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帝国・教国編
帝国の聖女の話ーⅠ(リーゼロッテ視点)
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「ふん・・・」
長く揺られた馬車の窓から、街並みが目に入ったとき。頬杖をついたわたしは期待を裏切られた。
初めて見た聖都・・・教国の首都は、もっと荘厳でキラキラした場所を想像していたのに、どこを見ても真っ白な家と、やたらと静かな通りばかり。
唯一、馬車が通る街道にいた住民たちが両手を組んで祈りを捧げていたことだけが誇らしく思える。やっぱり、聖女の扱いはこうであるべきよね。
けれど、それもずっと続けば見飽きて視線を上げる。物干し台にかかる洗濯物すら白くて、息苦しさすら覚えた。
帝都の方がよほど華やかだわ――そう思いながら、誰もいない馬車の中でため息をついた。
でも、まあ仕方ない。ここは『教国』で、そしてわたしは帝国の聖女。こんな立場にでもならなきゃ、国はおろか地元の街すら一生出ることはなかっただろうから、期待してた分少し違っただけのこと。
そもそも、わたしは聖主様に招かれてわざわざやって来た客人。偉そうにしていていいし、実際偉い。そう思い直して、これからのことに胸が躍った。
そう考えるのは・・・初めて帝都に入ったとき、貴族に嫌がらせをされた過去があるから。ただ生まれがいいだけのクセに、由緒正しい教会が聖女と認めたわたしが皇帝に会う前に喧嘩を打ってきたバカな奴らがいたのだ。その足で皇帝のところに行って言いつけてやったら、全員帝都出禁になったらしいけど。思い出しただけでむしゃくしゃする。
ーそれが、ここなら堂々としていられる。それだけで教国に来てよかった、と馬車のクッションにぼふりと背を預けた。
△▼△
「聖女様、ようこそいらっしゃいました」
「長旅お疲れ様でございます、こちらへお願いいたします」
「わかったわ」
馬車から降り、両脇にずらっと並ぶ修道女たちが同じ角度で頭を下げた。その中を進むと、案内役の修道女の視線の奥に、一瞬探るような色が宿る。
・・・わたしの神々しさに、眩しく思っているのね。
そんな風に感じて、銀髪をかきあげてつんと顎を上げる。この日のために、手入れを欠かさず行った髪はつやつやでさらりと流れるお気に入り。
案内されたのは大聖堂の奥にある庭のガゼボ。もっと豪華な広間での歓待だと思っていたから、一瞬戸惑ったけど花も咲いてるしこれはこれでキレイだわ。また白い花しかないけど。
「お待ちしておりました、帝国の聖女様」
「あなたが・・・大聖女、様?」
ガゼボの前に立っていたのは、神々しいまでの気品にあふれた1人の女性だった。
腰まで伸びた銀髪が風にたなびき、優しく紫の瞳が細められる。口元に浮かぶ笑みは人形のように整っていたけど、確かに熱を持って慈愛に満ちた人だった。
「ええ。大聖女を拝命しております、ラファエリエ・ルーミナリエと申します。ですが、同じ聖女であるリーゼロッテ様には、ラファエリエとお呼びいただきたいですわ」
お言葉も楽にしていただいて構いません、と言われて瞬きする。
「いいんですか?」
「ええ。私も、リーゼロッテ様とお呼びしても?」
「ええ、なんならリーゼと呼んでもいいわ」
「まあ、光栄ですわ。リーゼ様」
わざと偉そうにふふん、と鼻を鳴らしても笑みを崩すことのないラファエリエに、心の底から歓迎していることが分かる。わたしはいい意味で予想がはずれて、ご機嫌に椅子に腰を下ろした。
2人で座る机上の皿には、懐かしい香りが溢れていた。カリッと焼けたナッツ入りのビスケットに、白いカップに注がれたカフェオレ。横には果実の甘い香りが漂うパイがいくつか。
どれも見た目は地味なのに、鼻が覚えている。子供の頃に胸をときめかせた、街角の菓子屋に並べられる様な素朴なお菓子が並んでいた。
「ビスコッティと、季節のフルーツパイです。お口に合うとよいのですが」
柔らかい声に顔を上げると、穏やかな微笑みでわたしに手を差し伸べてくる。法衣と一緒に、たわわな胸も揺れる。
ラファエリエは、私が聖女になる前から長く大聖女を務めていると聞いているけど、年齢不詳の美貌を保っている。
まあ、成長期であるわたしの胸はまだまだこれからとして・・・聖女たるもの、いつかはこうなるのかしら。
「ええ・・・いただくわ」
少し気取ってみせながら、ビスコッティをひと口。
硬い。けれど、噛むほどに香ばしくて、カフェオレを合わせるとふっと柔らかくなる。
「あ・・・おいし」
思わず思ったままの感想が口をついて出た。慌てて抑えたけど、隣からはふふふと声が漏れる。
「気に入りましたか? カフェオレには香りづけにほんの少しだけ、ブランデーを垂らしてありますの」
「べ、別に・・・まあまあね。ちょっと懐かしかっただけ」
素直に頷くのは癪で、つい口を尖らせそっぽを向いてしまう。だけど、そんなわたしにもラファエリエは怒るどころか目を細めて嬉しそうだ。
「懐かしさは、聖主様の与える慰めの一つ。ここに来る方は、皆どこかでそう仰います」
終始こちらに向けられる、姉のように優しい口調に身構えてたこっちが恥ずかしくなった。
そのあとは、興味深く何でも聞いてくれる彼女にたくさんの話をした。教会での過ごし方、日々の祈り、魔物討伐と共通の話題から、互いの国の様子までなんでも気軽に話せるようになっていた。
「帝国は、新しい皇帝を迎えて改革が進んでいるのですよね?」
「ええ。最近は皇帝主導で遠いところを攻撃できる武器の開発をしてるわ・・・魔物ならまだしも、人間にも向けられる可能性あるから、わたしはあんまり好きじゃないけど」
「さすが、リーゼ様。広い視点をお持ちですね」
「聖女なら、これくらいは・・・ちなみに、弾は魔石を媒介にして魔法を圧縮できるらしいんだけど、球に聖魔法を封じることが上手くいかないらしくて・・・あっ、これってあまり言っちゃいけないことかも」
口を押さえたけど、もう遅い。けれど彼女は驚きもせず、むしろ優しく頷いた。
「リーゼ様が口に出そうが出さまいが、聖主様は全てをご存知です。聖女の行いは、祈りと共にあまねく聖主様に見守られているのですから」
「・・・そうなの?」
「ええ。それでも、あなたのお言葉を直接お聞かせいただけるのはとても興味深いですわ。こうした交流も、聖女の“役目”につながるのでしょう」
“役目”。その言葉の響きに、胸がときめく。わたしにしか、わたしだけができることはこの力以外にはないと思っていたから。
「なら、ラファエリエ様は役目に向けて、どうやって鍛えてるの?」
「私は、祈りの際に聖主様への感謝と共に毎朝魔力を全身に巡らせることを意識しておりますわ。明日は、ぜひご一緒に」
ラファエリエの微笑みに安心して、わたしはさらに喋ってしまった。
聖魔法の中でも、癒しより魔物討伐の方が得意で魔物討伐隊の兵士たちに信頼されていること。帝都に初めて来た時、名前だけ貴族に馬鹿にされたこと。帝国の皇帝がわたしを重用するあまり、愛人関係だと勘ぐるヤツのこと。
それら全てをラファエリは真剣に、ときに相槌を打ちながら聞いていた。
「私としては、何時間でもリーゼ様のお話を聞いていたいところですが・・・そろそろ、参りましょうか」
カップが冷めかけたころ、スッと白の法衣を揺らしてラファエリエは立ち上がる。彼女の後ろ姿を素直に追いながら、ふと思う。
―初めて会ったのに、ラファエリエは妹のように可愛がってくれる。だけど、どこか遠くを見ている。微笑んでいるのに、底が見えないところが大聖女っぽい。
白い回廊をいくつも抜けた先、光が反射して目が眩むほどの広間へと進む。
聖主様がいるところは、『白亜の間』と呼ばれているらしい。一歩踏み出した瞬間、ひんやりした空気に包まれて世界の音がすべて遠のいた。
△▼△
ただの白の世界。何にもないと思っていたのに、彼は確かにそこにいた。
白の法衣を纏うその姿は、形をもつ光でありヒトではなかった。銀の髪が光を受けて流れ、ゆっくりと開かれた金の瞳がこちらを見た瞬間、足がすくむ。
息を忘れるほど美しい――そんな存在を、わたしは生まれて初めて見た。
さすがに、跪かなくちゃ。
そう思ったけど身体が動かない。ただ、その輝く目だけが強烈に印象に残っている。
「帝国の聖女よ」
彼の口元がさらに近づいて、耳元で囁く。
「汝の、役目を果たせ」
瞬間、世界がぐるりと回ったかような感覚が走った。
何が起きたのか分からない。姿も、音も、全部が遠ざかっていく。
「リーゼ様、ご苦労さまでした」
――気がついたら、わたしは手前の部屋に戻っていて、ラファエリエが手を差し伸べながら穏やかに言った。
「え? ・・・わたし、何を?」
「偉大なる聖主様は、あなたに大きな期待をお持ちです。同じ聖女として、誇らしいですわ」
「・・・ふん、当たり前でしょ」
そう言われたとき、わたしは得意げに微笑んだ。記憶がぼんやりしててよくわかんないけど、微笑んでおけばどうにかなると思ったのだ。
手を取って、立ち上がる。ラファエリエはわたしの指先を両手で包み込んでくれた。
「指先が、こんなに冷えて・・・聖主様の御前では、緊張しますものね」
けれど、本当は――全身にびっしょりと汗をかき、胸の奥からひどく冷たかったことにわたし自身が、全然気づいていなかった。
・・・一生、気づくことは、なかった。
長く揺られた馬車の窓から、街並みが目に入ったとき。頬杖をついたわたしは期待を裏切られた。
初めて見た聖都・・・教国の首都は、もっと荘厳でキラキラした場所を想像していたのに、どこを見ても真っ白な家と、やたらと静かな通りばかり。
唯一、馬車が通る街道にいた住民たちが両手を組んで祈りを捧げていたことだけが誇らしく思える。やっぱり、聖女の扱いはこうであるべきよね。
けれど、それもずっと続けば見飽きて視線を上げる。物干し台にかかる洗濯物すら白くて、息苦しさすら覚えた。
帝都の方がよほど華やかだわ――そう思いながら、誰もいない馬車の中でため息をついた。
でも、まあ仕方ない。ここは『教国』で、そしてわたしは帝国の聖女。こんな立場にでもならなきゃ、国はおろか地元の街すら一生出ることはなかっただろうから、期待してた分少し違っただけのこと。
そもそも、わたしは聖主様に招かれてわざわざやって来た客人。偉そうにしていていいし、実際偉い。そう思い直して、これからのことに胸が躍った。
そう考えるのは・・・初めて帝都に入ったとき、貴族に嫌がらせをされた過去があるから。ただ生まれがいいだけのクセに、由緒正しい教会が聖女と認めたわたしが皇帝に会う前に喧嘩を打ってきたバカな奴らがいたのだ。その足で皇帝のところに行って言いつけてやったら、全員帝都出禁になったらしいけど。思い出しただけでむしゃくしゃする。
ーそれが、ここなら堂々としていられる。それだけで教国に来てよかった、と馬車のクッションにぼふりと背を預けた。
△▼△
「聖女様、ようこそいらっしゃいました」
「長旅お疲れ様でございます、こちらへお願いいたします」
「わかったわ」
馬車から降り、両脇にずらっと並ぶ修道女たちが同じ角度で頭を下げた。その中を進むと、案内役の修道女の視線の奥に、一瞬探るような色が宿る。
・・・わたしの神々しさに、眩しく思っているのね。
そんな風に感じて、銀髪をかきあげてつんと顎を上げる。この日のために、手入れを欠かさず行った髪はつやつやでさらりと流れるお気に入り。
案内されたのは大聖堂の奥にある庭のガゼボ。もっと豪華な広間での歓待だと思っていたから、一瞬戸惑ったけど花も咲いてるしこれはこれでキレイだわ。また白い花しかないけど。
「お待ちしておりました、帝国の聖女様」
「あなたが・・・大聖女、様?」
ガゼボの前に立っていたのは、神々しいまでの気品にあふれた1人の女性だった。
腰まで伸びた銀髪が風にたなびき、優しく紫の瞳が細められる。口元に浮かぶ笑みは人形のように整っていたけど、確かに熱を持って慈愛に満ちた人だった。
「ええ。大聖女を拝命しております、ラファエリエ・ルーミナリエと申します。ですが、同じ聖女であるリーゼロッテ様には、ラファエリエとお呼びいただきたいですわ」
お言葉も楽にしていただいて構いません、と言われて瞬きする。
「いいんですか?」
「ええ。私も、リーゼロッテ様とお呼びしても?」
「ええ、なんならリーゼと呼んでもいいわ」
「まあ、光栄ですわ。リーゼ様」
わざと偉そうにふふん、と鼻を鳴らしても笑みを崩すことのないラファエリエに、心の底から歓迎していることが分かる。わたしはいい意味で予想がはずれて、ご機嫌に椅子に腰を下ろした。
2人で座る机上の皿には、懐かしい香りが溢れていた。カリッと焼けたナッツ入りのビスケットに、白いカップに注がれたカフェオレ。横には果実の甘い香りが漂うパイがいくつか。
どれも見た目は地味なのに、鼻が覚えている。子供の頃に胸をときめかせた、街角の菓子屋に並べられる様な素朴なお菓子が並んでいた。
「ビスコッティと、季節のフルーツパイです。お口に合うとよいのですが」
柔らかい声に顔を上げると、穏やかな微笑みでわたしに手を差し伸べてくる。法衣と一緒に、たわわな胸も揺れる。
ラファエリエは、私が聖女になる前から長く大聖女を務めていると聞いているけど、年齢不詳の美貌を保っている。
まあ、成長期であるわたしの胸はまだまだこれからとして・・・聖女たるもの、いつかはこうなるのかしら。
「ええ・・・いただくわ」
少し気取ってみせながら、ビスコッティをひと口。
硬い。けれど、噛むほどに香ばしくて、カフェオレを合わせるとふっと柔らかくなる。
「あ・・・おいし」
思わず思ったままの感想が口をついて出た。慌てて抑えたけど、隣からはふふふと声が漏れる。
「気に入りましたか? カフェオレには香りづけにほんの少しだけ、ブランデーを垂らしてありますの」
「べ、別に・・・まあまあね。ちょっと懐かしかっただけ」
素直に頷くのは癪で、つい口を尖らせそっぽを向いてしまう。だけど、そんなわたしにもラファエリエは怒るどころか目を細めて嬉しそうだ。
「懐かしさは、聖主様の与える慰めの一つ。ここに来る方は、皆どこかでそう仰います」
終始こちらに向けられる、姉のように優しい口調に身構えてたこっちが恥ずかしくなった。
そのあとは、興味深く何でも聞いてくれる彼女にたくさんの話をした。教会での過ごし方、日々の祈り、魔物討伐と共通の話題から、互いの国の様子までなんでも気軽に話せるようになっていた。
「帝国は、新しい皇帝を迎えて改革が進んでいるのですよね?」
「ええ。最近は皇帝主導で遠いところを攻撃できる武器の開発をしてるわ・・・魔物ならまだしも、人間にも向けられる可能性あるから、わたしはあんまり好きじゃないけど」
「さすが、リーゼ様。広い視点をお持ちですね」
「聖女なら、これくらいは・・・ちなみに、弾は魔石を媒介にして魔法を圧縮できるらしいんだけど、球に聖魔法を封じることが上手くいかないらしくて・・・あっ、これってあまり言っちゃいけないことかも」
口を押さえたけど、もう遅い。けれど彼女は驚きもせず、むしろ優しく頷いた。
「リーゼ様が口に出そうが出さまいが、聖主様は全てをご存知です。聖女の行いは、祈りと共にあまねく聖主様に見守られているのですから」
「・・・そうなの?」
「ええ。それでも、あなたのお言葉を直接お聞かせいただけるのはとても興味深いですわ。こうした交流も、聖女の“役目”につながるのでしょう」
“役目”。その言葉の響きに、胸がときめく。わたしにしか、わたしだけができることはこの力以外にはないと思っていたから。
「なら、ラファエリエ様は役目に向けて、どうやって鍛えてるの?」
「私は、祈りの際に聖主様への感謝と共に毎朝魔力を全身に巡らせることを意識しておりますわ。明日は、ぜひご一緒に」
ラファエリエの微笑みに安心して、わたしはさらに喋ってしまった。
聖魔法の中でも、癒しより魔物討伐の方が得意で魔物討伐隊の兵士たちに信頼されていること。帝都に初めて来た時、名前だけ貴族に馬鹿にされたこと。帝国の皇帝がわたしを重用するあまり、愛人関係だと勘ぐるヤツのこと。
それら全てをラファエリは真剣に、ときに相槌を打ちながら聞いていた。
「私としては、何時間でもリーゼ様のお話を聞いていたいところですが・・・そろそろ、参りましょうか」
カップが冷めかけたころ、スッと白の法衣を揺らしてラファエリエは立ち上がる。彼女の後ろ姿を素直に追いながら、ふと思う。
―初めて会ったのに、ラファエリエは妹のように可愛がってくれる。だけど、どこか遠くを見ている。微笑んでいるのに、底が見えないところが大聖女っぽい。
白い回廊をいくつも抜けた先、光が反射して目が眩むほどの広間へと進む。
聖主様がいるところは、『白亜の間』と呼ばれているらしい。一歩踏み出した瞬間、ひんやりした空気に包まれて世界の音がすべて遠のいた。
△▼△
ただの白の世界。何にもないと思っていたのに、彼は確かにそこにいた。
白の法衣を纏うその姿は、形をもつ光でありヒトではなかった。銀の髪が光を受けて流れ、ゆっくりと開かれた金の瞳がこちらを見た瞬間、足がすくむ。
息を忘れるほど美しい――そんな存在を、わたしは生まれて初めて見た。
さすがに、跪かなくちゃ。
そう思ったけど身体が動かない。ただ、その輝く目だけが強烈に印象に残っている。
「帝国の聖女よ」
彼の口元がさらに近づいて、耳元で囁く。
「汝の、役目を果たせ」
瞬間、世界がぐるりと回ったかような感覚が走った。
何が起きたのか分からない。姿も、音も、全部が遠ざかっていく。
「リーゼ様、ご苦労さまでした」
――気がついたら、わたしは手前の部屋に戻っていて、ラファエリエが手を差し伸べながら穏やかに言った。
「え? ・・・わたし、何を?」
「偉大なる聖主様は、あなたに大きな期待をお持ちです。同じ聖女として、誇らしいですわ」
「・・・ふん、当たり前でしょ」
そう言われたとき、わたしは得意げに微笑んだ。記憶がぼんやりしててよくわかんないけど、微笑んでおけばどうにかなると思ったのだ。
手を取って、立ち上がる。ラファエリエはわたしの指先を両手で包み込んでくれた。
「指先が、こんなに冷えて・・・聖主様の御前では、緊張しますものね」
けれど、本当は――全身にびっしょりと汗をかき、胸の奥からひどく冷たかったことにわたし自身が、全然気づいていなかった。
・・・一生、気づくことは、なかった。
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