。
ただ、カトリーヌは自身の交わした誓約に関しての重みに耐えきれるほど、しっかりとした令嬢ではない。
なので
「あの、あのね…」
グウェンドリンに話すことを選んだ。
話を聞いたグウェンドリンはこくりこくりと声は出さずとも相槌を打って真剣にカトリーヌの話を聞き、そして聞き終えた後は頭が痛いとばかりに目を伏せて手を頭にやった。
「あなたもよく不貞行為を考えるようなことができたわね…。
怖いもの知らずなの?」
「お姉さまは自分がこの人だって思った婚約者がいるからそう言えるのよ!!
私は、私はもっと格好よくて権力があって、私が思う存分我儘言える人が良いのに!」
「それはちょっと高望みが過ぎるわよ。
それにあなた、自分のお金の使い方を考えて見なさい」
「?」
「まず化粧品、ドレス。月にいくらつぎ込んでるか分かる?軽く金貨50枚はくだらないわ。
いえ、私がまだ把握できていない分もあるでしょうから、100はいく月もあるかしらね」
この世界においての通貨は金貨、銀貨、銅貨が主流だった。
金貨は1万円、銀貨は千円、銅貨は100円単位。
それ以下のものはないので計算に関してはとても助かっているが、その分物価がとんでもなく高くなるのが良くわかる。
なので、夫人の普段の身だしなみで金貨が10枚どころか100枚飛んでいくというのは割りとよくあるが、そういうのは公爵家や侯爵家で良くある話。
伯爵家やそれと同レベルの財政状況の侯爵家などは良くても50枚くらいに抑えておいて、家に余裕を持たせたいところだ。
おまけに令嬢が月に金貨100枚をポーンと使うことはそうそうない。
ヴォーダン伯爵家が侯爵家に食い込むような財政状況が豊かな家だとしても、さすがに100枚は父から説教が飛ぶのは確実だった。
「お父様にこの散財は怒られなかったの?」
「…怒られたわよ」
もしも父に怒られていなかったら自身がこれでもかと叱ってやろうかと思っていたが、すでに叱られ済みだったらしい。
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