測量士と人外護衛

胃頭

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エッチするまでの話②

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 国際新大陸研究から大統領官邸はバイクで四十分ほどの距離に位置している。ゲートでIDを提示し、正面玄関まで走らせ待機していた警備にバイクを預ける。無駄に豪華な造りのエントランスを抜け、官邸警務官と共に来賓室へと向かえば扉の前で警護中の天馬の姿が目に入る。あちらもエルに気付いたらしく天馬が扉をノックすればガチャリと内側から開かれた。
「や、早かったんじゃないかな」
「…そうか」
 出迎えた笑顔の日高に対して声色が硬くなってしまうのは仕方ない。フジの幼馴染、宇月の恋人、エルにとって近い存在でありながら未だに掴めない人物であることは間違いない上に、ほんのりと後ろめたい感情が体を僅かに強張らせた。
「迎えが来たぞ」
 くるりと振り返りフジに声をかける瞬間、日高がエルの胸ポケットに何かを入れた。重さと形から恐らくUSBだろう。
 チラリと様子を伺うが、フジに声を掛け微笑む横顔が映るだけだった。
「エル!」
 胸に飛び込んできた愛しい人を受け止め、今はこの喜びを噛み締める。もしエルがフジとの約束を破って盗み聞きをしようとしていたと知ったら彼はどんな顔をするのだろう。残念そうな、悲しそうな顔をするフジを想像して気持ちが暗くなった。

 日高に見送られ大統領官邸を後にし、本日の業務はこれで終了だ。そのまま二人は自宅へと帰宅する。ここからそう遠くない場所に位置するタワーマンションは上流階級しか暮らせない高級住宅地に建てられたものだが、今は新大陸保護連合-通称IUCN-で働く職員の宿舎だ。
 厳重なセキュリティーとなっており、エントランスにはコンシェルジュと警備員が24時間常駐。正面玄関から部屋までは多重のオートロック、キーは顔認証と指紋認証、暗証番号式をそれぞれ玄関、エレベーター、自室前で使い分けている。
 最初は防犯が大袈裟ではないかと笑うフジだったが、実際に目の前で侵入者が警備に捕まっているところを見てしまうと笑い事ではなくなった。
 地球環境復興は全人類共通の目的だと思っていた。
 しかしそうでもないのだとフジが知ったのは最近だ。世界には新大陸移住を断念することで不利益を被る連中や、人類が貧困である方が都合の良い組織、新大陸は神の土地だと崇め信仰する人々がいるらしい。そういった奴等がフジやエルの命を狙ってはるばる海を越え東の島国までやって来るのだ。高いセキュリティーがなければ今頃フジは海の藻屑となっていたかもしれない。
 いわゆるペントハウスと呼ばれる最上階が二人の住まいになる。ただでさえ高級マンションなど気が引けるのに最上階なんて!とフジは拒否していたが、下階よりも天井が高くフロアを丸々独占でき、周辺建物からの視線がないここはエルのことを思うと好条件だった。
 背の高いエルでも広々と使え他者からの目を気にする心配もないぞ、と言ったのは日高だ。
 フジはすぐに即答した。

「そろそろ寝ますか」
「ああ。これを読み終えたら行くから先に寝ててくれ」
 夜、今日の議事録を読むエルに頷いて、フジは心の中で気合を入れながら寝室へと向かう。
 今日は絶対に最後までして貰うんだと日高と話した後からずっと決めていたのだ。いや、最後まで出来ずともせめてエルのエルを拝むまでは絶対に意識を飛ばさない。
 メゾネット構造の最上階は下階はリビングとキッチンと風呂場があり、私室や寝室は上階に位置している。上階一番奥、半円状の全面ガラス窓になっている大きな寝室に置かれたキングサイズのベッドに寝転びながら窓の外を見た。眺望なんてあったものではなく、広がるのは富裕層の区画だけ照らされた灯りとあとは薄暗くもの寂しげな民家だけだ。
 雲に覆われた空は星ひとつ見えやしない。
 こんな世界のままがいいなどとフジには到底思えなかった。
「ダメだ!暗い思考になってる!」
 気持ちを切り替えようとパチンと頬を叩いた。
 今からフジはエッチなことをするつもりなのだから、世界がどーだこーだなどと考えてる暇は無い。今は何よりもエルのチンコの方が大切なんだ。
 ガチャリと扉が開く音に振り返る。
「待たせた」
「エル」
 薄着姿でメットもない、素顔のエルがベッドを軋ませ上がって来るとフジの頬を優しく撫でた。
 暗くベッドライトの微かな明かりに照らされただけの空間で、赤い目が優しくこちらを見ている。いつも低いエルの冷たい手が自分の体温で温まっていくのを感じた。
「今日もお疲れ様でした」
「ああ、貴方も」
 労りの言葉に微笑みながらフジはその手に擦り寄って、伺うようにエルに顔を向けた。言葉にしなくてもフジの視線の意味するところを察してくれたらしい。
 ゆっくりとエルの顔が近付いてキスをした。
 何度も唇を合わせては離して、また合わせて、その度に鳴るリップ音が口付けをしているのだと耳からも分かって気持ちが高まる。エルと熱を分け合えるこの行為が好きだった。
 そう思えば挿入もキスと似たようなものなのじゃないか。ならばきっと自分は好きなはずだ。
 口を合わせながら繋いでいた手を優しく解き、エルの下半身へとそろりと伸ばせば、やんわりと止められてしまいフジは眉を顰める。
 エルのここは鉄壁の守りだ。
「んっ…何でですか、触っても」
「ダメだ。止められなくなる」
「止めなくてもいいですから、あの、エル、今日は」
 最後まで。
 懇願の言葉はエルに飲み込まれてしまった。差し込まれた舌で咥内を弄られ漏れ出るのは甘い吐息だけだ。
 違う、最後までして欲しいとお願いしたいのに。
 エルに触りたい。
 触られて気持ち良くなるのは好きだけど、俺はエルを気持ち良くしたい。
 握られた両手首を逃げるように動かせば簡単に解放してくれるのに、エルに触ろうとすれば優しく止められてしまう。無骨なエルの手がフジの指の間の股を撫でるとぞわぞわと背中に刺激が走り、思考は緩く溶けていく。指だけでこれなのだから全身を触られるといつも何も考えられなくなってしまう。
「ふっ、ん…エル、んっ、はぁ…」
「フジ」
「は、い…んっ…ふ…ぁ」
「貴方を気持ち良くさせたい」
 まるでそれが至高の喜びだとでも言いたげな顔をするのだから、フジはただ火照った顔でコクコクと頷くことしか出来なかった。
 頭の後ろに手を添えられパタンとベッドに押し倒される。その間もエルとフジの口が離れることはなくむしろ倒れた拍子にさらに深く舌が入り込み、絡め合う。足りないとばかりにエルの首に腕を回し、二人はむさぼるように口付けを交わした。
 エルの熱が唇から全身に伝わり安心が広がって行く。エルに求められている確かな安心だ。
 挿入だけがセックスじゃない。
 日高にそう言われたのをキスに溺れながらぼんやりと思い出した。愛する人と体を求め合う行為こそがセックスなのだと。
「フジ」
「っ、は…い」
「愛してる」
「んっ、ふぅ、は、はい…おれも…ぁ、んんっ」
 泣きそうなほどの優しい愛の言葉を、口付けと共に落とされフジはそれを必死に受け入れる。確かに愛されているのは間違いないのだから性行為の形にこだわることもないのかもしれない。
「愛してる、フジ」
 だけどもし、フジが挿入を怖がるかもしれないなんてそんな理由でエルが我慢しているのなら、きちんと話し合って大丈夫だと伝えたい。
 だってこんなにも体がエルを求めてる。
「は、ぅ…んんっ、ぁ…もう、おれ」
「ああ。キスだけで貴方のここは硬くなってる」
「言わないでよ…ぅ、ん…ふ、ぅ…ぅ、ああっ!」
 スルリと下着ごとズボンを脱がされると、露になった熱をやわやわと揉みしだくように触られ息を詰める。恥ずかしいことじゃないと分かっていながらもどうしても声を抑えてしまう。
 そうしていると、咎めるように亀頭をキュッと握られ思わず大きな声が出た。敏感な先端はいつも優しく擦り上げてくれるのにこんな時は意地悪が顕著だ。
「え、る!そこっ、あ、優しくって、ぇ…っん!」
「ならば聞かせてくれ、貴方の声が好きなのは知ってるだろう」
「喘ぎ声は、っ、う…ん、ん!恥ずかしいって…言っ、て…ぁ、ひ、ぅ…!」
「そうか。では頑張って抑えような」
 これまで散々開発され、物欲しげにヒクついていた後孔にローションを纏わせたエルの指が触れる。ほじるように指を動かし、つぷりと中に挿れられフジは慌てて両手で口を塞いだ。
 ゆっくり、ゆっくりと人差し指が肉壁を掻き分け奥へと侵入して来る感覚に、爪先からゾクゾクと甘い刺激が走る。体に叩き込まれた快楽。中を開かれ苦しいのと、気持ちいいのが一変にやって来てフジの体を内側から責め立てた。
「んっ、んっ…ぅ、あ…!く、ぅ…」
 拡げるように中で動いたかと思えば、一旦全てを抜いて穴の縁をふにふにと触る。直接的じゃない微弱な刺激も感度を高める愛撫に過ぎず、フジははしたなく期待してしまう。
 (中…奥の気持ちいいところ…触って欲しい…っ)
 もどかしさから無意識に腰を動かすフジにエルは小さく笑うと、再び指を根元まで埋め込んだ。
 気持ち良さに震えるフジの体を、もう片方の手でスリスリと撫でる。口を必死に押さえる腕を、汗ばんだ脇を、震える腹を撫でて、それから胸に付いた小さな飾りを指で弾いた。
「ンッ!!ッ、あ!」
「ん?」
「ひどい!むね…ああっ!ちょっと、いまは…んんっ!あっ…!そこ、っ…!」
 中に埋めていた指を引き抜いて、また第二関節ほどまで埋め、指の平をフジの腹の方へとグッと押し込む。膨らんだシコリをとん、とん、とん、と優しく叩けば緩い刺激にフジの体が跳ねた。
「ああっ、き、もち、ぃ…ぅ、ううっ!あっ…!」
 気持ちいい。気持ちいいがもっと強い快感を知ってしまっているこの体は物足りないと泣いている。
「はぁ、あ、エル!や、だっ、たりない…!」
「ああ、ダメだフジ声が出てる。ほら抑えて」
「んっ…ぁ…ふ…」
「これくらいの強さなら声も漏れ出ない。貴方も恥ずかしくないだろう?声を気にせず気持ち良くなって良いんだぞフジ」
 違う!確かに気持ち良いが、こんな指一本の優しい刺激じゃフジの体は満足出来ないようにされてしまっている。
 そんな体にした男をキッと睨むが微笑み額にキスを落とされるだけだった。
「うっ、ん…ふっ、ぅ…」
「腰が動いてるな」
 撫でるような淡い刺激が足りなくて腰を浮かせて強請るように動いてしまう。指を増やしてくれないならせめて強く押して欲しい。何故そんなゆるゆると物足りない刺激ばかりなんだ。
「フジ、ああ、かわいいな。足りないのか?」
 声を出せばダメだと咎められるので、エルの言葉にフジは必死に頷く。
「何本挿れようか?教えてくれないか」
「んっ、ふ…ぅ、う~…!」
「答えられないならここに聞こう」
 グッと腰を上げられ両足が大きくM字に開かれる。その下にエルは胡座をかいた自分の足を入れ、フジの腰を抱え込み後孔を観察するような体勢を取った。
「ンンッ!?!?!」
「エッチな時は貴方のこの可愛らしい穴が一番素直だ」
「っ、なにを…!!」
「フジ、口は閉じなければ恥ずかしい声が出てしまうぞ」
「ッ、~!!」
 (この…変態!ドS!何でこんな時はそんなに意地悪なんだこの人は!)
 それでも素直に言うことを聞いてしまう辺りフジもマゾヒストな節はあるのだが、おそらく自身では気付いていない。ただエルに言われたことは守らなくてはと無意識に行動しているようで、叫びたい気持ちをを口を覆い抑え込んだ。
 ぷくりと膨らんだ穴の縁をなぞるように指で円を描けばフジの足が空中でパタパタと暴れた。恥ずかしいからやめろ!と無言の抵抗もお構いなしにエルはじっと観察する。
 フジは体毛が薄いが、それでも流石に尻の穴にも毛は生えていた。平均と比べてかなり少ないが控えめに生えたそれらは、ローションと愛液で濡れペタリと穴の周りに張り付いている。
 エルは好奇心からその短く縮れた毛を剥がすように指で摘み、ピンっと引っ張ってやれば小さな痛みに穴がピクリと反応した。
「??」
 フジは見えないところで何をされているか分からなかった。ただチリっと皮膚がわずかに引っ張られるような痛み。
 例えば髪の毛を一本だけ引かれてるような。
 まさか。
「ちょっと、エル!何してるんです!?」
「貴方は尻の毛まで可愛らしいのだな」
「ばっ………!!バカじゃないですか!?なななにを!!」
「フジ、声が出ているが」
「そんなこと言ってる場合じゃないですよ!声なんてもうどうでも…!それより離して下さい!そんなの掴まない!!」
「いいのか?声を出しても」
「いーです!いーですから、早く!離して!」
「わかった。では改めて聞くがここに何本指を挿れて欲しい?」
「うっ……じゃあ、えっと、に、にほん…です…」
 どうやら毛は離してくれたようだが、依然としてひっくり返されたような体勢のままだ。
 おずおずと答えるフジの言葉を聞いてエルは二本の指をフジの後孔に埋めていく。縁が先ほどより広がる感覚が気持ちいい。ぐずぐずに溶け、抵抗もなく受け入れるフジの中はエルの指をもっともっとと求めるように奥まで飲み込んだ。
「ぁ、んっ、ん、はぁ…ぅ、ああっ、お、くぅ…んん!」
「ああ。深くまで入ったな」
「く、っ、ふぅぅ、ぅ…!あ、あ、ああっ…」
「フジ、貴方の中が私の指を締め付け過ぎて動かせない」
「うそ、だぁ、ああっ、ん!んっ…!」
「ほら抜こうとすれば駄目だと止めるんだ」
「ん、ああっ!や、あっ…!力抜きますから…!っ、ん、あ」
「やはり抜けないな。仕方ないから奥を拡げようか」
「んんんっ!あっ、や…っ!これ以上奥なんて…っ!」
 エルの長い人差し指と中指が直腸を掘っていく。フジの指では絶対に届かない奥を指で擦られ、体の底から気持ち良いのが這い上がってくるみたいな感覚がおかしくなりそうで怖かった。
 腸壁をずりずりと擦ったり、指を曲げてぐにーと中を拡げたり、体を好き勝手に弄られ喘ぎ声が恥ずかしいなどと考える余裕もない。むしろあまりにも大きな快楽は声を出して逃してやらねば耐えられなかった。
「っ、く、ぅ、ああっ!きもちい、んんっ!おく、変な感じが…はぁ…っ!」
「変?おかしいな、気持ち良くさせたいのだが。もっとゆっくり動かそうか」
「っ、っ、っ!!あ、ぅ…ん、くっ、ゆっくり、だめ…!!ぞわぞわする…お尻、揺れちゃ…っ、う!」
「どうだフジ。まだ変な感じか?」
「へ、んじゃないです、ぅ、うっ!き、もちいです、から!ああっ、っ、じれったい…ゆっくりされると、ん、ん、じれったく、てぇ、ああっ!」
「気持ち良いなら安心した。ん…ああ、やはり貴方のここは素直だな二本じゃ足りないとヒクついている。可哀想に指を増やしてあげよう」
「え、まっ…んぁ、ぁぁぁ…っ!!」
 先ほどまで抜けないなどと言っていたくせに、いとも簡単に指が抜かれる。中から出て行く感覚でどぷりと陰茎から愛液が漏れ、もう触られなくても軽くイッてしまうくらい淫らな体になってしまったんだと自覚させられた。
 フジの中を満たしていた質量が無くなり、寂しさにキュンとする直腸を今度は三本の指でミチミチに埋められフジは快楽に泣いた。まだ前立腺すらちゃんと触られていない。ただ挿れて抜かれてを繰り返し奥を掘り起こされてるだけなのだ。それなのに気持ち良い。
 放置されている陰茎はピンっと勃ち上がり、先端からは我慢汁が絶えず溢れフジの腹を汚した。
「可愛い声だな。ずっと聞いていたいくらいだ」
「ずっ、とはっ、ああっ、む、りぃ…んっ、は、ぁ!」
「じゃあ今だけはたくさん鳴いて私に聞かせてくれ」
「んん!わ、かった!ぁ、ああっ!…っ、ふ、わかったからぁ!はぁっ、あ、いつものとこっ、きもちよくなるところさわって…!」
「勿論だ」
「ッ、っっ!!ぅ、んんんっ!!」
 三本の指でぐちぐちとバラつかせた後、グッと腹部に向けて指を曲げるとバチンと頭が弾けるような快楽が走る。きもちいい。中ばかり溶かされ、わざと避けられていた弱いそこを今度は容赦なく押し潰される。引っ掻いたり、摘んだり、優しく撫でて、また強く押されフジは大きな声で喘いだ。
「ぅぅう"う"っ!!え、る!だめ…!だ、めだめ!そこばっか、ああっ!イッ、イッちゃいます…!ふ、うううっ、だめ、あ!」
「何度イッてもいいんだぞフジ。それと駄目、ではないだろ?」
「はぁっ、はぁ、だめじゃ、ない!き、もちい、ああっ、きもち"、ぃ、あっ、つい…!!える!える…!」
「可愛いな。溶けたその顔がとても愛らしい。甘ったるい声も、震える体も、イキたいと泣く性器も全てが愛おしい」
「や、ああっ!はぁっ、ぁ、あ"あ"…っ!そんな、そんなっ、恥ずかしいことっ!」
「私からの愛は恥ずかしいだろうか」
「ちがっ、ぁ、っ、そうじゃなくて、あ、んんっ…!」
「そうじゃなくて?」
「っ、あ、ッ~~~~~!!!」
 尋ねられながら弱いところを集中的に責められフジは答える間もなくイッた。足先が丸まり下半身に力が入ってガタガタと揺れているのに、エルはものともせずフジの震える体を抱き締め、そのまま指を動かし続ける。
「ん、ぐ、ぅぅう!や、とめ、とめてっ!える!イッた、からぁああっ!ふっ、ううっ!イ、く…!またイッ…あああっ!!」
「フジ、可愛い」
「ん~~~っ!!は、あっっ!!んん、んっ!!ンッ、だ、め!イッ…ッ、イッ、くぅ…ッ!!!」
 頭がバチンとショートすると同時に、中に入っているエルの指をギュッと締め付け下腹部の熱を勢いよく弾けさせる。どろりとした液体が胸元から顔にかかり、精液特有の臭いに眉をひそめながらもフジは体の力をぐったりと抜いた。
 流石にこの体勢のままだと疲れるだろう、とエルはフジの体を解放し疲れた様子のフジの頬を撫でる。眠そうにトロトロと溶けた瞳で、添えた手に寄ってくる様に抑えていた自分の熱が熱くなるのを感じた。
 挿入したい。もうフジの後孔はエルの指を四本咥えても平気ほど拡げている。弄り続けた甲斐もあり奥でも気持ち良くなってくれている。挿れられる、とは思う。思うが…どうしても躊躇ってしまう自分がいた。
「エル…」
「疲れたろ。後はしておくから寝るといい」
「ん…あの、おれ…はずかしいのは、嬉しくて恥ずかしいだけで…だから…」
 うつらうつらと半分寝ているような状態でフジは先ほどのアンサーをくれた。
「分かってるさ。さあ寝ようフジ」
「んっ…まだ…あなたと…」
 しばらくの沈黙の後、スー、スーと静かな寝息が聞こえエルは肺の中の息を全て吐き出した。
 耐えられた、今日も。
 毎日、毎日フジと体を合わせる度に必死に耐えている。我慢する必要などないじゃないかと笑われるだろう。受け入れるのはフジなのに、どうしてかそれ以上にエルの方が挿入を恐れているなんて。
「フジ…」
 穏やかな眠りについたフジの上に覆い被さりエルは至近距離でその顔を見た。暗がりでも見えはするがこの距離でないとハッキリは映らない。顎から首、胸にかかるフジの愛液を舌で掬って舐めてやると微かに溢れる吐息。艶かしいその声に欲情を煽られ、エルは自身を取り出し左手で擦りながらフジの体を舌で這わせ続けた。
「ん…っ、ぁ…」
「フジ、フジ」
 フジの匂いが好きだ。彼自身を愛しているのは間違いないが本能がこの匂いを求めている。
 フジは体臭が薄く、どうしても普段の生活では濃く彼を感じることは出来ないが事後は違う。汗ばんだ肌と匂い。精液の味、陰茎の味、全てがエルの頭をおかしくさせる魅力がある。
 こんな状態のままフジを抱くのが怖かった。
 ただでさえ興奮して彼をいじめてしまうのに、挿入なんてしてしまえばどれだけ泣き喚こうが己が満足するまで離してやれないだろう。
「フジ…ッ」
 片足を持ち上げ露になったフジのぽってりとした穴に吐き出した熱をかけた。
 我ながら最低な行為に笑うしかない。
「フジ、愛してる…」
 震える唇でフジにキスを落とした。
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