指さし婚約者はいつの間にか、皇子に溺愛されていました。

湯川仁美

文字の大きさ
6 / 15
第一章 指さし婚約者(ドライ

しおりを挟む
「志麻子っ!お嬢様っ!」

篠田家のメイド長でもあり、志麻子の教育係でもあるアキは次期国王の婚約者であることを完全に忘れていた志麻子を勇めるように誠一殿下の側近である田島を見送ると志摩子の名前を呼ぶ。
パーティーに公務に同行=人脈を広げれる。

ーーーしかし。

それをすればするほど。
商才のある令嬢になればなるほど志麻子の伯爵令嬢としての嫁ぎ先は少なくなる。
自分よりも才ある女性を嫁にしたいと思う男性は少ない。

そして、ありえないとは思うが誠一は顔だけは良い。婚約者を一瞥することもなく選ぶような男だ。
男性経験のない志麻子が万が一惚れてしまい。
解任されるとき志摩子が少しでも悲しい気持ちになるのは避けたい。
アキは伯爵夫妻と共に志麻子を大切に育ててきた。
メイド長と使える館の娘主という関係ではなく。
乳母と子のような関係だった。
「本当に同行されるのですか?」
体調不良として断ることも出来なくはない。
「同行するわ。明日にはコーヒーの品評会の結果が返って来て、絶対に3位入賞は間違いない。グラム2万だけに売りつける相手は身分の高いお金持ちがいいものね」
ふふふっと志麻子は打算的に笑うとポケットから携帯を出すと操作する。
「コーヒーの契約がとれたら隣の男爵家と公爵家の土地を買い上げて生産しましょう」
「お嬢様・・・」
ニコニコとする志麻子の前にアキは心配そうに量膝をつき志摩子の空いているその手を取る。
「アキさん?」
「独身貴族にならないでくださいね」
「それは神のみぞ知ることね」
にっこり微笑む志麻子にアキはため息をついた。

あの皇子は乙女の純情を弄ぶような真似はしないだろうが。
優しくされたら志麻子は妙齢の娘だ。
領地を愛し、領民を愛おしみ、お金を愛しすぎている節はあるがきっと惚れてしまう。
心配するアキをよそに志麻子は携帯をポケットししまうと手を伸ばしてコーヒーを飲む。
このコーヒーに合う牛でも育てようかしら?
確か虹川国は畜産が盛んだった。
こんなに美味しいコーヒーにあう美味しいミルクを出してくれる牛が欲しいわ。
牛の買う場所は・・・。
伯爵家の物置の一つを牛舎に魔改造してもいいし。
まぁ、牛を飼う程度の敷地なら伯爵領に無数にあるのだから牛を見つけてから考えることにしましょう。
そんな事を思いつつコーヒーを飲み終えると心配そうにするアキに微笑んだ。

「孫的な何かはお見せするわ。それが人間なのか、犬なのかはわからないけれどね」

「お嬢様っっっ!」
アキは半ば本気の娘主人に悲鳴をあげた。

***
「志麻子様からのプレゼントのコーヒーです」
王宮に帰るなり淳二はコーヒー豆をシェフに引かせると美味しいコーヒーを入れる。
「ほぉ。うまいな」
「志麻子様がグラム500円から2万円に3年間で品種改良したらしいですよ」
「そうか」
「今度の建国祭でこのコーヒーの大口の輸出先を見つける気合いが満々でいらっしゃいました」
「・・・そうか」
誠一は相変わらず自分に取り入ろうとしない婚約者に不敵な笑みを浮かべる。

面白い。
適当に指をさしただけだったが・・・。
正解だったかもしれないな。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

家族から邪魔者扱いされた私が契約婚した宰相閣下、実は完璧すぎるスパダリでした。仕事も家事も甘やかしも全部こなしてきます

さくら
恋愛
家族から「邪魔者」扱いされ、行き場を失った伯爵令嬢レイナ。 望まぬ結婚から逃げ出したはずの彼女が出会ったのは――冷徹無比と恐れられる宰相閣下アルベルト。 「契約でいい。君を妻として迎える」 そう告げられ始まった仮初めの結婚生活。 けれど、彼は噂とはまるで違っていた。 政務を完璧にこなし、家事も器用に手伝い、そして――妻をとことん甘やかす完璧なスパダリだったのだ。 「君はもう“邪魔者”ではない。私の誇りだ」 契約から始まった関係は、やがて真実の絆へ。 陰謀や噂に立ち向かいながら、互いを支え合う二人は、次第に心から惹かれ合っていく。 これは、冷徹宰相×追放令嬢の“契約婚”からはじまる、甘々すぎる愛の物語。 指輪に誓う未来は――永遠の「夫婦」。

【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。

朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。 宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。 彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。 加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。 果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?

私を嫌っていた冷徹魔導士が魅了の魔法にかかった結果、なぜか私にだけ愛を囁く

魚谷
恋愛
「好きだ、愛している」 帝国の英雄である将軍ジュリアは、幼馴染で、眉目秀麗な冷血魔導ギルフォードに抱きしめられ、愛を囁かれる。 混乱しながらも、ジュリアは長らく疎遠だった美形魔導師に胸をときめかせてしまう。 ギルフォードにもジュリアと長らく疎遠だったのには理由があって……。 これは不器用な魔導師と、そんな彼との関係を修復したいと願う主人公が、お互いに失ったものを取り戻し、恋する物語

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】

清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。 そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。 「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」 こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。 けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。 「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」 夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。 「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」 彼女には、まったく通用しなかった。 「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」 「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」 「い、いや。そうではなく……」 呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。 ──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ! と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。 ※他サイトにも掲載中。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

処理中です...