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しおりを挟む次の日、城へ行くとすぐにジル様と出会った。
彼は私を見てとても気不味そうな顔をした。そしてその後少し腫れてしまった頬をみて顔を歪ませた。
そんな彼に私は臣下の礼を取る。
「え、ちょ、何をしてるんですか!?」
「貴方様は正妃となられるのですから側室となる私の上の立場となります。よって臣下の礼を取ることは当たり前かと。」
「いやいやいや!!そんな!やめてください!」
全力で拒否されたので礼をやめる。するとあからさまにホッとした顔をされた。
「あー……その、正妃と側室の話…だけどさ…?」
「はい。」
「……僕が側室になろうかと思うんだよ。」
「……………………はい?」
何を言っているのだろうこの人は。
「昨日考えたんだよ。余所者の僕が急にこの国にやってきて正妃に、しかも男なのになるって言ってもおかしいでしょう?だから僕が側室に…」
「私を侮辱なさっているのですか?」
ついそんな言葉が飛び出してしまった。
彼は驚いたような顔をして口を開け呆けている。
私は顔には出ないが自分の中で怒りの感情が生まれたことを感じた。
「私が側室になれば一生自我を持てないことを憐れだと、惨めだとお思いになられたのですか?」
「いや、そういうわけじゃ…ないけど」
明らかに目を逸らし歯切れの悪い返事は肯定と言っているようなものだった。
「馬鹿にしないで下さいまし。生まれてこの方自我を持つことを禁じられて参りましたが私にも覚悟はあります。国に尽くして一生を終えることをとうに覚悟しております。貴方様の同情を受け正妃になろうとこのまま側室になろうと何も変わりはありませぬ。」
彼は決まりが悪そうな顔をしていた。
「私を正妃から落とすどころか側室が寵愛され見向きもされない正妃に落とすおつもりですか?」
「ち、ちが──」
焦ったように彼は否定する。けれど私はそれを遮る。
「この身は爪の先から髪の毛1本、全て王家の所有物です。私の幸せは王家に尽くすこと。世継ぎを産むという大役が私を生かすのです。それが私の幸せなのです。」
「そう、か……そっか……ごめんね…本当にごめん…」
そう言ってジル様は肩を震わせて涙を流してしまった。私が幼い頃から禁じられた感情のままに泣くという行為を行った。
それにすら私は怒りを抱いてしまった。
私と違い自由なまま王妃になろうとする彼を恨んでしまった。
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