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感情の先
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部屋中が静寂に包まれる。
咲人は、手にしていた缶をテーブルに置き、涼眞の両肩に軽く手を添えると、ゆっくりとソファに倒そうとした。瞬間、涼眞は慌てた様子で床にビール缶を置くと、彼の胸を強めに押した。
「咲人、ちょっと落ち着け」
焦る言葉を無視し、咲人は涼眞のTシャツの中に手を潜らせ、その指先は胸元へ行く。
「咲人!」と大きな声で止めると、涼眞は一気に上体を起こした。
「先生は、僕の事どう思ってるの?いつも、どういう風に見てるの?」
言葉が詰まった。
真面目な顔と声色に、目を逸らしながら、思考を巡らせる。
「僕は、先生の事が本気で大好きだよ。でも先生が諦めてって言ったら、素直に諦める」
少しの沈黙の後、涼眞は言葉を選びながら、咲人の眼を見た。
その顔は、真っ直ぐではあったが、何処か儚い雰囲気を帯びていた。
「俺は、咲人の事は好きだけど、それが恋愛感情なのかどうなのかって聞かれたら、正直自分でも分からない。
・・・少し、考える時間が欲しい」
「・・・分かった」
涼眞から身を引くと、咲人はテーブルの上のジュースを飲み干すと、「歯磨いて寝るね」と言い残し、部屋を後にした。涼眞は大きな溜息を吐くと、ソファに足を伸ばし、仰向けの姿勢で手首を額に当てながら頭の中で自問自答する。
何故、咲人は自分に恋愛感情を抱いているのか。それはいつからなのか。
色々と疑問はあったが、本人から聞く事は避け、自分自身の感情を整理するも、上手く纏まらずにいた。
上体を起こし、床に置いてあったビールをゆっくり口に含むと、ふと、林檎の味を思い出す。抵抗はしたものの、嫌な気はしなかった。
もし、咲人が自分と近い年齢だったら・・・。
そんな事をぼんやりと考えていると、寝室のドアの閉まる音が耳に入った。
涼眞は咲人の去った洗面所へ移動し、シャワーを浴びる事にした。
服を脱ぎ、浴室へ足を入れ、シャワーのレバーを上げる。そこから出る40度前後の熱は、全てを洗い流す様だ。
そして、頭と身体を一通り洗い終えると、10分足らずでその場を後にした。
傍の洗濯機に掛かっていた咲人の使ったバスタオルで全身を拭き終えると、彼と同じ様に二つ並んだ歯ブラシの片方を手に取る。
歯を磨きながら、寝室のドアノブを音が立たない様そっと開けると、微かに寝息が聞こえた。丸まった姿勢で眠りに就いている咲人を確認すると、彼が起きない様にゆっくりとドアを閉める。
歯を磨き終え再びリビングへ戻ると、電気を消し、ソファに寝転んだ。
普段なら咲人と同じベッドで寝ているが、何となく気まずさを感じ、今晩はそのまま寝る事にした。
明日は、どんな顔をすれば良いのだろう。
そんな事を思いながら、涼眞は瞼を閉じた。
咲人は、手にしていた缶をテーブルに置き、涼眞の両肩に軽く手を添えると、ゆっくりとソファに倒そうとした。瞬間、涼眞は慌てた様子で床にビール缶を置くと、彼の胸を強めに押した。
「咲人、ちょっと落ち着け」
焦る言葉を無視し、咲人は涼眞のTシャツの中に手を潜らせ、その指先は胸元へ行く。
「咲人!」と大きな声で止めると、涼眞は一気に上体を起こした。
「先生は、僕の事どう思ってるの?いつも、どういう風に見てるの?」
言葉が詰まった。
真面目な顔と声色に、目を逸らしながら、思考を巡らせる。
「僕は、先生の事が本気で大好きだよ。でも先生が諦めてって言ったら、素直に諦める」
少しの沈黙の後、涼眞は言葉を選びながら、咲人の眼を見た。
その顔は、真っ直ぐではあったが、何処か儚い雰囲気を帯びていた。
「俺は、咲人の事は好きだけど、それが恋愛感情なのかどうなのかって聞かれたら、正直自分でも分からない。
・・・少し、考える時間が欲しい」
「・・・分かった」
涼眞から身を引くと、咲人はテーブルの上のジュースを飲み干すと、「歯磨いて寝るね」と言い残し、部屋を後にした。涼眞は大きな溜息を吐くと、ソファに足を伸ばし、仰向けの姿勢で手首を額に当てながら頭の中で自問自答する。
何故、咲人は自分に恋愛感情を抱いているのか。それはいつからなのか。
色々と疑問はあったが、本人から聞く事は避け、自分自身の感情を整理するも、上手く纏まらずにいた。
上体を起こし、床に置いてあったビールをゆっくり口に含むと、ふと、林檎の味を思い出す。抵抗はしたものの、嫌な気はしなかった。
もし、咲人が自分と近い年齢だったら・・・。
そんな事をぼんやりと考えていると、寝室のドアの閉まる音が耳に入った。
涼眞は咲人の去った洗面所へ移動し、シャワーを浴びる事にした。
服を脱ぎ、浴室へ足を入れ、シャワーのレバーを上げる。そこから出る40度前後の熱は、全てを洗い流す様だ。
そして、頭と身体を一通り洗い終えると、10分足らずでその場を後にした。
傍の洗濯機に掛かっていた咲人の使ったバスタオルで全身を拭き終えると、彼と同じ様に二つ並んだ歯ブラシの片方を手に取る。
歯を磨きながら、寝室のドアノブを音が立たない様そっと開けると、微かに寝息が聞こえた。丸まった姿勢で眠りに就いている咲人を確認すると、彼が起きない様にゆっくりとドアを閉める。
歯を磨き終え再びリビングへ戻ると、電気を消し、ソファに寝転んだ。
普段なら咲人と同じベッドで寝ているが、何となく気まずさを感じ、今晩はそのまま寝る事にした。
明日は、どんな顔をすれば良いのだろう。
そんな事を思いながら、涼眞は瞼を閉じた。
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