魔法学園最弱の俺が英雄に

結城 もみじ

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第十六話 その後

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 試合の判定はカケル・ミアペアの勝利だった。が、二人の健康状態が悪いため、結果教師の判断で棄権となった。審判を行った教師に学園長はその場で解雇した。その結果に不満があったのか反論しようとするが、目の前にいる小柄な体格から出てるとは思えない威圧に言葉を飲んだ。そして直ぐに闘技場を後にした。

 学園長は事が済むと特別席に戻った。
 はぁ。やっぱりこうなるのね……。
 
 モーリスは溜息混じりに独り言を言いながら、こめかみをぽりぽりと掻いた。見ている状況は騎士団長達がエリン王女に彼〔カケル〕が見せた力について追求をしているのだ。その中には騎士団長達を落ち着かせる為にミーニァが両腕を大きく広げて止めようとしているが、男の力に勝てるわけが無く、どんどん軍団の中に飲み込まれてしまった。

 こうなった原因はカケルが力に目覚めた時に遡る……。


 「あ、あの。あれはカケルさんなんですか??」

 ミーニァは今目の前で起こっている事に脳の処理が追いついていなかった。何故なら今まで全く動かなかった彼が、傷なんて無かったように動いてるからだ。当然本人は傷の痛みなんか無かったが。
 ミーニァの頭がこんがらがっていると、エリン王女が特別席全体に聞こえる声で起こっている事を簡単に説明した。

 「彼は本当の力に目覚めたのよ。その力はどのクラスも属さない。そして勇者クラスを近づけさせない程の力。言うなれば英雄クラスってところかしら」

 特別席に座っていた人は全員エリン王女の方へ向き、我を忘れていたかのように口をぽかーんと開け、ハッと言っていることを理解すると試合の方へ直ぐさま視線を移した。そして騎士団長は皆手元にあるボードに勧誘する印をいれた。

 モーリス学園長は力の事は知っていたとしても、まさか闘技大会で出てくるとは全く予想していなかったのだ。そして隣に居るエリン王女に試合を見ながら話しかけた。

 「あなたが言っていた力はこのことだったの?」

 エリンはその言葉を聞いて、最初は驚いていたがカケルが教えたのだろうと理解した。

 「ええ。まあそうよ。でもこんなに早く目覚めるのは想定外だったけど」

 「そう。私もこんなに早く目覚めるのは予想外だったけど、これはこれでタイミングが良かったかもね」

 「そうね。あのままだと最悪死んでたかもしれないかったからね」

 「でも。まさかこんなに強力な力とは。もしかしたらこの国を一人で潰せるんじゃないか?」

 「可能ですね。ですが今の彼ではそれは出来ませんのでご安心を」

 「…………」

 
 そして今と至る。
 モーリスは手をパンパンと短く叩くと皆は動きをピタッと止まり、騒ぐのを止めた。
 ニコニコしながら集団の方に向かっていくが、雰囲気は『少し黙ろうか』と脅しているようだった。

 「全く。騎士団長の皆さん。少し落ち着いて下さい」

 「「「す、すみませんでした。学園長」」」

 騎士団長達は列を作って学園長向かって申し訳なさそうな顔をしながら謝罪した。すると学園長は『私ではなくて、王女様に謝罪するべきなのでは?』と言うと、直ぐに回れ右をし謝罪した。エリン王女は『いいのいいの』と快く許した。

 「あー言うの忘れていましたけど、彼を勧誘するのを止めていただけませんか?彼の今後の生活に支障がでますので」

 エリン王女がそう言うと、ボードに書いていた勧誘の印を取り消した。先ほどの失態の代わりと考えたのだろう。だが勧誘して欲しくないという気持ちは本心だろう。今の生活で手がいっぱいの状況で騎士団なんかに入ったりしたら、彼に迷惑を掛けてしまう。今でも迷惑をかけてるのに。

 
 カケルは“声”と会話を終えると、前の時と同じように暗闇の世界に亀裂が入り光が零れてくる。亀裂はだんだん大きくなり、『バリンッ』と音を上げて暗闇の世界が壊れた。そして意識が戻った。まだ目は覚めてはいないが。微かに香る薬の臭いが鼻腔の中を充満していく。

 「そうか。自分はあの後倒れて、意識がぶっ飛んだんだっけ?てことを考えると今居るのは治療室かな?目を覚めれば分かるか」

 カケルは独り言を心の中でボツボツと言いながら、ゆっくりと目を開けることにした。最初に目にしたのは天上に吊されているシャンデリア風の灯りだった。精霊石で作られた灯りは、眩しすぎず、暗すぎずと絶妙な加減だった。って言うか普通保健室にシャンデリア風の灯りなんてあるか?

 カケルは目をぱっちりと開け、体を起こした。辺りを見渡すと、見慣れた部屋が視界に入ってきた。そして部屋の奥に造られている小部屋から聞き慣れた声が聞こえた。カケルは声がした方向へ首を回す。そこに居たのは、黒と紫を基調としたドレスを着衣していた、 モーリス・ヘケテ・カーミン学園長だった。

 そう。ここは学園長室なのだ。何故だか分からないが、どうやら僕はここに運び込まれたらしい。てことはと考えると、体を起こすために支えとなった手元を見た。今までベッドと思っていた物がなんとソファだった。『うわー。これどんだけふかふかなんだよ。自分の家のベッドよりふかふかだぞこれ』と内心嫉妬していると、学園長が紅茶を出してくれた。

 「どうぞ」

 「あっ有難うございます」

 カケルは紅茶が入ったカップを口元まで持ってくると、一口飲んだ。ふぁーっと口の中に香りが広がり、鼻の奥まで進行してくる。
 僕自身紅茶の事はあんまり知らないが、これは上手いなぁ。よっぽど葉を使ってるのか、学園長がいれるのが上手いのか。まあ上手いからそんなことは気にしなくて良いか。それより。ミア先輩は大丈夫なのかな。

 「すみません学園長。一つ聞きたいことがあるんですが良いですか?」

 「うぬ。言って良いぞ」

 「はい。あのミア先輩はあの後どうなったんですか?」

 すると学園長はクスクスと笑いだした。
 一体なにがおかしかったんだ?
 カケルはどうして笑っているのだろう、と思ってると学園長が喋り始めた。

 「ああ、すまない。他人のことが優先なんだなと思ったらついな。まずは自分に起こった事を聞くかと思ったのだが、まあ良いだろう。ミアは無事だぞ。今は学園内にある治療室におるはずだぞ」

 「そ、そうですか。それは良かった」

 カケルはほっと胸をなで下ろした。あの怪我では何週間も寝込んではいけなかと思ってたが、その後学園長が『もう目は覚めるぞ。後で会いにいってやれ。あ!それとお前達はあいつらに勝ったが、学園側が棄権と判断したと言っといてやれ』と言っていたので話が終えたらお見舞いをかねて報告しにに行こうと、決意した。棄権になるのはなんとなく分かっていたが、しかたがないだろう。

 「それで、何故お前はあそこで力に目覚めたのだ?」

 「意識が無いときに、声が聞こえたんです。そのまま変わらなくて良いのかって」

 「うーん。それは気になることだな。まあ良い。後日たっぷりと聞かせてもらいうからな。話は終わったぞ?行かなくて良いのか?」

 「あ、ああ行きます行きます!紅茶ごちそうさまでした」

 そう言い残すと、慌てて扉を開け走っていった。
 カケルが居なくなった部屋で学園長は疑問に思っていた。

 何故カケルにあんな力が目覚めたのか。
 何故不思議な声が聞こえたのか。
 何故……何故……。

 悩むだけ無駄と感じた学園長はソファで横になった。
 何故他人優先なのか……。
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