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第三十一話 フローラリアの問題Ⅱ
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玄関での一件後、カケルとフローラリアは宿の部屋に戻っていった。
一方でモーリス学園長は遠征に来ている教師を集め、会議する予定だという。貴族が来たからと言って今さっきのように慌て、判断能力が低下し、すぐさま通すのはモーリス学園長からしても良いことではなかったらしい。
実のところ魔法学園は大陸中でも有名な学園なのだ。その為そこら辺の貴族が押し掛けて来たとしても、突き返せるほどの力を持っているのだ。今回の件で貴族が簡単に学園を通ることが出来ると噂が流れれば、学園の力が衰えていると勘違いされ大量の貴族達が自分の子供の妻にしようとする者や、自分の子供を無理矢理入学させようとする者が出てきてしまうのだ。
そうなったら学園側も対応仕切れなくなってしまう。
会議はその事を確認するためと、対応策を考えるためだ。
カケルが部屋入った途端、セレスとギルが押し掛けどうなったか聞きに来る。
二人の顔を見ると、興味があると言うより、心配をしている表情だ。
当然そんな表情をしてくると思っていたが、セレスに関しては予想より遙か上を通り越していた。
目尻には涙を浮かべ、目は上目使い。
手は祈るように両手を硬く握りしめ、本気で心配している。
これは一人の友達としての行動ではなく、一人の異性としての行動なのだろう。
そしてカケルはセレスの気持ちに全く気が付いていない様子。
「カケルさん!大丈夫でしたか?心配しましたよ。本当に心配しましたよ」
「カケル。本当に大丈夫か?あの貴族相当悪いってセレスさんから聞いたけどよ」
実はモーリス学園長から話は既に聞いていたが、ここでは初めて聞いたことにする。
「何とか大丈夫だったよ。でもあの貴族が悪い人だって事は知らなかった。今回はモーリス学園長に感謝しないといけないね」
今回は本当にモーリス学園長に救われた。
あのまま騎士達が手をだしていれば、貴族との対立からは逃れられないだろう。もしそんなことになっていたら、学園を追い出される身になり、フローラリアを救う事が出来なくなってしまう。それでは元も子も無くなってしまう。
なのでモーリス学園長には感謝仕切れないほどの、感謝をしなければならないのだ。
「それでこれからどうなるのですか?」
「明日奴隷販売店で話し合うことに決定したよ。僕、フローラリア、モーリス学園長で行くつもりだよ」
そのことを告げられたセレスはさらに不安な表情になり、今にでも泣きそうな面持ちだ。
その気持ちはカケルの事が好きだからこその気持ちだろう。
好きな人が傷ついて欲しくない。
もしかしたら、帰ってこないかも知れない。
そういった感情によって不安が膨らんでいく。
心の器が風船だとして、不安の感情が風船の空気だとしたら、空気が入りすぎて破裂寸前の風船状態だ。破裂したら不安の感情が零れだし、泣いてしまうだろう。
「だ、大丈夫なんですか?」
心配な表情をしているセレスに対してカケルは優しく笑いかける。
それと同時に握っていたフローラリアの手を強く、けれど痛がらない程度に再び握る。
「大丈夫だよ!もし手を出してきたらその時はしっかりと守る。それに学園長も付いてる。だから僕が貴族に連れて行かれる事無いよ。もちろんフローラリアも」
その言葉を聞いたセレスは何故かそわそわしていた。
その日の夜……。
カケル達はスーフ、ディアらが居る治療室に居た。
理由は二人が目を覚ましたと教師から報告が入ったからだ。教師からの問いかけに反応できたため、話すことは出来ると言っていた。
ただ長話は体力を使うため、最大で十五分間だけと言われた。
「どう?体調の方は?」
セレスは二人が寝ているベッドの間のスペースに配置されている椅子に腰掛けると、スーフ、ディアの順に顔を見て訪ねた。
二人の様子を見る限り、明日には走る事は出来無そうだが、歩くことなら普段通りに出来そうだった。
「大丈夫!ほらこの通り!」
そう言うとスーフは包帯に包まれている両腕を反時計回りに回しだした。
それを見てカケルは止めようとしたが、スーフらしく止めるのを止めた。きっとあの調子では大丈夫だろうと判断を下したのだろう。
「私も大丈夫です。明日になれば歩くことも出来ますから」
ディアはスーフとは違い微笑むことで大丈夫と伝えた。
ディアらしい仕草だとカケルやセレス、ギルも安心する。
「それで今日の騒ぎは何でしたか?」
「そうだよ!五月蠅くてあまり寝れなかったじゃん!」
注目するところはそこか!っとカケルは心中でツッコミをするが、それはスーフには当然届かない。
どうして二人が騒ぎのことを知っているのかというと、あの時に既に意識は戻っていた。しかも眠りが浅かった為、外の騒ぎの物音や、声が聞こえたと言っていた。
あの時に目を覚める事も可能だったが、近くにセレス達が居ることも分かっていたみたいで、混乱させないように気遣っていたという。
そして一番この件に関わり、理解しているカケルが説明する。
「明日ですか。早いですけど大丈夫なんですか?」
「まあ何とかなると思うよ。モーリス学園長も付いてくることになっているし」
「そうですか」
ディアは安心したようで大きく息を吐き、手を胸に添えた。
「それより、そこにいる女の子。フローラリアって言うんだね。改めて宜しくね」
スーフは特に関心が無いのか、それともディアと言うことが被っていて聞くことがなかったのかは分からないが、フローラリアについて色々と聞いていた。途中でスーフが言葉攻めでフローラリアのあらゆる事を聞いていて、少し困り、怖がっていたので、止めさせた。
「あ!もう時間だ。あっという間だったけど、また明日来るから」
「本当ですね。ではまた明日スーフ、ディア」
「じゃあな」
時間は話しているとあっという間に過ぎていき、最大の十五分を回っていた。
カケルは明日のこともあるので、今日は引き上げることにした。
廊下に出ると丁度生徒達は食堂に行っている時間帯だったので、カケル達も食堂で夕食を食べた後、入浴をした。
男子風呂の視線は殆どカケルに向けられており、今日の一件が全ての原因だろう。
当然中には茶化しに来る輩も当然居る。
「おい。お前あの貴族に目を付けられたんだって?」
正直言ってカケルは今回関係のない人にこの件を話す事はない。
話せば話すほど事は大きくなり、今でも嘘の情報が流れているのに、ここで話せばまたややこしくなる。そう言ってこのまま野放しにするわけにもいかない。
カケルはうっとおしく聞いてくる生徒がいつまでも付きまとうため、睨みつけ威圧をかけた。
威圧は加減をしているので、気を失う事はないだろう。
「ヒ、ヒィィィィィ!!!化け物ダァァ!!!」
間抜けな声を出しながら服やら荷物を纏め、一目散に自分の部屋に逃げていった。
その後は『聞きたい者はまだ居るか』と訴えかけているような視線を周りに送ると、皆首が取れるのではないかと思うほど横に振っている。
「はぁ~やっかい払いも終わったし、ゆっくり風呂に入るか」
いつものように、家でゆっくり落ち着いて入ることは出来なかったが、明日に向けて気持ちを落ち着かせ、妙に視線が多く感じるが、そこそこゆっくり入れたので良かった。
ゆったり身体をリラックスさせていると、カケル視界の端で何やらこそこそしている集団を見つけた。風呂から上がり、何をやっているのかと気になり集団を覗くと、集団の中の一人が声を掛けてきた。
「お!お前もセレス様の身体を覗きに来たのか?」
「の、覗き?」
予想はしていたが、思わず聞き返す。
なんせこの風呂場での覗きは不可能だからだ。
確かに隣は女風呂だ。だがその壁は固い木の壁で出来ており、壊そうとしても壊れそうにはない。どこかに穴があるか探したが、無い。上は空いておらず、天上と壁がしっかり繋がっている。
「どうやって覗くんだ?」
「ふっふっふ!こいつが透視魔法を使えるんだ。それでだよ」
透視魔法とはそのままの意味で、指定した物体を透かし、その奥を見るいう魔法だ。
あまり実践的な魔法ではないので、取得する者は少ない。
そして何故か少ない取得者が主に男性だと言うが、理由はカケルが目にしている光景を見れば分かるだろう。
「本当に覗けたり出来るのか?」
カケルは別に覗きたいわけではない。ただ疑問に思うのだ。
この宿は学園側が用意している。つまり過去に覗くような行為をした生徒が居たりすれば、当然対策はするはずだ。
もし学園側が対策をしていなくとも、女子生徒達が自主的に魔法で守ったりするだろう。
「多分もう少しで終わると思うぜ。ほら噂をすれば……」
壁に集まっていた男子からは大歓声が上がっていた。
恐らく魔法が成功したのだろう。
「ほら。お前も見に行こうぜ!」
「いや。自分は遠慮しておくよ」
明日のこともあるし、今日面倒事に巻き込まれるのは勘弁だ。
「そうか。勿体ないな」
カケルは脱衣所に行き、自分の身体や髪に付いている水滴をタオルで拭き終えると斑の部屋に向かった。
廊下は風通しがとっても良く、洗い終えた髪に風が吹き込む度に爽快感と心地よさが一気に襲ってくる。その度その度カケルの頬は緩んでいった。
部屋の前に着き扉を開けると、落ち着いた白色に包まれたワンピースを着ているセレスが居た。丁度自分の荷物の整理をしていたらしく、床には可愛らしい服、学園指定の服やらが散らかっていた。セレスはしばらくカケルの顔を見、戻ってきたのだと理解すると散らかっている荷物を慌てて片づける。
そしてカケルはふと風呂場であった出来事を思い出した。
『確かあいつらはセレスさん目当てで覗きをしようとしていたよな?なら何故肝心のターゲットがここに居るんだ?』思わずきになったので、聞いてみた。
「セレスさん。お風呂から上がってどれくらい経つ?」
セレスは顎に手をやると、考え込む仕草を見せる。
「カケルさんが帰ってきて五分程度でしょうか。多分そのぐらいだと思います」
「てことは魔法が成功する前には既に上がっていたという訳か……」
「何か言いましたか?」
「いや何でもない」
カケルが上がった後透視魔法が成功し、男子生徒は喜び我先にと覗く。
すると目の前に広がっているのは楽園(パラダイス)ではなく、教師という地獄の入口だった。
今回はカケルが考えていた前者が当たった。
今の二年生がその時アイドル的な存在なミアの裸姿を一目見ようと、透視魔法で同じ事をした輩がいた為、今回は教師が壁に魔法陣を仕組み、透視魔法限定で発動させるようにしているのだ。そして発動して場合透視した先は教師の怒った顔となるようになっているのだ。
その後は覗きに関わった男子生徒の悲鳴が中に響き渡ったとさ。
こうして女風呂覗き事件は幕を閉じた。
一方でモーリス学園長は遠征に来ている教師を集め、会議する予定だという。貴族が来たからと言って今さっきのように慌て、判断能力が低下し、すぐさま通すのはモーリス学園長からしても良いことではなかったらしい。
実のところ魔法学園は大陸中でも有名な学園なのだ。その為そこら辺の貴族が押し掛けて来たとしても、突き返せるほどの力を持っているのだ。今回の件で貴族が簡単に学園を通ることが出来ると噂が流れれば、学園の力が衰えていると勘違いされ大量の貴族達が自分の子供の妻にしようとする者や、自分の子供を無理矢理入学させようとする者が出てきてしまうのだ。
そうなったら学園側も対応仕切れなくなってしまう。
会議はその事を確認するためと、対応策を考えるためだ。
カケルが部屋入った途端、セレスとギルが押し掛けどうなったか聞きに来る。
二人の顔を見ると、興味があると言うより、心配をしている表情だ。
当然そんな表情をしてくると思っていたが、セレスに関しては予想より遙か上を通り越していた。
目尻には涙を浮かべ、目は上目使い。
手は祈るように両手を硬く握りしめ、本気で心配している。
これは一人の友達としての行動ではなく、一人の異性としての行動なのだろう。
そしてカケルはセレスの気持ちに全く気が付いていない様子。
「カケルさん!大丈夫でしたか?心配しましたよ。本当に心配しましたよ」
「カケル。本当に大丈夫か?あの貴族相当悪いってセレスさんから聞いたけどよ」
実はモーリス学園長から話は既に聞いていたが、ここでは初めて聞いたことにする。
「何とか大丈夫だったよ。でもあの貴族が悪い人だって事は知らなかった。今回はモーリス学園長に感謝しないといけないね」
今回は本当にモーリス学園長に救われた。
あのまま騎士達が手をだしていれば、貴族との対立からは逃れられないだろう。もしそんなことになっていたら、学園を追い出される身になり、フローラリアを救う事が出来なくなってしまう。それでは元も子も無くなってしまう。
なのでモーリス学園長には感謝仕切れないほどの、感謝をしなければならないのだ。
「それでこれからどうなるのですか?」
「明日奴隷販売店で話し合うことに決定したよ。僕、フローラリア、モーリス学園長で行くつもりだよ」
そのことを告げられたセレスはさらに不安な表情になり、今にでも泣きそうな面持ちだ。
その気持ちはカケルの事が好きだからこその気持ちだろう。
好きな人が傷ついて欲しくない。
もしかしたら、帰ってこないかも知れない。
そういった感情によって不安が膨らんでいく。
心の器が風船だとして、不安の感情が風船の空気だとしたら、空気が入りすぎて破裂寸前の風船状態だ。破裂したら不安の感情が零れだし、泣いてしまうだろう。
「だ、大丈夫なんですか?」
心配な表情をしているセレスに対してカケルは優しく笑いかける。
それと同時に握っていたフローラリアの手を強く、けれど痛がらない程度に再び握る。
「大丈夫だよ!もし手を出してきたらその時はしっかりと守る。それに学園長も付いてる。だから僕が貴族に連れて行かれる事無いよ。もちろんフローラリアも」
その言葉を聞いたセレスは何故かそわそわしていた。
その日の夜……。
カケル達はスーフ、ディアらが居る治療室に居た。
理由は二人が目を覚ましたと教師から報告が入ったからだ。教師からの問いかけに反応できたため、話すことは出来ると言っていた。
ただ長話は体力を使うため、最大で十五分間だけと言われた。
「どう?体調の方は?」
セレスは二人が寝ているベッドの間のスペースに配置されている椅子に腰掛けると、スーフ、ディアの順に顔を見て訪ねた。
二人の様子を見る限り、明日には走る事は出来無そうだが、歩くことなら普段通りに出来そうだった。
「大丈夫!ほらこの通り!」
そう言うとスーフは包帯に包まれている両腕を反時計回りに回しだした。
それを見てカケルは止めようとしたが、スーフらしく止めるのを止めた。きっとあの調子では大丈夫だろうと判断を下したのだろう。
「私も大丈夫です。明日になれば歩くことも出来ますから」
ディアはスーフとは違い微笑むことで大丈夫と伝えた。
ディアらしい仕草だとカケルやセレス、ギルも安心する。
「それで今日の騒ぎは何でしたか?」
「そうだよ!五月蠅くてあまり寝れなかったじゃん!」
注目するところはそこか!っとカケルは心中でツッコミをするが、それはスーフには当然届かない。
どうして二人が騒ぎのことを知っているのかというと、あの時に既に意識は戻っていた。しかも眠りが浅かった為、外の騒ぎの物音や、声が聞こえたと言っていた。
あの時に目を覚める事も可能だったが、近くにセレス達が居ることも分かっていたみたいで、混乱させないように気遣っていたという。
そして一番この件に関わり、理解しているカケルが説明する。
「明日ですか。早いですけど大丈夫なんですか?」
「まあ何とかなると思うよ。モーリス学園長も付いてくることになっているし」
「そうですか」
ディアは安心したようで大きく息を吐き、手を胸に添えた。
「それより、そこにいる女の子。フローラリアって言うんだね。改めて宜しくね」
スーフは特に関心が無いのか、それともディアと言うことが被っていて聞くことがなかったのかは分からないが、フローラリアについて色々と聞いていた。途中でスーフが言葉攻めでフローラリアのあらゆる事を聞いていて、少し困り、怖がっていたので、止めさせた。
「あ!もう時間だ。あっという間だったけど、また明日来るから」
「本当ですね。ではまた明日スーフ、ディア」
「じゃあな」
時間は話しているとあっという間に過ぎていき、最大の十五分を回っていた。
カケルは明日のこともあるので、今日は引き上げることにした。
廊下に出ると丁度生徒達は食堂に行っている時間帯だったので、カケル達も食堂で夕食を食べた後、入浴をした。
男子風呂の視線は殆どカケルに向けられており、今日の一件が全ての原因だろう。
当然中には茶化しに来る輩も当然居る。
「おい。お前あの貴族に目を付けられたんだって?」
正直言ってカケルは今回関係のない人にこの件を話す事はない。
話せば話すほど事は大きくなり、今でも嘘の情報が流れているのに、ここで話せばまたややこしくなる。そう言ってこのまま野放しにするわけにもいかない。
カケルはうっとおしく聞いてくる生徒がいつまでも付きまとうため、睨みつけ威圧をかけた。
威圧は加減をしているので、気を失う事はないだろう。
「ヒ、ヒィィィィィ!!!化け物ダァァ!!!」
間抜けな声を出しながら服やら荷物を纏め、一目散に自分の部屋に逃げていった。
その後は『聞きたい者はまだ居るか』と訴えかけているような視線を周りに送ると、皆首が取れるのではないかと思うほど横に振っている。
「はぁ~やっかい払いも終わったし、ゆっくり風呂に入るか」
いつものように、家でゆっくり落ち着いて入ることは出来なかったが、明日に向けて気持ちを落ち着かせ、妙に視線が多く感じるが、そこそこゆっくり入れたので良かった。
ゆったり身体をリラックスさせていると、カケル視界の端で何やらこそこそしている集団を見つけた。風呂から上がり、何をやっているのかと気になり集団を覗くと、集団の中の一人が声を掛けてきた。
「お!お前もセレス様の身体を覗きに来たのか?」
「の、覗き?」
予想はしていたが、思わず聞き返す。
なんせこの風呂場での覗きは不可能だからだ。
確かに隣は女風呂だ。だがその壁は固い木の壁で出来ており、壊そうとしても壊れそうにはない。どこかに穴があるか探したが、無い。上は空いておらず、天上と壁がしっかり繋がっている。
「どうやって覗くんだ?」
「ふっふっふ!こいつが透視魔法を使えるんだ。それでだよ」
透視魔法とはそのままの意味で、指定した物体を透かし、その奥を見るいう魔法だ。
あまり実践的な魔法ではないので、取得する者は少ない。
そして何故か少ない取得者が主に男性だと言うが、理由はカケルが目にしている光景を見れば分かるだろう。
「本当に覗けたり出来るのか?」
カケルは別に覗きたいわけではない。ただ疑問に思うのだ。
この宿は学園側が用意している。つまり過去に覗くような行為をした生徒が居たりすれば、当然対策はするはずだ。
もし学園側が対策をしていなくとも、女子生徒達が自主的に魔法で守ったりするだろう。
「多分もう少しで終わると思うぜ。ほら噂をすれば……」
壁に集まっていた男子からは大歓声が上がっていた。
恐らく魔法が成功したのだろう。
「ほら。お前も見に行こうぜ!」
「いや。自分は遠慮しておくよ」
明日のこともあるし、今日面倒事に巻き込まれるのは勘弁だ。
「そうか。勿体ないな」
カケルは脱衣所に行き、自分の身体や髪に付いている水滴をタオルで拭き終えると斑の部屋に向かった。
廊下は風通しがとっても良く、洗い終えた髪に風が吹き込む度に爽快感と心地よさが一気に襲ってくる。その度その度カケルの頬は緩んでいった。
部屋の前に着き扉を開けると、落ち着いた白色に包まれたワンピースを着ているセレスが居た。丁度自分の荷物の整理をしていたらしく、床には可愛らしい服、学園指定の服やらが散らかっていた。セレスはしばらくカケルの顔を見、戻ってきたのだと理解すると散らかっている荷物を慌てて片づける。
そしてカケルはふと風呂場であった出来事を思い出した。
『確かあいつらはセレスさん目当てで覗きをしようとしていたよな?なら何故肝心のターゲットがここに居るんだ?』思わずきになったので、聞いてみた。
「セレスさん。お風呂から上がってどれくらい経つ?」
セレスは顎に手をやると、考え込む仕草を見せる。
「カケルさんが帰ってきて五分程度でしょうか。多分そのぐらいだと思います」
「てことは魔法が成功する前には既に上がっていたという訳か……」
「何か言いましたか?」
「いや何でもない」
カケルが上がった後透視魔法が成功し、男子生徒は喜び我先にと覗く。
すると目の前に広がっているのは楽園(パラダイス)ではなく、教師という地獄の入口だった。
今回はカケルが考えていた前者が当たった。
今の二年生がその時アイドル的な存在なミアの裸姿を一目見ようと、透視魔法で同じ事をした輩がいた為、今回は教師が壁に魔法陣を仕組み、透視魔法限定で発動させるようにしているのだ。そして発動して場合透視した先は教師の怒った顔となるようになっているのだ。
その後は覗きに関わった男子生徒の悲鳴が中に響き渡ったとさ。
こうして女風呂覗き事件は幕を閉じた。
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