魔法学園最弱の俺が英雄に

結城 もみじ

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第三十八話 お出掛けⅡ

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 露店での食べ歩きは全てカケル奢りとなった。
 その理由は『集合時間に約束した場所にこれて居なかったから』とギルが奢られる事を期待している目で見つめているので、仕方なく頷く。

 『お金をどう消化しようか考えていたから、まあいっか』と心の中で納得するのであった。

 食べ歩きと言っても、皆がバラバラになって自由に行動して買うわけではない。
 一つ一つ露店を見て、自分が食べたい! と思うものをカケルに言い、買う流れになっている。
 こうなったのは『バラバラになったら、カケルさんが昼ごはんを食べることが出来ず、皆のお会計係になってしまいます! なので皆で行動しましょう』とセレスが少し怒りっぽく提案した事で決まったことだった。

 その提案に対してカケル自身とても感謝してしているそうで、こっそりセレスの耳元で囁く。

 「気を使ってくれてありがとう。助かったよ」

 急に囁かれ驚いたのか、セレスはカケルの方を振り返る。
 そして見つめ合う。

 「い、いえ。私は当然の事をしただけですよ」

 顔を両手で隠しているが、指の隙間から頬が真っ赤に染まっているのが見えた。
 そして照れて、恥ずかしそうにそう言う。

 「人が多いし、はぐれると大変だからはい!」
 
 カケルはそう言い、一度離した手を再び差し出す。
 セレスは照れ顔から、今のもよだれが出てきそうな幸せ顔に急変する。
 彼は手の意味を言葉で言ってはいないが、これは『手を繋ごう』と言っているのだ。

 「はい! お願いしますね」

 ラブラブな空気感を作っていると、それをお構いなしに少し離れているスーフがカケルに声をかける。

 「お会計係。お会計お願い~」

 「分かった」

 返事と同時に三人はスーフの所へ駆けて行った。


 
 お昼ごはんを無事カケルも食べ終えると、日は沈み始めて辺りが暗くなっている。
 カケル達は噴水広場へ一度集まることとなった。
 集まった訳は、ギルの今後の計画ではここで解散だというのだ。
 自分で帝都のお土産を買うのも良し。
 誰かと一緒にどこかに行くのも良し。ということらしい。

 当然カケルはセレスの精神面が気になるので、このままどこかへ行く予定だ。
 フローラリアディアの所へ預けていくという。
 本当は連れて行きたいのだが、セレスと一対一で話をしたいと考えているので、そこは我慢してもらうしかない。

 「セレスさん! 僕と一緒にどこか行きませんか!」

 「いや。この俺とだ!」

 「何言っている俺だぞ」

 一体どこから出てきたか分からないが、セレスがフリーになるチャンスを待っていたらしい。
 そして今待っていた男子生徒が一斉に駆け寄ったということだ。

 猛アピールされている本人はというと、急なことに対応が追いつかずアワアワして焦っている様子。どうも捌ききれる状態ではない。

 カケルが助けようと近づくが、大勢に力に勝てるわけが無く、突き飛ばされてしまう。
 
 『今日話さないといけないのに……観察眼を使ってセレスさんがどうなっているか見ないと』

 観察眼を使うと目の前に写っていたのは、大勢の中心で揉みくちゃにされ、服をあちこち引っ張られ息苦しそうに涙を浮べている。

 『これは助けないと!』

 カケルは力を使い、身体能力を上げセレスの頭上まで飛ぶ。
 そして瞬時に腕を掴み、集団の中から引き抜く。
 反対の腕を彼女のふとももに回し、お姫様抱っこの形にもっていく。

 「ふ、ふぁ!? カケルさん何をッ!」

 「何って助けに来たんだよ?」

 「でも。すぐに追ってきますよ! ほら来てますよ!」

 セレスは慌てた様子で、背後から追ってくる男子を指差す。

 「大丈夫。すぐに離れるよ。しっかり捕まっていてね」

 言われるがままに、腕を首元に回す。
 カケルは地面に足を着けた瞬間、神速を使い一瞬で男子生徒たちから距離を離す。
 そのままのスピードで目的地へ向かう。

 比較的人混みを避けた事で、スピードを落とすことなくすぐに目的地へ着く。

 『懐かしい潮の香りがする』

 「ほら。着いたよ」

 カケルは抱えていたセレスを地に下ろし、目的地を紹介する。

 「うわぁ~綺麗です! とっても綺麗ですよ! カケルさん!」

 胸元で両手を組み、目をキラキラさせ感動している。

 「セレスさん。もしかして海を見たことが無いの?」

 「そうなんです。王国は大陸の中心にあって一度も見たことが無いんです。まさか海がこんなに綺麗なものだとは思いませんでした」

 「それは良かった。今見ている海は夕焼けが海に映る現象で一時的でしか見れないんだよ」

 カケルが見せたかったものとは、海に映る夕焼けだったのだ。
 迷宮に行く際度々チラシで海が近くにある事を知っていたので、どうせなら綺麗な夕焼けと一緒に見ようと決めていたのだ。

 二人はゴミ一つもない真っ白な砂浜に横に並ぶように座る。
 しばらくの間、無言が続くが波の音で気まずい雰囲気になることは防ぐ事が出来た。

 「セレスさん。心の方は落ち着いた?」

 カケルは密かにセレスが気持ちの整理が出来ていないことに気がついていたのだ。
 今朝も目元が腫れ、夜中に泣いていたのだろう。
 お出掛けの時も明るく振舞っていたが、どこか気分が落ち込んでいたときが多々見られた。

 「実はまだ落ち着いていないです。昨日スッキリしたと思っていたんですが、気がついたときには不安が溜まっていて……すみません」

 感情がこみ上げて、涙を流す。
 声を出しながら泣くのではなく、ただ海を眺めながら。
 
 「あんな事があって落ち着く方が逆に凄いよ。でもね。僕は我慢しなくて良いと思うんだ。泣きたかったら泣けば良いし、気持ちが落ち着かなければ自分にぶつけて良いから。全部自分で抱え込まないで。何でも聞くから」

 「カケルさん……私……」

 セレスは再びカケルの懐へ飛び込む。
 この前のように泣きはしなかったが、長く抱きつき、それがしばらく続いた。

 「今何でもって言ったよね?」

 「もちろん。出来る限りだけどね」

 顔を見られてない状態で、怪しげにニヤリと笑みを作る。
 そして抱きつきながら、顔を上げ期待する瞳でカケルを見つめる。

 「では、私とお付き合いしてください!」

 『そうきたか。いや予想はしていたけど…あの時は良く相談できなかったからな……。今話すべきか』

 「まあセレスさんの責任を取らないといけないからね。この前も言ったように今は無理だけど約束するために今度親御さんに挨拶しに行くことにするよ」

 するとセレスはさらに目を輝かせ、思わずカケルも視線を逸らしたくなる。

 「是非! 遠征から帰ってすぐ!!」

 「分かったから、落ち着いて。でもこれで気持ちも落ち着いたでしょ? 言いたいことを言えてスッキリしたんじゃない?」

 「あれ? 案外スッキリしました。これが一番気がかりだったんですかね。カケルさんありがとうございます」

 「それなら良かったよ。ほら日が完全に沈む前に宿へ帰ろう」

 これまで一番の笑みで『はい!』と答える。
 帰りにセレスへ髪飾りと、王国で待っている人たちのお土産を買った。



 そして、宿に帰ると宴が始まっていた……
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