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第三章 溺愛する皇子(最終章

最終話

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剛崎王国の次期皇帝の執務室で、容姿端麗な少し冷たい印象を与える皇子が不機嫌そうに自身の婚約者に机の上に胡坐をかく。
「婚約者なんだったら、もっとべたべたして来いよ」
歴代、数十人の婚約者共に近づくな。触れるなと散々起こり散らかし。
べたべたするなと文句を言って誠一は自分に触れることもなく、執務室で黙々とパソコンに向かい書類を作成している志麻子に文句を言う。
「指さし婚約者。顔も見ずに指名をした婚約者に望みすぎ。ほら、お行儀悪いわよ?机から降りて頂戴」

「あの時は、ノリで適当に指をさして婚約者を選んだが。その後、お前にしっかり惚れてる。メロメロだ。世の女共のようにべたべたしてこい」

「はいはい。モテ男は言う事が奇怪ね~。“世の女共のようにべたべたしてこい“ですって。あぁー。私も一度は言ってみたいわ。世の男共のようにべたべたしてこい・・・なんて、言わない」
「世の男共のようにべたべただと?志麻子に触れる男は片っ端から、牽制しなければな。志麻子に触るなという法律でも作ろうかな?」
誠一は細身長身ではあるが、その体はまるで鎧でも来ているようにがっちりとしていた。
一度、捉えられればその腕から抜け出す事はできない。
志麻子はそれが分かっているので、誠一が後ろから抱き着くが身動き一つしなかった。
「視察に行くわよ」
「デートなら行く」
「視察もデートのようなものでしょう。交際中の恋愛関係にある男女が日時を決めて、お出かけするんだから。ほら」
そう言って志麻子はぽんぽんっと誠一の腕を軽くたたく。
「嫌だ」
このまま、抱きしめていたい。
そんな誠一に志麻子は苦笑する。
「それでも、本当に私の年上?成人男性なの?駄々っ子みたいよ?」
「お前が俺より5年も遅く生まれてきたのが悪い」
「同い年がよかった?」
「年齢はどうでもいいが。年上を理由に駄々をこねさせてくれないのならば、遅く生まれてきた志麻子が悪い」
「もう。泣く子も黙るやり手皇太子殿下がこれじゃ、泣く子がよりなく駄々っ子殿下になっちゃうわ」
「好きな女の前では男は全員、馬鹿になるものだ」

淳二はそんな誠一にため息をつく。
「「顔も見ずに婚約者に指名。その後の夜会は放置、初めての他国の夜会も放置をかましてた頃が懐かしいですね」
「あの時は好きじゃなかったんだ」
「あー、傷ついた」
「今は愛してる」

「私も愛してる」

志麻子はにっこり微笑み答えると、誠一は満足したように志麻子と手を繋いで歩きだした。
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