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第一章 指さし婚約者(ドライ

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郷に入れば郷に従う。

目立たず。目立たなすぎず。

それが真瑠太まるた王国 篠田伯爵家の一人娘である篠田志麻子しのだしまこ、17歳のモットー。

「きゃー!きゃー!誠一殿下っこちらを向いてください」
「いつ見ても素敵ですわ!かっこいいわですわ!」
真瑠太王国で開かれた真瑠太王国の第一王位継承権を持つ、誠一皇太子殿下の誕生パーティーには国中の貴族は勿論の事。
他国からも沢山の王族や貴族が参加していた。

誠一は容姿端麗、国事など仕事も完璧。
各国の姫、貴族令嬢達はそんな彼をアイドル並みに追いかけるが、肝心の誠一は女嫌いで有名で取り囲む女性陣を常にめんどくさそうに無視していた。

その日、志麻子はいつも通り同じ剛崎学園高等部のクラスメイトの清羅王女と共に誠一の取り巻きを、いつも通り目立たず、目立たなさすぎずでしていた。
「今、清羅様をみていらっしゃいませんでした?」
蛇聖清羅じゃせいきよら王女は剛崎学園では、誠一の三つ従姉妹に当たり。
剛崎学園では高位。
学園には派閥はないが、仲良くしておけば人間関係には不自由をしない。

「えぇ!目が合いましたわ。本当に誠一殿下は素敵だわ」
清羅は志麻子の声にうっとりとしながら、上機嫌に言う。
高校でも目立たず、目立たなすぎず。
高校を卒業したら、次の篠田伯爵家の領主として父親の下で働きつつ適当な人と結婚して平穏に目立たず、目立たなさすぎず生きていこうと思っていた。

なのに・・・。

なのに・・・。

「っち。うるせぇなー。道を空けろ」

「殿下が22歳にも関わらず、婚約者をお持ちにならないのが悪い。この中からお選びになってはいかがでしょうか?そうすればこんな事態になりません。今すぐ、この中からお選びになったらいがですか?」
誠一は行く手を阻む数十人の女性達にイライラと声を上げ、誠一の隣にいる彼の側近執事の公爵家出身の田島淳二が忠告した時だった。

神様の悪戯とでも言えばいいのだろうか?

「じゃぁ、そいつ」

誠一は綺麗にセットされた前髪を掻きむしるなり、指をさした。
その指を刺した先が・・・。

げぇぇぇぇぇっっっっっ!!!

志麻子。

「きゃーっっ!!!そんな!!!誠一殿下っっ私をっ私をっお選び下さい」
「誠一様っっ。私、私をご指名くださいっっ」
「皇太子殿下。私はっ私はあなたに相応しい」

誠一を取り巻いていた女性達は悲鳴をあげ。

おいおい。
ちょっと待った。
どうしよう。
目立たず、目立たなすぎずが私のモットー。
こんな注目を浴びるのはごめんだ。
それに”じゃあ?”って何?その発言。
”顔を見ることもなく適当に指さして婚約者を指名?”って何?その行動。
困った。
本当に困った。
“私は殿下にふさわしくない”と叫べばいい?
殿下から指名をされて、拒否をする家族令嬢などこの世界にはいない。
なぜならば、一族諸共、惨殺されても文句は言えない。
“殿下っ。嬉しいですわ”っと喜び、飛び上がりきゃっきゃ踊ればいい?
そんなのは、流石にキャラではない。
志麻子は硬直しながら、心の中で大絶叫をしていた。

「殿下。この女性でございますか?」
「あぁ。そうだ。人間だったら、ソレでいい」
人間だったら?
・・・もはや、男でも女でもいいのね。
淳二は硬直しつづけ、心の中では絶叫を続ける志麻子を見る。

「とっとと、めかしこませて隣に立たせろ」
誠一は志麻子を一瞥することもなく言い放つと、背を向けて歩き出した。

いやぁぁぁ!!!
目立たず、目立たなすぎず。
郷に入っては郷に従えで、同性ミーハー女共に交じってキャーキャー言ってるだけで。
私は殿下の事をこれっぽっちも好きではないし、これっぽちも婚約者になりたいなんて思っていない。
似も関わらず、なぜ私を指さした。
なぜ、私は指をさしたところに立っていた。
私のバカバカバカっっ。
志麻子は口をパクパクさせながら心の中で絶叫した。
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