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◎二年目、九月の章

■屋上にて

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 本当にこの選択が正しかったのか。

 屋上に到着するまでそれはそれで大変だったわけだが、そこに待っていた大蛇の姿を見て晴はさすがに逃げたしたくなった。

「そんな顔しないでくださいよ、先輩」

 頼果に背筋を伸ばせと注意される。たしかにここが踏ん張りどころだ。わかってはいる。

「だからって、どうするんだ?」

「私たちの受けたクエストの目的は敵を倒すことじゃない。要石をお社に置くことでしょ」

 お社はたしかに屋上に存在していた。位置にして晴たちがのぼってきた階段から正面奥にある。

 そこを塞ぐ形で大蛇がとぐろを巻いて、こちらに睨みを利かしている。

「まず、私が引きつけて先輩は牙砕きでデバフをかける。それから由芽と圭都が攻撃を仕掛ける。その間に先輩はお社へ。現状、とれる作戦はこれくらいでは?」

「お、おう」

 セオリー通り。駆け引きとはその中でやっていくものだ。

 号令をかけるまでもなく頼果は動き出す。流麗な躍るような仕草で大蛇の注意を引きつける。

 直接、牙でけしかけてくるような攻撃もギリギリのタイミングでかわす。

 蛇が首を伸ばしきったあたりで晴の手甲が青く光ると腹に拳の一撃を与える。

 それから晴の両サイドから由芽と圭都が武器を持って突撃する。

 牙砕きは相手の攻撃力を下げる効果がある手甲専用の武器スキルである。

「晴先輩、行ってください!」

 由芽に呼びかけられて、晴は大蛇を乗り越えてお社のほうへ向けて走りだす。

 晴に注意が向きそうになると頼果たちは大蛇に猛攻をかける。

「さすがだぜ」

 大蛇が尻尾の先端でなぎ払ってくるのを晴は飛び越えてかわしてお社まで到達する。

 その台座に要石をセットすると建物内に漂っていた空気が清浄になっていくような感覚に覆われていく。

 それとともに明らか大蛇の動きが鈍くなる。

「うおーりゃっ!」

 晴は大蛇の頭に向かって殴りかかる。かなりのダメージを与えたはずだが、倒すまでには至らない。やはり久遠が別格なのだ。

「地味だけど、ダメージを確実に与えていきましょう」

 頼果の提案に一同は頷く。間もなくして大蛇は討ち取られる。

 その後も休むことなく屋上から階下へ向かう。目に入る魔物は極力倒した。

 明らかに動きが鈍くなっているだけでなく、もらえる経験値とお金までも強制ログインゾーンで強化されているときと同じだけもらえることがわかったからだ。

 これは実質、ボーナスステージのようなものだ。何なら全滅させてやりたいくらいだ。

 ちなみに里奈から「いつまでかかってるの?」とメッセージがきたのはそれから間もなくのことであった。
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