僕に双子の義兄が出来まして

サク

文字の大きさ
68 / 120

友人の千春の義弟の悠暉君 大山大輔視点

しおりを挟む
楽しそうな、千春たちの声に楽しそうに笑う悠暉君。この3人が揃うと空気が暖かく感じるから不思議だ。

「うっまー」

どの料理もおいしく、ケーキは本当に美味しかった。
一人、千秋の伯父さんが来ていないらしく、余ったケーキをじゃんけんで勝ち取って、もらうことができた。

「うまー」
そう、口に出る。そして、悠暉君の方を見た。悠暉君は口に人差し指を持ってくるとしーとして、微笑んだ。

この子は千春たちのことをよく知っているんだなと思った。


俺が最初に食べたのは、千春のケーキ、その次に食べたのは千秋のケーキだった。二つとも美味しいが、甘さが違った。千秋のケーキの方が甘く。少し笑ってしまった。
すごいな悠暉君はそう思った。


悠暉君は、覚えているかわからないけど。俺は、昔、悠暉君に助けられたことがある。
って気づいたのは、先ほど、悠暉君のお父さんを見てからだけど。

8歳の時、探検と称して、隣町まで歩いたことがあった。その帰り道、途中で道に迷い、慌てているところに野良犬と出くわし、半泣きしながら、逃げ、もっと、道が分からなくなってしまった。足も疲れて、もうダメだという所、現れたのは、雨も降っていないのに、黄色のカッパをかぶっている子供だった。フードを深くかぶっていて、顔は見えなかったが、その子は手を広げて俺の前に立つと、野良犬と向き合った。吠える犬にその子は大きく吸い込むと

「めっていってるでしょ」

叫んだ。木霊するような大きさだった。犬はその声の大きさに、驚いて逃げていった。
こちらを向いた小さい子は

「大丈夫?」
と聞いてきた。いっぱい、いっぱいだった俺は頷くことしかできなかったけど。
その後、誰かが走ってくる音が聞こえた。

「まさかと思ったが、やっぱり、悠暉だったか」
「あ、お父さん。ワンちゃんがこの子に攻撃しようとしていたからめっしてたんだよ」
「そうか、二人とも怪我はないかい」
「僕はないけど」
「俺も大丈夫」

その後、その子とその子のお父さんに連れられ、家の近くまで、送ってもらった。

雨も降っていないのに、カッパをつけそのフードを深くかぶっていたのはきっと、顔を見て、怖がられることが多かったと言っていた悠暉君の俺に対する配慮だったのだろう。

俺を怖がらせないように。幼い悠暉君が考えた、じんわりと込み上げてくるものがある。

「何だ、涙ぐむほど、美味しいのか」

そう美濃前に聞かれ

「ああ、とってもな。それが二個も当たるんだ、じんわりとくる」

そう、誤魔化した。

「大山は涙もろいからね」
「だって、うまいだろう。千春だって、大きくもらっているのにペロリだろ」
「悠暉の料理や、ケーキは俺好みで美味しいからね」
「だろ」

その千春の言葉に俺は笑う。悠暉君がそれぞれの口に合うように作っているんだから。

千春と千秋は悠暉君に会えてよかったと思う。前より、幾分と優しい雰囲気を纏う様になった彼らは、楽しそうだ。

彼らのそんな幸せを、俺は守りたいと思った。

ケーキを食べ終わった後は、ゲームやトランプして遊び、帰るものと、泊まっていくものに分かれた。俺と石田達、そして紀藤と美濃前はかえることにし、千秋たちの従兄弟は泊まっていくらしい。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

病み墜ちした騎士を救う方法

無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。 死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。 死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。 どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……? ※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です

辺境の酒場で育った少年が、美貌の伯爵にとろけるほど愛されるまで

月ノ江リオ
BL
◆ウィリアム邸でのひだまり家族な子育て編 始動。不器用な父と、懐いた子どもと愛される十五歳の青年と……な第二部追加◆断章は残酷描写があるので、ご注意ください◆ 辺境の酒場で育った十三歳の少年ノアは、八歳年上の若き伯爵ユリウスに見初められ肌を重ねる。 けれど、それは一時の戯れに過ぎなかった。 孤独を抱えた伯爵は女性関係において奔放でありながら、幼い息子を育てる父でもあった。 年齢差、身分差、そして心の距離。 不安定だった二人の関係は年月を経て、やがて蜜月へと移り変わり、交差していく想いは複雑な運命の糸をも巻き込んでいく。

最愛の番になる話

屑籠
BL
 坂牧というアルファの名家に生まれたベータの咲也。  色々あって、坂牧の家から逃げ出そうとしたら、運命の番に捕まった話。 誤字脱字とうとう、あるとは思いますが脳内補完でお願いします。 久しぶりに書いてます。長い。 完結させるぞって意気込んで、書いた所まで。

俺の人生をめちゃくちゃにする人外サイコパス美形の魔性に、執着されています

フルーツ仙人
BL
上位存在×人間。人外サイコパス美形に、知らん間にド級のやばい執着をされ、懐かれ?苦労させられる苦学生のホラーラブコメです。初期は割と双方向塩対応ぎみ→じれじれ→もだもだ→相互尊重両想い&人外からの執着病みぎみです 現代地球によく似た異世界。里親を転々としてきた苦学生のダリオ・ロータスは、怪異を見ることができるが、関わってろくなことがない人生だった。現在彼は、大学生。時給2000リングにつられて、メイド喫茶のような会員制クラブで働いている。体格の良いダリオは自分でも違和感満載だが、一に金、二に金、とにかく金は大事だという思いから、どうなんだ? と思う自分をあっさり亡き者にしているドライな青年だ。彼は、客のカーター氏から『異次元の門』というマジックアイテム(後に判明)をプレゼントされたことで、異次元から『支配者』と呼ばれる恐ろしい存在と邂逅する。『支配者』は夜のように美しい青年テオドール。ダリオを『花』と呼ぶが…… エブリスタ、フジョッシーにも投稿していましたが、削除してこちらの投稿に変更しました。ムーンにも投稿しています。タイトル迷走中です ※合意のない性行為について、随所に否定的な話となっています。男女ともに性被害事件の取り扱いがあります。 ※大型人外形態の性描写有。攻めが様々な形態になります。 ※♡時々あります 【UI変更のためムーンライトでの更新を停止し、アルファポリスでのみ更新予定です】

アイドルのマネージャーになったら

はぴたん
BL
大人気5人組アイドル"Noise" ひょんな事からそのマネージャーとして働く事になった冴島咲夜(さえじまさくや)。 Noiseのメンバー達がみんなで住む寮に一緒に住むことになり、一日中メンバーの誰かと共にする毎日。 必死にマネージャー業に専念し徐々にメンバーとの仲も深まってきたけど、、仲深まりすぎたかも!? メンバー5人、だけではなく様々な人を虜にしちゃう総愛され物語。

腐男子♥異世界転生

よしの こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。 目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。 トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、Caitaさん、PIXIVさんでも掲載しています。

親友のお願いを聞いたら異世界から来た騎士様に求婚されました

藤吉めぐみ
BL
いつも通りに家に帰っていた大学生の心都(こと)。そんな心都を家の前で待っていたのは3ヶ月前から行方不明になっていた親友・悠隆と、銀の鎧を着た背の高い見知らぬ男。 動揺する心都に悠隆は、「ちょっと異世界に行っててさー。で、向こうの騎士様が付いてきちゃって、心都のところで預かってくれない?」とお願いしてくる。隣の騎士も「あなたに会いたくてここまで来てしまいました」と言い出して……!? 1DKの部屋から始まる、イケメン騎士とお人好し大学生の世界を越えた同居ラブ。

俺の異世界先は激重魔導騎士の懐の中

油淋丼
BL
少女漫画のような人生を送っていたクラスメイトがある日突然命を落とした。 背景の一部のようなモブは、卒業式の前日に事故に遭った。 魔王候補の一人として無能力のまま召喚され、魔物達に混じりこっそりと元の世界に戻る方法を探す。 魔物の脅威である魔導騎士は、不思議と初対面のようには感じなかった。 少女漫画のようなヒーローが本当に好きだったのは、モブ君だった。 異世界に転生したヒーローは、前世も含めて長年片思いをして愛が激重に変化した。 今度こそ必ず捕らえて囲って愛す事を誓います。 激重愛魔導最強転生騎士×魔王候補無能力転移モブ

処理中です...