首輪を嵌めて飼い殺しましょう

夜瑠

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人があまり来ない場所の廊下の一角とは言え使用人はたまに通る。

無表情の私と涙を流すジル様を見てそそくさと逃げていく。


「何をしている。」

背中から聞こえた声に振り向きまた臣下の礼をとる。

「…面をあげよ。何をしているのかと聞いている。」

「…は。お話をしておりました。」

不機嫌そうな殿下はそれでも訝しげに私を睨んだ。こうして殿下に睨まれたのは初めてかもしれないなとまたどうでもいいことを考え、やはり私は愛などないのだなと当たり前のことを考えた。

「ジル、何かされたのか?嫌なことでも?」

「ち、ちが…うんだ……僕が悪かっ、たんだ……」

ポロポロと涙を落とす彼の背を労わるように撫でる。そんな姿をどこか遠くの世界の事のように見ていた。

昨日に続いて今日も私は上手く感情が押さえられないらしい。沸々と怒りと悲しみが込み上げてくる。

私が幼い頃厳しい王妃教育で涙を流した時は何も言ってくれなかったくせに。私には涙を流すことなんて許されていないのに。私は間違ったこと何も言っていないのに。

どうしてその男だけ。


「…何をしたんだ?嫉妬か?お前は自我を持つことを禁じられているはずだが?」

冷たい瞳を向けて殿下は私を問いただす。私の心が音を立てて砕けたような気がした。それでも私はきっと無表情のままなのだろう。

ジル様は泣きながら殿下に違うと訴えているが殿下はそれを聞こうとはしない。

「…お話を、していました。仰られる通り私は自我を持つことを禁じられているので王家の判断の通りに行動致しました。」

「何?じゃあ何故ジルが泣いている。」

「存じ上げません。」

「貴様…!!」

「ち、ちがうの!!聞いて!!」

漸く呼吸が整ったらしいジル様は涙を拭い殿下の袖を引っ張った。私から守るように立っていた殿下は心配そうに振り返る。

「…本当にお話してただけなんだ……ただ僕が勝手に同情してしまって自分が彼女から正妃の座を奪ってしまったことを申し訳なく思って……泣いちゃったんだ……」

「…な、……そうか…ジョゼフィーヌ済まなかった…疑ってしまって。」

「いいえ、殿下。私に謝る必要などございません。」

そういうと2人して申し訳なさそうな顔をした。
どうしたのだろうか。

「…君は怒らないんだな……」

「私は自我を持つことを禁じられていますので。」

そういうと殿下は苦虫を噛み潰したような顔をした。

「…それも悪かった。」

「何を謝られることがあるのです。事実なのですから。」

「………………………」

殿下はまた苦々しい顔をした。

「ジョゼフィーヌ様…僕も認められるように頑張るからさ…君も自我をもってみないか…?」

「ジル……」

ジル様は優しく笑いかけてくださいます。私はその笑みにただ怒りを覚えるだけでした。

「私は自我を持つことを禁じられていますので。」

そういうと彼らは揃って痛々しそうに私を見るのだった。

この人達はどれほど私を侮辱すれば気が済むのでしょうか。








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