20 / 29
第1章 土佐の以蔵
1-20
しおりを挟む
夕餉を終え、啓吉が座敷に横になり寝息を立て始めた頃。以蔵は義平に呼び出され、奥座敷に座っていた。
彼が何か自分の中で大きなことを決心した時、決まって義平は以蔵をこの薄暗い奥座敷vで以蔵と二人向き合うのだ。
義平は、しばらく以蔵と向かい合った後重そうに口を開いた。
「以蔵。今から伝えることは、代々家主のもにしか伝えないことちや。本当はもっと後になっていうつもりだったがの、さっき武市先生と話してみて気が変わった
んじゃ。以蔵。おまんにわしが知っとる一族のすべてを話そう。それが以蔵の力と、関係するかもしれんきのう」
お猪口に次いだ日本酒を、吉平はぐびりと飲み干した。
そして懐かしむような瞳で窓の外を見上げる。以蔵はその様子をじっと見ていた。
「…これは以蔵も見たことがあるだろう」
「……これは……」
義平はおもむろに箱を二つ取り出した。一つは刀。もう一つは宝玉。どちらも先祖代々我が家に伝わっている代物であった。義平は二つの箱の紐を丁寧にほどき、二を外した。
数年前にみた宝玉と刀。全く変わらないまま、その美しさを保ったまま、その箱の中に静かに佇んでいる。
「この宝玉と刀はわしらの先祖が使っていた者じゃ。わしらの先祖はおまんも知っての通り鬼。けんど、ただの鬼じゃあ、なかったがじゃ」
「え……。そんなの、聞いてない…」
義平はふふふと笑って以蔵の頭を撫でる。
「この宝玉と刀を伝える者にしか教えてないきの。以蔵も言うんじゃないぞ。彼女は今でも名は知れているくらい悪名高いことになっているしのう」
義平はええか、といって少しだけ顔を以蔵に寄せた。
「わしらの先祖であり、この宝玉と刀の見かけ上の所有者と使用者は、奈都様という妖怪混じりじゃ。しかし奈都様にそれらを与えたのは彼の母親であり、妖怪。京の鬼たちの総大将、酒呑童子様じゃ」
彼が何か自分の中で大きなことを決心した時、決まって義平は以蔵をこの薄暗い奥座敷vで以蔵と二人向き合うのだ。
義平は、しばらく以蔵と向かい合った後重そうに口を開いた。
「以蔵。今から伝えることは、代々家主のもにしか伝えないことちや。本当はもっと後になっていうつもりだったがの、さっき武市先生と話してみて気が変わった
んじゃ。以蔵。おまんにわしが知っとる一族のすべてを話そう。それが以蔵の力と、関係するかもしれんきのう」
お猪口に次いだ日本酒を、吉平はぐびりと飲み干した。
そして懐かしむような瞳で窓の外を見上げる。以蔵はその様子をじっと見ていた。
「…これは以蔵も見たことがあるだろう」
「……これは……」
義平はおもむろに箱を二つ取り出した。一つは刀。もう一つは宝玉。どちらも先祖代々我が家に伝わっている代物であった。義平は二つの箱の紐を丁寧にほどき、二を外した。
数年前にみた宝玉と刀。全く変わらないまま、その美しさを保ったまま、その箱の中に静かに佇んでいる。
「この宝玉と刀はわしらの先祖が使っていた者じゃ。わしらの先祖はおまんも知っての通り鬼。けんど、ただの鬼じゃあ、なかったがじゃ」
「え……。そんなの、聞いてない…」
義平はふふふと笑って以蔵の頭を撫でる。
「この宝玉と刀を伝える者にしか教えてないきの。以蔵も言うんじゃないぞ。彼女は今でも名は知れているくらい悪名高いことになっているしのう」
義平はええか、といって少しだけ顔を以蔵に寄せた。
「わしらの先祖であり、この宝玉と刀の見かけ上の所有者と使用者は、奈都様という妖怪混じりじゃ。しかし奈都様にそれらを与えたのは彼の母親であり、妖怪。京の鬼たちの総大将、酒呑童子様じゃ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ソラノカケラ ⦅Shattered Skies⦆
みにみ
歴史・時代
2026年 中華人民共和国が台湾へ軍事侵攻を開始
台湾側は地の利を生かし善戦するも
人海戦術で推してくる中国側に敗走を重ね
たった3ヶ月ほどで第2作戦区以外を掌握される
背に腹を変えられなくなった台湾政府は
傭兵を雇うことを決定
世界各地から金を求めて傭兵たちが集まった
これは、その中の1人
台湾空軍特務中尉Mr.MAITOKIこと
舞時景都と
台湾空軍特務中士Mr.SASENOこと
佐世野榛名のコンビによる
台湾開放戦を描いた物語である
※エースコンバットみたいな世界観で描いてます()
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる