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第1章 ゆうしゃの夏
第2話 ゆうしゃの夏[2]
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蝉の声が、夕焼けに染まった街を包みこんでいた。
ふたりのランドセルが、歩くたびに小さく揺れる。
真新しいアスファルトの歩道には、なつみとそらたの影がくっきりと伸びていた。
「……今日、すっごく暑いね」
そらたがそう言うと、なつみは「ほんとだね」と笑って頷いた。けれどその笑顔は、さっきの教室で見せたものとは少し違っていた。
なんだろう、と思う。
昔からよく笑う子だったけど、今日の笑顔は……どこか寂しそうだった。
「ねえ、なっちゃん」
「ん?」
「その……何か、困ってることとか……ある?」
「え?」
なつみは立ち止まり、そらたを見つめた。
驚いたような、けれどどこか嬉しそうな顔だった。
「……なんで?」
「なんとなく……そんな気がしてさ」
そらたの声は、ほんの少し震えていた。言ってしまってから、ちょっとだけ後悔する。でも――
「去年の夏、なっちゃん、ちょっと元気なかったでしょ?」
「……うん」
やっぱり。
そらたの心臓がドクンと鳴った。なつみは、目を伏せたまま、言葉を探しているようだった。
「でも、もう大丈夫」
「どうして?」
「だって……今年の夏は、勇者になるって決めたから」
夕陽に照らされたなつみの横顔は、まるで決意をまとった騎士みたいだった。あのときの“冒険ごっこ”とは違う、本物の決意。
そらたはその横顔を見つめながら、黙って頷いた。
歩き出すなつみの後を、そらたは半歩だけ遅れて追いかける。
やっぱり、ついていこう。
彼女の冒険に、今年は一緒に立ち向かいたい。そう思った。
それからふたりは、川沿いの道を歩いた。自転車のベルの音、犬の散歩をする人、開けっぱなしの窓から聞こえるテレビの音――
そんな、いつもの夏の夕方が、今日は少しだけ違って見えた。
なつみがふいに立ち止まり、そらたのほうを向いた。
「そらたってさ、ほんとに“まほうつかい”になれると思う?」
「えっ……?」
「ううん、ごめん。変なこと聞いちゃった」
なつみは笑った。
でも、そらたは真剣な顔で頷いた。
「なるよ。なれるって信じてる」
「どうして?」
「なっちゃんが、"勇者"になれるって信じてるから。……だから僕も、魔法使いになれると思うんだ」
その答えに、なつみはしばらく黙っていた。
けれど、数秒後――
「ふふ、じゃあさ。そらたの“まほうつかいの道具”って、何にする?」
「え?」
「まほうつかいは、杖とか帽子とか、持ってなきゃダメでしょ」
「あ……たしかに」
ふたりは顔を見合わせて、声を立てて笑った。
その瞬間、空気がふわりと軽くなった気がした。
どこからか、風が吹き抜ける。夕陽が差し込む中、なつみの髪がやわらかくなびいた。
「じゃあ、帽子は……僕、作るよ。魔法使いの帽子、ちゃんと。……あと杖も、探してみる」
「えっ、ほんとに?」
「うん。冒険するなら、準備は大事だし」
「ふふ、それなら、わたしもちゃんと“けん”を用意しなきゃね」
夏の陽射しが残る空の下で、ふたりの小さな冒険が、少しずつ動き出していた。
ふたりのランドセルが、歩くたびに小さく揺れる。
真新しいアスファルトの歩道には、なつみとそらたの影がくっきりと伸びていた。
「……今日、すっごく暑いね」
そらたがそう言うと、なつみは「ほんとだね」と笑って頷いた。けれどその笑顔は、さっきの教室で見せたものとは少し違っていた。
なんだろう、と思う。
昔からよく笑う子だったけど、今日の笑顔は……どこか寂しそうだった。
「ねえ、なっちゃん」
「ん?」
「その……何か、困ってることとか……ある?」
「え?」
なつみは立ち止まり、そらたを見つめた。
驚いたような、けれどどこか嬉しそうな顔だった。
「……なんで?」
「なんとなく……そんな気がしてさ」
そらたの声は、ほんの少し震えていた。言ってしまってから、ちょっとだけ後悔する。でも――
「去年の夏、なっちゃん、ちょっと元気なかったでしょ?」
「……うん」
やっぱり。
そらたの心臓がドクンと鳴った。なつみは、目を伏せたまま、言葉を探しているようだった。
「でも、もう大丈夫」
「どうして?」
「だって……今年の夏は、勇者になるって決めたから」
夕陽に照らされたなつみの横顔は、まるで決意をまとった騎士みたいだった。あのときの“冒険ごっこ”とは違う、本物の決意。
そらたはその横顔を見つめながら、黙って頷いた。
歩き出すなつみの後を、そらたは半歩だけ遅れて追いかける。
やっぱり、ついていこう。
彼女の冒険に、今年は一緒に立ち向かいたい。そう思った。
それからふたりは、川沿いの道を歩いた。自転車のベルの音、犬の散歩をする人、開けっぱなしの窓から聞こえるテレビの音――
そんな、いつもの夏の夕方が、今日は少しだけ違って見えた。
なつみがふいに立ち止まり、そらたのほうを向いた。
「そらたってさ、ほんとに“まほうつかい”になれると思う?」
「えっ……?」
「ううん、ごめん。変なこと聞いちゃった」
なつみは笑った。
でも、そらたは真剣な顔で頷いた。
「なるよ。なれるって信じてる」
「どうして?」
「なっちゃんが、"勇者"になれるって信じてるから。……だから僕も、魔法使いになれると思うんだ」
その答えに、なつみはしばらく黙っていた。
けれど、数秒後――
「ふふ、じゃあさ。そらたの“まほうつかいの道具”って、何にする?」
「え?」
「まほうつかいは、杖とか帽子とか、持ってなきゃダメでしょ」
「あ……たしかに」
ふたりは顔を見合わせて、声を立てて笑った。
その瞬間、空気がふわりと軽くなった気がした。
どこからか、風が吹き抜ける。夕陽が差し込む中、なつみの髪がやわらかくなびいた。
「じゃあ、帽子は……僕、作るよ。魔法使いの帽子、ちゃんと。……あと杖も、探してみる」
「えっ、ほんとに?」
「うん。冒険するなら、準備は大事だし」
「ふふ、それなら、わたしもちゃんと“けん”を用意しなきゃね」
夏の陽射しが残る空の下で、ふたりの小さな冒険が、少しずつ動き出していた。
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