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嵯峨野 樹悠

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伊織と来たのは海辺だった。
水族館は海の近くにあったから、もう秋に差し掛かっていたから人も少なくて、ここなら話が出来るんじゃないかと思って。

散歩に来ていた犬と戯れたり、波際で走り回ったり、そんな伊織を見ていると、小さい子と一緒にいる感覚になった。
見た目はすごく大人びているのに・・・と思いながら、啓威は伊織を見ていた。

しばらくすると、伊織が戻ってきた。
「犬に懐かれてたね(笑)犬好きなんだ?」

『伊織んちもね、あれぐらい大きな犬と一緒に住んでたんだよ』

「そうなんだ。」

『あっ、伊織が話あるっていったのに』

「全然?伊織ちゃんって、いつも遠慮するよね。もっと、自分のやりたいことやったり、言ったりすればいいのに」

『(苦笑)』
しばらく、沈黙が続いた。

俺は、何か言ってあげた方がいいのかと思った矢先。
『ねぇ。啓威ちゃん』
隣に座っている伊織が話し始めた。

「ん?」

『伊織、どれぐらいに見える?』

「えっ?」
いきなりそんなこと言われて考えてもなかったないわけではなかったけど。

『(笑)ごめんね。突然。でも、どう見えるか教えて欲しいんだ』

「また遠慮してる(苦笑)それ辞めるなら言ってあげるよ」

『分かった』

「見た感じ、すごい大人びてるし冷静な判断する。けど、学生ではないかな~って思うんだけど、今日一日一緒にいて、すごい子供みたいなところもあって(笑)」

『うん』

「大人と子供のどっちも兼ね備えた娘だなって思った。」
こんな答えを求めていたのかは分からないけど、素直な気持ちを伝えた。

「間違えてたらごめんね。女性に年齢とか間違ったら失礼だろうけど、二十歳ぐらいかなって思った」

『そっか。ありがと』

「いーえ。」
すると、伊織は啓威の前に立って。

『伊織ね。まだ18歳なんだ。』

「うん。・・・え?」

『びっくりした?』

「ごめん。間違えちゃったね」

『大丈夫だよ。』

「じゃぁ、学生なの?大学生?」

『学校はもう卒業したんだ。最近まで海外にいたの。』
すると、伊織は自分のことを喋り始めた。

「すげーな。なんか、尊敬する。」

『なんで?』

「なんでだろ?それは秘密(苦笑)」

『なにそれ(笑)ずっと、言おうと思ってたんだ。日本に戻って来て、友達もほとんどいないんだけど。今ね、あのカフェにいる時が一番楽しいの。皆優しいし。こんな伊織でも接してくれるから』

「弥眞斗君は知ってるんでしょ?」

『面接した時に、もし嘘言っててもこういうのってバレると思うから。働かせてもらえるか分からなかったけど、その時に正直に話した。』

「伊織ちゃん。もしかして自分の年齢気にしてたの?」

『年齢っていうか、喋んなかったからどう思われてるのかなって』

「全部言わなくてもいいよ。」
そう言って、頭を撫でた。
本当は抱きしめてみようかと思ったけど、そういう関係でもないしそういう出来るキャラでもないし、つくづく自分が情けないなぁとは思うけれど。

「不安だったんだね(苦笑)」
そう言うと、伊織はうなづいた。

「年齢なんて、気にならないよ。自分と気が合うと思えば、付き合えばいいんだし。無理だったらお互いに続かないと思う。」
そう言うと、伊織は啓威の方を向いた。

「でしょ?」

『うん』

「じゃぁ、問題なしっ。今までと俺らの関係も変わらないし。これからもずっと。ねっ?」
そう言って、微笑んだ。

『啓威ちゃん。ありがとっ』

「なんで?何もしてないし(苦笑)」
そう言って、二人で笑いあった。

「そろそろ戻らないと。」

『まだ、やっくんとたー君いるかな?』

「いるんじゃない?お土産渡しに行く?」

『うん』
二人で、今日のこと話しながら弥眞斗達がいるカフェに行った。

「あっ。行く前に、これ」
そう言って、啓威は伊織に渡した。

『何?』

「今日の記念にと思って(笑)」

『あ、ありがと。開けてもいい?』

伊織は、貰ったそれを見ると
『・・・これ』

「それ、ずっと見てたでしょ?でも、買わなかったから欲しかったものか分かんなかったんだけど」

『ありがと(照)ほんとは欲しかったの。大事にするね』

「良かった。じゃぁ、行こっか」

★★

カフェの近くに来ると
『良かった。まだ明かりが付いてるね。』

「だね」
そして、二人はカフェに入った。

「いらっしゃいませ?」

『なんで、疑問形なの?(笑)』

「いらっしゃい。寄ってくれたんだ」

『二人に渡したいものがあったから。ねっ。啓威ちゃん』

「俺じゃなくて、伊織ちゃんでしょ?(笑)」

『へへっ』

「そろそろ、お店終わるところだったから、もう誰も来ないし。ゆっくりしていって?」
二人にコーヒー入れてくれた。

「伊織ちゃん。啓威さんに何もされなかった?」

『なんで?』

「だって連絡くれなかったけど、逆に何かあったんじゃないかって」

「あるわけねーだろ(苦笑)だったら、ここにもこねーよ。」

「今、伊織ちゃんと喋ってるんですから、邪魔しないで下さいっ」

「はいはい。匠彌君の方が、よっぽど子供だな(苦笑)」
そう言って笑った。

弥眞斗は、そこで気がついた。
啓威君には話したんだ。
「どこ行ったんですか?」

「水族館です。きっと、伊織ちゃんが色々話してくれると思うんで、聞いてあげて」

「楽しみに取っておきます」

「弥眞斗君」

「はい?」

「伊織ちゃんから、聞いたよ。」

「そうですか。俺から言っても良かったんですけどね。でも、そういういことは本人から言わないと駄目かなって思って黙ってました。」

「そうですね。」

「啓威さんには、話すと思ってましたから。あとは、匠彌だけかな?」

「一緒に働いてるわけじゃないのに?」

「啓威さんと匠彌には、きっと自分から言うと思ってました。あとはないかな(笑)ま、俺の予測ですけど」

「(笑)これで、少しは不安取れてるといいんですけどね」
他にもまだなにかありそうな気がすると啓威は、感じていた。
でも、何かは分からなかった。

弥眞斗も気にはなっているが、何か分からなかった。


「えっ?キス???」
突然、匠彌が大きな声出した。
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