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第二章 至分の試練が終わりません
第17話 全く予断を許しません
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人類と魔軍。
リドア王国と魔王国。
いや、ニー・デ・モアールと魔軍の東の砦の間には、戦争の気配は欠片も無く、正式な国交も相互不可侵条約もある訳ではないが、民間レベルでの交易は、ずっと続いている。
それがわかっていながら、行われた王都での勇者召喚。
本当に魔王と魔軍に対抗するつもりならば、明確な敵対行動と言える。
その動かぬ証拠が、ノゾム自身と言うことであり、無自覚な『歩く宣戦布告』だ。
ただの武装した人間と言うだけで、あれだけゼファールが激昂したのだから、間違って北西の砦、『二つ星』アルフロドの所へ同じように接近し、勇者と名乗っていれば、砦を挙げての大攻勢と全面対決することになっていただろう。
真意がわからない内は、騒ぎ立てるつもりなどさらさらない、東の砦の面々であれぱこそ、何の問題も無いかのように扱われている。
だが、本来なら山嶺を挟んだ戦争が起きていても不思議ではないし、双方の今のメンバーだけ考えても、地形くらいは簡単に変えられる実力者ばかりだ。
一日で、山嶺のシルエットが変わってしまったとしても、何の不思議も無い。
日が暮れる前には、広場はクルシアスの配下のための天幕が多数張られ、そのまま中央に大きなかまどを設えて料理が始まり、早い者はもう酒杯を手に酒樽が回って来るのを待っている。
肉の焼ける匂いにスパイスの香りが混じって、シンプルだが食欲をそそる。
砦を背にした長いテーブルの真ん中に、砦の主たるライザームがいつの間にか座っており、その右手に『氷魔将』クルシアス、『鉄壁』タルカス、『双旋風』ゼファール、クルシアス配下の四人の獣人が続いて座り、反対側左手にポーシュ達、東の砦の幹部が並ぶ。
ノゾム達は左手側の一番近いテーブルに座っていた。砦側の出席者の中では、上席と言うところだろう。
「この夏の恵みの、最初の一杯を、魔王陛下に捧ぐ!」
「魔王陛下に!」
ライザームの発声で、全員が高々と頭上に酒杯を掲げ、その後一気に飲み干す。
広場に喧騒が戻り、次々と酒樽や大皿が空になる。
酒宴は、どこでも似たようなものだ。
「飲めるんだけどなぁ」
ケインがぼやく。
ノゾムとケインの酒杯には、ガーディアンベリーの果汁を水で割ったものが注がれていた。
この世界の成人年齢は、十五歳なので、ケインは成人しているが、ノゾムが遠慮したあおりをくらって、ケインにも酒は注がれていない。
ゼルドは、回って来た小型の酒樽を掲げて見ている。栓を開け、自分の酒杯に注ぐと、栓をして次のテーブルへ回す。
「侮れないな、『一つ星』も『四つ星』も」
どうやら、酒のことを言っているらしい。
「美味しいんですか?」
「美味いってだけじゃない。最初の一杯は、東の砦のガーディアンベリーのワインだったが、ちゃんと樽で熟成させてるし、多分瓶に移されて更に熟成を重ねたランクが上のワインも、どっかにあるんだろう。酒の扱いを心得てる。今飲んだ北東の砦のワインは葡萄だが、多分ワイン専用の品種を育ててる。北東の砦は、葡萄園付きのワイナリーを持ってるのかもな」
珍しく味わいながら、ゼルドは飲んでいる。
「砦の魔将って奴らは、王国の地方領主並みの領地経営は、出来てる可能性が高いな」
「ワインだけでそんなことまでわかるんですか?」
「東の砦は、普段使いの酒は交易品として樽単位で行商人から買ってたが、上客に飲ませる上等の酒として、年四回の酒宴に出すくらいの量は自分たちで作ってる。対して、北東の砦は、部下の訪問先へこれだけの量を土産に持たせてるんだから、売るほど作ってるのは間違いない。魔王国内部の流通だけか、人類の領域にも出荷してるかはわからないが、むしろ、王都で飲んだ二流三流のワイナリーのワインより、上なのは確かだ」
さっき隣のテーブルに回したワインの樽を取りに行き、ゼルドは自分の酒杯に樽に残った酒を注ぐ。酒杯の七分目ほど満たして、樽は空になったようだ。
「ほら」
ゼルドはノゾムへその空になった小型の樽を投げる。
「よく見てみろ。その樽は何かの使い回しじゃない、ワインの運搬専用の樽だ。樽の焼き印は、行商人が持ってた東の砦の鑑札の焼き印に似てるから、それが北東の砦か『四つ星』の印なんだろう。込められた魔力は弱いが、耐熱耐衝撃の呪文もかけてあるようだから、夏の昼間でも運べたってことだ。俺は、こういうのを王国では何度となく見てきた。職人の仕事への矜持が、商人の品物への自信が、ワインにも樽にも見てとれる」
「で、ゼルドはさっきから何が言いたいんだよ」
ケインがゼルドの長い話に痺れを切らす。
「リドア王国は、魔軍との戦争の無かった二百年の平穏で、内政を充実させ、周辺の他国に劣らない国家になった」
ゼルドは酒杯を空ける。
「その同じ二百年で、魔王国も、人類側の各国にひけをとらない、尊敬に値する文化や技術を内部に培って来たと言うことさ」
魔将は魔軍の統率者であると同時に、魔境、魔王領の領域と領民の統治者であり、領地の経営者であり、伝統や文化の支援者でもあるということだ。
「ああ、そういうことか」
ノゾムは、自分の杯に注がれたものを見る。全く違和感を感じていなかった、水で割って、飲みやすくなったガーディアンベリーの果汁。
「濃縮還元の技術も持ってるんだ、東の砦」
元の世界で飲み慣れていた果汁飲料と同じく、保存や運搬のための果汁の濃縮技術、元の濃度に戻すだけでなく、飲みやすさのために加える水分の比率の調整もされている。
果実を糖分とともに煮詰めた、ジャムのような保存食作りとは、一線を画す技術。
王国の行商人とは、生の実や干したガーディアンベリーは取引していたが、濃縮された果汁の取引は見なかった。
それらを利用して作られたハイポーションには、どれくらいの違いが出るのか。
魔王国内の流通を含め、軍事に転用可能な民生的な技術力は、人類側とどれだけ差があるのか、想像もできない。
魔軍とは、高い魔力と強力な魔法による、あるいは巨大で強靭な肉体による攻撃力を誇る個体が集まった、恐怖の軍団、だと思って来た。
が、同時に、個人差、個体差は大きいものの、異なる文化、異なる技術、異なる秩序に律せられた機能的集団であることは否めない。
もちろん、彼ら魔軍が高度な戦闘集団であること自体は、間違いないし、矛盾しない。
それは、彼等の社会構造が、生存のための戦闘小集団が出発点であり、基礎になっていることによる違いにすぎない。
東の砦は、翌朝も快晴で、日が高くならない内に天幕は片付けられ、北東の砦の獣人部隊は、自炊した朝食を済ませていた。
『氷魔将』クルシアスは、配下を後ろに整列させた上で、ライザームに恭しく一礼する。
「『四つ星』ハラックが配下、クルシアスが、夏至のご挨拶を申し上げる。願はくは、魔王陛下の最古の魔将、五芒星将にして八龍将、『道標』の魔将にして『試金石』の魔将たるライザーム閣下に夏至の試練を賜り、我に、我が偉大なる主、ハラックの後継者たる資格の有りや無しやを、ご判定いただきたいと存ずる」
クルシアスの宣言に、クルシアス配下の全ての兵が、一斉に片膝を突き、頭を垂れる。
個性もバラバラな獣人部隊とは思えない、一糸乱れぬ動きだった。
「これはまた、重大で直接的な試練の請願だね」
ノゾムは思う。その資格のための試練とは、どれほど重大なものか。
クルシアス率いる部隊は、東の砦の精鋭達との相応の規模の模擬戦か、戦術級・戦略級の判断を求められる試練が展開されるのか。
ノゾム達は、新たな五芒星将の誕生の瞬間を目撃する初めての人類になるのかも知れない。
その場の全員が、ライザームの言葉を待っていた。
「許す」
クルシアスは、ライザームの言葉に、跪き、頭を深く垂れる。
そして、すぐに顔を上げた。
「閣下、今、何と?」
反応出来ているのは、クルシアス当人と、苦笑いが漏れている東の砦の幹部達のみ。
ノゾムは、クルシアスの狼狽えぶりに一拍遅れて気が付く。
「え? 『試練無くして資格無し』じゃなかったの?」
勘の悪い者達も、何か不穏な雰囲気にざわめき始めた。
「許すと言ったぞ、クルシアス。五芒星将の後継たる資格を、お前に認める、と」
リドア王国と魔王国。
いや、ニー・デ・モアールと魔軍の東の砦の間には、戦争の気配は欠片も無く、正式な国交も相互不可侵条約もある訳ではないが、民間レベルでの交易は、ずっと続いている。
それがわかっていながら、行われた王都での勇者召喚。
本当に魔王と魔軍に対抗するつもりならば、明確な敵対行動と言える。
その動かぬ証拠が、ノゾム自身と言うことであり、無自覚な『歩く宣戦布告』だ。
ただの武装した人間と言うだけで、あれだけゼファールが激昂したのだから、間違って北西の砦、『二つ星』アルフロドの所へ同じように接近し、勇者と名乗っていれば、砦を挙げての大攻勢と全面対決することになっていただろう。
真意がわからない内は、騒ぎ立てるつもりなどさらさらない、東の砦の面々であれぱこそ、何の問題も無いかのように扱われている。
だが、本来なら山嶺を挟んだ戦争が起きていても不思議ではないし、双方の今のメンバーだけ考えても、地形くらいは簡単に変えられる実力者ばかりだ。
一日で、山嶺のシルエットが変わってしまったとしても、何の不思議も無い。
日が暮れる前には、広場はクルシアスの配下のための天幕が多数張られ、そのまま中央に大きなかまどを設えて料理が始まり、早い者はもう酒杯を手に酒樽が回って来るのを待っている。
肉の焼ける匂いにスパイスの香りが混じって、シンプルだが食欲をそそる。
砦を背にした長いテーブルの真ん中に、砦の主たるライザームがいつの間にか座っており、その右手に『氷魔将』クルシアス、『鉄壁』タルカス、『双旋風』ゼファール、クルシアス配下の四人の獣人が続いて座り、反対側左手にポーシュ達、東の砦の幹部が並ぶ。
ノゾム達は左手側の一番近いテーブルに座っていた。砦側の出席者の中では、上席と言うところだろう。
「この夏の恵みの、最初の一杯を、魔王陛下に捧ぐ!」
「魔王陛下に!」
ライザームの発声で、全員が高々と頭上に酒杯を掲げ、その後一気に飲み干す。
広場に喧騒が戻り、次々と酒樽や大皿が空になる。
酒宴は、どこでも似たようなものだ。
「飲めるんだけどなぁ」
ケインがぼやく。
ノゾムとケインの酒杯には、ガーディアンベリーの果汁を水で割ったものが注がれていた。
この世界の成人年齢は、十五歳なので、ケインは成人しているが、ノゾムが遠慮したあおりをくらって、ケインにも酒は注がれていない。
ゼルドは、回って来た小型の酒樽を掲げて見ている。栓を開け、自分の酒杯に注ぐと、栓をして次のテーブルへ回す。
「侮れないな、『一つ星』も『四つ星』も」
どうやら、酒のことを言っているらしい。
「美味しいんですか?」
「美味いってだけじゃない。最初の一杯は、東の砦のガーディアンベリーのワインだったが、ちゃんと樽で熟成させてるし、多分瓶に移されて更に熟成を重ねたランクが上のワインも、どっかにあるんだろう。酒の扱いを心得てる。今飲んだ北東の砦のワインは葡萄だが、多分ワイン専用の品種を育ててる。北東の砦は、葡萄園付きのワイナリーを持ってるのかもな」
珍しく味わいながら、ゼルドは飲んでいる。
「砦の魔将って奴らは、王国の地方領主並みの領地経営は、出来てる可能性が高いな」
「ワインだけでそんなことまでわかるんですか?」
「東の砦は、普段使いの酒は交易品として樽単位で行商人から買ってたが、上客に飲ませる上等の酒として、年四回の酒宴に出すくらいの量は自分たちで作ってる。対して、北東の砦は、部下の訪問先へこれだけの量を土産に持たせてるんだから、売るほど作ってるのは間違いない。魔王国内部の流通だけか、人類の領域にも出荷してるかはわからないが、むしろ、王都で飲んだ二流三流のワイナリーのワインより、上なのは確かだ」
さっき隣のテーブルに回したワインの樽を取りに行き、ゼルドは自分の酒杯に樽に残った酒を注ぐ。酒杯の七分目ほど満たして、樽は空になったようだ。
「ほら」
ゼルドはノゾムへその空になった小型の樽を投げる。
「よく見てみろ。その樽は何かの使い回しじゃない、ワインの運搬専用の樽だ。樽の焼き印は、行商人が持ってた東の砦の鑑札の焼き印に似てるから、それが北東の砦か『四つ星』の印なんだろう。込められた魔力は弱いが、耐熱耐衝撃の呪文もかけてあるようだから、夏の昼間でも運べたってことだ。俺は、こういうのを王国では何度となく見てきた。職人の仕事への矜持が、商人の品物への自信が、ワインにも樽にも見てとれる」
「で、ゼルドはさっきから何が言いたいんだよ」
ケインがゼルドの長い話に痺れを切らす。
「リドア王国は、魔軍との戦争の無かった二百年の平穏で、内政を充実させ、周辺の他国に劣らない国家になった」
ゼルドは酒杯を空ける。
「その同じ二百年で、魔王国も、人類側の各国にひけをとらない、尊敬に値する文化や技術を内部に培って来たと言うことさ」
魔将は魔軍の統率者であると同時に、魔境、魔王領の領域と領民の統治者であり、領地の経営者であり、伝統や文化の支援者でもあるということだ。
「ああ、そういうことか」
ノゾムは、自分の杯に注がれたものを見る。全く違和感を感じていなかった、水で割って、飲みやすくなったガーディアンベリーの果汁。
「濃縮還元の技術も持ってるんだ、東の砦」
元の世界で飲み慣れていた果汁飲料と同じく、保存や運搬のための果汁の濃縮技術、元の濃度に戻すだけでなく、飲みやすさのために加える水分の比率の調整もされている。
果実を糖分とともに煮詰めた、ジャムのような保存食作りとは、一線を画す技術。
王国の行商人とは、生の実や干したガーディアンベリーは取引していたが、濃縮された果汁の取引は見なかった。
それらを利用して作られたハイポーションには、どれくらいの違いが出るのか。
魔王国内の流通を含め、軍事に転用可能な民生的な技術力は、人類側とどれだけ差があるのか、想像もできない。
魔軍とは、高い魔力と強力な魔法による、あるいは巨大で強靭な肉体による攻撃力を誇る個体が集まった、恐怖の軍団、だと思って来た。
が、同時に、個人差、個体差は大きいものの、異なる文化、異なる技術、異なる秩序に律せられた機能的集団であることは否めない。
もちろん、彼ら魔軍が高度な戦闘集団であること自体は、間違いないし、矛盾しない。
それは、彼等の社会構造が、生存のための戦闘小集団が出発点であり、基礎になっていることによる違いにすぎない。
東の砦は、翌朝も快晴で、日が高くならない内に天幕は片付けられ、北東の砦の獣人部隊は、自炊した朝食を済ませていた。
『氷魔将』クルシアスは、配下を後ろに整列させた上で、ライザームに恭しく一礼する。
「『四つ星』ハラックが配下、クルシアスが、夏至のご挨拶を申し上げる。願はくは、魔王陛下の最古の魔将、五芒星将にして八龍将、『道標』の魔将にして『試金石』の魔将たるライザーム閣下に夏至の試練を賜り、我に、我が偉大なる主、ハラックの後継者たる資格の有りや無しやを、ご判定いただきたいと存ずる」
クルシアスの宣言に、クルシアス配下の全ての兵が、一斉に片膝を突き、頭を垂れる。
個性もバラバラな獣人部隊とは思えない、一糸乱れぬ動きだった。
「これはまた、重大で直接的な試練の請願だね」
ノゾムは思う。その資格のための試練とは、どれほど重大なものか。
クルシアス率いる部隊は、東の砦の精鋭達との相応の規模の模擬戦か、戦術級・戦略級の判断を求められる試練が展開されるのか。
ノゾム達は、新たな五芒星将の誕生の瞬間を目撃する初めての人類になるのかも知れない。
その場の全員が、ライザームの言葉を待っていた。
「許す」
クルシアスは、ライザームの言葉に、跪き、頭を深く垂れる。
そして、すぐに顔を上げた。
「閣下、今、何と?」
反応出来ているのは、クルシアス当人と、苦笑いが漏れている東の砦の幹部達のみ。
ノゾムは、クルシアスの狼狽えぶりに一拍遅れて気が付く。
「え? 『試練無くして資格無し』じゃなかったの?」
勘の悪い者達も、何か不穏な雰囲気にざわめき始めた。
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