君の名前を教えて

夜瑠

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Dear. Elrica

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*親愛なるエルリカ様へ*



貴方に手紙を送るなんて初めてではないでしょうか?
今までずっと隣にいて手紙なんか必要ないくらいなんでも話していましたし。

この手紙を貴方が読んでいるということはきっと私は毒を煽ってあなたのもとへ向かったのでしょう。そしてどういった経緯か──貴方に斬られたのか、毒にやられたのか──は分かりませんが死んだのでしょう。

きっと毒を飲むことを選んだ私を貴方は馬鹿だと、愚かだと言うでしょう。2人で生きる道があったかもしれないのに、と。

そうかも知れませんね。きっとそんな道もあったのでしょう。実際私は二択から生と死、屈辱と絶望から死を選んだのです。絶望を選んだのです。

今は少し悩んでいます。
死を怖いとは思いません。死はずっと私の真横にあり続けました。今更それを恐れはしません。

けれどただひとつ怖いことがあるのです。

貴方の成長をこれから先見守ることが出来ないこと。貴方が私のことをすっかり忘れて誰かと愛し合う未来です。

私は貴方と生きる道を選ばなかったくせに貴方が私を選ばないことが酷く怖くて、怖くて堪らないのです。

ずっとずっと怖かった。この背に刻まれた忌まわしい紋を見られたら。王との過去の関係を知られたら。私が貴方にいつも見せているような高潔な人ではなくただ惨めで哀れな臆病者だとバレたら。

それがずっと怖かった。
怖くて仕方がなかった。



だから私は死のうと思いました。


それがとても最上の選択に思えたのです。

私が汚い人間だと知られる前に貴方の手で葬られたい。
2人で生き残ってその後もし貴方に拒絶されたらきっと私は立ち直れなくなる。
だからずるい私は何も知らない貴方に愛されている1番綺麗なままで貴方の前から消え去りたかった。


どうかこの愚かで身勝手な私を忘れないで。


許さないでいいからどんな形でも良いから貴方が寿命でこの世を去るその日まで私という愚かな人間がいたことを覚えていて下さい。

そして私はとてもとても我儘だからもう1つお願いをします。


他の人を愛さないで。

私の居なくなった世界で私の知らない人とどうか幸せにならないで。

私に紡いだあの甘く幸せな夢を私だけのものにしていて。

……幻滅しましたか?

口でどれほど貴方に授業をしていても本当の私は我儘で臆病で卑怯ななんの取り柄もないような男なのです。


ねぇ、エル様。
エル様はこんな私でも愛してくれるのでしょうか。

きっと貴方のことだから父王に憤りながら私も愛してくれるのでしょう。…これは私の都合のいい妄想でしかありませんが。

優しい貴方のことだ。

心の内でどう思っていようときっとそんなこと関係がないと言ってそのように振舞って下さるでしょう。

だって貴方は本当に素晴らしい人なのだから。心からこんなどうしようも無い私なんかを愛してくれて温かいホットミルクを与えてくださるのだから。


弱くてごめんなさい。

貴方の愛を心から信じているのに知られることが酷く怖くて貴方と向き合うことから逃げてしまうような臆病者でごめんなさい。

面と向かって言えなくてこんな紙切れで全てが終わってから伝える卑怯者でごめんなさい。

ごめんなさい。

ごめんなさい。

愛しています。心から。

あなたの愛も疑うことすらないほど伝わっています。

けれど臆病な私は私の過去を知って貴方が同情したり罪悪感で接してくる未来を考えてしまうのです。
貴方がそんな人じゃないと誰よりも知っているのに。

胸を張れるような過去なんてなくて、悪魔なんて呼ばれていて、家畜以下の存在で、なのに貴方の隣にいたかった。

過去なんて無かったことにして、また子供の頃からやり直して王族の身分がある過去の私のまま、穢れていない綺麗な私のまま出会って貴方に恋をしたかった。

そうすれば私はきっとこんな選択せず、胸を張ってどんな妖艶か美女が押し寄せてこようとどんな権力を持った女が来ようとエル様の隣は私だから、と言えたのに。

貴方の元にアピールしにくる女の子を見る度、顔も身体も過去も汚点なんかひとつもない彼女たちを見るたび、エル様の隣にこんな私が居ていいのかと不安で仕方なかった。

高潔な貴方の隣に並ぶ勇気がなかった。


もっと普通の人生で出会えていたら。

私がもっと綺麗なままだったら。

貴方の隣から離れなくて良かったのに。


最愛のエルリカ様。

この弱くて臆病で卑怯な私をどうか忘れないで。こんな私に幸せな夢を見せてくださってありがとうございます。
貴方の人生を狂わせてしまってごめんなさい。
愛しています。

それでも愛し続けています。

どうか、来世で会いましょう。

今度はきっと綺麗な道を歩んでみせますから。もう貴方の隣から逃げ出すような私からきっと卒業していますから。貴方の隣で私が1番貴方を愛していると胸を張って叫びますから。

どうか来世まで私のことを愛し続けていて。
どうか今世で他の人と幸せにならないで。
けれど天寿をまっとうしてください。


ずっとずっと愛しています。ごめんなさい。そしてありがとう。幸せでした。


      *この世で1番貴方を愛している Nadja より*











P.S.  先程鍛錬しているのが見えましたが三の型の時肘が上がる癖が直っていません。以前伝えた型をもう一度思い出すこと。少しでもズレがでると実戦で致命的なミスを犯します。
けれど以前注意した六の型は直っていました。この調子で続けましょう。
鍛錬をこれからもサボらないよう続けてください。




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