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3.
しおりを挟む王妃様と別れ城に用のなくなった私は実家へと戻る。
「おかえりなさいませお嬢様。」
使用人達の出迎えを受けながら馬車から降りる。全員が頭を下げている様子は壮観だ。
「お父様はどちらに?」
「執務室にて書類仕事をなさっておられます。」
「そう…報告をしてから自室へ向かうわ。」
メイド長にそう言付け執務室へと向かう。少しだけ緊張する。
ノックをするとすぐに応答が返ってくる。名を告げると入室許可がすぐに降りた。1度深呼吸をする。
扉を開けると父が執務机で書類を片付ける見慣れた光景が広がっていた。
「何の用だ。」
書類から目を離さず父が尋ねる。少し煩わしそうな声音だった。
「はい。殿下が留学先で出会った男性を正妃にするらしく私は側室になれと命令を受けそれを了承しました。」
「………は?側室?」
じろりと書類から顔をあげ私を睨みつける。父と目を合わせたのは何年ぶりだろうかとふと考える。
「…それを了承したと?」
「はい。殿下の命令でしたので。」
私の言葉を聞いた父は怒りに目の色を染め立ち上がり私の元へ歩み寄る。
それをただ私は無表情で見上げる。
そして───
次の瞬間には頬に衝撃が走った。
「この馬鹿娘が!!正妃になれないお前に価値などあるわけないだろう!!しかも隣国の男だと!?男なんぞに負けて貴様恥を知らんのか!!」
流石に叩かれたのは初めてだった。今までは怒られようと王太子妃という立場が顔に傷を作るのに躊躇われたのだろう。
生理的な涙が目に浮かぶ。
「泣きたいのはこっちだ!!家名に泥を塗りやがって!!」
この涙は違う、という言葉は出なかった。ただお父様の怒りを黙って聞いていた。
そう、私は価値を失ってしまったのだ。怒られて当然のことをしてしまった。
これはその罰なのだ。
約1時間怒鳴られ続け漸くお父様の怒りは落ち着いたようだ。
「………いいか。必ず立派で丈夫な男児を産め。流産などしてみろ。その時こそがお前の死に時だ。いいか、必ず世継ぎを産み王家に尽くせ。」
「……はい。お父様。」
「とっとと下がれ。」
「はい。失礼致します。」
部屋から出ると私の顔を見て声を失ったメイドが慌てて厨房に氷を取りに行った。
私はそれを何処か他人事のように思いながらジンジンと痛みを訴える頬を撫でた。
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