魔法学園最弱の俺が英雄に

結城 もみじ

文字の大きさ
32 / 45

第三十一話 フローラリアの問題Ⅱ

しおりを挟む
 玄関での一件後、カケルとフローラリアは宿の部屋に戻っていった。
 一方でモーリス学園長は遠征に来ている教師を集め、会議する予定だという。貴族が来たからと言って今さっきのように慌て、判断能力が低下し、すぐさま通すのはモーリス学園長からしても良いことではなかったらしい。

 実のところ魔法学園は大陸中でも有名な学園なのだ。その為そこら辺の貴族が押し掛けて来たとしても、突き返せるほどの力を持っているのだ。今回の件で貴族が簡単に学園を通ることが出来ると噂が流れれば、学園の力が衰えていると勘違いされ大量の貴族達が自分の子供の妻にしようとする者や、自分の子供を無理矢理入学させようとする者が出てきてしまうのだ。
 そうなったら学園側も対応仕切れなくなってしまう。
 会議はその事を確認するためと、対応策を考えるためだ。

 カケルが部屋入った途端、セレスとギルが押し掛けどうなったか聞きに来る。
 二人の顔を見ると、興味があると言うより、心配をしている表情だ。
 当然そんな表情をしてくると思っていたが、セレスに関しては予想より遙か上を通り越していた。

 目尻には涙を浮かべ、目は上目使い。
 手は祈るように両手を硬く握りしめ、本気で心配している。
 これは一人の友達としての行動ではなく、一人の異性としての行動なのだろう。
 そしてカケルはセレスの気持ちに全く気が付いていない様子。

 「カケルさん!大丈夫でしたか?心配しましたよ。本当に心配しましたよ」
 
 「カケル。本当に大丈夫か?あの貴族相当悪いってセレスさんから聞いたけどよ」

 実はモーリス学園長から話は既に聞いていたが、ここでは初めて聞いたことにする。

 「何とか大丈夫だったよ。でもあの貴族が悪い人だって事は知らなかった。今回はモーリス学園長に感謝しないといけないね」

 今回は本当にモーリス学園長に救われた。
 あのまま騎士達が手をだしていれば、貴族との対立からは逃れられないだろう。もしそんなことになっていたら、学園を追い出される身になり、フローラリアを救う事が出来なくなってしまう。それでは元も子も無くなってしまう。
 なのでモーリス学園長には感謝仕切れないほどの、感謝をしなければならないのだ。

 「それでこれからどうなるのですか?」

 「明日奴隷販売店で話し合うことに決定したよ。僕、フローラリア、モーリス学園長で行くつもりだよ」

 そのことを告げられたセレスはさらに不安な表情になり、今にでも泣きそうな面持ちだ。
 その気持ちはカケルの事が好きだからこその気持ちだろう。
 好きな人が傷ついて欲しくない。
 もしかしたら、帰ってこないかも知れない。
 そういった感情によって不安が膨らんでいく。

 心の器が風船だとして、不安の感情が風船の空気だとしたら、空気が入りすぎて破裂寸前の風船状態だ。破裂したら不安の感情が零れだし、泣いてしまうだろう。

 「だ、大丈夫なんですか?」

 心配な表情をしているセレスに対してカケルは優しく笑いかける。
 それと同時に握っていたフローラリアの手を強く、けれど痛がらない程度に再び握る。

 「大丈夫だよ!もし手を出してきたらその時はしっかりと守る。それに学園長も付いてる。だから僕が貴族に連れて行かれる事無いよ。もちろんフローラリアも」

 その言葉を聞いたセレスは何故かそわそわしていた。




 その日の夜……。

 カケル達はスーフ、ディアらが居る治療室に居た。
 理由は二人が目を覚ましたと教師から報告が入ったからだ。教師からの問いかけに反応できたため、話すことは出来ると言っていた。
 ただ長話は体力を使うため、最大で十五分間だけと言われた。

 「どう?体調の方は?」

 セレスは二人が寝ているベッドの間のスペースに配置されている椅子に腰掛けると、スーフ、ディアの順に顔を見て訪ねた。
 二人の様子を見る限り、明日には走る事は出来無そうだが、歩くことなら普段通りに出来そうだった。

 「大丈夫!ほらこの通り!」

 そう言うとスーフは包帯に包まれている両腕を反時計回りに回しだした。
 それを見てカケルは止めようとしたが、スーフらしく止めるのを止めた。きっとあの調子では大丈夫だろうと判断を下したのだろう。

 「私も大丈夫です。明日になれば歩くことも出来ますから」

 ディアはスーフとは違い微笑むことで大丈夫と伝えた。
 ディアらしい仕草だとカケルやセレス、ギルも安心する。

 「それで今日の騒ぎは何でしたか?」

 「そうだよ!五月蠅くてあまり寝れなかったじゃん!」

 注目するところはそこか!っとカケルは心中でツッコミをするが、それはスーフには当然届かない。
 どうして二人が騒ぎのことを知っているのかというと、あの時に既に意識は戻っていた。しかも眠りが浅かった為、外の騒ぎの物音や、声が聞こえたと言っていた。

 あの時に目を覚める事も可能だったが、近くにセレス達が居ることも分かっていたみたいで、混乱させないように気遣っていたという。
 そして一番この件に関わり、理解しているカケルが説明する。

 「明日ですか。早いですけど大丈夫なんですか?」

 「まあ何とかなると思うよ。モーリス学園長も付いてくることになっているし」

 「そうですか」

 ディアは安心したようで大きく息を吐き、手を胸に添えた。

 「それより、そこにいる女の子。フローラリアって言うんだね。改めて宜しくね」

 スーフは特に関心が無いのか、それともディアと言うことが被っていて聞くことがなかったのかは分からないが、フローラリアについて色々と聞いていた。途中でスーフが言葉攻めでフローラリアのあらゆる事を聞いていて、少し困り、怖がっていたので、止めさせた。

 「あ!もう時間だ。あっという間だったけど、また明日来るから」

 「本当ですね。ではまた明日スーフ、ディア」

 「じゃあな」

 時間は話しているとあっという間に過ぎていき、最大の十五分を回っていた。
 カケルは明日のこともあるので、今日は引き上げることにした。
 廊下に出ると丁度生徒達は食堂に行っている時間帯だったので、カケル達も食堂で夕食を食べた後、入浴をした。

 男子風呂の視線は殆どカケルに向けられており、今日の一件が全ての原因だろう。
 当然中には茶化しに来る輩も当然居る。

 「おい。お前あの貴族に目を付けられたんだって?」

 正直言ってカケルは今回関係のない人にこの件を話す事はない。
 話せば話すほど事は大きくなり、今でも嘘の情報が流れているのに、ここで話せばまたややこしくなる。そう言ってこのまま野放しにするわけにもいかない。

 カケルはうっとおしく聞いてくる生徒がいつまでも付きまとうため、睨みつけ威圧をかけた。
 威圧は加減をしているので、気を失う事はないだろう。
 
 「ヒ、ヒィィィィィ!!!化け物ダァァ!!!」

 間抜けな声を出しながら服やら荷物を纏め、一目散に自分の部屋に逃げていった。
 その後は『聞きたい者はまだ居るか』と訴えかけているような視線を周りに送ると、皆首が取れるのではないかと思うほど横に振っている。

 「はぁ~やっかい払いも終わったし、ゆっくり風呂に入るか」

 いつものように、家でゆっくり落ち着いて入ることは出来なかったが、明日に向けて気持ちを落ち着かせ、妙に視線が多く感じるが、そこそこゆっくり入れたので良かった。

 ゆったり身体をリラックスさせていると、カケル視界の端で何やらこそこそしている集団を見つけた。風呂から上がり、何をやっているのかと気になり集団を覗くと、集団の中の一人が声を掛けてきた。

 「お!お前もセレス様の身体を覗きに来たのか?」

 「の、覗き?」

 予想はしていたが、思わず聞き返す。
 なんせこの風呂場での覗きは不可能だからだ。
 確かに隣は女風呂だ。だがその壁は固い木の壁で出来ており、壊そうとしても壊れそうにはない。どこかに穴があるか探したが、無い。上は空いておらず、天上と壁がしっかり繋がっている。

 「どうやって覗くんだ?」

 「ふっふっふ!こいつが透視魔法を使えるんだ。それでだよ」

 透視魔法とはそのままの意味で、指定した物体を透かし、その奥を見るいう魔法だ。
 あまり実践的な魔法ではないので、取得する者は少ない。
 そして何故か少ない取得者が主に男性だと言うが、理由はカケルが目にしている光景を見れば分かるだろう。

 「本当に覗けたり出来るのか?」

 カケルは別に覗きたいわけではない。ただ疑問に思うのだ。
 この宿は学園側が用意している。つまり過去に覗くような行為をした生徒が居たりすれば、当然対策はするはずだ。
 もし学園側が対策をしていなくとも、女子生徒達が自主的に魔法で守ったりするだろう。

 「多分もう少しで終わると思うぜ。ほら噂をすれば……」

 壁に集まっていた男子からは大歓声が上がっていた。
 恐らく魔法が成功したのだろう。

 「ほら。お前も見に行こうぜ!」

 「いや。自分は遠慮しておくよ」

 明日のこともあるし、今日面倒事に巻き込まれるのは勘弁だ。

 「そうか。勿体ないな」

 カケルは脱衣所に行き、自分の身体や髪に付いている水滴をタオルで拭き終えると斑の部屋に向かった。
 廊下は風通しがとっても良く、洗い終えた髪に風が吹き込む度に爽快感と心地よさが一気に襲ってくる。その度その度カケルの頬は緩んでいった。

 部屋の前に着き扉を開けると、落ち着いた白色に包まれたワンピースを着ているセレスが居た。丁度自分の荷物の整理をしていたらしく、床には可愛らしい服、学園指定の服やらが散らかっていた。セレスはしばらくカケルの顔を見、戻ってきたのだと理解すると散らかっている荷物を慌てて片づける。

 そしてカケルはふと風呂場であった出来事を思い出した。
 『確かあいつらはセレスさん目当てで覗きをしようとしていたよな?なら何故肝心のターゲットがここに居るんだ?』思わずきになったので、聞いてみた。

 「セレスさん。お風呂から上がってどれくらい経つ?」

 セレスは顎に手をやると、考え込む仕草を見せる。

 「カケルさんが帰ってきて五分程度でしょうか。多分そのぐらいだと思います」

 「てことは魔法が成功する前には既に上がっていたという訳か……」

 「何か言いましたか?」

 「いや何でもない」


 カケルが上がった後透視魔法が成功し、男子生徒は喜び我先にと覗く。
 すると目の前に広がっているのは楽園(パラダイス)ではなく、教師という地獄の入口だった。

 今回はカケルが考えていた前者が当たった。
 今の二年生がその時アイドル的な存在なミアの裸姿を一目見ようと、透視魔法で同じ事をした輩がいた為、今回は教師が壁に魔法陣を仕組み、透視魔法限定で発動させるようにしているのだ。そして発動して場合透視した先は教師の怒った顔となるようになっているのだ。

 その後は覗きに関わった男子生徒の悲鳴が中に響き渡ったとさ。

 こうして女風呂覗き事件は幕を閉じた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

処理中です...