魔法学園最弱の俺が英雄に

結城 もみじ

文字の大きさ
33 / 45

第三十二話 セレスの思い

しおりを挟む
 時は少し遡る……。


 「どうしましょう。夜カケルさんの所に行く予定だけど、何着ていけば……」

 セレスが他の女子より何故早めに風呂から上がったかというと、夜の秘密の計画『夜の夜這い大作戦』の為の戦闘服(パジャマ)を準備する為なのだ。夕方からそわそわしていたのも、この計画のせいだ。遠征に行くまではこのような計画は企ててはいなかったが、カケルが迷宮でセレス達を救ったことがトリガーとなり、一気に好きになった。そしてこの遠征が絶好のチャンスと考え『夜の夜這い大作戦』を考えたのだ。

 「早く考えないと、カケルさんが来てしまう。……これは露出度が高いので無し!……これは地味だから無し!」

 部屋で『これは違う。これも違う』と言い続けながら、鞄の中から取りだした服を床に投げ置いていく。
 だが時間はセレスが思うより長くは無く、部屋に服が散乱している状態でカケルが帰ってきてしまったのだ。


 そして時は今と至る。
 さっきまでは二人でちょっぴり気まずい雰囲気だったが、ギルが帰ってきた事で解消された。鋭いのか、鋭くないのか分からないが、何かおかしいと感じたギルは二人に質問したが、セレス、カケルが何とか誤魔化すとまんまと二人の嘘を信じ込む。

 二人は嘘を信じ込んだギル顔を見、無意識に顔を見合わせると笑い出してした。
 それを見てるギルは『何がおかしいんだよ!』と困惑するので、それを見て再び笑い、困惑しそれを見て笑いの繰り返しだったが、ギルが呆れて床に座った事で笑いは収まる。
 
 「それでカケル。お前明日に備えて寝なくて良いのか?」

 正直言うと、この空気の中自分一人だけ『ごめん。今から寝る』と言うのは気まずかったので、ギルがこの話を振ってきたので助かった。

 「もう寝ようと思っていたところだよ」

 「よし。なら俺も早めに寝ようかな。セレスさんはどうする?」

 突然話を振られたセレスは肩を跳ね上がらせ、驚いていたが、話を聞いていなかった訳ではなかったので言葉を返す。

 「そうですね。健康を考えて私も早めに寝ようと思います」

 皆の意見が同じになった事を確認すると、ギルは手を叩きお休みモードに入る。

 「じゃあ俺はお先に寝ることにするよ。お休み」

 そう言い残すと、ベッドが置いてある個室に入っていった。
 部屋は何故かベッドだけが各個室となっており、五人部屋なのでベッドが置いてある個室は五室ある。
 部屋入口から見て左に三部屋。右に二部屋となっている。
 部屋割りは左側の部屋にスーフ、ギル、ディア。右側の部屋にカケル、セレスと決まっている。部屋割りは特に揉めたりしなかったので、皆満足だった。

 フローラリアは誰の部屋で寝ているのかと言うと、今は治療室に居るスーフの寝室で寝ている。あの一件で精神的に疲れていたらしく、お風呂に入れるために起こすのも可哀想な気がしたカケルは起こさずそのまま寝かせてあげた。

 そうしてセレスもカケルもギルに続き自分の寝室に入り眠ることにした。

 『明日は大事な戦いになる。今日しっかり気持ちを落ち着かせて寝よう』

 そう自分に言い聞かせながら浅い眠りに入ろうとする瞬間、個室の寝室の扉が開かれた。
 カケルは起きたフローラリアが寂しくて一緒に寝に来たと思い、そのまま眠りについていたが、聞こえた声によって目を覚めることとなる。

 「カケルさん。まだ起きていますか」

 「……え!?」

 目を覚まし、思わず大きな声を出してしまい、手で口を押さえてしまう。
 そうカケルは知らないが、もう既にセレスの『夜這い大作戦』は決行中なのだ。
 近くに置いてある蝋燭に灯をともし、ようやく姿が見えた。

 服は先ほどと替わらなかったが、表情がいつもの明るい顔ではなく恥ずかしがっている顔になっていた。
 両手を胸の位置まで持っていくと、指先を絡めさせモジモジし始めた。

 「カケルさん。私は貴方のことが好きです!なので失礼します!」

 セレスはカケルに告白すると、そのまま寝ているベッドに上がりカケルを押し倒す。
 お風呂からあまり時間が経っていないからなのか、髪からは名前は分かってはないが花の良い香りが漂ってくる。緊張しているのか、カケルの肩を掴んでいる手が震えている。
 それもそうだ。セレスは今までの人生で誰かを押し倒したりしたことが無いのだ。貴族の身であることで、あまり性的な教えはされていない家庭も少なくはないが、セレスの場合は母に将来好きな人が出来た時ようと教えていたのだ。

 カケルはこの時考えていた。
 そのままセレスの行為を受け取るべきなのか。
 それとも気持ちだけを受け取るべきなのか。

 頭の中で二択のルーレットがグルグルと猛スピードで回っていた。
 そして考え、考え抜いた結果が決まったところでルーレットは停止した。

 「セレスさん。気持ちは嬉しいよ。でもね女性の大切なものをそう簡単に捨ててはいけないと思うんだよね」

 セレスは一瞬悲しい顔を見せたが、カケルの体に乗りながら感情的に、だが周りに聞こえないような声で反論した。

 「私はそんなカケルさんが思っているような簡単な気持ちで、このような行為をしているのではないです!私はカケルさんを愛しています。本気で愛しています。今すぐ婚約を交わしたいほどです。ですが今カケルさんの周りには色んな女性が居ます。
 もし、その中に好きな人が居たとして私はカケルさんの何番目でも良いんです!
 私はカケルさんに染まりたいんです!
 他の男性に染まりたくないんです!
 カケルさん。私は本気なんです……」

 この発言にはカケルも予想はしていなかった。
 正直に言えばセレスの好意には気が付いていた。
 だが、ここまで本気の気持ちとは気が付かなかったのだ。

 『ここまで本気だとは知らなかったな。ここでやっぱり受け止められない、と言うのはおかしい気がするな。まだ彼女の気持ちに答えることが出来ないが、ここは彼女の気持ちをしっかりと受け止めてあげよう』

 こうしてカケルはセレスの気持ちを受け止めることにした。

 「分かった。セレスさんの気持ちを受け止めよう。だけどまだセレスさんの好意に答えることは出来ない……」

 カケルは少し落ち込んだ様子で告げるが、セレスは逆に嬉しそうな顔をしている。

 「私は待ちますよ」

 「そうかありがとう」

 
 
 翌日カケルの寝室から頬がゆるゆるにとろけそうな幸せな顔でカケルの腕を組みながら出てきたセレスを見たギルが、『何故カケルの部屋から出てきたのだ?』と首を傾げ何かいつもと違うと悩むのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

処理中です...