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◎二年目、九月の章

■蘭々は一二期生メンバーを集めて画策する

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 夜深く、寮が静かになったところ蘭々の部屋に賢司と伊織は呼ばれてきていた。

「こんな夜更けにどうしたの?」

 伊織の問いかけに蘭々は神妙な面持ちで答える。

「このままだと私たち留守番になるわ」

「僕は留守番でもいいけどなぁ」

 伊織はぼそりと言うと、蘭々は呆れたとばかり半目で伊織を見る。

「俺も納得はいかねぇけどさ。どうするよ?」

 賢司のは問いかけと同時にぼやきに近い口調でもあった。レベル差は一朝一夕で埋まるようなものではない。

「……たしかに足手まといかもしれないけど、本当に足手まといかはまだ決まってないわ」

 晴はこちらの実力も見ずにただ年下だからという理由で判断しようとした。

 子供扱いしてくるのも気に入らない。しかも彼は一番の年長ということもあってか、十一期生メンバーは彼の話に案外と耳を傾けている。

 晴は少し年上というだけで重用されているに過ぎないと蘭々は思っている。

「ふーん。何を考えてるかはさておいて。先輩方に認めてもらいたい想いは一緒だぜ」

「伊織はどうするの? うまく立ちまわれば久遠先輩と肩を並べて一緒に戦えるかもしれないわよ」

 この場合、そそのかしたということになるのだろうか。少しの罪悪感を覚えつつ蘭々はそれでも伊織を誘う。

 東方旅団でしっかりとした立場を築くことは兄の水呉すいごを助けることにもなる。

 そのためにも確実に成果を積みあげる必要があった。

「でも、僕なんかで大丈夫かな?」

「むしろ、この場合はあなたが必要よ」

 蘭々は力強く頷く。伊織もそれならという顔に少しずつ変わっていく。

「それで何をするつもりなんだよ?」

「私たち三人で今日行った寮に行って魔物を倒してくる。それで退治したログを見せるのはどうかしら?」

 実力というよりその場で足を引っ張らないということは理解してもらえるはずだ。

「シンプルだけど悪くないんじゃないか」

 問題はそれで認めてもらえるのか。いや、そもそも怒られるのが先ではないだろうか。

 しかし蘭々は息巻いており頭に血がのぼっている様子だ。賢司もこういうノリは大好物のようにある。唯一、ストッパーにならないといけない伊織は推しが弱い。

 そんなこんなで彼ら一二期生の夜の旅業りょぎょうがはじまる。

 そして、彼らをつける黒い複数の影の存在にはまだ気がついていなかった。









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