7 / 8
Dear. Elrica
しおりを挟む*親愛なるエルリカ様へ*
貴方に手紙を送るなんて初めてではないでしょうか?
今までずっと隣にいて手紙なんか必要ないくらいなんでも話していましたし。
この手紙を貴方が読んでいるということはきっと私は毒を煽ってあなたのもとへ向かったのでしょう。そしてどういった経緯か──貴方に斬られたのか、毒にやられたのか──は分かりませんが死んだのでしょう。
きっと毒を飲むことを選んだ私を貴方は馬鹿だと、愚かだと言うでしょう。2人で生きる道があったかもしれないのに、と。
そうかも知れませんね。きっとそんな道もあったのでしょう。実際私は二択から生と死、屈辱と絶望から死を選んだのです。絶望を選んだのです。
今は少し悩んでいます。
死を怖いとは思いません。死はずっと私の真横にあり続けました。今更それを恐れはしません。
けれどただひとつ怖いことがあるのです。
貴方の成長をこれから先見守ることが出来ないこと。貴方が私のことをすっかり忘れて誰かと愛し合う未来です。
私は貴方と生きる道を選ばなかったくせに貴方が私を選ばないことが酷く怖くて、怖くて堪らないのです。
ずっとずっと怖かった。この背に刻まれた忌まわしい紋を見られたら。王との過去の関係を知られたら。私が貴方にいつも見せているような高潔な人ではなくただ惨めで哀れな臆病者だとバレたら。
それがずっと怖かった。
怖くて仕方がなかった。
だから私は死のうと思いました。
それがとても最上の選択に思えたのです。
私が汚い人間だと知られる前に貴方の手で葬られたい。
2人で生き残ってその後もし貴方に拒絶されたらきっと私は立ち直れなくなる。
だからずるい私は何も知らない貴方に愛されている1番綺麗なままで貴方の前から消え去りたかった。
どうかこの愚かで身勝手な私を忘れないで。
許さないでいいからどんな形でも良いから貴方が寿命でこの世を去るその日まで私という愚かな人間がいたことを覚えていて下さい。
そして私はとてもとても我儘だからもう1つお願いをします。
他の人を愛さないで。
私の居なくなった世界で私の知らない人とどうか幸せにならないで。
私に紡いだあの甘く幸せな夢を私だけのものにしていて。
……幻滅しましたか?
口でどれほど貴方に授業をしていても本当の私は我儘で臆病で卑怯ななんの取り柄もないような男なのです。
ねぇ、エル様。
エル様はこんな私でも愛してくれるのでしょうか。
きっと貴方のことだから父王に憤りながら私も愛してくれるのでしょう。…これは私の都合のいい妄想でしかありませんが。
優しい貴方のことだ。
心の内でどう思っていようときっとそんなこと関係がないと言ってそのように振舞って下さるでしょう。
だって貴方は本当に素晴らしい人なのだから。心からこんなどうしようも無い私なんかを愛してくれて温かいホットミルクを与えてくださるのだから。
弱くてごめんなさい。
貴方の愛を心から信じているのに知られることが酷く怖くて貴方と向き合うことから逃げてしまうような臆病者でごめんなさい。
面と向かって言えなくてこんな紙切れで全てが終わってから伝える卑怯者でごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
愛しています。心から。
あなたの愛も疑うことすらないほど伝わっています。
けれど臆病な私は私の過去を知って貴方が同情したり罪悪感で接してくる未来を考えてしまうのです。
貴方がそんな人じゃないと誰よりも知っているのに。
胸を張れるような過去なんてなくて、悪魔なんて呼ばれていて、家畜以下の存在で、なのに貴方の隣にいたかった。
過去なんて無かったことにして、また子供の頃からやり直して王族の身分がある過去の私のまま、穢れていない綺麗な私のまま出会って貴方に恋をしたかった。
そうすれば私はきっとこんな選択せず、胸を張ってどんな妖艶か美女が押し寄せてこようとどんな権力を持った女が来ようとエル様の隣は私だから、と言えたのに。
貴方の元にアピールしにくる女の子を見る度、顔も身体も過去も汚点なんかひとつもない彼女たちを見るたび、エル様の隣にこんな私が居ていいのかと不安で仕方なかった。
高潔な貴方の隣に並ぶ勇気がなかった。
もっと普通の人生で出会えていたら。
私がもっと綺麗なままだったら。
貴方の隣から離れなくて良かったのに。
最愛のエルリカ様。
この弱くて臆病で卑怯な私をどうか忘れないで。こんな私に幸せな夢を見せてくださってありがとうございます。
貴方の人生を狂わせてしまってごめんなさい。
愛しています。
それでも愛し続けています。
どうか、来世で会いましょう。
今度はきっと綺麗な道を歩んでみせますから。もう貴方の隣から逃げ出すような私からきっと卒業していますから。貴方の隣で私が1番貴方を愛していると胸を張って叫びますから。
どうか来世まで私のことを愛し続けていて。
どうか今世で他の人と幸せにならないで。
けれど天寿をまっとうしてください。
ずっとずっと愛しています。ごめんなさい。そしてありがとう。幸せでした。
*この世で1番貴方を愛している Nadja より*
P.S. 先程鍛錬しているのが見えましたが三の型の時肘が上がる癖が直っていません。以前伝えた型をもう一度思い出すこと。少しでもズレがでると実戦で致命的なミスを犯します。
けれど以前注意した六の型は直っていました。この調子で続けましょう。
鍛錬をこれからもサボらないよう続けてください。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】オーロラ魔法士と第3王子
N2O
BL
全16話
※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。
※2023.11.18 文章を整えました。
辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。
「なんで、僕?」
一人狼第3王子×黒髪美人魔法士
設定はふんわりです。
小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。
嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。
感想聞かせていただけると大変嬉しいです。
表紙絵
⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)
貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~
倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」
大陸を2つに分けた戦争は終結した。
終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。
一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。
互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。
純愛のお話です。
主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。
全3話完結。
孤独な王子は影に恋をする
結衣可
BL
王国の第一王子リオネル・ヴァルハイトは、
「光」と称えられるほど完璧な存在だった。
民からも廷臣からも賞賛され、非の打ち所がない理想の王子。
しかしその仮面の裏には、孤独と重圧に押し潰されそうな本音が隠されていた。
弱音を吐きたい。誰かに甘えたい。
だが、その願いを叶えてくれる相手はいない。
――ただ一人、いつも傍に気配を寄せていた“影”に恋をするまでは。
影、王族直属の密偵として顔も名も隠し、感情を持たぬよう育てられた存在。
常に平等であれと叩き込まれ、ただ「王子を守る影」として仕えてきた。
完璧を求められる王子と、感情を禁じられてきた影。
光と影が惹かれ合い、やがて互いの鎖を断ち切ってゆく。
目立たないでと言われても
みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」
******
山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって……
25話で本編完結+番外編4話
禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り
結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。
そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。
冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。
愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。
禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。
happy dead end
瑞原唯子
BL
「それでも俺に一生を捧げる覚悟はあるか?」
シルヴィオは幼いころに第一王子の遊び相手として抜擢され、初めて会ったときから彼の美しさに心を奪われた。そして彼もシルヴィオだけに心を開いていた。しかし中等部に上がると、彼はとある女子生徒に興味を示すようになり——。
【8話完結】ざまぁされて廃嫡されたバカ王子とは俺のことです。
キノア9g
BL
王位継承権を剥奪され、婚約者にも婚約破棄された元王子カイル。
ショックで前世の記憶を思い出した彼は、平民として新たな人生を歩む決意をする。
心配して訪ねてきた旧友レオナードと深い絆が育まれ、カイルは自分の心に素直になる。
過去を乗り越え、共に歩む未来が描かれる物語。
全8話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる